さて,ポーランドである。出し抜けに恐縮だが,常識的に言って勝ち目はない。1947年の段階で国家が地上に残っている可能性はほぼ皆無というのが,プレイ前の感触だ。だが,何しろハーツ オブ アイアンIIはParadox Entertainmentのゲーム。何かとんでもない奇跡があるかもしれない。
というわけで,定めた目標はポーランドの生存と(できれば)繁栄。続いて情報収集ということで,Paradox Entertainmentの公式サイトに行ってポーランドのAAR(After Action Report。いわゆるリプレイ投稿記事)を探してみる……みなさん普通に戦車に轢かれているようだ。だが,なかには「ポーランドで1936年にゲームを開始し,電撃戦でドイツを併合,返す刀でソビエトに侵攻し,今スターリンはカムチャツカにいます」という記事も。……ふむ,どうやら奇跡はなきにしもあらずらしい。
さて,希望の光は掴んだ。あとはポーランド槍騎兵の真骨頂を世界に知らしめるのみである(気が早すぎ)。
これが宿敵ドイツの開発力だ。研究チームが五つ置ける点からして違うが,電撃戦の創始者「ハインツ・グデーリアン」将軍が研究チーム扱いで登場する
国家に目標あるところ,施策なくして実現はない。ポーランドを栄光に導くために,いったいどのような政策がありうるのだろうか。ポーランドのプレイで実際に世界の半分を征服したプレイヤーは,騎兵を利して再軍備完了前のドイツに侵攻したわけだが,同じことを繰り返しても面白くない。ということで,まずはポーランド軍が戦車を洗練させ,ドイツ軍を教育してやる! という方針でいってみることにした。戦車こそ新時代の騎兵であり,栄光のポーランド騎兵隊が戦車隊になることに何ら異存はあるまい。当然ながらソビエトとは極力仲良くし,二正面作戦にならないよう慎重な外交を行う。
……結論から言うと,これは無理だ。何が問題かというと,あまりに問題だらけでいったい何から説明していいか困るのだが,最も大事な部分だけを挙げると,
- ポーランドには研究機関が少なく,戦車の技術開発とほかの技術開発の並行が難しい
- ポーランドは工業化が進んでおらず,いざ戦車を量産する段になっても工業生産力が追いつかない(あるいは生産が極端に遅い)
我がポーランドが全力を挙げて戦車を開発している様子。ドイツの「ポルシェ社」がスキル9に対し,こちらはスキル6。おまけに「初期型戦車試作試験」の項目にボーナスが付かない
ということになる。1.に関して言うと,ポーランドが持つ研究ラインは2本で,同時期のドイツは5本。研究チームの質などすべてを不問に付したとしても,単純に2.5倍の差ということになる。
次に2.について。ポーランドの工業力で戦車の製造を2ライン費やして行うと,それだけでいっぱいいっぱいになる。当然ながらこれは,戦車以外何も生産しない前提での話。歩兵の補充も空軍の整備も,知ったことかという状態で,戦車だけを細々と作ることになる。
また,これはある程度予想してしかるべきだったが,初期の戦車はお世辞にも強いとはいえない。ナチスドイツが歩兵の練度を上げ,きっちり対戦車砲を装備したうえで歩兵主体の軍隊を構築していたりすると,気持ちいいくらいあっさりと歩兵に駆逐される。無論,史実よりはドイツ軍に出血を強いたとは思うが,それで国が長生きできるかというと,かなり難しい。
一応の解決策として,戦車の技術開発を自国で行わず,さっさと連合国の傘下に入ってイギリスかフランスから設計図をもらうという手もある。これで1.の問題はずいぶん緩和できるが,作れるのがルノー戦車かと思うと,どうにも積極的に支持できない案だ。
連合国に入って設計図の供与を受ければ,戦車の開発は大幅に早められる。しかし,「ルノー R-35」の史実における実績を考えると……あまり見合わないかもしれない
当然ながらもう一つの選択として,さっさと枢軸傘下に入ってドイツの戦車技術を頂戴するという手もあるわけだ――が,これでドイツ軍と足並み揃えてソビエトに侵攻するというのは,ナポレオンの命令でロシア遠征にかり出され,指導者たるポニャトフスキー将軍をベレジナ川で失った後にはハイチくんだりまで派遣された(厄介払いされたとも言う。アンジェイ・ワイダ監督の映画「灰」をご覧いただきたい)ポーランド槍騎兵と,どこがどれくらい違うのかという疑念が残る。いやまあ,民族の伝統とか誇りとかを掲げてみても,別に戦争には勝てないということなのだが。