さて,今回は戦争の話である。「シヴィライゼーション4」(以下,Civ4)をプレイするうえで,戦争はいうまでもなく重要な戦略オプションの一つだ。もし,利益が手間や損失を上回るなら,このゲームの中で戦争を控える理由はない。存分に他文明を侵略して,自文明を有利に導くべきである。
ただし,内政系の勝利を目指してプレイしている場合,肝心の「自文明の得になること」という条件を満たせることが少ない。他文明を侵略できる軍備を整えることはすなわち,都市建造物を作るのを後回しにすることであって,最終的に経済や文化の発展を遅らせることになるからだ。過去にひどい目にあったから,目障りだから,大陸を統一したいからといった理由で戦争を始めても,こと宇宙開発競争勝利に関しては,まったく意味がない。儲けの出る戦争だけがよい戦争なのだ。
ユニットが選択された状態では,ステータスが画面左下に表示される。画面は傷ついたユニットなので,「戦闘力」が小数として表示されている
早速「得になる戦争」の条件を考えてみたいところだが,その前にCiv4の戦闘システムについて軽くおさらいしておこう。
シリーズ従来作品と異なり,Civ4では,戦力比の基礎となる各ユニットの戦闘力が,攻撃力と防御力に分かれていない。また,この数値は,いわゆるヒットポイント(以下,HP)も兼ねている。ダメージを受けているユニットの場合,HPだけではなく戦闘力も低下した状態になるし,攻撃命中時に相手の戦闘力を減らす基準値(firepower)も,「もともとの戦闘力と現在の戦闘力の平均」にまで減る(英語版バージョン1.60のReadme.htmより)。
このため,戦闘力のわずかな差が,戦闘オッズに大きく影響するようになっている。また,もともとの戦闘力が高いユニットは,無傷の状態では非常に強いが,傷つくにつれて優位が急速に揺らぐ。現代ユニットでも,瀕死の状態だと火薬以前のユニットに負けることがあるのだ。
また,ユニットの種類や分類による相性は,従来作よりもはっきりと強調されている。例を挙げると,斧兵は白兵戦ユニットに対して戦力1.5倍,槍系のユニットは騎乗系ユニットに対して戦力2倍といった具合だ。序盤のユニットを中心に,この関係を図に示した。
戦闘で経験値を得たユニットは,段階的にスキルを取得する形で昇進するようになっている。スキルには,戦闘で有利になるボーナスを得るものが多いが,ダメージからの回復をスムースにするもの,視界や移動力を広げるものなどもある。また,ユニットの種類によって取得できるスキルが異なり,取得の系列も設定されている。
戦闘時には,攻撃側が選択したユニットに対して,防御側が最も戦闘オッズのよいユニットを選択するようになっている。複数種類のユニットをスタック(同じマスに重ねて配備)すると,「どんなユニットから攻撃を受けても,有利なボーナスのもとで防戦できる」のだ。防御側は,騎乗兵や砲兵,戦車以外なら,さらに「守りを固める」ことで戦闘ボーナスを得られるため,攻めるときには十分な戦力が必要になる。
また,都市の攻防については,「都市の文化度に応じて防御側にボーナスがつく」というシステムが採用されている。加えて,序盤に防衛に使われる弓兵/長弓兵には,とくにスキルを取らなくても,都市防衛時には戦闘力+25%のボーナスがある。平押しで都市を落とそうとすると,膨大な戦力が必要になるのだ。
さて,ここで話を「得をする戦争」に戻してみよう。ざっくり語ってしまうなら「得をする戦争」とは,
という2条件を満たすものと考えてよい。どちらを考えるうえでも,前述のようなシステムやユニットの能力について,よく知っておくことが重要だ。とくに,使われることが多いユニットの強弱関係や戦闘ボーナスは熟知しておきたい。苦手にしている文明があるときは,その文明の固有ユニットについても調べておくと,打開策が得られることがある。
では,攻めの戦略というか,大方針から考えてみよう。無条件で「得をする戦争」といえるのは,序盤に登場することがある蛮族都市を落とすことだ(厳密には戦争ではないが)。自文明の領土にすべき土地に蛮族都市があったら,できるだけ早めに落としてしまおう。資源などの不都合がない限り,自文明に組み入れてしまうのがよい。開拓者を作るターン数が省ける点でもお得である。逆に,他文明にその都市を入手されてしまうと最悪なので,この事態だけは避けるべきだ。
蛮族都市が弓兵で守られている状況でも,都市襲撃スキルをつけた斧兵が守備兵の数+2ユニット程度あれば,十分に攻め落とせる。十分な数のユニットがすぐに用意できない場合,弓兵を蛮族都市近くの,防御効果の高い地形に立て篭もらせておけば,勝手に敵が損耗してくれる。また,できれば蛮族相手の戦いでレベル4(スキル3種を取得)のユニットを作り,英雄叙事詩を建設できるようにしておくと楽になる。
「ライフリング」や「化学」近辺の技術ツリー。目移りするような重要技術が多いが,戦争に踏みきることを決めているなら,ライフル兵か擲弾兵に絞って開発を進めよう。「火薬」を取った後で「自由主義」を最初に取れば,その効果で「化学」を無償入手できることも考慮に入れたい
通常のAI文明相手の戦争では,最初に述べたように「その都市を得ることでどんな得をするか」を突き詰めて考えることが必要だ。以前の回でも述べたが,都市数は9〜12あれば宇宙船を飛ばすには十分である。都市数が7以下で先が厳しいとか,資源を確保する必要があるといった場合にだけ,攻めの戦争を構想すべきだろう。
都市攻略を目指す場合,システムが防御有利になっているため,戦いに勝つには,相手より1世代上のユニットを主力にすると確実だ。基本的なタイミングとしては,
- 軍用象(長弓兵/弓兵相手。斧兵との組み合わせ必須)
- 鎚鉾兵(長弓兵/長槍兵世代までが相手)
- 擲弾兵,ライフル兵(マスケット兵世代まで,あるいはライフル兵が相手)
の3パターンを覚えておきたい。もちろん,戦術的にはさらにほかのユニットを追加する必要があるが,それについては戦術編で詳しく触れる。戦略的に重要なのは,これらの主力を早期に得られるように,技術開発や資源確保を進めることだ。
このうち,擲弾兵で戦争を仕掛けたいなら,その前の鎚鉾兵を量産しておいてアップグレードしたほうが効果的である。というのも,鎚鉾兵(や,それ以前の斧兵・剣士)でユニット新造時に取得可能できる都市襲撃スキルは,擲弾兵では取れないからだ。
軍用象は,比較的早期に生産できて,戦闘力も8と強力だ。ただし,槍系の兵隊には弱く,都市襲撃スキルも取れないのが泣きどころ。これを補うため,斧兵,鎚鉾兵などの白兵系歩兵が必要になるケースが多いだろう
なお,序盤の都市攻略向けユニットとしては斧兵や剣士があるが,これらのユニットが作れるようになってすぐの戦争は,結果としておいしくないことが多い。その頃はまだ自文明の生産基盤も経済基盤も脆弱で,戦争に注力することが発展にとって大ダメージになることが多いからだ。もうしばらく(例えば軍用象が作れるまで)待って,体制を整えてからでも遅くはない。守りが薄く,都市数を増やしたがる傾向のあるAI(マンサ・ムサやワシントンが典型)が相手なら,例外として早期の都市奪取を狙える場合があるが,その場合でも戦争の長期化は極力避けたい。
また逆に,後の世代でも「都市を奪っても儲からない状況」が出てくる。例えば,戦車を敵より先に開発できると,圧倒的に有利な戦争ができるが,この時代ではすでに,新しい都市を十分成長させるターンが残っていない。戦争で他文明から奪った都市は,しばらくの間反乱状態になるうえ,都市経済圏も縮まってしまい,しばらくはお荷物に成り下がってしまうからだ。ただし,石油,アルミニウム,ウランといった,終盤重要になる資源を押さえている都市を奪いたい場合には,歩兵や戦車を使って戦争を仕掛ける意味も出てくる。
擲弾兵は,初めて10を超える戦闘力を持つユニットとして登場するものの一つ(技術開発ルートによってはライフル兵のほうが先になる)。対ライフル兵ボーナスを持つので,敵AIが守りの主力をライフル兵にしている間は有効に活用できる
最後に,都市攻略を目指さない「お得な戦争」について。そうしたケースとしてはまず,あまり友好的でなく,しかも戦力的にも格下の文明を相手にした宣戦布告を,自分に友好的な文明から請われるというのが挙げられる。この場合,友好度というメリットが戦争のデメリットに勝ることもあるのだ。そうしたときには,宣戦だけしておいて守りを固めてしまうとか,お座なりに余剰兵力を送って略奪を行う(後述)といった戦争をすればよい。ターン数が適当に経ったら講和して賠償金を獲得すれば,十分に儲けが出るだろう。また,都市攻略を目的とした戦争を起こし,必要な都市を取ってしまったあと,相手が講和に応じないときも,同様に考えればよい。
また,他文明に宇宙開発勝利されそうなときに,戦争を仕掛けてペースを落とさせる,といった非常手段もあり得る。もっとも,これは技術開発ペースが足りていない時点で,すでに戦略レベルのミスを犯していることになるわけだが。
続いて守りの戦略について。「究極の守り」とは,そもそも戦争を仕掛けられないことなので,まずはこの方針で考えてみよう。
そのために最も参考になるのは,F9キーで表示できる「情報画面」で「エネルギー」を選んだときに出てくるグラフだ。
なお「エネルギー」という表題は,以前に触れたとおり英語版の「Power」が誤訳されてしまったもので,これは各文明の軍事力(数と質の両方を反映したもの)を指している。このグラフで,最強国の6〜7割の値を維持していけば,多少関係が悪いくらいで宣戦されるような不幸はおおむね避けられる。まあもちろん,この程度なら平気で攻めてくる戦争マニアのAIも一部いるわけだが,もし侵略されてもこの水準の軍備があれば,たいてい余裕を持って撃退できる。
また,自国の経済が順調であれば,「他文明の侵略を思い留まらせるだけの軍備」で専守防衛に努めることが,経済的には最もお得になる。どこかで聞いたような話ではあるが,Civ4ではきちんと有効な戦略として機能しているわけだ。
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歴史全体の軍事力グラフ(左)と過去100ターンの拡大版(右)。実は,急激に戦力を増した徳川(右図の右4分の1くらいのところに注目)に戦争を仕掛けられ,平和協定を結んだばかりの状態だ。撃退には余裕で成功しているが,もう少し早く軍備を増強していれば,宣戦を招かなかったかもしれない |
旧式のユニットをアップグレードするには大きなコストが掛かる。だが,逆に資金さえ用意できれば,瞬時に軍事力を増強する手段にもなる。アップグレード対象は,個別か,特定の種類のユニットすべてか,スタックしたユニット内から選んだユニットだけ(画面)の,3種類から選べる
ユニットの質と量を保つためには,新規生産かアップグレードのどちらかを絶やさないようにする必要がある。筆者の場合,攻撃系のユニット(剣士/斧兵→鎚鉾兵→擲弾兵→歩兵)は,都市襲撃スキルのためにアップグレードする。その一方で防衛系の弓兵はアップグレードせず,新規生産ユニット(マスケット兵→ライフル兵)に置き換えることが多い。アップグレードはコストがかかるため,一気に多数のユニットを対象にするときには,一時的に技術開発予算を大きく減らして,国庫にお金を貯めてしまうのがよい。また,大商人で一気にお金が得られたときは,アップグレード予算に回すのがよいだろう。
新規生産でユニットを補う場合には,ある時点以後「最低1都市では,最新の軍事ユニットを作っている状態を保つ」とよい。火薬世代のユニットが登場するときが目安になるだろう。英雄叙事詩を作った都市がある場合,「原則的にこの都市では軍事ユニットを作り続ける」と決めてしまうと,プレイ上間違いが少ないと思う。
しっかりした海軍を持っていれば,資源を守れるだけでなく,敵増援の渡洋侵攻を絶つこともできる。上陸を許してから叩くより合理的だし,プレイ時間の短縮にもつながるので,水際といわず,水上で阻止/殲滅したいところ
なお,万一攻められたときのこともしっかり考えておくのは重要だ。攻めてきた敵を撃退できるように,少数でも砲兵系や騎乗兵系のユニットを作っておくことが必要になる。
海から資源を得ているマスについても,早い時期(可能ならガレー船の時代)から,船舶ユニットを上に置いて守りを固めておくのが望ましい。これは,水産資源への依存度が高かったり,石油を海洋油田に頼ったりしている場合にはたいへん重要になる。
次回は,ユニットごとの役割など,より細かなレベルでの戦術について解説しよう。