― プレビュー ―
MMORPGとしての水準をクリアしつつ,多彩な独自要素が盛り込まれた注目作
R.O.H.A.N
Text by 大路政志
2006年7月7日

※以下の記事は,2006年6月23日〜6月30日(第一次クローズドβテスト)でのゲーム内容をもとに制作しています。あらかじめご了承ください。

 

キャラクターデザインの質とモデリングの丁寧さは,韓国産MMORPGの中でもトップクラスといえそうだ

 「人と人とのつながり」をゲームシステムに組み込んだMMORPGとして,韓国だけでなく日本のオンラインゲームファンからも注目されていた「R.O.H.A.N」(ロ・ハ・ン)が,YNK JAPANとエキサイトの共同運営という形で,国内サービスされることになった。そして8月中に実施予定のオープンβテストに先立ち,6月23日から6月30日までの期間に,1万人規模のクローズドβテストが行われた。……などということは,本稿に目を通している人なら先刻承知のことと思う。しかし,1万人規模のクローズドβテストとはいえ,非常に注目度の高いタイトルだけに,テスター応募で落選してしまい,悔しい思いをしたという人も多いだろう。
 そこで今回は,先日行われたR.O.H.A.Nのクローズドβテストのプレビュー記事をお届けする。実際にクローズドβテストをプレイできなかった人や,8月に行われるというオープンβテスト(もしくは,それよりも前に行われる第二次クローズドβテスト)まで待ちきれないという人は,ぜひ本稿に目を通し,R.O.H.A.Nの実力の片鱗に触れてみてほしい。

 

 

■「実に丁寧に作られた」印象を受ける韓国産MMORPG

 

 R.O.H.A.Nは,GEOMIND Entertainment(現在はYNK Koreaの傘下で,YNK Gamesとなっている)が開発するMMORPG。韓国ではYNK Koreaによってサービスされており,エキサイトから2億円の投資を受けたり,正式サービス開始直後の初月売り上げが45億6000万ウォン(日本円にして約5億6000万円)を記録したり,RMT会社と提携してRMTを“表”の存在として扱ったり,画期的なBot対策に関する特許を出願したりと,さまざまな面で大きな注目を集めているタイトルだ(「こちら」に,YNK Koreaのユン・ヨン・ソク社長へのインタビュー記事を掲載しているので,興味のある人はぜひご一読を)。
 発表当時,同作は(韓国では)平凡なMMORPGと認識されており,「次期大作MMORPG」として脚光を浴びていた「Granado Espada」「ZerA」「SUN」などとは違い,どちらかといえば地味な存在だった。
 ところが,4回のクローズドβテストや5回の週末フロンティアテスト,フリーオープンテストといった準備期間を経てオープンβテストが開始されると,韓国人プレイヤー達が,「R.O.H.A.NのようなMMORPGを待ち望んでいたかのように」殺到。正式サービス後もその勢いをキープし続けている。

 

 さて,そんなR.O.H.A.Nだが,あまりMMORPGをプレイしたことがない人から見ると,「まぁまぁグラフィックスが綺麗な韓国産MMORPG」程度にしか映らないかもしれない。事実,グラフィックスは飛び抜けて綺麗なわけではない(「リネージュII」「ギルド ウォーズ」「SUN」あたりのほうが,グラフィックスの質は高い)し,操作系統も,基本的にマウス操作とファンクションキー/数字キーだけでプレイ可能な(今や韓国産MMORPGの代名詞ともいえる)クリックタイプである。
 「クリックゲー」と聞いただけで拒否反応が出てしまう,という人もいるかもしれないが,比較的長時間プレイすることの多いMMORPGには,クリックタイプの操作系統がそれなりに適していることも事実。さらに,ゲームに不慣れな人でも気軽にプレイできる「一般的/シンプル」な操作系統は,不特定多数のプレイヤーが同時にプレイするオンラインゲームでは,むしろ長所といってもいいだろう。などと言ってしまうと褒めすぎかもしれないが,ともあれ,「クリックゲーは絶対にプレイしたくない」という人以外には,親しみやすい操作系統であることは確かだ。

 

操作系統,画面レイアウト共にオーソドックスなので,MMORPGを遊んだことがある人なら,ある程度直感的にプレイできるはず

 プレイヤーキャラクターとしては,クローズドβテスト時点で,ヒューマン,エルフ,ハーフエルフ,ダンの4種族が実装されていた(選択は不可能だったが,第五の種族デカンの枠は用意されていた)。しかし,ヒューマン=ナイト,エルフ=ヒーラー,ハーフエルフ=アーチャー,ダン=アサシンという具合に,種族によって職業が固定されており,種族/職業選択の自由度はかなり低いといえる(キャラクターレベルを50にし,特定の条件を満たせば,各初期職業に2種類ずつ用意されている二次職業に転職できるのだが,今回のクローズドβテストでは未実装だった)。
 ゲーム内でも,「人間のヒーラーがやりたかった」「エルフはアーチャーになれないのか」などといった声がちらほら聞こえたし,武器/防具の多くには種族/レベル/能力値/階級といった装備制限がかかっているため,結果としてグラフィックスの変化に乏しい印象を受けてしまうのだ。このあたり,キャラクターや衣装のデザインが秀逸なだけに,残念に思った人が多かったようである。
 だが,キャラクターメイキング時に選択できるエディットパーツはなかなか豊富。とくに髪型パーツ/髪のカラーリングが(韓国製にしては)バラエティに富んでおり,作成したキャラクターとまったく同じ外見/髪色のキャラクターと出会う機会は,思いの外少なかった。
 ともあれ,グラフィックスは水準以上だし,キャラクターデザインのセンスも悪くはないので,パッと見の第一印象は非常に良好。グラフィックスを重視するMMORPGファンにとっては,まずプレイしてみようと思えるレベルの作品だと思う。

 

上段左:ヒューマン(ナイト)はいわゆるタンク職。基本的に防御力とHPが高く,パーティプレイの要ともいえる職業だ 上段右:エルフ(ヒーラー)は,4種族の中では唯一の,純粋なキャスタークラス。回復/補助魔法だけでなく,攻撃魔法のスキルを伸ばすことも可能だ 下段左:弓やクロスボウの扱いに長けたハーフエルフ(アーチャー)。やや非力だが,敏捷性と遠距離攻撃力が高い 下段右:攻撃速度が速く,強力なスキルを多く持つダン(アサシン)。打たれ弱いが,瞬間的な火力はかなりのものだ

 

 

■クローズドβテストならでは(?)のサクサク感が気持ちいい

 

 キャラクターを作り,実際にゲームをプレイしてみてまず感じたことは,やはりグラフィックス面の秀逸さだった。キャラクターデザインの良さは前述したし,画面写真を見てもらえれば明らかだろう。
 また韓国産の3D MMORPGの中には,グラフィックスはそこそこでも,キャラクターのモーションがギクシャクしている(というか不自然な)作品が少なくない。しかし本作の場合は,歩く,走る,攻撃する,呪文を詠唱する,挨拶する,踊るといったアクションが,しっかりとしたモーションで,比較的かっこよく(かわいらしく)作り込まれているので,キャラクターを操作していて「手触り」がいいし,白兵戦闘からも打撃感が感じられる。

 

キャラクターデザインやモーションがしっかりしているので,プレイしていてあまり不自然さを感じない。グラフィックス/サウンドエフェクトもなかなかのものだった

 

 また1万人規模のクローズドβテストであったにも関わらず,筆者のマシン/回線環境(CPU:Pentium 4 3.20GHz,メインメモリ:1GB,グラフィックスチップ:GeForce 6800 GT,グラフィックスメモリ:256MB,専用回線。グラフィックスオプションは,すべてHigh側に設定)では,深刻なラグや回線の切断,クリティカルエラーなどは発生せず,基本的に快適なプレイが楽しめた。さすがに露店が密集している街中や,テスト最終日に行われたボスモンスター討伐(筆者が参加した討伐では,20〜40人のプレイヤーキャラクターが集結)などでは,引っかかりや,動きがコマ送りになるほどのラグが生じたものの,グラフィックスオプションを落とせば,対応できないレベルでもなかった。
 ただし人(マシン/回線環境)によっては,通常プレイ時にクリティカルエラーが頻発したり,ゲームプレイに支障が出るほどのラグに悩まされたり,背景のテクスチャが崩れたりといった不具合もあったようだ。その点に関しては,運営側に積極的に情報を集めてもらい,正式サービスまでに適切な対応をしてほしいところ。もしそうした不具合が頻発したという人がいたら,公式サイトを通じて運営側に報告しておくといいだろう。

 

クローズドβテストの最終日に実施されたイベントの一コマ。数十人のプレイヤーキャラクターが「暗黒の支配者」というボスモンスターと戦っているエリアは,さすがにゲームがコマ送りになるほど,動作が重くなった

 

クローズドβテスト用にチューニングされたバランスなのだろうが,レベルがサクサク上がり,アイテムドロップ率も高い。パーティプレイ時には,敵1体当たりの取得経験値は下がるものの,倒すペースの早さと,パーティ用M-KILLシステムのおかげで,ソロよりも効率よく経験値が稼げる

 なお,筆者がプレイした感じでは,本作は一般的なMMORPGよりもキャラクターの成長が速く,あまりまとまったプレイ時間が取れない人でも,レベル10前後であれば1日,レベル30前後であっても,本気で(?)遊べば2,3日で到達できるようなバランスだった。約1週間のクローズドβテスト期間で,レベル30前後のキャラクターを育てられたという人は,かなり多いのではないだろうか(中には,レベル50オーバーのキャラクターを複数育てた猛者もいるようだ)。
 一定の数のモンスターを倒したときに,通常よりも多くの経験値が得られるというM.KILL(モンスターキル)システムの存在や,各種クエストをクリアしたときに得られる経験値が非常に多いこと,パーティプレイの取得経験値効率がいいことなど,ちょっとしたプレイスタイルの工夫で成長効率がアップする点は,プレイヤーにストレスを与えない,いいゲームデザインだと感じた。アイテムのドロップ率が非常にいいところも,一般的なMMORPGの「マゾさ」に慣れている人にとっては,気持ちのいいバランスだったのではないだろうか。
 が,しかし。そのゲームバランスは,あくまでクローズドβテスト用のチューニングによるものかもしれない。近日中に行われるという第二次クローズドβテストや,その後のオープンβサービスでは,取得経験値/ゲーム内通貨,アイテムのドロップ率などに,多少の下方修正が加えられるはずである(正式サービスではほぼ確実に修正が入るだろう)。ある程度の下方修正を受けたR.O.H.A.N本来のゲームバランスが,プレイヤーに強いストレスを与えるほどの「マゾさ」でなければいいのだが……。

 

 

まだまだ未実装のものも多いが,
ユニークなシステムが満載

 

 R.O.H.A.Nの前評判が高かった理由は,センセーショナルなニュースや美しいグラフィックスだけではない。本作には,現状のMMORPGというジャンルが持つ宿命的な問題点を解決せんとする,意欲的なシステムが多く盛り込まれているのだ。
 今回のクローズドβテストでは,タウン建設システムやキャラクターの二次転職など,未実装の仕様も少なくなかったのだが,通常のプレイを楽しむための要素は一通り導入されていた。ここでは,本作の特徴的なシステムをいくつか紹介していこう。

 

●戦闘システム周辺のシステム

攻撃速度の高い武器を装備していると,白兵戦闘の爽快感はかなりのもの。ただ,カメラ視点の仕様に難があるのか,ズーム状態でノックバックしすぎると,キャラクターが画面から外れてしまうことも

 前述したように,R.O.H.A.Nの基本戦闘システムは,一般的なクリックタイプのアクションRPGと同様,実にシンプルなものだ。しかし敵に攻撃を命中させたときにノックバック効果が発生する。攻撃力は高いが攻撃速度の低い斧/スタッフ(杖は魔法武器だが)などを装備するよりも,攻撃速度の速いダガー/カタールを装備しているほうが,相手をより「押せる」。各種族ともに,攻撃モーションのバリエーションがそこそこ豊かなので,誰でも打撃感溢れる,気持ちのいい戦闘が楽しめるというわけだ。
 とはいえ,同様のシステムが導入されている「DEKARON」のノックバックよりも実効は弱く,猛ラッシュをかければ反撃を受けない,ということはないので,ノックバックそのものの戦術的な意味合いは低いといえるだろう。

 

●キャラクターの成長に関するシステム
 本作のキャラクター成長システムは,RPGファンには馴染みの深い,レベル制/スキルツリー制である。レベルごとに定められた経験値が貯まるとキャラクターレベルが上がり,各種能力値を強化するためのPOINTと,スキルを習得/強化するためのSKILLPOINTが得られる。
 能力値には力/体力/知力/敏捷性/精神力/瞬発力という一次項目があり,それらの数値が増減するごとに,近接攻撃力や,回避率,魔法防御力といった二次項目も増減していく。一次項目/二次項目ともに,装備アイテムによるブーストが可能になっており,同じ種族/職業のキャラクターでも,さまざまな成長ルートが楽しめる。
 スキルに関しては,種族/職業ごとにツリー構成が異なっており,各種族に2種類ずつ用意されている二次職業(レベル50で転職可能。今回のテストでは未実装)専用のツリーも存在する。各スキルはレベル1からレベル6まで強化できるのだが,SKILLPOINTを用いて強化できるのはレベル5までで,スキルを最大まで強化するには,「スキル強化石」というレアアイテムが必要になる。
 能力値/スキルともに,プレイヤーが任意に成長させられるので,ステータス面での個性はかなりアピールできる仕様といえるだろう。また装備による能力値ブーストや,スキル強化石を用いたスキル強化なども,POINT/SKILLPOINTが有限であるため,奥の深い成長要素として取り組めるはずだ。

 

基本はレベル制だが,レベルアップ時に得られるPOINT/SKILLPOINTを用いて,バリエーション豊かなキャラクターが育てられる。未確認だが,割り振ったPOINTをリセット/再配分するためのアイテムもあるようだ

 

●モンスターキル(M-KILL)システム

モンスターの20匹や40匹なら,それほどまとまった時間がとれなくても退治できる。プレイヤーに「少しでも狩りをしよう」と思わせる,いいシステムだ

 これに関しては先ほども少し紹介したが,モンスターを一定数倒したときに,通常の何倍もの経験値が得られるというシステムだ。M-KILLカウントはHP/MPの情報などと同じく常に表示されており,最初は20匹目のモンスターを倒すと,そのモンスターが通常くれるはずの7倍もの経験値が獲得できる。以降,40匹目で10倍,60匹目で13倍,80匹目で16倍,100匹目で19倍,といった具合になっている。M-KILLカウントはゲームからログアウトするとリセットされるので,わずかなプレイ時間でもその恩恵が受けられる。MMORPGはダラダラとプレイしてしまいがちなジャンルだが,これは「落ちどき」を計るシステムとしても秀逸だ。もっとも筆者の場合,「次のカウントが貯まるまで,もう少し狩りしちゃおうかな」などと,逆に落ちどきを逸してしまうこともあったわけだが……。

 

●アイテム合成システム
 本作ではNPCを通じて,比較的気軽にアイテム合成が楽しめる。アイテム合成には武器合成と防具合成(よりシンプルなポーション合成もある)があり,同じ種別の一般アイテム(もしくはオプション効果のあるマジックアイテム)を組み合わせることで,オプション効果を継承させたレアアイテムが作成できるのだ。また,特定のレアアイテムを組み合わせることで,さらに強力なユニークアイテムも作れる。合成するときに,さらなるオプションが付与できる強化アイテムをプラスすることもでき,キャラクター強化の軸となるシステムである。
 ただし,合成には一定の費用がかかり,合成後にできるアイテムの質が高ければ,費用も高くなる。また合成は必ずしも成功するわけではなく,失敗した場合には,合成に用いたアイテムは消滅してしまう。いわゆる「神器」を作ろうと思ったら,弱いマジックアイテム/レアアイテムを用いて何度も合成を繰り返す必要が生じるので,最終的な合成成功率はかなり低くなる。ギャンブルとしての熱さは推して知るべし,といったところだろう。
 また「神器」を作りたいならば,ゲームの序盤で入手できるような「合成の材料となる」武具を,キャラクターレベルが高くなってもキープしておく必要がある。とはいえ,キャラクターレベルが高くなると,弱い敵からのドロップ率が非常に悪くなるため,戦闘を通じて入手するのは難しい。NPCショップで,いいオプションが付いている武具を引き当てるまで買い続けるか。それとも比較的レベルの低い結束キャラクターに入手してきてもらうか。または,材料となるアイテムを入手するための新規キャラクターを育てるか(そんなわけで,同一アカウントのキャラクターで共有できる倉庫は,合成用武具で一杯になる)。いずれにしても,このアイテム合成システムを有効活用したいなら,「いらない武具はない」のである。これは,ゲーム内経済やゲーム内コミュニティにも,少なからぬ影響を与える(レベルの低いキャラクターが入手した武具を切実に欲しがっているのは,ゲーム内通貨をたくさん持っている高レベルキャラクターかもしれないのだ)。単に「神器」を作り出すためのミニゲームとしてだけでなく,ゲーム世界に活気を与えるシステムとしても,機能していきそうだ。

 

いいオプションの付いた武具は保管しておき,アイテム合成に利用するのが基本。合成に成功すれば,オプションの継承されたレア/ユニークアイテムが完成する。低レベルのキャラクターでも利用できて恩恵が受けられるシステムなのが嬉しい

 

●レベルダウンエンチャント(LDE)システム

レベルアップ時に得られるPOINTをある程度残しておけば,能力値制限のかかった装備でもある程度は対応できるが,能力値の振り分けにこだわりを持っている場合,そうそう無駄なPOINTを振るわけにもいかない。そんなときには,このステータスダウンエンチャントの出番だ

 R.O.H.A.Nの装備アイテムには,種族/キャラクターレベル/能力値/ランクなどの装備制限があり,職業的には装備可能な武具でも,実際に必ず装備できるというわけではない。レベルダウンエンチャント(LDE)システムとは,NPCに一定の費用を支払って,その装備制限を緩和してしまおうという仕様だ。
 例えばヒューマン(ナイト)であれば,力や体力といった能力値を優先しがちで,知力や精神力を高めることは一般的ではない。なので,装備制限として高い知力や精神力が要求された場合,貴重なPOINTを,あまり重要ではない能力値に振るわけにもいかないのだ。そういったときに活用できるのが,このLDEシステムなのだ。
 より正確にいうと,LDEは,文字どおりレベル制限を緩和するためのシステムのみを指す。能力値制限を緩和するのはステータスダウンエンチャント,ランク制限を緩和するのはランクダウンエンチャントとなる。上述の例では,ステータスダウンエンチャントを活用することになるわけだ。
 これは,あまり成長していない友人などに,強い武具をプレゼントしたい場合などにも活用できるが,合成システムと同様,必ず成功するわけではない。失敗すれば高額な費用が無駄になるなど,リスクも生じる。とはいえ,その実用性は極めて高いので,アイテム合成システムと同じくらい重要なシステムといえるだろう。

 

●ソリダリティシステム

結束構成は随時確認できる。ランクを上げるために,ボーナスゲーム内通貨を得るために,そしてなにより,より強固なコミュニティを構築するために,構成員それぞれが,積極的に「勧誘」を行う必要性がある

 ソリダリティシステムは,R.O.H.A.Nの象徴ともいえる「結束」システムのことだ。自分と同レベル,もしくはより高レベルなプレイヤーキャラクターに結束の申し入れをし,それが受け入れられれば結束が結べる。結束を結んだ時点で,キャラクター間には上下関係が生じ,申し込んだ側が,受け入れた側の下位に所属することになる。
 一人が直接結束を結べるのは5人までだが,自分の下位に属する5人が,それぞれ5人までの結束を結べるし,そのさらに下位の5人も,それぞれ5人までの結束を結べるわけだから,結束内の上下関係が発展していけば,巨大なピラミッド型のコミュニティが生まれるわけである。なお,自分よりも下位のメンバーが増えるに従い,自分のランクが上昇していき,ランク制限のあるアイテムが装備しやすくなるといったメリットがある(それ以外のメリットも,今後どんどん実装されていきそうだ)。
 もちろん,この上下関係にはさまざまな意味がある。まず結束同士でパーティを組んだ場合,下位のプレイヤーキャラクターは,上位が経験値を得たときにボーナス経験値が得られることがあり,逆に上位のプレイヤーキャラクターは,下位が得たゲーム内通貨の数%を,自動的に獲得できる。面白いのは,ボーナス経験値/ゲーム内通貨は,本来得る側からマイナスされるわけではなく,結束システムによって発生するので,誰も「損はしない」というところ。

 

 とはいえ,結束を結べば誰もが「得をする」のかと問われると,クローズドβテスト時の様子を見た限りでは,首をかしげざるをえない。確かに,ゲーム内で人間関係を構築することに,具体的なメリットを付与しているわけだから,普段はソロプレイばかりしている人でも,「ちょっと結束してみようかな」という気にはなる。
 だが,ゲーム内世界で時間が経ち,大小さまざまな結束が生まれている状況を想像してみよう。結束の頂点付近にいるキャラクターは,多くの下位メンバーから莫大な利益が得られる。下位メンバーの勧誘が熱心なら,上位キャラクターのランクも相当高くなっているだろう。
 しかし結束のピラミッドの底辺にいるキャラクターは,新規プレイヤーを勧誘しなければ上位になれない。クローズドβテスト開始直後ならばまだしも,βテスト終了間際では,大抵の人はすでに結束に入っているわけだから,新人勧誘が非常に難しい(βテストのクローズド/オープンを問わず,程度の差こそあれプレイヤー数は有限だ。また誰かのサブキャラクターと結束しても,頻繁にパーティを組めるほどのアクティブユーザーでなければ,結局ボーナスは得られない)。つまり,底辺のほうにいるメンバーは,ランク上げが非常に困難なので,言い出しっぺ(先行者)とその周辺に,メリットが集中してしまうというシステムなのだ。
 当然,結束以外にも,より大規模な「ギルド」という単位も用意されており,ソリダリティシステムが本格的に稼働し出したら,ゲーム世界の人間関係/組織図は非常に興味深い様相を呈するだろう。若干「生々しい」印象を受けるシステムではあるが,アクティブ率の高い友人同士を軸に結束を構築していけば,なかなか面白いコミュニティとして機能しそうだ。今後も目が離せない。

 

●リベンジPvPシステム

暗殺種族ダンが集まると,ほぼ間違いなく対人戦がスタートしていた。リベンジPvPシステムは,ソリダリティシステムが本格稼働するオープンβ以降に真価を発揮しそうだ

 R.O.H.A.Nでは,自分も相手もレベル30以上であれば,PvP/PKが行える。各キャラクターはPvPポイントを5点持っており,PvPに勝利するたびに1点ずつポイントが減っていく。そしてPvPポイントが0点になると,キャラクターは殺人者(赤ネーム)状態になり,ほかのキャラクターや警備兵NPCなどから攻撃を受けやすくなるのだ。もちろん,赤ネーム状態で死亡すれば,経験値やアイテムドロップなどのペナルティが生じるので,そうそう気軽にPKを楽しめるというわけではないのだが。
 とはいえ,「アサシンモード」になれば,キャラクター名を隠してフリーPKが可能になるダン種族の中には,ロールプレイとして(?)積極的にPKをしかけてくる人もいるだろう。R.O.H.A.NでのPKはゲームの仕様なので,まったく問題のない行為ではあるが,対人戦が好きではない人が,理由もなしに何度もPKされてしまったら,ゲームを楽しむ気も失せてしまうかもしれない。
 しかし本作では,PVP/PKの勝敗結果がリベンジリストに記録され,対人戦で敗れてしまっても,リベンジリストを通じて,自分を殺した相手がどこにいるのかを自由に確認できる。またリコール機能を利用すれば,その相手のいる場所まで瞬時に移動できる。リコール機能はパーティ単位での移動も可能なので,「どうしても復讐したい!」という相手がいる場合,結束やギルドの仲間に相談して,借りを返すことができるわけだ。
 筆者はPKをしたことも,されたこともないので,リベンジPvPシステムの善し悪しを語るわけにはいかないが,このシステムは「神出鬼没の無差別PK」に対する対抗手段になりうるはず。PKが許容されているMMORPGにしては,被害者が泣き寝入りするケースが減少するのではないかと考えているのだが,逆に,PK側のメリットは薄くなるような気もする(メリットが薄ければPKそのものが不活性化し,リベンジPvPシステムの意義も薄れてしまう)。ソリダリティシステムと同様,こちらももう少し調査してみる必要がありそうだ。

 

 なお,今回のクローズドβテストでは未実装だったが,フィールド上に城ややぐらを配置し,最終的には街を建設できるという「タウン建設システム」が,将来的に導入されるようだ。いずれは,プレイヤー達が築いた街や城を舞台とした「攻城戦」も盛り込まれるそうなので,対人戦好きなMMORPGプレイヤーなら,ぜひ注目していきたいところ。
 また,各種族に対応した騎乗生物(馬やユニコーンなど)の実装や,ペットシステムのアイデアも,形になりつつあるという。これだけ大小さまざまなシステムが用意されていれば,長い間,飽きずに楽しめそうである。

 

 

R.O.H.A.Nの真の実力は,
オープンβテスト以降に明らかになる?

 

 一体R.O.H.A.Nのどこに,成功の秘訣があるのだろうか? そしてその魅力は日本でも通用するのだろうか? それは,今後行われる第二次クローズドβテスト/オープンβテストを通じて,プレイヤー自身が感じ取り,判断すべきことだろう。しかしYNK Koreaの発表によると,第一次クローズドβテストの参加率は80%にも達しており,公式サイトのアンケートでは,「R.O.H.A.Nの今後の展開に興味がありますか?」との問いに対し,90%以上のプレイヤーが「とても興味がある/興味がある」と答えている。少なくとも9000人以上のプレイヤーが,本作を継続してプレイしたいと考えているのだ。
 ちなみに筆者も,今回のクローズドβテストに参加してみて,「もう少しプレイしてみたいな」と思える魅力を,本作から確かに感じた。ソリダリティシステムや対人戦周りの仕様に関しては,十分に検証できなかったものの,MMORPGとしての遊びやすさに関しては,確実に「水準以上」のクォリティだといえる。
 第二次クローズドβテスト以降,取得経験値量が多少下がって「マゾく」なったとしても,アイテム合成システムやLDEシステムなどのありがたみがより際立ち,逆にゲーム性が増す可能性もある。とにかく本作は,ゲームの随所で「キャラクターが強くなっている」という実感が得られるデザインなので,多少レベルアップのペースが落ちても,あまり停滞感を感じないような気がするのだ。そういった意味では,MMORPGの単調さやマゾさに拒否反応を起こしてしまうという人にも,ぜひ一度プレイしてもらいたいものだ。

 

 より多くのプレイヤーが参加し,より複雑な人間関係が出来たとき,ゲーム世界にどのような混乱が生じるのか。またゲーム内のさまざまな利権を求め,プレイヤー達はどのような結束を構築し,どのようなプレイスタイルを採るのだろう。これほど「ゲーム内世界の動向」が気になるMMORPGに出会ったのは,久しぶりである。次にログインできる日が,実に待ち遠しい。

 

 

タイトル R.O.H.A.N
開発元 YNK GAMES 発売元 YNK JAPAN
発売日 2006/11/01 価格 基本無料
 
動作環境 OS:Windows 2000/XP(+DirectX 9.0c),CPU:Pentium/1.8GHz以上,メインメモリ:512MB以上,空きHDD容量:3GB以上,グラフィックスチップ:GeForce FX以上

(C)2005-2006 YNK GAMES INC.ALL RIGHTS RESERVED.
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