レビュー :Razer Barracuda AC-1 Gaming Audio Card

遅れてきたRazer初のサウンドカードは,ゲーマーにとって意味があるのか

Razer Barracuda AC-1 Gaming Audio Card

Text by Jo_Kubota
2007年2月14日

 

Razer Barracuda AC-1 Gaming Audio Card
メーカー:Razer
問い合わせ先:RazerSupport
実勢価格:3万円前後(2007年2月14日現在)

 2006年3月15日の記事でお伝えしてから約11か月。Razer初のサウンドカード「Razer Barracuda AC-1 Gaming Audio Card」(以下Barracuda AC-1)がようやく店頭に並んだ。2007年2月14日時点で,販売代理店による国内発売のアナウンスはないため,入手するには並行輸入版に頼るほかないが,2006年秋に登場した「Razer Barracuda HP-1 Gaming Headphone」(以下Barracuda HP-1)と合わせて,Razerのサウンドデバイスシリーズ「Razer Barracuda Integrated Audio System」が,これでひとまず出揃ったわけだ。

 

 今回4Gamerでは,独自に並行輸入版を入手した。ゲーマー向けデバイスメーカーが作るサウンドカードがPCゲーム環境に何をもたらしてくれるのか,そしてそもそも,Barracuda AC-1とはどんな特徴を持つ製品なのかを,明らかにしてみたいと思う。

 

 

アナログ出力段は「AK4396」×4が中心
意外にも(?)クセのない作り

 

 Barracuda AC-1は,「Passive EMI shield」と名付けられた金属製のカバーによって,アナログ出力段――サウンドチップと外部インタフェースの“間”という理解で構わない――が覆われているのが,外観における最大の特徴だ。
 Passive EMI shieldは,グラフィックスカードなど,Barracuda AC-1以外のデバイスによる電磁波の影響を最小限にして,アナログ入出力音質を向上させるものとされている。固定はスチール製のネジによってなされており,メーカー保証外の行為にはなるものの,着脱自体は容易である。

 

 というわけで取り外してみると,サウンドカードとしての特性はおよそ見えてくる。サウンドチップで処理されたデジタルデータをアナログ波形に変換するD/Aコンバータは旭化成マイクロシステム製の「AK4396」。2chの24bit/192kHzサンプリングに対応し,チップレベルのS/N比は120dBとなる製品で,これを4個並列で搭載することにより,アナログ7.1ch出力を実現している。RazerはBarracuda AC-1のS/N比を117dBと謳っているが,相応の根拠はあるといえそうだ。

 

 マイク入力したアナログ音声をデジタルへ変換するA/Dコンバータは,Wolfson Microelectronics製の「WM8785G」で,こちらはS/N比 110dB。Razerの刻印がなされた「RZR 1532」という型番のチップもあり,その用途は不明だが,場所などから考えるに,ヘッドフォン接続用のヘッドフォンアンプではないだろうか。

 

4連のAK4396(左の写真)のすぐ隣には,新日本無線製のオペアンプ(OPAMP)「4580」を中心としたブロックが四つ設けられている

 

特殊なケーブルを用意しなくてもアナログ7.1ch出力が行える

 外部インタフェースはシンプルで,光角形入出力各1のほかは,「Razer HD-DAI」と名付けられた端子が設けられているだけである。記憶力のいい読者は,Barracuda HP-1がDVI-I端子によく似たこのRazer HD-DAIを採用していたのを憶えているかもしれないが,これを利用することで,Barracuda AC-1と同HP-1を直結させて,スマートに利用できるというわけだ。
 ただし,このままではBarracuda HP-1以外を接続できないため,製品ボックスにはアナログ7.1ch+マイク入力を実現する変換アダプタが付属している。本稿では以後,この変換アダプタを利用してテストを行っていく。

 

Razer HD-DAIを採用するため,外部インタフェースは非常にスマート。一方,内部接続用インタフェースは,光学ドライブとのアナログケーブル入力と,AUX入力,AC’97準拠と見受けられるフロントパネル接続用が設けられているが,まあ,最近のゲームで使われることはまずない

 

 

サウンドチップ「Razer Fidelity」の正体は「CMI 8788」
CMI 8788の基本機能をRazerのUIで操作

 

Razer Fidelityチップ。型番は「RZR 35192」とされている

 Barracuda AC-1が搭載するサウンドチップは同社オリジナルの「Razer Fidelity」だ……と言われて納得する人はほとんどいないだろう。どれだけ売れるか分からないサウンドカードのために,独自にサウンドチップを開発製造するというのは現実問題としてあり得ない。

 

 ドライバをインストールしてみると,デバイスマネージャでは「Razer Barracuda AC-1 Gaming Audio Card」となった。そこでハードウェアのプロパティを見てみると,「DEV_8788」とあった。“8788”といえば,C-Media Electronics(以下C-Media)の「Oxygen HD CMI 8788」(以下CMI 8788)が思い浮かぶ。

 

デバイスマネージャからは製品名のとおり認識されるが,プロパティを開いて「詳細」タブ以下を見てみると,DEV_8788という型番が表示されている

 

Razer Barracuda Driver Configの起動直後。ソース別のボリューム設定部で,文字化けが2か所発生している

 以上を踏まえて,Barracuda AC-1の機能を見ていこう。まずは専用コントロールパネル「Razer Barracuda Driver Config」からだが,これは,一目でそれと分かる,Razerテイスト溢れるものになっている。
 Razer Barracuda Driver Configのメインウインドウではスピーカーの出力設定やソース別のボリューム設定,光デジタル出力(S/PDIF)出力設定などが可能だ。文字やボタンが小型で非常に分かりづらく,設定しにくいため,慣れが必要というあたりもRazerらしい。

 

光デジタル出力設定周りのプルダウンを表示したところ

 しかし,光デジタル出力設定に関するプルダウンメニューを開くと,「Razer Fidelity=C-Media製サウンドチップ」という雰囲気がぐっと高まる。純粋なサウンド出力だけではなく,「Dolby Digital Live」や「DTS Interactive」のリアルタイムエンコードを可能にする選択肢が姿を見せるからだ。
 さらに,Razer Barracuda Driver Configメインウインドウの右上部にある「modes」をクリックすると「Razer 3D 720°Audio Engine」のサブメニューが開く。Razer 3D 720°Audio Engineは,Razer独自の3Dポジショナルサウンドエンジンという触れ込みだが,ここで注目したいのは,「Dolby Pro Logic IIx」のロゴが見えること。Dolby Pro Logic IIxに関しては後述するが,2007年2月時点で,これらをすべてサポートするPC向けサウンドチップは,筆者の知る限りCMI 8788しか存在しない。

 

これはもう一つのサブメニュー「advanced」も開いたところ。advancedサブメニューはいわゆるイコライザ関連という理解で問題ない。ちなみに,一望するには1280×1024ドット以上のディスプレイ解像度が必要だ。ちょっと大きすぎである

 

Barracuda AC-1(上)とX-Meridian 7.1(下)で,搭載するサウンドチップを比較してみた

 念のため,CMI 8788を搭載するAuzentech製サウンドカード「X-Meridian 7.1」(国内未発表)とサウンドチップを比較してみると,チップパッケージのサイズやピン数はまったく同じだった。

 

 以上の状況証拠をもとに,Razer Fidelity≒CMI 8788として,表1に機能をまとめてみた。「CMI 8788」(Auzentech「X-Plosion 7.1 DTS Connect」)および「X-Fi Xtreme Fidelity」(Creative Technology「Sound Blaster X-Fi Digital Audio」と比較しているが,CMI 8788と比較してみると,Direct3D Soundのバッファ数が倍増されたこと,アナログ/デジタル出力ともに7.1ch出力が可能になっているのが,大きな変更点といえる。
 EAXは当然のことながら2.0までの対応。ゲームとは関係ないが,CMI 8788がサポートするASIO入出力を,Barracuda AC-1はサポートしていなかった。

 

 

 

ゲーム用途で予想以上に効果のある
Dolby Pro Logic IIx

 

 Barracuda AC-1(というかCMI 8788)が持つ機能のうち,最も注目に値するのが,先ほど軽く触れたDolby Pro Logic IIxのサポートだ。
 これはその名のとおり,オーディオ技術開発会社として知られるDolby Laboratoriesによるもので,簡単にいえば,2ch〜5.1chのサウンドソースを,7.1chに変換(=アップミックス)するもの。「そんなことしなくても,Windowsのミキサーからマルチスピーカー設定を行えば5.1chでも7.1chでも出力できる」と思うかもしれないが,それだとすべてのスピーカーから同じ音圧で出力され,単に音量が上がっただけになる。対してDolby Pro Logic IIxでは,エコーやリバーブや音量調整などによって,自然なサラウンド感が得られるように処理されるのである。

 

Dolby Virtual SpeakerやDolby Pro Logic IIxのアイコンをクリックすると,アイコンの周りが緑色になって有効化される。Dolby Pro Logic IIxの設定には「Movie」と「Music」があるが,ゲーム用途では後者が向いている印象だ

 ここに,バーチャルサラウンド環境を提供する「Dolby Virtual Speaker」を組み合わせると,「2chソース→Dolby Pro Logic IIxで7.1ch化→Dolby Virtual Speakerでバーチャルサラウンド」といった処理も可能になる。2台1組の一般的な2chスピーカーシステムを使って,7.1chスピーカーシステムのようなサラウンドサウンド環境を提供(しようと)してくれるものと理解すると,Dolby Pro Logic IIx&Dolby Virtual Speakerはぐっと身近に感じられるのではないだろうか。

 

 実際にDolby Pro Logic IIx&Dolby Virtual Speaker処理したサウンドを2chスピーカーシステムへアナログ出力して聴いてみると,「GTR 2 - FIA GT Racing Game」(以下GTR2)のようなレースシムでは,ドライバービューを選択したときに,エンジンノイズやライバル車のエキゾーストノイズが,臨場感を持って再現される。
 Dolby Virtual Speakerだけでも音のワイド感は出てくるが,Dolby Pro Logic IIxを有効にすると,上下空間の広がりが出て,さらにDolby Virtual Speaker単独では沈みがちだったフロントセンターの音がはっきりする効果も感じられた。いったん有効にしてしまうと,Dolby Pro Logic IIxを無効にしたら味気なさを感じてしまうほど効果は高い。EAX ADVANCED HD非対応タイトルのサラウンド感表現能力は,Sound Blaster X-Fiより上かもしれない。

 

 ただし,向き不向きもあるようで,FPSをいくつかプレイしてみると,空間が広がりすぎてしまって,マルチプレイ時には仲間や敵の位置を把握しにくくなる傾向がある。雰囲気のためのサラウンドサウンドではなく,情報としてのサラウンドサウンドでは,Sound Blaster X-Fiのほうが明らかに上といった印象だ。

 

メインウインドウ中央上部の「Analog Output」で「Headphones」を選択すると,modesからDolby Headphoneを有効化できる。なお,画面左下には「Razer ESP」というサラウンド環境設定項目があるが,これはスピーカー/ヘッドフォンを問わず,ほとんど効果が感じられなかった

 Sound Blaster X-Fiの話が出たので,少々脱線気味に続けると,Barracuda AC-1は,バーチャルサラウンドヘッドフォン技術「Dolby Headphone」にも対応している。しかし,Dolby Headphoneは,そもそも音楽や映画向けの技術であるためか,「雰囲気のためのサラウンドサウンド」が強くなり過ぎ,上下空間が潰れてしまって,Sound Blaster X-Fiの「CMSS 3DHeadphone」の後に聴くと,違和感が拭えない。2chステレオヘッドフォン主体の使い方を考えているなら,Sound Blaster X-Fiを選ぶべきだろう。
 今回はテストしていないが,Dolby HeadphoneよりもDolby Pro Logic IIx&Dolby Virtual Speakerのほうが優れているという理由で,RazerはRazer Barracuda HP-1をリアルサラウンドヘッドフォンにしたのかもしれない。

 

Analog OutputからHD-DAIを選択するとRazer Barracuda HP-1専用設定を行える

 

 なお,CMI 8788では,CMI 8770から引き続き,サラウンドサウンドをリアルタイムにデジタルストリームへエンコードして,デジタルケーブル1本で送信できるDolby Digital LiveやDTS Interactiveをサポートしており,Barracuda AC-1も対応している。両機能の詳細は「HDA X-Plosion 7.1 DTS Connect」のレビュー記事を参照してほしいが,両機能に対してもDolby Pro Logic IIxは併用できるので,結果として7.1chストリームの出力が可能だ。デジタルエンコード時にも,Dolby Pro Logic IIxによるサラウンド感の向上効果は十分感じられたことを付記しておきたい。

 

 音質に関しても簡単に触れておこう。
 アナログ出力の音質は,ベタ褒めできるほどではないものの,Sound Blaster X-Fi Digital Audioに遜色なく,S/N比117dBという謳い文句もまんざらではないと感じた。
 Barracuda AC-1のメリットを享受するためには,それなりのスピーカーシステムやAVアンプなどが必要になるが,最も低コストで済ますなら,出力10W以上のスピーカーを用意すべきだろう。このクラスであれば,Dolby Pro Logic IIx&Dolby Virtual Speakerによる,臨場感のアップを体感できるはずだ。

 

 

オンボードサウンドやSound Blaster X-Fiと
ゲームのフレームレートを比較

 

Barracuda AC-1は動作中,緑色LEDが点灯して,Passive EMI shieldの側面が光る

 言うまでもないことだが,さまざまなサウンド処理はCPUリソースを要求する。機能的に優れていても,フレームレートが大きく下がって,ゲームにならないようでは意味がないため,どの程度の負荷になるかは気になるところだ。とくに,サラウンド環境面では効果のあったDolby Pro Logic IIxがどれだけパフォーマンスに影響するのかはチェックしておきたい。

 

 今回は,Barracuda AC-1のほか,Sound Blaster X-Fi Digital Audio(グラフ中ではX-Fi DAと表記)と,4Gamerのハードウェアレビューにおける2007年2月時点のリファレンスマザーボード,「P5B Deluxe」が搭載するAnalog Devices製のHigh Definition Audio CODEC「AD1998B」(以下ブランド名であるSoundMaxと表記)を用意したので,3製品を比較してみたいと思う。
 テスト環境は表2のとおり。テスト環境を統一するため,Windows XPの「サウンドとオーティオデバイスのプロパティ」から「スピーカーの設定」にある「詳細設定」を「ステレオヘッドホン」に固定している。2chのスピーカーシステムと負荷は変わらないはずだ。
 Sound Blaster X-Fi Digital AudioはCMSS-3DHeadphoneを有効にした一方,イコライザや「X-Fi Crystalizer」,「EAX Effects」は無効化している。SoundMaxは,一切のエフェクトを無効化した。

 

 Barracuda AC-1については,アナログ出力時にはエフェクトやDSPなどすべて無効化したデフォルト状態のほか,Dolby Virtual Speaker(グラフ中ではDVSと表記)とDolby Pro Logic IIx(同PLIIx)を両方とも有効化した状態でもテストを行った。デジタル出力時は,Dolby Digital Live(同DDL)とDTS Interactive(同DTSi)のリアルタイムエンコードを有効化し,それに加えてそれぞれDolby Pro Logic IIxを適用した状態でもフレームレートを計測することにしている。

 

 

 

リアルタイムエンコードの負荷はやはり高いが
Dolby Pro Logic IIxは十分使えるレベル

 

 というわけで,ベンチマークスコアを見てみよう。「3DMark03 Build 3.6.0」(以下3DMark03)に用意されている「Sound Tests」のテスト結果をまとめたのがグラフ1だ。
 ここでは,音なし(No Sounds)と,24音(24 Sounds)もしくは60音(60 Sounds)で,フレームレートの違いを見ることになる。3DMark03のSound Testsはブレが少ないので,3fps程度の違いがあれば,ある程度の傾向は予測できる。

 

 結果は,Sound Blaster X-Fi Digital Audioが抜け出した格好だが,Barracuda AC-1について見ていくと,音数が増えるに従って,サウンド処理の負荷がペナルティとなっているのが分かる。とくに,Dolby Digital LiveやDTS Interactive有効時の落ち込みが大きい。また,アナログ出力時のDolby Pro Logic IIx&Dolby Virtual Speaker併用も,それなりのフレームレート低下をもたらすようだ。
 なお,SoundMaxのスコアがN/Aとなっているのは,計測できなかったためだ。

 

 

 サウンド負荷によるCPU使用率を計測できる,「RightMark 3DSound 2.3」(以下RightMark 3DSound)で,Direct3D処理時のCPU使用率をスコアとして測定したのがグラフ2である。縦軸がパーセンテージ,横軸が同時発音数。縦軸は分かりやすさを重視して,上限を15%に指定してあるので,注意してほしい。また,SoundMaxのスコアはここでも取得できなかった。

 

 Sound Blaster X-Fi Digital Audioを基準に見てみると,Barracuda AC-1のCPU負荷は32音まで互角,63音以上では低いCPU使用率となった。「Sound Blaster X-Fi Xtreme Gamer」のレビュー記事中でも述べているが,CPUパワーが十分にある場合は,純然たるハードウェア処理のX-Fi Xtreme Fidelityチップよりも,かなりの部分をソフトウェア処理するサウンドチップのほうが有利になる傾向がある。「Core 2 Duo E6700/2.66GHz」を用いる限り,Barracuda AC-1のほうが効率はいいといえそうだ。
 リアルタイムエンコードを行ってのデジタルストリーム出力になると,一気にCPU使用率が上がってしまうのは興味深い。CPU使用率が20%を超えない限り,致命的な再生遅延は発生しないはずだが,今回のテスト環境でも127音時は10%を超えているので,古めのPCで使うときには,それなりの覚悟が必要かもしれない。

 

 

 続いてゲームにおけるベンチマークを見てみよう。4Gamerのベンチマークレギュレーション3.0で採用しているタイトルのうち,リプレイ再生時にサウンド出力を伴う「Half-Life 2: Episode One」「Company of Heroes」そしてGTR2の3タイトルを用いる。基本的にはレギュレーション3.0のテスト方法に準じ,「標準設定」のみを利用した。

 

 Half-Life 2: Episode Oneでは,1280×1024ドット設定時にのみ,何度テストし直しても,Dolby Digital Live有効時とDTS Interactive有効時にスコアが落ち込むという現象に遭遇した(グラフ3)。この二つでは,さらに“重く”なるはずのDolby Pro Logic IIx併用時にはスコアが持ち直すため,いよいよ不可解だ。バージョン1.0のドライバが何らかの問題を抱えている可能性は指摘できそうだが,いずれにせよ,Barracuda AC-1のスコアは参考程度に留めてほしい。
 なお,SoundMaxが1280×1024ドットでのみスコアを落としているのは,2006年12月14日のレビュー記事と同じ傾向だ。1024×768ドットや1600×1200ドットでは別のデバイスがボトルネックになっているのに対し,1280×1024ドットではちょうどサウンド処理の負荷が最も大きなボトルネックになっているものと思われる。

 

 

 続いてCompany of Heroes(グラフ4)だが,Company of Heroesではグラフィックス負荷が高く,グラフィックスカードがボトルネックになることもあって,Barracuda AC-1のテスト結果は横一線に並んだ。SoundMaxが1280×1024ドットで大きくスコアを落としているのは,おそらくHalf-Life 2: Episode Oneと同じ理由だろう。

 

 

 最後にGTR2では,CPUに余力があることもあって,SoundMaxも含め,スコアに差はない。今回のテスト環境では,GTR2程度のサウンド負荷は問題にならないというわけだ。もちろん,CPUパフォーマンスの低い環境では,様相が変わってくるはずである。

 

 

 

Dolby Pro Logic IIxを試したいならアリだが,
価格の高さが大きなハードルに

 

 さまざまなサウンド処理によって生じるCPU負荷は,ハイエンドクラスのCPUを利用する限り,ほとんど問題にならない。この点はSound Blaster X-Fi Xtreme Gamerのレビュー記事において明らかになった事実を再確認する結果となった。
 もちろんCPUパフォーマンスが低いPCで利用する場合はその限りでない。この点は十分に注意する必要があるものの,フレームレートへの影響が無視できるレベルになると,“オーディオ出身”の技術が,ゲームの設計に依らず新たなサラウンドサウンド環境を実現していることを,素直に評価できるようになってくる。FPSとの相性の悪さや,Dolby Headphoneがゲームには向かないといった不満点は確かにあるものの,「EAXが足踏みしているうちに,汎用サラウンド技術が追いついた」ような感すらあった。

 

製品ボックス。カードとRazer HD-DAI,ドライバCD-ROM程度しか同梱していない割に,かなり大きい

 いずれにせよ,一般的な2chスピーカーを使って,ゲームにおけるバーチャルサラウンド環境を最大限に味わいたいのであれば,Barracuda AC-1は試してみる価値のある製品といえるだろう。
 サウンド周りの仕様がこれまでとは大きく変わる「Windows Vista」世代において,Creative Technologyと汎用サラウンド技術を採用するサウンドチップメーカーのどちらがゲームにおけるサラウンドサウンドの主導権を握るのか,これからの展開が非常に興味深い。

 

 さて,そんなBarracuda AC-1が抱える最大の課題は,3万円前後という実勢価格である。
 Razerによる直販価格は199ドル99セントなので,海外からの送料も加味した場合,「並行輸入版だから高い」わけではない。しかし,EAX ADVANCED HD 5.0をサポートし,ゲームにおいて有効なバーチャルヘッドフォン技術であるCMSS 3DHeadphoneも利用でき,さらに日本法人によるサポートも付くSound Blaster X-Fi Xtreme Gamerを1万円台前半で手に入ることを考えると,厳しい価格設定といわざるを得ないのも確かである。
 せめて実勢価格が2万円,いや1万円台後半なら,Dolby Pro Logic IIxの効果も含め,かなりそそられる製品なのだが。

タイトル サウンドデバイス
開発元 各社 発売元 各社
発売日 - 価格 製品による
 
動作環境 N/A