― レビュー ―
GeForce 7の第2世代ハイエンド&初のミドルレンジは買いなのか
GeForce 7900 GTX/GT&GeForce 7600 GTリファレンスカード(前編)
Text by 宮崎真一
2006年3月9日

 

 NVIDIAは,GeForce 7シリーズの最上位モデルとなる「GeForce 7900 GTX」,その下位モデル「GeForce 7900 GT」,さらにミドルレンジにあたりGeForce 6600 GTの後継にあたる「GeForce 7600 GT」をリリースした。アーキテクチャの詳細は連載「西川善司の3Dゲームエクスタシー」に任せ,本稿ではリファレンスカードを利用したベンチマークの結果をお伝えしていきたい。

 

 

リファレンスカードで
新製品の概要を理解する

 

 テストの前に,3枚のリファレンスカードを概観してみよう。

 

 まずGeForce 7900 GTXリファレンスカードだが,これはGeForce 7800 GTX 512と同じ2スロット仕様のチッククーラーを搭載しているため,外観はGeForce 7800 GTX 512とほとんど同じ。ForceWareから動作クロックを確認したところ,コアクロックは650MHz,メモリクロックは1.6GHz相当(800MHz DDR)と表示された。
 頂点(Vertex)とピクセル(Pixel)の両シェーダユニットで動作クロックが異なる「マルチクロックドメインデザイン」(Multi-Clock Domain Design)を採用するGeForce 7900 GTXだが,ここで表示されている650MHzというのはピクセルシェーダユニットのクロックだ。GeForce 7900の「コアクロック」は,どうやらピクセルシェーダユニットのクロックということになりそうである。

 

GeForce 7900 GTXリファレンスカード。GeForce 7800 GTX 512と同じスペックの2スロット占有型クーラーを取り外すと,「G71-U-N-A2」と刻印されたコアが姿を見せる。搭載するメモリチップはSamsung Electronicsの512Mbit/1.1ns品「K4J52324QC-BJ11」なので,メモリのスペック上は1.8GHz相当の動作が可能だ

 

 続いてGeForce 7900 GT。GeForce 7900 GTXとは異なり,1スロットの小型チップクーラーを搭載している。下に用意した写真を見ても明らかなように,チップクーラーが直接メモリチップの発熱を拾うような構造にすらなっておらず,ハイエンドクラスとしては拍子抜けといえるほどシンプルな冷却構造だ。ちなみに筆者の主観では,GeForce 7900 GTXとGeForce 7900 GTの両リファレンスカードで比較した場合,小口径で高回転の仕様がアダとなったか,後者のチップクーラーのほうがよりうるさく感じた。
 ForceWareで確認したところ,動作クロックはコア450MHzで,やはりピクセルシェーダユニットのそれが表示されている。メモリクロックは1.32GHz相当(660MHz DDR)動作で,もちろんいずれもリファレンスどおりだ。

 

GeForce 7900 GTのリファレンスカード。GeForce 7900 GTXと比べると,ずいぶん小型な印象を受ける。コアの刻印は「G71-GT-N-A2」。チップクーラーで画されていないメモリチップはやはりSamsung Electronics製の,こちらは256Mbit/1.4ns品「K4J55323QG-BC14」だった

 

 最後に注目のミドルレンジ向けGeForce 7,GeForce 7600 GTのリファレンスカードだが,注目したいのは,PCI Express接続グラフィックスカード用の補助電源コネクタを用意していない点。“前世代ミドルレンジ”のGeForce 6600シリーズでは,上位のGeForce 6600 GTが補助電源コネクタによる給電を必須としていたわけで,NVIDIAの主張するように,消費電力は確かに下がっているようだ。カード上の電源回路もかなり簡略化されている印象を受ける。

 

 なお,動作クロックは当然のようにリファレンスどおり。GeForce 7600 GTは頂点,ピクセルの両シェーダユニットが同じ速度で動作するが,そのクロックは560MHz。メモリクロックは1.4GHz相当(700MHz DDR)である。

 

GeForce 7600 GTリファレンスカード。チップクーラーはGeForce 7900 GTが搭載するのと同じもののようだ。コアの刻印は「G73-GT-N-A2」。512Mbit/1.4ns品であるSamsung Electronicsの「K4J52324QC-BC14」×4で容量256MBを実現している

 

 

ハイエンド環境を中心に
NVIDIA提供版ドライバで検証

 

 リファレンスカードの特徴をつかめたところで,これら3製品と,Radeon X1900 XTX,GeForce 7800 GTXを用意して,GeForce 7900シリーズのパフォーマンスを中心に見ていくことにしよう。テスト環境はにまとめたとおりで,今回ForceWareは,NVIDIAから報道関係者向けに提供されている「ForceWare 84.17」を利用している。このForceWare 84.17は,先日β版が登場した新PureVideo対応ForceWareを,新型GeForceに対応させ,さらにいくつかのバグフィックスが行われたものとのこと。正式公開版は,早ければ2006年3月9日深夜(≒10日)にも公開される「ForceWare 84.19」になる予定だが,3月9日23時の時点では,編集部でもこの84.19版は入手していない。この点はご容赦願いたい。

 

 

 なお,4Gamerでは何度も指摘しているように,よほどのハイエンドCPUを用いたりしない限り,ハイエンドクラスのデュアルグラフィックスカードソリューションは,ゲームの体感速度向上に劇的な寄与はしてくれない。この傾向は,アーキテクチャに抜本的な変革のないGeForce 7900シリーズでは変わらないと推測されるので,同シリーズを中心にお届けする今回は,シングルグラフィックカード動作で検証を行っていきたいと思う。

 

 ただ,このままではGeForce 7600 GTのスコアが「取ってみただけ」になってしまう。そこで今回は,以前,比較的似たような環境でテストを行ったGeForce 6800 GSリファレンスカードのスコアをできる限り流用することにした。
 もっとも,「似たような環境」といっても,当時の記事を見てもらえば分かるように,ドライバのバージョンなど,重要なポイントが異なっている。また,参照する計測値がないものもあるので,今回に関してはあくまで参考程度に留めてほしい。GeForce 6800 GSとの正式な比較に関しても,後編を待っていただければ幸いだ。

 

 さて,以後本稿ではグラフィックスドライバ側から垂直同期のみオフに変更した状態を「標準設定」とし,同じくドライバ側で強制的に4倍(4x)のアンチエイリアシングと16倍(16x)の異方性フィルタリングを適用した状態を「4x AA&16x AF」と呼ぶ。

 

 

3モデルとも性能は非常に良好
とくに7900 GT&7600 GTは注目

 

 というわけで,いよいよお待ちかねのベンチマーク結果である。例によって,「3DMark06 Build 1.0.2」の標準設定時における総合スコア(グラフ1)に関しては,4Gamerとしての評価基準が定まるまで参考値に留め,「3DMark05 Build 1.2.0」(以下3DMark05)から分析を始めたい。

 

 

 その3DMark05の総合スコアはグラフ2,3にまとめた。一言でまとめれば「Radeon X1000シリーズ優位になる傾向の3DMark05では,GeForce 7900 GTXをもってしてもRadeon X1900 XTXには勝てなかった」ということになるだろうか。もっとも,3DMark05に関しては,NVIDIA,ATI Technologiesの両社による最適化合戦が盛んであるため,直接の比較はあまり意味を持たないという現実も認識しておく必要があるだろう。

 

 むしろ注目すべきは,GeForce 7900 GTが,わずかではあるものの,GeForce 7800 GTXのスコアを上回っている点だ。また,GeForce 7600 GTは,GeForce 7800 GTXの7割近いパフォーマンスを叩き出している。GeForce 6800 GSとの比較では,相手が参考値ということを割り引いても,スコアで2割前後上回っているのは立派。ミドルレンジのグラフィックスチップとして,GeForce 7600 GTは非常に高いポテンシャルを持っているといえそうだ。

 

 

 

 3DMark05 Feature Testのテスト結果をまとめたのがグラフ4〜6である。別記事で,NVIDIAはテクスチャユニットの優位性を唱えていたわけだが,グラフ4はそれを裏付ける結果となっている。

 

 またグラフ5,6からは,動作クロックの大幅な向上もあり,GeForce 7900 GTXはGeForce 7800 GTXと比べて,シェーダ性能が確実に向上しているのが分かる。また,総合スコアが上位なのだから当たり前だが,GeForce 7900 GTがGeForce 7800 GTXに対してほとんどの項目で上に立っている点も,指摘しておく必要はありそうである。

 

 

 

 

 実ゲームのテストに移ろう。「Quake 4」では,「The Longest Day」というマップで7名によるデスマッチを行ったリプレイを利用し,Timedemoから平均フレームレートを計測した。その結果がグラフ7,8だ。Quake 4はGeForce 6/7シリーズ優位になる傾向のゲームだが,それにしてもGeForce 7900 GTXのスコアは非常に高い。3DMark05では超えられなかったRadeon X1900 XTXに対して,圧倒的な差を付けている。

 

 GeForce 7600 GTは低解像度でハイエンドグラフィックスチップに迫る一方,高解像度や高レベルのエフェクト適用時に,上位陣と水を空けられてしまう。いかにもミドルレンジのグラフィックスチップらしい結果だが,この原因がピクセルシェーダユニットにあるのか,ROPユニットにあるのかは,これだけだと判断できない。ひとまず保留して次に進もう。

 

 

 

 「Battlefiled 2」では,「Dragon Valley」で実際に行われたコンクエスト(16人×16人対戦)のリプレイをスタートから120秒間再生し,「Fraps 2.60」を用いて平均フレームレートを計測した。その結果をまとめたのがグラフ9,10だ。
 Battlefiled 2は全体的に負荷が高く,また高解像度ではグラフィックスメモリ容量が効いてくるのが特徴だが,とくに後者の特徴を裏付けるように,高レベルエフェクトの適用時に,グラフィックスメモリ容量が512MBか256MBかで,解像度が高くなるにつれて大きな差が生まれている。

 最新世代の“重い”ゲームの中には,特定条件でグラフィックスメモリを512MB要求するものが存在する――。GeForce 7900 GT,あるいはGeForce 7600 GT搭載製品の購入を検討しているなら,この点は気をつけておいたほうがいいと思われる。

 

 

 

 最後に「TrackMania Sunrise」である。ここでは1周53秒程度の「Paradise Island」というマップのリプレイを3回連続で実行し,その平均フレームレートをBattlefield 2と同じくFraps 2.60で測定し,結果をグラフ11,12にまとめている。
 分析を行う前に,まずお断りを。Catalyst 6.2を利用したRadeon X1900 XTXは,解像度を1024×768ドットに設定すると,計測するごとにスコアが大きく変わってしまうなど,不可思議な挙動を示していた。一応,最もよかったスコアをグラフに掲載しているが,その値の信憑性はかなり低いと言わざるを得ないだろう。このため今回は,GeForce間の比較のみを行うことにする。

 

 さて,TrackMania Sunriseは,描画負荷が軽いため,シェーダユニットの性能よりも,演算結果をグラフィックスメモリに書き込むROPユニットの性能が相対的に重要となる。また同時に一般論として,書き込む量が多くなる高解像度のほうが,ROPユニットのパフォーマンスにスコアが影響を受けやすい。
 これを踏まえ,改めてグラフ11,12を見てみると,同じ16基のROPユニットを持つGeForce 7900 GTX/GTとGeForce 7800 GTXでは,動作クロックに比例した結果になっているのが分かるだろう。そして,ROPユニットが8基のGeForce 7600 GTが高解像度で相応にスコアを落としており,ROPユニットがスコアを左右する典型例となっている。

 低負荷時にはハイエンドグラフィックスチップとまったく変わらないパフォーマンスを見せる一方,負荷が高くなるととたんにスコアが落ちていく。ROPユニットの数によって,うまい具合にGeForce 7600 GTはミドルレンジに落とし込まれているというわけだ。

 

 

 

 さらに言うと,グラフ7,8のQuake 4では,TrackMania Sunrise以上にGeForce 7600 GTの落ち込みが高負荷時に大きい。ROPユニットだけでなく,シェーダユニットの性能も,Quake 4ではスコアに影響しているといえるだろう。

 

 

低消費電力に向かうという
NVIDIAの言葉は本当だった

 

 性能向上とともに消費電力が増大の一途を辿っていたグラフィックスチップだが,今回のGeForce 7900/7600シリーズにおいて,NVIDIAは「1Wあたりの性能が高い」と,消費電力の低さをウリの一つにしている。
 そこで,ワットチェッカーを用いて,システム全体の消費電力をチェックしてみることにした。ここではOS起動後,30分間放置した状態を「アイドル時」,3DMark05をリピート実行し続け,30分経過した状態を「高負荷時」とする。

 

 結果はグラフ13にまとめたとおり。ハードウェア的には同じなので,これまでのベンチマークテストとは異なり,十分比較対象となるGeForce 6800 GSと比べると,GeForce 7900/7600シリーズが確実に低消費電力化しているのが分かる。とくに注目したいのはGeForce 7900 GTだ。高負荷時でGeForce 7800 GTXと比べて40Wも低ければ,本記事の冒頭で拍子抜けと評した,小型のチップクーラーでも冷却に不安はないだろう。
 GeForce 7900 GTは,GeForce 7800 GTXと互角以上のパフォーマンスを見せつつ,消費電力は圧倒的に低い。これは賞賛に値する。

 

 

 最後に,チップクーラーが異なるので参考程度になるが,消費電力テスト時に併せて計測したグラフィックスチップの温度をグラフ14にまとめてみた。温度はGeForce,Radeonともにグラフィックスドライバから計測している。さすがに2スロット仕様だけあって,GeForce 7900 GTXのチップクーラーは,なかなか優秀な冷却能力である。

 

 

 

■戦略的な価格で登場するモデルに注目

 

 別記事でも説明しているように,最上位モデルとなるGeForce 7900 GTX搭載カードは,当初7万円以上で流通することになるようだ。Radeon X1900シリーズの店頭価格を考えると,コストパフォーマンスは決して悪くないが,絶対的なコストとして,7万円という金額に抵抗を感じる人は少なくないと思う。

 

 しかし,GeForce 7900 GT搭載カードは4万円台前半,GeForce 7600 GT搭載カードは2万円台後半と,かなり戦略的な価格で登場する見込み。しかも,少なくともシングルカード動作においては,両グラフィックスチップとも実際のゲームにおいて高いパフォーマンスを見せつけており,非常に魅力的だ。これからゲーム用PCの刷新や,グラフィックスカードの交換を考えているゲーマーにとって,決して見逃せない製品が登場したといえる。

タイトル GeForce 7900
開発元 NVIDIA 発売元 NVIDIA
発売日 2006/03/09 価格 製品による
 
動作環境 N/A

Copyright(C)2006 NVIDIA Corporation

【この記事へのリンクはこちら】

http://www.4gamer.net/review/g71_and_g73_01/g71_and_g73_01.shtml