― 連載 ―

タイタン クエスト 日本語マニュアル付英語版

連載第1回 神話や歴史をフィーチャーした格調高きアクションRPG

 アクションRPGの金字塔である「Diablo」の発売以来,幾多のタイトルがDiabloを超えようと志した。しかし,「Diablo II」の発売からすでに6年経っているが,Diablo超えを果たしたタイトルは未だ存在しないといっていいだろう。かくいう筆者も,昨今のアクションRPGに心のどこかで物足りなさを感じていた一人である。

 

 しかし,遂にあのクオリティに迫ろうかというタイトルが登場した。それが,本連載でピックアップする「Titan Quest」である。本作は欧米圏では6月末に発売されているが,ゲームシステムに対しシビアな目を持つミドル〜コアゲーマー層を中心に高い評価を受けている。そして9月1日には,「タイタン クエスト 日本語マニュアル付英語版」が発売されるのだ。
 本連載では,Titan Questの魅力をあますところなくお伝えしていく。第1回目はTitan Questの概要とその魅力を大づかみにまとめてみるが,本稿を読んで興味を持った人は,ぜひパッケージを手にとるか,体験版をプレイしてみてほしい。Diabloシリーズ経験者はもちろん,最近のアクションRPGに物足りなさを感じているRPGファンの期待にも,十分に応えてくれるはずだ。

アクションRPGのスタンダードを継承し,さらに一段階上のクオリティを目指したタイトル

Titan Questは,クオータビューのアクションRPG。9月1日に日本語マニュアル付英語版が発売される,まさにこれからが旬といえるタイトルだ。基本操作はほとんどマウスのみで可能なため,操作方法を覚えるのは非常に簡単である

 Titan Questは,ギリシア神話や古代史などをモチーフにした3DアクションRPGだ。RTS「Age of Empires」の共同開発者の一人である,Brian Sullivan氏が率いるIron Lore Entertainmentが制作しており,真面目で丁寧な作りを貫いた職人のこだわりが感じられる作品だ。

 

 Titan Questでプレイヤーが扮するキャラクターは,主神ゼウスの下で「ギリシア」「エジプト」「オリエンタル」の3文明を股にかけた冒険を繰り広げる。最終的に,ゼウスに背いた裏切り者である“タイタン”を討伐するというのがストーリーの大筋だ。
 ストーリーからも分かるように,Titan Questはギリシア神話や古代史をモチーフとしており,冒険マップには誰もが知っているような古代文明の遺跡が多数登場する。中世ヨーロッパや北欧神話などに基づく一般的なファンタジー系タイトルと比べたとき,これがとても新鮮に感じられるのだ。

 

 Titan Questで,最初のキャラクター作成時に決める項目は“名前”“性別”“服の色”,たったこれだけである。そしてゲームが進むにつれ,職業をはじめとしたシステム面でできることが段階的に広がっていき,最終的にそれは膨大な量となる。チュートリアルの類は一切ないが,その必要性を感じさせない巧みなゲーム展開も,この作品の優れた点だ。
 キャラクターの操作方法や画面レイアウト,そして戦闘時のプレイ感覚といったゲームの基礎となる部分は“Diablo IIとほぼ一緒”と言い切ってしまってもいい。ただしこれは単なる模倣ではなく,Diablo IIのシステムをさらに昇華したものととらえてもらいたい。Diabloシリーズの経験者なら,初回のプレイ時でも戸惑わないのはもちろん,ところどころではDiablo IIを上回るプレイアビリティを実感できるはずだ。

 

キャラクター作成画面では,名前を入力するほか,性別とチュニックの色を選ぶだけと非常にシンプル インベントリの画面はDiablo IIに非常によく似ている。キーバインドもDiabloシリーズとほぼ同じだ

 

スタミナ概念がない(というか移動はすべてダッシュ)ため,Diablo IIと比べるとスピーディーなゲーム展開だ。できれば“歩く”アクションもほしかったところ メインストーリーを織り成すクエストを軸に,多数のサブクエストも遂行していく。メッセージは英語だが,意味が分からなくてもなんとなく進められる

 

 Titan QuestはアクションRPGの王道を行く作品であり,キャラクターの豊富なスキルや,あくなきトレジャーハントといった,ゲームにハマる要素がふんだんに詰め込まれている。プレイ人数に関してはシングルのみならず,最大6名までのマルチプレイにも対応する。ただ専用ロビーサーバーは用意されておらず,“Gamespy”を介したマッチングが中心となる。
 キャラクターデータがローカル側に保存されるため,チート対策が十分かどうか不安が残るものの,MODとの親和性が高いというメリットもある。Titan Questには標準でMOD製作ツールが同梱されており,このあたりの展開も今後期待できるだろう。

 

 4Gamerでは以前からTitan Questを追いかけてきたが,「タイタン クエスト 日本語マニュアル付英語版」で初めてその存在を知る読者も多いだろう。ここからは,Titan Quest初心者がゲームの全体像を把握しやすいように,その魅力を二つに大別して追っていこう。

 

冒険中はこれでもかというくらいのアイテムを獲得できる。アイテムもノーマル品のみならず,マジック/セット/ユニークといった種類がありトレハン要素も満載 インベントリ内の装備アイテムにカーソルを当てると,現在装備しているものとの比較ができる。攻撃速度やDPS等が表示されるなど,この画面内だけでも情報量は多い 新たな拠点エリアに一度到達すると,それ以降はウェイポントとしていつでも利用可能。アクションRPGとして必要な要素は一通り揃っている

タイタン クエストの見どころ:1 美麗なグラフィックスとオブジェクトの挙動を徹底追求

基本的にクォータビュー視点で,ズームイン/アウトが可能。画面を最大まで拡大しても,グラフィックスの粗さが感じられない

 最初にTitan Questに触れた人が驚くのは,そのグラフィックス面ではないだろうか。オブジェクトの一つひとつがまるでドイツ産のミリタリー系RTSのような,職人芸的な作り込みを感じさせるのだ。画面写真のサムネイルをクリックし,拡大した状態でじっくりと見てほしい。
 神話や古代史をモチーフとしているため,ゲーム中では有名な文明遺跡が多数登場する。3Dで描画されたこれらの風景に遭遇するたびに,筆者はしばしゲームの手を休めて見入ってしまったほど,美麗なものである。パルテノン神殿,クフ王の大ピラミッド,万里の長城などなど,あたかも“世界遺産巡り”のような気分にさせてくれる。
 ただし,「The Elder Scrolls IV: Oblivion」「Neverwinter Nights 2」といったRPGが登場する/した2006年において,単にグラフィックスが綺麗というだけでは,大きなインパクトは与えられない。

 

 Titan Questがすごいのは,アクションRPGとしては珍しく物理エンジンを用いている点だ(ゲーム内のすべてに適用されているわけではないが)。
 物理エンジンの効果物理によって,ゲーム中のオブジェクトの挙動は格段にリアリティを増している。例えば,キャラクターが移動すればその足元で草木が速度や向きに応じて揺れるし,橋や崖でモンスターを倒せばその死体は眼下へと転落し,それが坂道の場合はゴロゴロと転がっていく。ファイアーボールとなどの魔法を詠唱したときも,敵との間に遮蔽物があると弾かれてしまう。各種オブジェクトが確かな物体として存在するかのようなリアリティを,随所で感じさせられるのだ。

 

三つの文明地域を飛び回るため,ゲーム内ではさまざまな風景を満喫できる。さらにこれらの風景が,ゲーム内の時間の経過に応じて昼夜へと切り替わる

 またTitan Questでは,同じ剣や鎧でも何十種類もの違いがあり,マジックアイテムを含めるとその数は数千にも及ぶ。プレイヤーキャラクターが装備するとビジュアルが変わるのはもちろん,モンスターの外見面にもちゃんと反映されているのだ。倒したときに装備していた武具を毎回ドロップするのだと知った瞬間,筆者は思わず唸ってしまった。
 例えばボスモンスターがレアアイテムを装備しているときは,一目見た瞬間に光り輝く外見で判別がつき,プレイする側も俄然やる気が出てくる。ちなみに,他タイトルではごく当たり前に起きる「4足歩行のモンスターを倒したらプレートメイルをドロップ」といったことは,Titan Questでは起きえない。このあたりもリアリティを増すのに一役買っているのではないだろうか。

 

3Dで再現された歴史的建造物はかなりの迫力がある。新たなマップに行くたびに,観光旅行気分を満喫できる(かもしれない) 拠点エリアやモンスターの集落をよく見ると,ある種の生活臭を意識した演出が感じられる。TQの地形はランダムマップでは実現できない域に達している

 

 ここまでリアリティを追求しながらも,必要環境はCPUにPentium 4/1.8GHz以上,グラフィックスカードにGeForce 3またはRadeon 8500以上など,要求スペックはそれほど高くない。数年前のPCでも,十分ハイクオリティ設定で動かせるだろう。
 そして特筆すべきは,サクサクとしたプレイ感を保っていることだ。モンスターを斬り伏せたり,スキルを発動させたりする瞬間に“マウスから伝わってくる”感触は,まぎれもなくDiablo IIと同じといってよい。しかもTitan Questでは,キャラクターの移動は基本ダッシュのみなので,Diablo IIよりスピーディにゲームを進められるのである。

 

膝ほどの高さがある草が,キャラクターの動きに合わせてゆらゆらとなびく。物理エンジンの実力にきっと驚かされるだろう モンスターが,自分の装備しているアイテムをドロップするというのは,確かに理にかなっている。ありそうでなかったシステムだ グラフィックスは美麗だが,PCの要求スペックはそこそこ。動作環境が気になる人は,体験版で確認してみるといいだろう

タイタン クエストの見どころ:2 八つのマスタリーを二つ組み合わせる,自由度が高い成長システム

八つあるマスタリーから二つを選び,自分だけのスキルバランスを構築していく。その全貌を把握するには,最低でもキャラクターを4人育成する必要があり,ボリュームはたっぷりある

 Titan Questのもう一つの特徴は,カスタマイズ性の高い職業システムだ。キャラクターの成長の核となるのは,“Mastery”(マスタリー)と呼ばれる8種類のスキルグループの中から二つを選ぶシステムである。各ジャンルには計20のアクティブ/パッシブスキルが用意されており,レベルアップのたびに得られるポイントをこれらに割り振ることで,キャラクターの個性が形成されるという仕組みだ。マスタリーは以下の8種類になる。

  • Warfare
  • Nature
  • Defence
  • Earth
  • Spirit
  • Rogue
  • Hunting
  • Storm

マスタリー画面の左にあるバーを伸ばしていくと,同じ高さのスキル群が習得可能となる。アイコンが四角いタイプはアクティブ系,丸いタイプはパッシブ系のスキル

 キャラクタがレベル2になったときに1個め,レベル8になったときに2個めのMasteryを選択するという流れとなる。2種類のスキルグループを組み合わせるシステムは,他タイトルでは「ギルド ウォーズ」をイメージしてもらうと比較的分かりやすいかもしれない。
 スキルはスキルツリーの形式を採っていて,スキルがランク分けされていたり,同じスキルにポイントを多く割り当てることでスキルレベルが上がるといったあたりはDiablo IIに近い。
 ここで注目してほしいのは,Titan Questでは,一度割り振ったスキルポイントの取り戻しが,金銭を払うことによって可能という点だ。例えば,ゲームに慣れていない序盤は,ランクの低いシンプルなスキルにポイントを注ぎ込んで効率よくプレイを重ね,レベルが上がったらスキルポイントをリセットして,使っていなかったスキルをいろいろ試すこともできる。状況に応じて思い切ったキャラクターの軌道修正ができ,これが実に面白い。
 経験者ならご存じだろうが,Diablo IIの場合は一度割り振ったスキルポイントのリセットは不可能であった。しかしTitan Questでは,スキル選択時のリスクというものがほとんどない。一つのマスタリーを極めてもいいし,28通りある二つのマスタリーの組み合わせをいろいろ試してもいい。ポイントを注ぎ込んだスキルの組み合わせ次第で,あっと驚くような戦術が生まれるかもしれない。このあたりはコアゲーマーの心を揺さぶるシステムといえる。

 

TQではリスクを恐れずに,好きなスキルにポイントを注ぎ込める。そのため自分だけの戦術を模索する過程が何よりも面白いのだ 自分自身を岩石に変化させて防御を固めつつ,ペットとダメージシールドで敵を倒している最中。2つのMasteryを含めると戦術の幅はとても広い

 

 Titan Questでは,スキルを駆使したテクニックが求められる。というのも,体力回復ポーションは遅効性で,効果が出るまで5秒前後を要するからだ。つまり他タイトルでありがちな,大量のポーションをがぶ飲みするようなパワープレイは不可能なのである。したがって他タイトルよりテクニックの比重が増しているうえ,キャラクターの個性が如実に反映されやすい。恐らくコアなRPGファンの中には,この部分だけでもTitan Questに興味を持つ人が,少なからずいるのではないだろうか。

 

 まだまだ書きたいことは山ほどあるのだが,とりあえず今回はここまで。これからの連載を通じて,筆者の力の及ぶ限りこの作品の魅力をお伝えしていくつもりだ。なお次回は,Titan Questのキモであるスキルシステム入門編を予定しているのでお楽しみに。

 

クリックタイプのアクションRPGでありながら,“ポーションがぶ飲み”仕様ではない。スキルを駆使した戦術が重要になるというわけだ グラフィックスは非常に高いクオリティに仕上がっているが,頭でっかちになっていないのが好印象。あくまでもプレイアビリティを重視しているのだ 2006年に「Diablo3」が誕生していたら,もしかすると……。ふと,そんなことを考えさせられるタイトルに仕上がっている

 

 

■■川崎 政一郎(ライター)■■
Diabloに魂を惹かれてこの業界に入ったフリーライター/記者。2006 E3のTHQブースで本作に一目惚れしてしまったという氏は,今回の攻略連載を快く,即決で引き受けてくれた。本文でも触れたが,Titan Questでは,8種類のマスタリー全部を確認するだけで,ざっと見積もって120時間程度かかる。4Gamer編集部としては当然ながら,合計160個のスキルを全部マスターするまで連載を続けてもらうわけだが,このことを氏が初めて知るのは,この原稿が掲載されたときであることは言うまでもない。
タイトル タイタン クエスト 日本語マニュアル付英語版
開発元 Iron Lore Entertainment 発売元 ズー
発売日 2006/09/01 価格 8190円(税込)
 
動作環境 OS:Windows 2000/XP(+DirectX 9.0c以上),CPU:Pentium 4/1.8GHz以上[Pentium 4/3GHz以上推奨],メインメモリ:512MB以上[1GB以上推奨],グラフィックスチップ:GeForce 3/Radeon 8500以上[GeForce 6800以上推奨],グラフィックスメモリ:64MB以上[128MB以上推奨]

(C)2005 THQ Inc. Developed by Iron Lore Entertainment. Iron Lore and its logo are trademarks of Iron Lore Entertainment. THQ and THQ logo are trademarks and/or registered trademarks of THQ Inc. All other trademarks, logos, and copyrights are property of their respective owners.


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http://www.4gamer.net/weekly/titanquest/001/titanquest_001.shtml