魚雷再装填作業の進捗を確認してみる。外部の格納庫から艦内に運び込んでいる最中で,魚雷の絵が全部消えたら収容完了だ
電動機区画に深刻なダメージを受け,盛大に浸水しているところ。再装填作業を中止し,急きょ修理班を編成して対処している
潜水艦シムないし,Uボートモチーフのゲームを初めてプレイする人に,プレイのノウハウをお伝えする当連載。今回は個別の戦闘でなく,キャリアモードを継続的にプレイするに当たって必要な事柄を中心にお送りする。
その前に,前回の話題を少しだけ補足しておきたい。敵の攻撃を守備良く切り抜けたら,潜航&機関停止中であれ,浮上航行中であれ,無音潜航指示を解除(Secure from Silent running)しておきたい。マニュアルにも載っているとおり,無音潜航中は魚雷の再装填も故障箇所の修理も行われない。たとえ浮上航行に移っても,指示が自動で解除されることはないのだ。解除を忘れていると,魚雷発射管室に集めた乗組員が,なぜさっさと再装填してくれないのかえんえんと悩むハメになったりするので,ぜひ憶えておきたい事柄である。
また,敵の攻撃を受けている最中であっても,修理の必要が生じたら適宜解除したい。故障箇所が浸水を引き起こしていたり,有毒ガスを発生させていたり,騒音源になっていたりすることもあるので,緊急で修理させる事態もあり得るのだ。逆にそれほど深刻な被害でないならば,攻撃を切り抜けた後に対処しよう。
5回目のパトロールを終えた直後の報告画面。このときは乗り換えを少々急ぎすぎたせいで,すでにVII型に乗っていたりする
本作を発売日近くに購入した人なら,すでに何度かのパトロールをこなし,そろそろ名声値が溜まってきた頃だと思う。1939年設定で始めて3500以上溜まったら,艦の乗り換えを考えるべきタイミングだ。
連載第1回でも触れたとおり,最初に与えられるII A型ボートは本来,沿岸/近海警備用の小型艇にすぎない。大西洋の戦いの主役となったのはVII型で,いくつかの改良型を登場させつつも,長らく主力の地位に留まり続けた。まあもし,戦争の行く末がもう少しドイツに有利だったら,XXI型の量産が進んだ可能性もあるが,水上速力,潜航速度,水中運動性と,どの面から見てもVII型は優秀な艦である。XXI型が登場するまでの間,かなり長く付き合うことになるだろう。
ゲーム内ではもう一つ,IX型という選択肢もある。こちらはVII型より大型のボートで,運動性能は全般にVII型より劣るものの,航続距離と魚雷搭載数でVII型を上回る。好みによってはこちらに乗り換えるのもアリだ。
II A型からVII B型に乗り換えた直後。欠員はなるべく優秀な人材で埋めたいが,経験豊富な士官は“お値段”も相当なもの
さて,VII B型の必要名声値は2500。それなのになぜ3500まで稼ぐことを勧めるかといえば,乗組員の確保に使いたいからだ。経験豊富な士官の起用には500,下士官なら200,水兵には50程度の名声値がそれぞれ必要になる。II A型からVII B型に乗り換える場合,士官1名,下士官数名,兵にいたっては15名以上の補充が必要で,候補者リストの上から順に採用していくとしても,当座1000程度は必要なものと考えたほうがよい。名声値が要らない乗組員候補も用意されているが,彼らは新米に近く,どうしてもスキルやパラメータが低くなる。
下士官や兵に少々欠員がいても,ボートはそれなりに機能する。なので,乗り換え後最初の哨戒ではそれぞれ数名分空けておいて,リストに経験豊富な人材が回復した後にあらためて補充するのが,一番賢いやり方かもしれない。
このゲームで十分に再現されていない要素として,Bdu(潜水艦隊司令部)からの指令が挙げられる。前作「Silent Hunter II」のキャンペーンが,シングルミッションをつなぎ合わせたものであった点からすれば,それでも飛躍的に改善されたのだが,大西洋の真ん中まで行って作戦できるVII型以降のボートに乗り換えても,相変わらずBduは航海ごとに目標海域を一つ指定するばかりで,史実で多々あった,状況に応じた転戦や僚艦との連携指示などは,まず期待できない。
Bdu(潜水艦隊司令部)の,太平楽極まるありがたーいお返事。まあそもそも,現状報告の手段が多様でないため,こちらから作戦提案などできないのだ
そうしたわけで,キャリアモードにおいてお勧めしたいのが,指定されたパトロール任務をこなしたら,自分の判断で行動することだ。Uボートは本来,作戦の一構成要素でなく,独自の行動で敵陣営に直接ダメージを与える戦略兵器である。Bduがそれを活用してくれないなら,艦長自らその真価を発揮させるのみだ。
連載第1回で触れたとおり,このゲームでは発見報告のあった敵船に接触するのがけっこう難しい。そしてその難しさは,パトロール海域の天候に大きく左右される。経験からいうと,雨の降りしきる視界の悪い海域で何日もねばるのは燃料と乗組員の体力(とプレイ時間)の無駄なのだ。ゲーム内のBduが好んで指定するイギリス北部海域は,冬になると悪天候が増えるため,必ずしもパトロール向きでない。実際にパトロールしてみると分かるが,この天候,3日待っても好転しなかったりする。
そうしたときには,まずBduの指示を守って指定海域を24時間パトロールし,それを終えるや否や,思い切って天候の良好な海域にカシを変えてしまうのがよい。指示されたパトロールによる名声値を確保したうえで,独自の戦果を狙うわけである。もちろん,史実においてそうした行為は,Bduとの協議が前提だったわけだが。
イギリス南西部沿岸を荒らし回り,商船を2隻ほど沈めたうえで,ドーバー海峡を通って帰還するところ。やりたい放題だ
イギリス近海で考えるとなれば,南西部が順当なところだろう。大西洋の大動脈はアメリカとイギリスを結ぶ航路であり,Uボート戦用語でいうところの「ウェスタン・アプローチ」への進出こそ,最終的には通商破壊の要となる。
ゲーム開始時点でアメリカは中立国であり,史実においてアメリカ船への誤認攻撃は大いに警戒された(=参戦の口実を与えることを恐れたわけである。ただし,実際に誤認事故は起こっている)ため,この行動はあまりヒストリカルではないのだが,幸か不幸かこのゲーム,敵船舶と中立国船舶はきっちり航海図上のマークの色で区別されていて,誤認の心配はない。イギリス船籍やフランス船籍のものだけを選んで追えてしまうのだ。それはあんまりだと思うプレイヤーは,南東部,ドーバー海峡の東側出口近辺を狙うとよいだろう。ただし,どちらの場合も陸地に近いだけに,敵航空機には十分に注意したい。
掟破りの二発目は,もしかしたら船団攻撃は避けたほうが得かもしれないという問題についてだ。前回触れたとおり,このゲームに登場する商船はかなり丈夫で,魚雷の1発や2発では沈んでくれないこともしばしばである。UボートはVII型で4+1門,IX型で4+2門しか魚雷発射管を備えていない以上,一度の攻撃で沈められる船は,1隻かせいぜい2隻でしかない。そうなると,多大な危険を冒して厳重に警備された船団を襲うメリットが,計算上ほとんどなくなってしまうのだ。
独航船がいなくなって,ことごとく船団に組織されるなら,嫌でも船団を襲うしかないのだが,1943年スタートでしばらくプレイしてみた感触では,とくにそういったことはない。Uボート戦の華ともいうべき船団攻撃を,割に合わない行動にしてしまうトータルバランスは大きな問題といえるが,キャリアモードのプレイに当たっては,考慮に値する論点である。
前を走っていた小型貨物船はスルーして,その後ろの大型貨物船に攻撃を集中してみた。すでに炎上しているが,なかなかしぶとい
史実におけるUボートは,夜陰に乗じてしばしば浮上したまま船団に接近し,水上で至近距離から魚雷を放った。そして,攻撃後は船団の真下に潜り込むように潜航し,それから離脱を図ったのである。一見すると無謀極まりない行動に思えるが,それぞれに合理的な理由がある。まずUボートは船型が小さいので,闇夜では単純に見つけづらい。そして,船団の周囲を警戒する護衛艦は,パッシブソナーとアクティブソナーで潜水艦を捉えようとするが,どちらも水上目標の探知が苦手なのだ。
アクティブソナーは音波の反射で物体を認識するわけだが,水面近くでは波の影響で,思うように反応が拾えない。また,パッシブソナーにとっても,潜水艦の小さなスクリュー音を水面近くで捉えるのは困難なうえに,護衛対象たる商船のほうがずっと大きな騒音源であるため,探知結果も紛れがちだ。
そもそも連合国は当初,まさか潜水艦がわざわざ浮上した状態で攻撃を仕掛けてくるとは思っていなかったため,水上警戒体制にも不備があった。それゆえにUボートの水上攻撃戦術が奇襲効果を発揮したという点も,大きいだろう。
独航船狙いに終始すると,小物が多くなるのが悩みの種。大型タンカーを仕留めるには,やはり船団を狙うべきである
また,攻撃後に船団の下に潜り込むという手法は,先ほど述べたとおり巨大な騒音源である船団に,自艦を隠すのが狙いだ。浮上したまま船団の列に踏み込んでしまえば,護衛艦は砲撃もできないため,とりあえずは安全である。アクティブソナーの有効範囲はパッシブソナーよりもずっと狭いし,パッシブソナーは船団各船のスクリュー音でほぼ機能しない。一方潜水艦から見た場合,護衛艦はその高速スクリュー音ゆえ十分に探知できる。自分の足跡を消したうえで,護衛艦が最も捉えづらい方向を選んで離脱を図るには,船団自体を隠れ蓑として利用するのが合理的なのである。
ゲームでは,たとえ闇夜を利用しても浮上して肉薄するのはなかなかに困難なので,たいていの場合,普通に潜望鏡深度/機関停止状態で待ち伏せすることになる。逆に離脱のテクニックについては,ある程度史実における例が応用できる。キャリアモード進行上の利害得失はともかく,「Uボートといったら船団襲撃でしょう」とモチーフにこだわりたい人,シングルミッションで船団攻撃を試したい人は,意識しておくとよいだろう。
宝剣柏葉付き騎士十字章をもらった。「先任と同時受賞じゃなきゃ辞退する!」とかは言えないようだ
さて,4回にわたってプレイノウハウとともに潜水艦シム独特の魅力をお届けしてきたが,いかがだったろうか? 我々はともすれば,ゲームの自由度や爽快感を手放しに礼讃しがちであるが(しかも,さらなる自由度を,さらなる爽快感を,という理想化された文脈で使われることが多い),これらはどちらも制約があってこそ成り立つ概念であることを,きちんと見極める必要があるだろう。些少の語弊を恐れずにいうなら,ゲームをゲームとして成り立たせているのは,むしろ制約の立て方のほうなのだ。
サブマリンシムは,そのあまりにも特殊なシチュエーション,日常とかけ離れていながらもリアリズムに徹したコードを通じ,ゲームにおいて制約が持つ意味を鮮やかに示してくれる。もちろん,ゲームデザイン上の限界や技術上の限界は順次乗り越えられていくべきだし,そう見るべき課題はこの連載でも具体的に指摘してきた。だが,ゲームプレイとはもともと,緊張や葛藤とカタルシス(解放感)を一連の過程として楽しむ行為であることを,あらためて確認しておきたい。できないこと,望み得ないことに取り囲まれながら,できることを探していくのは,それなりに楽しいものなのだ。
一人でも多くの読者が,この,屈折ぶりに味のあるモチーフに魅力を感じてくれれば,書き手としてそれに勝る幸いはない。