― 連載 ―

敵や味方がみるみる沈む Silent Hunter III 愛宕潜水学校
「III」番発射管:ハリネズミのロンド[回避・離脱]

「あー諸君,1000年帝国の996年間はもう過ぎたと話題の昨今,パンのカビ具合はどうかね? 今回学ぶのは,一晩に爆雷を120発くらい浴びせられても死なないための基礎知識だ。御利益はほどほどだが,これ以外とくによい方法もないので心して聞いてほしい。諸君の幸運を祈る。以上!」

 

 Uボートシム初挑戦の人を対象に,マニュアルからでは分からない「Silent Hunter III」のプレイノウハウをお届けする本連載。前回の攻撃機動に引き続いて,今回は敵駆逐艦,コルベット艦などから逃げるときのセオリーを中心にお届けする。
 それに先立って,まずは前回の続きから。1発目の魚雷を命中させたあと,Uボートはどう行動すべきか。もちろん基本となるのは,2発目,3発目の魚雷を見舞って敵船を確実に沈めることだ。この作品における商船は,史実ではあり得ないくらいしぶとく,2500tクラスで3本前後,5000t以上なら4〜5本の魚雷を撃ち込まないと沈んでくれない。UボートはVII型で12本,IX型でも10数本くらいしか魚雷を積んでいないにもかかわらずである。敵の速度変化を観察しつつ,1発1発慎重に使いたいところだ。

 

TDC画面のSalvo設定。現在マウスカーソルがある小さなスイッチを「T」から「S」に切り替えると,使う発射管と散角が入力可能に

敵船の針路前方を横切って後部発射管を向け,発射した魚雷をTDC画面で追ってみる。敵の速度が落ちていれば有効な手段だ

 これに関連して,考えどころになるのがSalvo(斉射)の設定である。1発の魚雷は,商船にとって本来かなり致命的な一撃であるからこそ,例えば敵船を囲むよう扇型に数本の魚雷を放ち,どれかの命中を期待するという方法が有効だったりする。ところが本作では,1本当てただけで船を仕留められる可能性はかなり低い。また,散角を持たせず,扇形でなく平行に魚雷を発射する方法もあるのだが,これはこれで2本で沈むところに3本も4本も撃ち込むオーバーキル状況になる可能性を考えると,もったいないやり方だ。
 そういうわけで個人的にSalvoは,たまたま出くわした客船改造型の兵員輸送船や護衛空母(こっちはまずチャンスがないが)など,多少魚雷を無駄にしても1発見舞う価値があって,かつ2度も3度も照準を合わせる時間がないほど高速(22〜30ノット)な目標に限って,散角なしで使っている。

 VII型以降のボートでは,前部発射管の魚雷を使い切ったらUターンして後部発射管の魚雷を使うのがセオリーである。だが,敵艦に肉薄している場合,Uボートの旋回半径が大きすぎて,うまい位置に着けられない場合もある。すでに何発か命中させて敵を速度低下に追い込んでいるならば,思いきってそのまま敵の針路前方を横切り,後部発射管がほぼ敵の針路を指したところで魚雷を放つのも有効な手だ。

 

 また,VII型やIX型を使っていて,敵の速度がすでに落ちているなら,いっそ備砲(マニュアルでは甲板砲)でトドメを刺すのが経済的でよい。敵がQ-ship(武装商船)でないこと,近くにほかの敵がいないことが大前提になるものの,前者については試してみるほかない。大戦も序盤であれば危険は少ないので,いつでも急速潜航できる体制のまま,浮上してみるのもよいだろう。うまくいけば魚雷をかなり節約できる。

 

闇夜を利してリーズナブルな備砲で敵を片付ける。右下にある弾薬選択では徹甲弾が選ばれているが,今撃っているのは榴弾

 さて,この記事では説明の都合上,沈んでいく敵船を見守っていたりもするが,通常のゲームプレイで敵に致命的損傷を与えたら,速やかにその場を立ち去ったほうがよい。救命ボートに移った敵の乗組員に,食料や水,毛布やブランデーを手渡すなどといった泣かせる場面は,このゲームで再現されていない。また,敵が沈む前に救難信号を打電しなかったかどうかも確かめようがないので,急を聞いて敵の戦闘艦や航空機が駆けつけないとも限らないのだ。そうなる前に,三十六計逃げるにしかずである。
 非武装の商船を臨検(戦時輸出禁制品の海上立ち入り検査。戦時国際法では実施するタテマエになっており,大戦初期のUボートはそれを守っていた)もなしに沈めるわ,敵戦闘艦からは逃げるわで,武人としてまことに卑怯未練のふるまいに思えるかもしれないが,そもそもドイツ海軍と英国海軍が決戦に出たら,ドイツに勝ち目がないからこその潜水艦戦(通商破壊戦)なのである。もし勝てるなら,強力な航空機と水上艦で堂々と英国の港湾を封鎖すればよいのであって,そもそも潜水艦の出る幕ではない。
 自国が劣勢であればこそ,商船攻撃に最適化された弱っちい船でしぶとく戦い続けるのがプレイヤーの任務となる。もちろん,敵船舶を続々と沈めるのが一番よいわけだが,仮に一隻も沈められなかったとしても,脅威を与えて敵に船団を組ませ,護衛艦を配置させることで敵船舶の稼航効率・運用効率を大幅に下げ,敵の戦争経済にダメージを与えられる。潜水艦戦の戦略的意義は目に見える戦果には限られないわけで,蛮勇必ずしも勇ならず,なのである。

映画「眼下の敵」など論外。とにかく逃げろ

 そうした側面をよく表しているのが,今回の主題となる敵の攻撃の回避,敵からの離脱だ。霧の中で潜望鏡深度をとっていて,たまたま敵艦を見つけたとか,よほどの幸運にめぐまれない限り,敵戦闘艦を見つけたUボートが採るべき道はただ一つ。急速潜航である。

駆逐艦の砲撃を受ける。さすがにこんなうかつな場面は避けなければならないが,ぎりぎりまで敵のスクリュー音が聞こえないことも

 このゲームで航海図上に表れる敵船舶のマークでは,戦闘艦と商船が区別されていない。そもそも空軍や海軍の誰かが見たとか,無線を傍受したとかいったことの結果として発見情報があるのだから,これは少々おかしいのだが,とにかくそうなのだ。とりあえず商船であることを期待してアプローチを始めるが,不幸にしてそうでなかったときでも,きちんと敵のスクリュー音が確認できれば,遭遇は未然に防げるはずである。
 とはいえ戦闘艦はたいてい,こちらの見積もり(=一般商船)よりも高速で航行しているため,不意に接近してしまうこともあるし,船団襲撃時には嫌でもご対面となる。とくに船団の場合,複数の護衛艦が随伴しているケースも多く,果敢に攻撃をかけたあとは3〜4隻に取り囲まれたりするのが,悲しいかな潜水艦の宿命だ。

 敵戦闘艦発見時,あるいは船団襲撃行動後には,とにかく深く潜って,機関を停止するか無音潜航を命じる(Rig for Silent Running。日本語マニュアルでは静粛航走)かして,静かにしているのが原則である。代表的な対潜兵器である爆雷は,潜水艦がいそうなところにばらまいて,調定深度まで沈むと爆発する確率兵器であり,その効力半径は水圧で減殺される。深く潜れば潜るほど,爆発に巻き込まれる危険は減るのだ。また,大戦初期において,連合国は敵潜水艦が水面下100mより深いところで行動すると想定していなかったフシがあり,100mを超える深度を狙ってくる可能性は低かった。一方でUボートの実用限界深度(カタログスペックとは異なる)は200数十mに達しているため,100mちょっとなら,まだまだ余裕があるわけだ。

 

航海長に命じて,艦底から海底までの距離を測深儀で計測させる。敵がいそうなときは,絶対にやってはいけないアクションだ

 自分の活動海域で海底が何m下にあるかは,あらかじめ計測しておく必要がある。イギリス近海などの大陸棚では,海の深さが50mそこそこしかなかったりするからだ。とはいえ,敵艦や敵商船を見つけてから測深儀を動かしたのでは遅すぎる。マニュアルにも書かれているとおり,測深儀はアクティブソナーと同じく音波を発してその反射で水深を測る機器なので,作動させると敵艦に探知される危険があるためだ。
 史実におけるUボートは,支給された海図に記載された水深を基準に行動しており,測深儀はほとんどといっていいほど使わなかった。だがこのゲームでは,ほかに水深を知る手段がないので,活動予定海域に着いたら,まずは計測を済ませてしまうことをお勧めする。水深の変化はそれほど急ではないため,その海域のおおよその深さを知っておけば十分だ。
 接敵に伴う緊急の操艦では,ホットキーが役立つ。Silent Hunter IIIはフルマウスオペレーションのゲームだが,パッケージ付属の「クイックリファレンス」にあるとおり,かなり多くの操作がホットキーで可能となっている。とくに,急速潜航[C](Crash dive),潜望鏡深度[P](Periscope depth),浮上[S](Surface)あたりは必ず覚えておこう。ただし,水深が70m以上ない海域で急速潜航を命じたら,目標深度を忘れずに途中で変更し,無意味な着底破損を避けたい。

爆雷炸裂直後こそ,最大の離脱チャンス

敵戦闘艦の動静は,ハイドロフォンによる聴音で把握する以外ない。そのデータがどういう現実を反映しているか,的確に判断したい

 Uボートにとって宿命の敵である駆逐艦やコルベット艦と,その対潜攻撃戦術について最小限の確認をしておきたい。彼らは艦首底面方向にパッシブソナーとアクティブソナーを持ち,艦尾に爆雷投下軌条を備えている。爆雷は基本的に,彼らが艦尾から道すがら投下するものなので,理屈からいえば彼らの航跡に足を踏み入れない回避機動が望ましい。
 敵があさっての位置に爆雷を落としている状況なら,おとなしく機関を停止しているか,無音航走で敵から遠ざかる方向へ,そろりそろりと逃げ出せばよい。だが敵が接近してきて,アクティブソナーかパッシブソナーでこちらを捕捉し,こちらが狙われ始めたら,もっと積極的な攻撃回避策が必要になる。もっとも,敵がこちらを捕捉しているかしていないかなど,窺い知りようもないのだが。
 念のために確認しておきたいが,敵艦と出くわして潜航した後,離脱に成功するところまで,こちらが使える敵の動静把握手段はハイドロフォン(パッシブソナー,水中聴音機)のみである。どのみち反撃を試みることは自殺行為なのだから,決してアクティブソナーや潜望鏡で敵の動きを積極的に掴もうとしてはいけない。それは,ただただ敵にこちらの位置や動きを知られる危険を増やすだけの行為となってしまう。

 

敵戦闘艦の高速スクリュー音を2方向に探知したところ。実は先刻まで,右の戦闘艦から逃げていた。一難去ってまた一難である

 聴音結果のみから敵の針路を大まかに絞り込み,それとの関係で自艦の動きを決める必要がある。例えば敵のスクリュー音が自艦の左舷45度(角度は時計回りで表記するため,この場合ゲームでは315度といわれるはず)あたりから聞こえていて,接近中だとする。ここで注意すべきは,音源方向が自艦の艦首方向へ移動していくか,艦尾方向へ移動していくかである。
 音源が艦首方向へ移動するなら,敵艦は自艦の針路前方を横切る形で左前から右後ろへと斜めに通過し,最終的に自艦の右横を通る見込みとなる。敵の航跡を避けるのが理想だから,この場合は無音航走のまま,左に大きく転舵しておくのがセオリーだ。
 音源の移動が逆に艦尾方向ならば,敵は終始自艦の左側にいることになる。この場合素直に右に舵を切って,無音航走のまま少しでも敵と距離をとるのが原則になるだろう。とにかく,敵の航跡と交差せず,手前ですれ違うように動くのがコツである。

 

音源の移動と,そこから推測される敵艦の動き

 

 

 敵が距離を詰めてくると,アクティブソナーのピン(探信音)がひときわ大きくなり,ハイドロフォンごしでなくても敵のスクリュー音が直接聞こえるようになる。音が大きくなるペースが上がってきたら(あるいはハイドロフォンによる音源方向探知結果がハイペースで変化するようになったら),敵が増速している証拠だ。
 敵は,落とした爆雷の炸裂に自分が巻き込まれないために,攻撃時には増速する必要がある。そして重要なのは,増速の結果としてアクティブソナーが無効になり,パッシブソナーも敵自身の出す騒音で,ほとんど機能しなくなっている点だ。自艦を追っている敵が1隻だけなら,このときこそ機関全速で短時間のダッシュをかけ,敵の狙いを外すべきタイミングなのである。
 ただし敵が複数いる場合,そうして派手に動くのは危険だ。最も近い敵をかわせたところで,もう少し離れた別の敵に位置と動静を知られるハメになるからだ。その場合,爆雷がまさに炸裂したときが,唯一のダッシュのタイミングとなる。敵が何隻いようと,さすがに爆雷が炸裂した直後の荒れた水中状態で聴音は不可能だ。思い切ってダッシュしてから,再びなりを潜めよう。
 十分な水深があるなら,敵が近づくたびに潜航深度を50m単位くらいで大胆に変え,ここでも敵の探知結果の裏をかくよう努めたい。水上戦闘が2次元なのに対し,水中戦闘は3次元で,そこが面白かったりもするのだ。敵の深度調定が適切で,自艦近くで爆雷が炸裂した場合,艦が揺れたり各部に破損が出たりする。そうした状況も考慮に入れ,圧縮空気残量と相談しつつ,勘を働かせてほしい。

 

Uボートとその装備は,時期を追って改良型が登場する。消耗品の魚雷も含めて,名声値をどこにつぎ込むかが考えどころだ

 ここまではあくまで基本であって,大戦も後半になると連合国はK-Gun,Y-Gunといった投射型爆雷を実用化し,増速しなくても望んだ位置に爆雷を投下できるようになっていく。また,小型・大量(30発ないし60発)投射・触発信管を特徴とする対潜弾「ヘッジホッグ」が登場すると,もはや無駄な爆発にまぎれて離脱する方法も使えなくなる。護衛艦の数も増えて,2隻がチームを組む「ハンター・キラー戦術」は普及するわ,無線を逆探知するHF/DF(ハフ・ダフ)は進化するわ,あげく磁気探知装置や航空機から投下する聴音対潜魚雷まで登場して,大戦後半のUボートはまったくもって絶望的な状況の中で奮闘するハメになった。
 ゲーム内でも,少なくとも投射爆雷やヘッジホッグの洗礼を浴びるはずであり,そのとき頼りになるのは,あくまでも基本に忠実な遭遇回避と離脱のテクニックしかない。シュノーケルにしても,対レーダー波コーティング「アルベリヒ」にしても,とにかく敵に見つかる危険を減らすことに意味があったのだ。

 

艦載機に取り囲まれ,慌てて潜航するところ。対空機銃を追加したりアップグレードしたりもできるが,効果は大いに疑問だ

 最後に敵航空機に関して。ゲーム内で最大限の努力をするとどこまでいけるかは十分に試せていないのだが,基本的に対空機銃を充実させて対応しようなどと考えないほうが,賢明なように思われる。史実における対空潜水艦構想の実験は,すべて手痛い敗北を喫した。航空機が搭載できる兵器に比べて,潜水艦はあまりに脆弱であるし,航空機を1機や2機返り討ちにしたところで,その大きなリスクにはまったく見合わないのだ。敵機がレーダーを搭載して,夜間攻撃すら可能になると本当に悩ましいのだが,とにかく対空哨戒に努め,急速潜航で対応するのがセオリーだろう。

 4万人が出撃し,そのうち3万人が帰らなかったとか,イギリスの保険会社が乗組員の平均余命を11か月と見積もったとか,いろいろな意味ですさまじい話の多いUボート戦。屈折しまくった英雄的戦闘を,不屈の闘志で存分に楽しんでほしい。次回は,個別の戦闘でなく,キャリアモードを進めるうえでのコツを中心にお送りする。

■■Guevarista(4Gamer編集部)■■
自身で執筆している本連載以外にも,お互いにかなり食い合わせが悪いはずの複数の連載記事を担当してきた,4Gamerのヒットメーカー(?)。そういった編集者にありがちなのだが,基本的にびっくりするほど作業が遅く,デザイナーが24時まで帰れない主な原因となっている。おかげで4Gamerのデザイナーは皆,みるみる衰弱している。
タイトル Silent Hunter III 日本語マニュアル付英語版
開発元 Ubisoft Entertainment 発売元 フロンティアグルーヴ/Ubisoft Entertainment
発売日 2006/06/02 価格 6090円(税込)
 
動作環境 OS:Windows 2000/XP(+DirectX 9.0以上),CPU:Pentium III/1.4GHz以上もしくはAthlon XP 1400+以上(Pentium 4/2GHz以上もしくはAthlon XP 2000+以上推奨),メインメモリ:512MB以上,HDD空き容量:2GB以上,グラフィックスカード:DirectX 9対応製品(MXシリーズを除くGeForce 3/4/FXシリーズ以降,Radeon 8500/9000シリーズ以降推奨),グラフィックスメモリ:64MB以上(128MB以上推奨),サウンドカード:DirectX 9対応のPCI接続製品

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