― 連載 ―


酒呑童子と源頼光
 酒呑童子と源頼光 

Illustration by つるみとしゆき
 丹波(現在の京都)の大江山に,酒呑童子(しゅてんどうじ)という鬼が住んでおり,女性をさらって食らい,周囲の村で暴れるなど狼藉を働いていた。あるとき,池田中納言の最愛の娘がさらわれたことから,酒呑童子を討伐するようにとの勅命が下る。そこで抜擢されたのが,清和源氏の嫡流で,豪傑として知られた源頼光だったのである。源頼光は渡辺綱,坂田金時,卜部季武,碓井貞光を連れて,石清水八幡,住吉明神,熊野権現へと参拝して必勝を祈願すると,山伏に変装して大江山へと向かった。
 大江山に向かう源頼光は,道中で3人の老人に出会った。3人の老人は妻子を鬼に奪われ,悲しい思いをしてきた。ぜひとも酒呑童子を倒してほしいと話し,人間には安全だが鬼には毒となる神便鬼毒酒,星甲(ほしかぶと)と呼ばれる甲冑を源頼光たちに渡すと,姿を消してしまった。実はこの三老人は,先に祈願した石清水八幡,住吉明神,熊野権現の化身だったのである。

 神便鬼毒酒と星甲 

 大江山に到着した一行は鬼の館に向かうと,自分達を道に迷った山伏と偽り,言葉巧みに酒呑童子に取り入ることに成功した。気を良くした酒呑童子は酒宴を開き,源頼光らをもてなしたが,神便鬼毒酒によって力を失い,眠りこけてしまった。源頼光は酒呑童子を鉄の鎖で縛ると,大原安綱という刀で首を刎ねた。首だけになってしまった酒呑童子だったが,なんと最後の力を振り絞って源頼光に襲いかかる。しかし源頼光は老人から授かった星甲を着ていたおかげで,酒呑童子の牙を防ぐことができたのだった。
 こうして源頼光は大江山の酒呑童子を退治すると,中納言の娘と共に凱旋したのである。また鬼を倒したということで,大原安綱は以後,童子切安綱と呼ばれることになった。以後,童子切安綱は足利氏が秘蔵し,信長,秀吉,家康などの天下人の手を経て,現在では国宝として東京国立博物館に保管されている。

 天下五剣,童子切安綱 

 室町時代以降は刀剣が鑑賞の対象となることも多く,童子切安綱は,鬼丸国綱,三日月宗近,数珠丸恒次,大典太光世と並んで,天下五剣の一振りとして知られている。
 童子切安綱は刃渡り80僉2.7僂糧燭蠅里△訶畄で,大江山の酒呑童子退治以後,戦いで目覚ましい活躍をした記録はほとんどない。ちなみに,童子切安綱が錆びてしまい補修のため本阿弥家に運ばれたときに狐の行列が現れたり,火事のときには屋根の上に狐が現れて童子切安綱を運び出すように振る舞ったという,神秘的な言い伝えもある。ほかにも狐憑きになってしまった人から狐を払ったという話もあるようだ。狐との因果関係は不明だが,なかなかに興味深い逸話といえるだろう。
 また,優れた刀としての逸話もある。戦で振るわれることがなかった童子切安綱だが,津山藩の江戸屋敷で童子切安綱を使った,試し斬りが行われたとの記録がある。町田長太夫という試し切りの達人が,6人の罪人の死体を積み重ねて童子切安綱を振り下ろすというものだったが,なんと六つの死体を切断しただけではなく,刃が土台まで達したというのだ。町田長太夫の技量も大した物だが,その切れ味は驚愕に値するだろう。



■■Murayama(ライター)■■
システムソフト・アルファーの取材「こちら」のため福岡取材へ行ったMurayama。その出発の飛行機が,乗ったままなぜか飛び立たない。その日,羽田空港の管制が1時間ダウンするという出来事があり,その1時間が,ちょうどMurayamaのフライトの時間と重なったらしい。Murayamaはこの手のトラブルには昔から異常にひっかかるらしく,「もう慣れっこだよ,ははは」と語っていたが,むしろ彼自身が招いているのではないかと疑ってしまうほど頻度が高い。