― 連載 ―

誰もがRPGを愛していた
私は霊魂が不滅であるかどうかは知らない。けれども,日々新しい生命が生まれてくることを知っている(トーマス・カーライル,19世紀イギリスの思想家)

Illustration by よりと

※クリックで続きを読む

 最近,自宅にあるエレキギターのパーツを寄せ集めて,新たなエレキを作ったりしている。つい先日も,10年くらい放ってあったエレキギターのボディに,外してあった部品を付けて,一つ組み上げてみた。
 エレキギターの良いところは,このように自分であれこれいじり回せるところだ。そう,まるでPCの自作のようなのである。
 PCと同じで,エレキギターの製作も,ボディから作るようなことをしない限り,ドライバーとはんだごてくらいで済んでしまう。パーツの交換も,やはりPCのグラフィックスカード交換や,メモリやHDDの増設と似たようなところがあり,パーツが無数ともいえるくらい発売されているところもそっくりだ。
 完成後のことを想像しながら新しいパーツの選定するときや,それを組んでいくときの楽しさは,自作PCの組み立てに通じるところがあり,実に面白いのである。

 さて今回は,「Neverwinter Nights」(以下,NWN)を題材に,多くの人によって日々作られている新たなパーツ(MOD)を組み込むことで,まったく別の遊び方ができてしまうという,PCゲームならではの面白さを紹介しよう。
 では,実際にはどんなゲームに仕上がったのだろうか。

 

ネヴァーウィンター・ナイツ
日本語版(価格改訂版)

メーカー:セガ
価格:8190円(税込)

※このページに掲載した画面は,すべて英語版のものです

D&Dベースの硬派なRPG,それがNeverwinter Nightsだ

D&Dという,RPGの元祖をベースにしているだけに,ファンタジーRPGの王道を堪能できる

 NWNは,カナダのゲームデベロッパBioWareが開発し,2002年6月に北米で発売されたRPGだ。日本では,セガより「ネヴァーウィンター・ナイツ 日本語版」として,2003年3月に発売されている。
 NWNは,テーブルトークRPGでお馴染みの「Dungeons & Dragons」(ダンジョンズ&ドラゴンズ。以下,D&D)の第三版ルールをベースに制作されたファンタジーRPG。発売されるやいなや,(当時としては)美しいグラフィックスと,練りこまれたストーリー,シンプルな操作体系などから大ヒットとなり,2002年度の“Computer Role Playing Game of the Year”をはじめ,“Best Roleplaying Game of 2002” “Role Playing Game of the Year 2002”など,数多くの賞を獲得している。

 フォーゴットンレルムの世界の北方に位置する大都市ネヴァーウインターは,原因不明の伝染病「死悶の疫」によって崩壊の危機に瀕していた。どこからともなく忍び寄ってきたこの死の病は,あっという間に街の隅々にまで広がり,多くの犠牲者を出したのである。
 医者や魔導士達は,この病を撲滅すべく懸命に研究を行っていたが,彼ら自身も次々と病に倒れていき,もはや打つ手はないかに思えた。
 そんなネヴァーウインターのアカデミーに所属する一人の若者である主人公(=プレイヤー)は,女王アリベスの命により,この伝染病の治療薬を求めるべくアカデミーを後にし,その背後に隠された巨大な陰謀に巻き込まれていく……。

 

 

プレイヤーキャラのアップ。当時の最新グラフィックスで,いま見てもあまり古さを感じさせない

 NWNは,キャラクターを斜め上から見下ろした三人称視点が採用されており,地面をクリックすればそこへ移動し,クリーチャーをクリックすれば攻撃するというシンプルなスタイルだ(キーボードで移動するようにも設定可能)。
 プレイヤーが選択できる種族は,人間,エルフ,ドワーフなど7種類で,職業はファイター,クレリック,パラディン,モンクなど11種類が用意されている。また,D&Dならではの,一人で複数の職業を兼ねる“マルチクラス”も可能となっている。
 マルチクラスの良いところは,基本はファイターでありながら,傷を癒すヒールの魔法も習得できるというように,器用なキャラクターを作れる点にある。ただし,シングルクラスのキャラクターとは比べ物にならないほど成長が遅く(レベルアップまでの経験値がより多く必要となる),そこでバランスが取られている。

 

これがダンジョンマスターモード。ゲームスタートのチュートリアルで使われる部屋に,巨大なドラゴンを出してみた

 NWNならではの特徴として,プレイヤーがダンジョンマスター(DM)となって,ほかのプレイヤーと共にテーブルトークRPGそのままのプレイをできるという点が挙げられる。
 ダンジョンマスターとなったプレイヤーは,ほかのプレイヤーが操作するキャラクターに,情報を与えたり,クリーチャーを襲いかからせたりというように,ゲーム外の存在となって,ほかのプレイヤーを楽しませられる。これが,普通のシングルプレイやマルチプレイとは,また違った面白さを持っているのだ。

 

MODを知らずして,NWNを語るべからず!

 さてNWNは,(コンプリートに60時間以上かかるという)シングルプレイもマルチプレイも,どちらも非常に面白いのだが,MODを導入することで,より一層楽しめる。というか,あえてここでは断言しておこう。NWNを楽しみ尽くしたいなら,MODを入れなければ意味がない,と。
 NWNのMODには,オリジナルマップや新規キャラクター,アイテムを追加するだけのものから,「え,これがNWNなの?」と眼を疑う,オリジナルのゲームの姿などどこにもないくらいに変えてしまう大掛かりなものまでが,それこそ無数に揃っている。しかも発売から4年近くを経て,間もなく5年目に入ろうとしているのに,今なお日々新しいMODが生まれてくるというのは驚きだ。
 ここでは,数あるMODの中から,とくに評判が高いものや,オリジナリティに溢れているものなどを紹介しよう。

 

 一つ注意してほしいのは,ここで紹介しているMODは,基本的にすべて英語版向けのMODであるという点だ。日本語版NWNでも正常に動作するはずだが,メッセージは当然すべて英語なので,その点はご了承を。
 なおMODには,NWNの拡張パック「Shadows of Undrentide」「Hordes of The Underdark」が必要となるものも多いが,ここでは,拡張パックを必要としないMODのみを紹介している。

 

「The Peasant」

 貧しいながらも平穏な村で,行方不明になった妹の探索を始めるという,典型的なRPGスタイルのMOD。レベル1キャラクターでのゲームスタートに対応しており,新たにキャラクターを作成してプレイするのに向いている。4〜6時間程度でコンプリートできるので,初めてMODをプレイするという人にお勧めだ。

 詳細とダウンロードは「こちら」

 

「Advanced Battle of the Dragons」

 ストーリー抜きに,純粋に戦闘だけを楽しむMOD。数名のAI操作のキャラクターと共に,バトルグランドと呼ばれるマップで,やはりAIが操作する敵チームと戦うという,シングルプレイながらチームバトルを味わえる。使用キャラクターは一律でレベル4にされてしまうので,勝敗のカギは,プレイヤーの戦略と腕にかかっている。

 詳細とダウンロードは「こちら」

 

「Shadowlords, Dreamcatcher, and Demon campaigns」

 三つのキャンペーンが一つにまとめられたオールインワンパック。どれもが正統的なファンタジーRPGで,なんとオープニングムービーまであるという,力の入った作品。会話で選択肢を誤ると突然死んでしまうこともあるなど,なかなかシビアな設定だ。EXEファイル形式で配布されているので,面倒なインストール作業が必要ないのも嬉しい。

 詳細とダウンロードは「こちら」

 

「Bone Kenning I: Art of the Thanaturge」

 最初の部屋を抜けると,すぐに屋外でコボルドとの戦闘になる。夜で,しかも立ち木によって視界がさえぎられているという不利な状況のもと,暗がりから弓で攻撃してくるコボルトと戦うには,レベル1のキャラクターではつらいかも。会話の文章量が結構多いので,プレイしているうちに読むのが面倒になってくるかもしれないが,ファイルと一緒に入っているテキストに攻略ガイドが書いてあるのがありがたい。

 詳細とダウンロードは「こちら」

 

「Pool of Radiance」

 あのRPGの名作「Pool of Radiance」をベースに作られているMOD。序盤から,街のスラムに巣食うゴブリンを一掃するクエストが発生するなど,最初からレベル3〜4程度のキャラクターがないと少しつらいかも。しかしこのゴブリンを倒すと,そこそこのアイテムやお金を落とすのが嬉しい。最初に出会うNPCが,街の中を案内してくれる。

 詳細とダウンロードは「こちら」

 

「Sex & The Single Adventures」

 タイトルにもあるように,女魔法使いが主人公のセクシー系MOD。出会った男性NPCとムフフなことを繰り広げながらも,ちゃんとクリーチャーとの戦闘なども楽しめる。レベル20の女魔法使いが主人公として用意されているので,最初から派手な魔法を使い放題だ。

 詳細とダウンロードは「こちら」

 

 これらのMODをインストールするには,解凍してできたmodファイルを,NWNのインストールフォルダにある「modules」フォルダにコピーすれば,大抵の場合はOKだ。EXEファイルになっているものは,ダブルクリックするだけで,必要なファイルがコピーされるようになっている。
 MODをプレイするときは,起動メニューから「プレイ」→「新規」を選択し,さらにメニューから「その他のモジュール」をクリックすると,インストールされているMODのリストが表示されるので,プレイしたいものを選ぼう。

 

レベルが上がればハデな魔法も使い放題だが,そこまでの道のりは長い。油断していると,すぐに死んでしまうのもD&Dならではのシビアさだ

 NWNのMODを語るときに忘れてはならないのが,「Premium Neverwinter Nights MODules」だ。これは,開発元のBioWareが制作した公式MODとも呼べるもので,「Pirates of The Sword Coast」「Kingmaker」「Shadow Guard」「Witches Wake」の4本がリリースされている。
 ただし,どれも5〜10ドル程度で購入する必要があるので(「Witches Wake」は現在発売されていない),MODというより,ミニ拡張パックと呼んだほうがふさわしいかもしれない。
 有料ということもあるので,ここではタイトルを挙げるだけに留めておく。興味のある人は,公式ページで各MODの詳細をチェックしてほしい。

 

 NWNは,リリースから数年が過ぎたとはいえ,今でも十分楽しめるし,MODのおかげで新鮮さも失われていない。発売当時はハードルの高かった動作環境(CPU:Pentium III/800MHz以上推奨,メインメモリ 256MB以上,グラフィックスメモリ:64MB以上など)も,最近のPCならば楽勝でクリアできるはず。欧米産RPGが好きなら,ぜひプレイしてほしいタイトルだ。
 日本語版もまだ購入可能だが,英語版では,本体,拡張パック,そして公式MODまでをワンパックにした「Neverwinter Nights: Diamond Compilation Pack」が30ドル前後発売されているので,英語の長文が苦でないような人なら,こちらを購入するのも手だ。

 

■■朝倉哲也(ゲームライター)■■
“仕事の速い人”は,現代社会では“仕事のデキる人”とほぼイコールで結ばれるのだが,朝倉氏の仕事スピードは,デキる人どころではない。趣味のエレキギターやバイク,DVD鑑賞などに毎日時間を割き,MMOを含むPCゲームをプレイしつつ,毎日10前後の記事を書いているのだから,恐れ入る。およそ編集部と名の付く部署にとって,仕事の速いライターほど便利なものはなく,4Gamerでも,「締め切りが近いのに書き手が見つからない」「予定していたライターの原稿が届かない」といったときは,彼の本領発揮だ。もちろん,当連載も同様である。逆に言うと彼が執筆しているときは,「何か事情があったんだなぁ」と思ってもらって,ほぼ間違いないだろう。
タイトル ネヴァーウィンター・ナイツ 日本語版 バリューパック
開発元 BioWare 発売元 セガ
発売日 2006/09/21 価格 6090円(税別)
 
動作環境 N/A

NEVERWINTER NIGHTS Shadows of Undrentide (c) 2003 Atari Interactive, Inc. All Rights Reserved. Manufactured and marketed by Atari, Inc., New York, NY. Neverwinter Nights, Forgotten Realms, the Forgotten Realms logo, Dungeons & Dragons logo, Dungeon Master, D&D, Baldur's Gate, and the Wizards of the Coast logo are trademarks owned by Wizards of the Coast, Inc., a subsidiary of Hasbro, Inc., and are used by Atari under license. All Rights Reserved. BioWare, the BioWare Aurora Engine and the BioWare logo are trademarks of BioWare Corp. All Rights Reserved. The Atari trademark and logo are registered trademarks of Atari, Inc. All Rights Reserved. All other trademarks are the property of their respective owners.


【この記事へのリンクはこちら】

http://www.4gamer.net/weekly/rpg/010/rpg_010.shtml