連載:ハーツ オブ アイアンII ドゥームズデイ スパイ大・・・戦?


ハーツ オブ アイアンII ドゥームズデイ スパイ大・・・戦?

最終回:和平建国 同生共死?:汪兆銘中国

 

汪兆銘政権を立てるには日本から開始。国民党スタートでも可能だが,運の要素が絡んでしまう

 連載第12回の満州国プレイ前編で,AI日本軍がやたらと好調だったのをご記憶だろうか。中国を併合し,インドと東南アジアを席巻,あろうことか中東の産油地帯にまで進出していた。いや,そのあとでソビエトに鎧袖一触打ち破られたあとはさんざんだったわけだが。
 このときのリプレイではさらっと触れるに留めたものの,中国に汪兆銘(汪精衛)政権が立ったのは,見逃せない椿事であった。だって,あの汪兆銘政権ですよ? 満州が国と呼び得るかだけでも大いに疑問だというのに,そこへ来て汪兆銘政権とは。
 しかしこれを見てしまった以上,チャレンジするしかないという思いが湧き上がってくるのも事実。そこで連載最終回となる今回は,万難を排して汪兆銘政権でのリプレイをお届けする。読者のみなさんにはくれぐれも,史実とシンクロさせた興味に適度なバランスを保つよう,意識しつつお楽しみいただきたい。

 

この連載は,第二次世界大戦あるいはその後の歴史に関わった,いかなる国や民族,集団あるいは個人をおとしめる意図も持っていません。ときに過激な表現が出てくることもありますが,それはあくまでゲームの内容を明確に説明するためのものですので,あらかじめご了承ください。

 

 

汪兆銘政権,政権にあらず?

 

 さて,本作における汪兆銘政権はいささか特殊な存在である。史実の汪兆銘政権は,日本が蒋介石の国民政府から政治的正統性を奪い,一地方政権に落としてしまう狙いで作った“もう一つの中国政府(予定)”であって,当然ながら蒋介石の国民政府はその間も機能し続けていた。ドイツの傀儡であったヴィシーフランスと比較すれば分かりやすいのだが,ヴィシーフランスはフランス共和国が敗れて講和が結ばれたあとに組織されたのに対し,日本と蒋介石の国民政府は講和などしていない。講和の結果として作られた傀儡政権ではないのだ。
 このあたりの事情によるものか,ドゥームズデイには基本的に汪兆銘政権は登場しない。史実における存続期間内のシナリオを見ても,それは明らかだ。つまりゲームデザイン上,「汪政権工作」は工作でしかなかったということなのである。

 では,どんな条件で汪兆銘はゲームに登場するのか? まず汪兆銘政権は蒋介石の国民政府と両立しない。汪兆銘はあくまでも国民政府首班として登場するため,まずは国民党が日本に屈し,その後のイベントで日本が中国全土を完全な傀儡国家にするという選択をした場合に,汪兆銘が指導する国民政府が成立するのだ。
 では1936年シナリオを日本で開始,素早く中国を制圧して再独立させれば汪兆銘政権が出来るかというと,そう簡単ではない。汪兆銘は1938年以降にしか登場しないので,日本プレイの常道「中国電撃戦」を実行すると,首班は国民党の長老である林森になってしまう。

 

国民党スタートでイベントを強制発動させたところ。中国の南半分が林森政権に

 

こうして見るとこの展開は苦しいように見えるが,軍備が温存される,将軍が残る,インド方面に突破するとインドが中国領になるなど,メリットのほうが多い

 

汪兆銘の強烈なパフォーマンス。この能力を持っている指導者は非常に少ない。まあ,ちょっとアンバランスなくらい凶悪かも

 傀儡中国プレイが目当てなら林森国民党でもいいのだが,今回は汪兆銘こそがターゲットなので,これはいただけない。ちなみに林森と汪兆銘の能力をそれぞれ見てみると,林森は「臆病な頑固者」の特性を持ち,これは指揮統制値回復+5%に外交コスト+10%という,あってもなくても正直気にならない能力の持ち主だ。対する汪兆銘は「権力の亡者」特性を持っており,こちらは軍隊の指揮統制値−10%に資金生産−25%というペナルティと引き換えに,歩兵と民兵の生産速度25%向上(おまけとしてクーデター発生率−80%)という,なかなか強烈な個性を持ったリーダーである。中国の労働力を背景としつつ,通常より25%速く歩兵を生産する(代わりに軍隊は全体的に脆弱)……究極の「質より量」プレイが期待できよう。……まあその,史実における汪兆銘を権力の亡者と位置付けるのは,いままでに作り上げられてきた汪兆銘政権観からして,苦笑を誘う解釈といえるが。

 

 話をプレイへの影響に戻そう。汪兆銘の特性に加えて,仮に軍の性格を徴兵制に完全シフトさせると,指揮統制にはさらに−10%のペナルティ。陸軍ドクトリンで無謀にも「ゲリラ戦」を取れば,さらに−10%ペナルティ。……だんだん,軍隊って何? という水準に近づいてくる。
 ゲリラ戦ドクトリンを取るかどうかはさておき,潤沢な労働力を活かすなら徴兵制シフトは必然なので,都合−20%の指揮統制値ペナルティは確定だ。しかも汪兆銘政権は日本の傀儡国家なので,資源の輸出入相手国は日本に限定される。そして中国には,設定されたICを維持できるだけの国内資源産出がない。基礎ICこそ80を超えるにしても,実効ICは60未満と見ていいだろう。国家運営上の不安は,ますます募るのである。
 そして,汪兆銘国民党がどこと戦わねばならないかというと,まず確定しているのがイギリスとアメリカ。そして比較的高い確率でソビエト。……始める前からおなかいっぱいな状況である。期待も高まったところで,汪兆銘政権の樹立から始めてみよう。

 

同じコマンドを日本側で発動させると選択肢が出現,ここで中国全土の傀儡化を選ぶと汪兆銘政権が誕生する

 

 

「艶電」なしの汪兆銘政権樹立

 

新政権を誕生させた場合,とりあえず一度セーブしてからゲームを再開したほうがいろいろと無難。史実の汪兆銘政権も「国民党」だったわけで,分かりづらいったら

 普通のシナリオで国民党を選んでも,汪兆銘は登場しない。今回のプレイではまず日本を選ぶことになる。日本でシナリオを始めたら適切な時期(後述)にF12キーを押して,チートコード入力ウィンドウを開く。
 続いて,そこに「event 3814」と入力する。これは中国が日本に降伏するイベントで,いきなりそれを強制発動させようということだ。これによって戦況とは無関係に中国は降伏,蒋介石はゲームから除外される。
 ここで日本には選択肢が三つ提示される。一つは中国を日本に完全併合するという選択。これをやると話が面倒になるので,今回はパスだ。二つめは,中国を部分的に併合し,残りを傀儡として支配するという選択。これだと汪兆銘が登場しないのでやはりパス。
 最後が中国全土を傀儡として支配するという選択。これによって無事汪兆銘政権が成立する。
 ここまできたら,いつもどおり分かりやすい名前でデータをセーブしてゲームを終了させ,そのセーブデータで「国民党」を選択すると,無事に汪兆銘国民党でのプレイが可能になる。

 だが選択肢はこれだけではない。汪兆銘政権をいつ成立させるかが問題である。正直,蒋介石国民政府の屈服が条件である以上,どの時点で成立させたところでかなり非現実的なのだが,いくつか考慮すべき事柄は残る。
 まず1936年シナリオでいきなりやると,前述のとおり林森政権になる。とりあえずこれではダメだ。1938年以降ならば汪兆銘政権が出来るが,1938年時点で日本軍が中国全土を制圧したという仮定は,あまりにもリアリティからかけ離れている気もする。また,たとえ大陸打通作戦(一号作戦)の結果を考慮したとしても,1944年シナリオの時点でいまさら蒋介石が落ち目の日本に降伏するというのも,まずあり得ない話である。そんなこんなの消去法で,今回は1941年シナリオ冒頭を選択した。1941年の場合,シナリオは1941年6月22日開始となる。ドイツかソ連で東部戦線を戦えという日付であり,当然ながら年末近くには対米戦の幕開けとなる。
 それと,event 3814では大方の予想どおり,中国共産党は降伏しないことも書き添えておこう。今回かなり強引にゲーム内歴史を改変しているので,むしろこれを見てホッとしたというのが偽らざる感想だ。とはいえゲームはゲーム,まずはその中国共産党を討伐するところから物語はスタートするのだが。

 

 

蒋校長を慕う将帥,汪兆銘に従わず?

 

武装解除された中国。でもあっという間にまた軍隊で埋まるので大丈夫

 上記のような方法で汪兆銘政権を立てると,いろいろなサプライズが連続する。最初のサプライズは,全土傀儡化プロセスに武装解除が含まれるため,軍事ユニットがすべて解体されてしまうことだ。シナリオ開始時点で,中国共産党と国境を接している(当たり前だ)にもかかわらず,こちらはノーガードである。
 次のサプライズは,労働力が100ちょっとしかないこと。降伏前には2400くらいあったにもかかわらずである。1日あたり+1.3くらいのペースで回復するため不足はないが,スタートダッシュで大兵力を揃えるのは無理だ。
 極めつけのサプライズは,陸海空三軍にわたって一人も指揮官がいないことだ。部分的な傀儡化の選択肢を選ぶと軍備も指揮官も維持されるので,公職追放でも受けたことになっているのだろうか? 指揮官がいない以上,陸軍は2個師団以上で戦闘すると指揮可能部隊数超過ペナルティを受ける――要するに,普通に戦争はできない。
 そして当然だが,汪兆銘政権所属の研究チームは国民党のものを引き継ぐので,研究枠が三つ以上ある国のなかでは最低水準の研究チームを拝領することになる。
 唯一の希望は,日本にいったん併合されたうえで独立という手続きを踏んでいるので,日本のものをベースとした比較的高度な技術開発が完了していることだ。とくに海軍関係の技術進捗は世界レベルといえるし,陸軍・空軍についても相当恵まれた状況にある。汪兆銘海軍を作ることはまずないだろうが,空軍ドクトリンの研究が進んでいたりするのは非常に明るいニュースだ。

 

汪兆銘傀儡政権の,かなり恵まれた初期状態。この「日本ブースト」をベースに大動員すれば,大活躍間違いなし,かな?

 

 

清郷政策を継続し,囲剿戦を完遂

 

中国共産党は空白の2か月のうちにこれくらい進出してくるが,ここらが限界。中国山岳部での戦闘経験が多いと,譲れないプロヴィンスが自然と見えてくる

 サプライズはサプライズとして甘受し,目の前の問題から片付けていこう。最初の問題は中国共産党軍の侵入である。
 とはいえ,これは重篤な問題ではない。中国共産党は,元の国民党軍で戦うと質的な差を大きく感じる相手だが,日本軍ブーストされた汪兆銘陸軍の敵ではない。さらに,どうやら1941年になっていても有効な塹壕を掘る技術が開発できていないのか,静止状態で日本軍の爆撃を受けても戦力がごっそり減っていく。一時的に領土を失うことはあるにしても,最初の2か月で完成する新生国民党軍第1陣で防波堤を作り,次のサイクルで反撃を開始すれば,大きなトラブルには発展しない。
 もっとも,汪兆銘陸軍は2個師団になった段階で指揮超過ペナルティを受けるので,とりあえず戦闘には−75%のペナルティがあるものだと思って戦闘プランを練ったほうがよい。相手が1個師団で,相手を有利にする地形効果がなく,こちらの師団が火力で勝っているなら,1個師団対1個師団のタイマンに持ち込んだほうが得なのだ。そういった奇跡的な好条件がないならば,こちらの戦力は3〜4個師団=1個師団という計算をしておくとよいだろう。ただし相手が民兵ならば,ペナルティを受けていても問題なく勝てる。

 数(と日本軍)に任せて中国共産党を打倒すると,ICが増えるだけでなく,中国共産党のICを支えていた資源産出プロヴィンスも確保できる。資源貧乏な汪兆銘政権としては非常にありがたい。
 今回のプレイでは,共産党を打倒できた段階で1942年1月を迎えたが,指揮官なしの戦争に慣れればもう少し早めの決着も望めるだろう。1941年12月には真珠湾から太平洋戦争が始まり,旧ユンナン(雲南)国境で日本軍とイギリス軍の激突が始まる。できるだけ早く国共内戦にケリをつけ,インパール作戦の支援準備に入りたいところだ。
 ちなみに,太平洋戦争が始まるころまでに,中国沿岸部の上陸地点はできるかぎり歩兵でカバーしておきたい。戦争が始まったら,無防備な海岸にどこからともなく上陸部隊が出現しても,不思議でないからだ。

 

さすがに1918年式歩兵では……。元の国民党陸軍だと苦戦するが 毛沢東,無念の詰み。ICが0になってしまっては,何もできないわけで

 

 

汪兆銘による,同生共死の実践

 

中国共産党軍が崩壊したのを見計らったかのように太平洋戦争の開始。汪兆銘陸軍主力はすでに南に転進している

 さて,太平洋戦争が始まったら,いよいよ汪兆銘パワーの発揮しどころである。とにかく大量の歩兵部隊を生産,日本軍に援軍として送りつける。あとは野となれ山となれ。援軍として派遣したほうが,汪兆銘陸軍のまま使い続けるよりはマシだ。援軍を送りすぎると日本の物資生産を圧迫するという「スターリン・ジョーク」の中ソ戦争(「降伏せよ。さもないと1000万人の捕虜を送るぞ」)も真っ青の状況なので,日本には定期的に物資を送り,その代償として青写真をもらうようにする。
 十分な規模の援軍を送れば,インパール方面での戦闘は「大東亜共栄圏」側主導で動くようになる。ある程度戦場のイニシアチブが確定した段階で援軍を止め,自力で動かす部隊も増やしていく。AIは非常に大胆な包囲作戦を行うが,防御的な戦力配分はあまり得意ではない。汪兆銘陸軍は,単独で攻めると英軍にまるで歯が立たないが,日本軍と共同で攻撃したり防御したりするぶんには,額面どおりの力を発揮してくれる。なるべくよいポジションをとって,大量の歩兵による支援攻撃をプロットしつつ,前進が確定した段階でハイスタックをごっそりと動かすと,進軍先のプロヴィンスはまず確保できる。連合国との質の差には絶望的な開きがあるが,数の差はそれを補って余りある。

 

 戦線を延ばしていくと,海岸防衛部隊を残す必要から徐々に攻撃部隊の数が減っていくが,そこで再び汪兆銘パワーを活用する。いちいち守備隊のラインを作るのも面倒なので,とにかく雲霞のように歩兵を量産,片っ端から戦略再配置で海岸防衛部隊に割り当てていく。だいたい2個師団が海岸を守っていれば,日本軍はそのプロヴィンスの防衛は不要と判断して,余剰戦力を前線に送ってくれる。戦える人が戦い,戦えない人は戦わない。役割分担である。
 ビルマ付近の山岳とジャングルを越えてインドに入ってしまえば,「大東亜共栄圏」側の有利は確定する。インドは広い。広いがゆえに,どうしても英軍は数少ない部隊を分散させて防衛ラインを構築せねばならず,数で勝る共栄圏側の大突破につながる。
 ちなみにインド亜大陸の沿岸はほぼすべて上陸可能地点なので,汪兆銘パワーを緩めることなく,また常備軍に寄せて指揮統制を稼ぐなどといった夢を語ることもなく,粛々と人の群れを送り込み続けることにした。
 結果として1943年の3月ごろに前線はカラチに達し,英国は最大の植民地を失うことになった。だが戦争の本番はここから,産油地アバダンこそが真の戦いの舞台となる。

 

インド攻略作戦開始。7個師団とかいう,この地域にしては大兵力がいるが,基本的に張子のトラだ 日本は暗号関係の技術開発が若干遅れる傾向があるようだ。青写真を提供するチャンスも比較的多い

 

 

北洋軍閥海軍以来の快挙(怪挙)

 

とりあえず最小規模の上陸を開始。インドネシアは希少資源と石油の産地なので,日本に取られる前に取ってしまえ大作戦

 さて,カラチからペルシアへと戦線が移るにつれ,汪兆銘政権の実効ICは少しずつだが安定するようになった。インドを制圧することで日本に資源的余裕が出来,傀儡政権に資源をばらまけるようになったためだ。もっともこの余裕は非常に危うい水準であり,実効ICが100を超えたと思った翌日には70まで落ち込んだりするので,過信は禁物だが。
 不安定とはいえICに余裕が出てきたので,このあたりから輸送艦の生産を開始する。日本AIはなかなかインドネシアに進駐しないので,先にインドネシアの希少資源&石油地帯を汪兆銘のポケットに入れてしまおうというハラだ。
 そんなことをしたら宿主の体力が弱ってしまう,という見方はあるかもしれないが,傀儡国家は各種資源が1000を超えると,超過分を強制的に本国に貢ぐようにできている。搾取者から搾取せよとはよく言ったもので,インドネシアの資源地帯を押さえることによって汪兆銘のポケットに流れ込む資源は,結局はより大きな搾取者の懐に入るのだ――なのでこちらとしては,なるべく各種資源が1000を超えないように貿易の設定をして,タダでむしり取られないようにしなくてはならない……ならない?

 

 ODAと現地官僚みたいな議論はさておき,東シナ海の制海権はおおむね「大東亜共栄圏」側にあるので,大胆不敵に上陸作戦を仕掛ける。船ごと部隊が沈んだとしても,たかが3個師団だの4個師団だのの損害である。そんなものは1か月で取り戻せる。インドネシアを汪兆銘中国領にすれば,政権の命脈はぐっと伸びるはずで,それはきっと「大東亜共栄圏」の未来にも反映されるはずだ。
 6個師団ほどが海峡の藻屑と消えたものの,無事スマトラ島の制圧に成功,ジャワ島も攻略した。カリマンタン島ではオーストラリア軍による若干の抵抗はあったが,敵部隊が1個師団だったことが幸いして,なんとか火力差で押し切った。もし2個師団いたら,無理だったと思われる。涙を誘うレベルの衝突である。
 カリマンタン島は再独立させ,石油の輸出国家として「大東亜共栄圏」に組み込むことにした。「大東亜共栄圏」において石油は宝石よりも価値があるので,独占したい気もしたが,さすがにそこまでやると共倒れになりかねない。

 

いわゆる「援軍」を派遣するところ。援軍として派遣した後でも,実際にはプレイヤーがコントロール可能 インドネシアの制圧。ここまで無防備なんだから,日本軍自身になんとかしてもらいたかったというのが,実は本音

 

 

大東亜共栄圏における「死の商人」として

 

アバダン攻防戦。数の差は歴然としている。支援攻撃をプロットしておくと便利

 大量の商船と護衛艦を生産ラインに置いて資源基盤を確立しつつ,いよいよ(おそらくは)このプレイにおける最大規模の戦闘が待つペルシアに目を向ける。
 戦力としてはおおむね対等,何を思ったのか日本軍が相当数の戦車を持ち込んでいるため,機甲打撃力にも甚大な差はない。こうなると,ここでどれくらい汪兆銘陸軍が活躍できるかが勝負を分けるといってもよい。
 このころから,陸軍の生産ラインを歩兵から山岳歩兵に切り替える。ペルシアは悪路が多く,また砂漠や山岳も多い。しかも時代はすでに1944年,来年には悪夢の1945年式歩兵が一般化する(先進国ではすでに1945年式)。何が悪夢かというと,1945年式歩兵には石油消費0.1が付いているため,日本の傀儡国家がそんなお大尽の歩兵部隊を持とうものなら,恐ろしいことになるのだ。
 そこで,最終形態まで進化させても石油消費がなく,1個師団でも活躍できる場面が多く,大きな弱点といえば労働力消費が歩兵の1.5倍という山岳歩兵に,生産のメインを切り替えたわけだ。

 またこれに伴う生産ラインの見直しのなかで,かねて研究を進めていた最新式の戦術爆撃機が完成していたため,これの量産ラインを一つ確保した。この爆撃機は,自分で使うのではなく,完成したものを片っ端から日本に輸出していく。汪兆銘空軍には指揮官がいない。練達の飛行気乗りに優秀な機体を回したほうが戦果に期待が持てるのは自明というわけだ。
 軍事ユニットは,戦力が完全損耗した状態(要するに装備だけ輸出されているわけだ)で輸出されるため,仮に歩兵師団を輸出してしまうと日本の労働力消費を高める結果になる。海軍ならば労働力はあまり消費しないが,主力級の海軍艦艇の場合,戦力回復には途方もない時間が必要になる。それに対して航空ユニットは,比較的速やかに戦力が回復するうえ,完全損耗から回復させても労働力は2しか消費しない。優良輸出物件なのだ。
 このようにさまざま姑息な手段を弄しつつ,いつもと変わらぬ陸軍ハイスタックを積み上げ続けるうち,いつしか日本軍はアバダンを確保していた。汪兆銘陸軍の(?)偉大な勝利である。

 ちょうど北ではドイツ軍がバクーを占領している絵が展開されており,世界地図を見る限り,このままドイツの勝利に終わりそうな雰囲気。日本はドイツと同盟関係にないが,アバダンを確保したいま,石油の心配はほとんどなくなった。この状況の延長として戦争を続けても,大敗はないだろう。
 日本軍は勢いに乗って中東を席巻,細かな包囲殲滅で連合軍スタックをつぶしつつ,ついにはスエズを占領した。この段階でアラビア半島の南に小国が残っており,上陸しようとすると連合軍艦艇に阻まれるため,汪兆銘自らサウジアラビアに宣戦布告。日本軍は嬉々として産油地帯を蹂躙し,アラビア半島南部は日本軍の力で汪兆銘中国領となった。なんとも寒々しい分割統治である。

 

ジェットエンジンも,日本をはじめ多くの国が開発しようとしない技術だ 青写真に混じってこっそり航空ユニットが渡されているところ

 

 

それでもなぜか石油がネックの日本

 

広西軍閥が残した駆逐艦がオランダ海軍の潜水艦を撃沈したところ。めぐり合わせ的には奇跡としか言いようがない

 さて,実質的な攻勢限界点に到達,ソビエトは負け確定となると,もう汪兆銘にできることはない。いまから海軍を育成してアメリカと戦うのはいくらなんでも非現実的だし,それを目指すくらいなら日本が研究を放棄しているジェットエンジン関係の技術を完成し,ジェット海軍爆撃機を量産して輸出したほうがよさそうだ。
 ということで,一度山岳歩兵の生産ラインを停止,海軍爆撃機と戦術爆撃機だけの生産ラインに移行する。出来た機体は次々と輸出,日本は気がつけば世界有数の空軍大国となった。徴兵制はやや理不尽なくらい,迅速な兵器生産に有効である。それでいながら売った先の国が常備軍ボーナスを持っていれば,売った兵器の指揮統制値にはそのボーナスが適用されるので,始末に負えない。

 あとは適当に太平洋の島に同時多方面上陸作戦でも展開するか……と不謹慎なことを考えていたところ,ちょっとした問題が発生した。同時多方面上陸をするには,なんにせよ輸送艦が大量に必要になる(歩兵はもう大量にいる)。なので輸送艦を大量生産していたら,輸送艦が消費する石油のせいで汪兆銘中国の石油備蓄が厳しくなってしまったのだ。
 こういうときはアバダンをお持ちの日本様にたかるに限る,ということで包括的貿易の窓を開けてみる――と,なんと日本は石油を200単位くらいしか持っていない!
 えーと。これは……まずくないですか? アバダンを持ってて,備蓄が実質0? インドネシアも,カリマンタンも,サウジアラビアも,全部「大東亜共栄圏」側にあるのに,備蓄がないということは,つまり共栄圏全体に石油がないということだ。

 

 原因はいくつか考えられる。まず,激しい陸戦が展開されたため日本軍が大量に歩兵を作っており,その歩兵がことごとく石油消費0.1を持っていること。日本軍の歩兵は100個師団を超えているので,1日10単位以上の消費となる。
 次に,日本軍がなぜか戦車を相当数装備していること。戦車はあり得ないくらい石油を消費するので,これをインフラの低いペルシアやビルマで振り回していれば,あっという間に石油は底をつく。
 最後に,日本軍が分不相応な規模の空軍を備えていること。AIは空軍に哨戒を命ずるため,空軍は石油浪費の影の元凶となる。ここでさらにお馬鹿なAIが航空ユニットを必要以上に作ってしまったり(あるいはどこかの属国がユニットを送り込んできたり)すると,当然ながら石油は底をつく。

 ではこれにどう対処するか。まずアフリカを打通,大西洋岸に抜け,バミューダ諸島を制圧,しかるのちにベネズエラに宣戦して石油備蓄をがっぽりといただくというダイナミックなプラン。大西洋を徘徊する連合国海軍に通商破壊を受けるのが弱点だが,最初の略奪分だけで数年分の備蓄に相当するだろう。
 もうちょっと現実的な案として,スエズからポートサイドに抜け,やっぱりアフリカを打通,ベルギー領アフリカを占領するプラン。ベルギーは資源を蓄えていることが多いので,これもまた数年分の備蓄には相当するだろう。
 一番やりやすそうなのは,オランダ領インドネシアを完全制圧して,オランダを併合するプラン。オランダは大量の石油を隠し持っているので,これまた数年分の備蓄にはなるだろう。ただし,いずれのプランも汪兆銘中国自身が実行すると,

  • 数万単位の資源が汪兆銘のポケットに入る
  • 次の瞬間に1000単位を超える分が日本に移動

と,なんとも腹立たしい限りではあるが,この際そんなことはいっていられない。「大東亜共栄圏」の興亡はこのプランの成否(と,お邪魔したお宅がちゃんと貯金をしているか)にかかっているのだ。
 というわけで,ベルギープランとオランダプランを同時進行する。ベルギープラン完遂のためにはスエズの対岸ポートサイドに積み上げられた英軍24個師団を排除する必要があり,オランダプラン完遂のためにはスラウェシュ島にいる米軍3個師団を排除したうえでニューギニアにいるオーストラリア軍に対処しなくてはならない。これはなかなか前途多難である。

 

 

汪兆銘中国,オランダを併合

 

 まず,本来輸出用に作っていた爆撃機の輸出を停止する。空軍は,指揮官がいない(=顔写真なしの無名指揮官,永遠に少将)部隊でも、2ユニットまでなら指揮超過ペナルティなしで運用できる。また空軍1個軍は4ユニットが上限で,2ユニット×2で運用しても指揮超過ペナルティはごくわずかしか発生しない。汪兆銘軍がガチで戦争するには,ここを活かす以外に手がないのだ。
 スラウェシュ島の攻略に着手しよう。アメリカ軍3個師団に入念に阻止攻撃をかけて,指揮統制をほとんど0にまで落とし込む。そこに向かって,山岳歩兵を1個師団ずつローテーションでぶつければ,どこかで勝てるはず……と思っていたら,強襲上陸を仕掛ける船が着いたころには米軍がどこかに行ってしまっていた。戦わずして勝つと孫子も言っていたが,運が良かっただけかもしれない。

 続いてニューギニア戦線。同じく爆撃機で偵察,オランダ最後のVPプロヴィンスが無防備になっていることを確認し,強襲上陸を仕掛ける。近所にはオーストラリア軍がいるだけでなく,連合国海軍も徘徊している。「大東亜共栄圏」側(もとい日本軍)の制海権は,この海域ではとうてい完璧とはいえないのだ。
 案の定,オーストラリア海軍に捉まって最初の揚陸部隊は全滅。だが本番はここからだ,というか成功するまでが本番なのだ。スラウェシュ島に集めた軍隊を,次々にニューギニアに送り込む。強襲上陸を仕掛けると,今度は無事成功。すばやくオランダ併合のボタンを押し,無事オランダの備蓄を回収した。

 で,いったいどれくらい溜め込んでいたかなと思って日本との包括的貿易を仕掛けてみると,少なくとも5000単位以上の石油備蓄があったことが判明。当面の危機はしのいだといえよう。
 ニューギニアのジャングルではオーストラリア軍と一進一退の攻防になったが,オーストラリア軍の増員によって,攻めたら負けるという悪い展開に陥る。これはもうどうしようもないので,とりあえず5個師団ほどを貼り付けて戦線を膠着させ,持久戦に出る。そうこうするうちに日本がオーストラリア本国を攻略すれば,敵の補給は途絶えるのだから,それまで待てばよい。

 

オランダ併合。これで日本の資源問題もかなり解決されるだろうか

 

 

汪兆銘,スエズを渡る

 

1945年中盤にはスエズの占領に成功。この段階で戦争としてはおおむね終了しているといえよう

 さて,ここまできたからには,もう一息行ってみたいというのが人情というもの。なんとかしてスエズを横断,アフリカを「大東亜共栄圏」に組み込めないか模索しよう。というか,すでに大東亜という言葉の意味がよく分からないが,アフリカを落とせば南米に手を伸ばすことだって夢ではない。

 

 実のところ,この段階でも南米(とくに産油国ベネズエラ)攻略をする手立てがないわけではなかった。オランダ領が南米にあるため,オランダを併合すると,南米のプロヴィンス(英領を挟んでベネズエラのお隣)が汪兆銘中国の支配下に入るのだ。
 こうして獲得したプロヴィンスを日本に譲渡すると,AI操る海軍には「作戦行動半径」という概念がないので,はるばる日本から輸送艦1ユニットで件のプロヴィンスまで海上輸送が可能となる。で,ここでどこの軍事同盟にも属していないベネズエラに,汪兆銘が宣戦布告すれば……
 だがこれはあまりにもルールの穴を突きすぎというわけで,今回はパスする。アフリカ全土を制圧して,まだ石油や資源に問題があるようなら,そのときは正攻法での南米制圧を検討しよう。

 

なんだか変な世界地図。海でも汪兆銘がんばってます 日本のむちゃくちゃな貿易収支に注目。まあ負けないだろう

 

ポートサイドに篭もった英軍を動かす強襲作戦。上陸した19個師団に対し24個師団で攻撃が行われるが,川越えではさすがに無理

 さて,いまの問題はスエズである。スエズの対岸ポートサイドには,英軍が24個師団張り付いている。これを河川越え(運河越え)の攻撃で落とすのは,まあ無理だ。ポートサイドに大量のV1飛行爆弾でも撃ち込めばまた話は変わるが,さすがにV1の研究からやっていたのではらちが明かないので,今回は軍の機動でこの問題を解決することにした。
 まずは輸送船(ずーっと連続生産しているので,気がつくと12〜3隻溜まっている)に山岳歩兵を載せ,先ほど占領したアラビア半島南部の軍港に移動,そこから旧エチオピア付近に強襲上陸をかけてみる。うまくいけば上陸部隊に対応するために,ポートサイドの部隊が動いてくれるはず……だが,エチオピア付近には必要十分な英軍部隊がいたため,結局ポートサイドの部隊に動きはなかった。

 ならばもっと近くに乗り込めばよかろう,ということで,半分通行権を有しているスエズを越えてアレクサンドリアに強襲上陸を仕掛け,最終的に19個師団を揚陸する。ポートサイドの部隊はなおも動かない。そこで近傍のタイタ・プロヴィンスに攻撃を仕掛ける。タイタを守っていた自動車化歩兵1個師団相手に19個師団が殴りかかったので,この戦闘には勝利した。
 タイタからポートサイドまでは2プロヴィンス。さすがにこの距離にいる19個師団のプレッシャーは大きかったようで,ポートサイドの英軍が動き始め,その戦力の多くはタイタへの攻撃部隊に編入される。だがタイタは完全に河川に囲まれたプロヴィンス,守りに入れば強い。20個師団以上の攻撃をやすやすと捌ききる。

 そうするうちに,ついにポートサイドの守備部隊が5個師団にまで減少した。スエズで待ち構えていた汪兆銘陸軍8個師団+日本軍が雪崩を打ってポートサイドに殺到,ついに英軍は崩れた。
 一番難しい渡河攻勢に成功してしまえば,あとは問題ない。アフリカでの戦争は長く陰鬱なものになったが,本質的なレベルでの数的格差はいかんともしがたい。そうこうするうちスペインがドイツとの同盟に加盟,ジブラルタルを攻略して連合軍は地中海からシャットアウト。これによって紅海付近で行われていた通商破壊も停止し,連合軍の反撃は封殺された。

 

ポートサイド攻略に成功した瞬間。司令部は戦闘効率上昇のため,ではなく,これから始まるアフリカ攻略のために作っておいたもの

 

スペインが枢軸に加盟。割と珍しいシーンの一つではないだろうか ジブラルタルが陥落,地中海から連合国勢力が排除される

 

 

汪兆銘,米豪を遮断する

 

決戦兵器の一つ,1951年式近接攻撃機の発明。研究にはまだまだ時間がかかるが,強さは折り紙付き

日本がオーストラリアに上陸。このチャンスを逃してはなるまい,ということで暇をかこっていた陸軍をピストン輸送する

 日本がベルギーを併合した段階で,どうやら日本の資源ストックは完全に振り切れたようで,汪兆銘政権の有効ICは120〜130でほぼ安定した。アフリカ全土を占領した段階で再び爆撃機生産モードに切り替え,日本に最新式のジェット戦術爆撃機と海軍爆撃機,さらには秘密兵器扱いの51年式近接攻撃機を提供する。実際,艦艇撃沈ログを見ていると日本の空爆によって空母「USSエンタープライズ」すら沈んでおり,効果はあったと見るべきだろう。
 やがて余力ありすぎの日本軍がオーストラリアに小規模な上陸を行ったので,これ幸いと汪兆銘陸軍の余剰兵力をオーストラリアに叩き込んでみた。オーストラリア陸軍は41年式歩兵などが混じっており,最新鋭の山岳歩兵に重砲を付けた4個師団で,オーストラリア陸軍2個師団を撃退することすら可能だった。質と量で倍近い差をつけて勝利を誇るなと言われそうだが,このように「汪兆銘軍だけの攻撃で他国の軍隊を打ち負かす」というケースは,中国共産党相手を除けば全プレイを通じて両手で数えられる程度しかなかったのだ。セイロン島に篭もった守備隊1個師団を倒すのに,空軍4個,山岳歩兵4個を使ったりするのが「普通」だったのだから,出会い頭の戦闘で勝利ログが出たときの嬉しさといったら,そりゃあもう。
 地上兵力がある程度安定していたため,航空戦力も大活躍し,オーストラリア軍はあっという間に大陸から駆逐された。最後はニューギニア付近にいくばくかの軍隊が残ったが,補給が切れてしまえばそれまでである。太平洋の島々で孤立するのは連合国側だった。

 

ついに決戦兵器の開発完了。日本が石油に余裕があるのは分かっているので,大量生産して輸出は既定の方針 大東亜共栄圏ののどに引っかかった骨,オーストラリアが陥落。東シナ海の安全がかなり確保されるのが大きい

 

 

日中戦争の展開オプションとしての汪兆銘

 

おかしなアジア。こうなってしまえばアメリカもどこかで手を引くしかないだろう

 さて,ここまで戦争を遂行したところで,正直言ってもう戦果としては十分なところに達したと思われる。アメリカはかろうじてハワイを維持しているが,太平洋の制海権は呆れるくらい完全に日本にある。その一方,アメリカに残された唯一のパートナーであるイギリスは,戦略爆撃と通商破壊で実効ICが40台まで落ち込むこともしばしばだ。
 理屈の上ではアメリカ上陸や,ベネズエラ侵攻プランなども実行に移せただろうが,オーストラリア併合で最後に残った資源問題(エネルギーと鉄鋼が若干不足)も解決してしまっているいま,アメリカに徹底抗戦を意識させる南米上陸は下策であろう。汪兆銘政権はこっそりと核関係技術も研究しており,原子炉の建設も可能となっているので,本気を出せば1953年末までに何かすごい状況を現出させる(そして最終的に「レッドサン・ブラッククロス」のような世界になる)ことも可能だろうが,いやはや,銃を構える時間はそろそろ終わり,これからは落としどころを探る季節だろう。

 

 プレイしてみた結論からいえば,汪兆銘政権は傀儡政権と呼ばれるなかでは,明らかにレベルの違う強さを誇っている。途切れることのない,しかも一定のクオリティを持った陸上ユニットの群れは,主力とはなり得ないにしても,共同攻撃における火力向上に劇的な貢献を見せる。また傀儡という立場を最大限に活かし,軍隊の方向性を特化させることで,同盟軍トータルでの戦力向上に大きく寄与できる。
 結局,多少の指揮統制ペナルティがあった程度では,非常識なレベルの供給能力に対する足かせにはならない。冒頭でも少し触れたが,これが林森政権になった場合,ゲームはより傀儡国民政府有利になる――歩兵生産速度こそ失うが,林森政権にはちゃんと将軍が保存されているのだ。
 実のところ今回のプレイで期待していたのは,連合国の質と物量の前に国家と戦線をズタズタにされながらも,歯を食いしばって戦う(そして負ける),という展開だったが,蓋を開けてみれば歯を食いしばるのは連合国であった。1941年シナリオだとほぼ間違いなくバルバロッサでドイツが勝つ(=北からのプレッシャーがない)ということもあるが,それを抜きにしても,あまりに一方的な展開だったといえるだろう。

 

 日中戦争における日本の(比較的)早期勝利という極めつけの仮定,プレイヤーという優秀すぎる「AI」が,最終的に統一中国本来の強さを引き出してしまった結果が,このアポカリプスというわけだ。ただ,Paradox Interactive作品の常として,MODを書けば汪兆銘政権と蒋介石国民党が並立する状況は作れる。本作をあくまでも軍事ストラテジーとしての側面から考えれば,史実の汪兆銘政権が持っていた軍事的インパクトより低い影響力しか持っていない国はいくらでもあるわけで,1939年初頭時点での史実に基づいて領土と閣僚,軍事ユニットをリサーチして可能な限り反映すれば,別途労力をかける価値はあると思われる。

 

原子炉の製造も可能。多少無理して原子炉を建ててしまえば原爆関係の研究は一気に早まる 輸送艦以外のあらゆる部門でアメリカ海軍を圧倒的に上回る帝国海軍。空母29っていったい……

 

■■徳岡正肇(アトリエサード)■■
ボード/コンピュータを問わず,数々のウォーシミュレーションをプレイしてきたPCゲームライター。その彼にして今回の汪兆銘政権プレイは,プレイにこぎ着けるまでかなり手こずったようだ。汪兆銘の登場条件やその政権の扱いなど,およそマニュアルに親切に書かれているはずもない。汪政権の「実在」(政権と呼び得るかどうか)に関する本作のスタンスについて考えるだけでも,ヒストリカルストラテジーの教養的側面が味わえると思うのだが,どうだろうか。
タイトル ハーツ オブ アイアンII ドゥームズデイ 完全日本語版
開発元 Paradox Interactive 発売元 サイバーフロント
発売日 2006/08/04 価格 通常版:8925円,アップグレード版:4725円(共に税込)
 
動作環境 OS:Windows 98/Me/2000/XP(+DirectX 9.0以上),CPU:Pentium III/800MHz以上(Pentium III/1.20GHz以上推奨),メインメモリ:128MB以上(512MB以上推奨),グラフィックスメモリ:4MB以上(8MB以上推奨),HDD空き容量:900MB以上

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http://www.4gamer.net/weekly/hoi2dd/014/hoi2dd_014.shtml



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敗北を抱きしめて 上 増補版
ジョン・ダワー著。これを日本人以外に書かれてしまったことの衝撃が,ひところ言論界を賑わした,日本戦後史概説の決定版。

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鷲は舞い降りた 完全版
ジャック・ヒギンズの冒険小説。失意の降下猟兵指揮官シュタイナ中佐と部下に下ったのは,IRA工作員と協力し英国に潜入する任務だった。