ブエノス・アイレスに配置された陸軍はすぐにブラジル国境へと吶喊(とっかん)できる。アルゼンチンでは開幕ダッシュがとても大事なので,弱気にならないようにしたいところ
せっかくの仮想戦ということもあり,両国のうち,より複雑な立場に違いない枢軸アルゼンチンを選んでみる。まずは国情をざっと視察しよう。まぁなんというか,ぶっちゃけ何もない。技術開発状況を見ても,1936年か1938年でこれならうなずけるが,1942年でこれは……とくに,産業関係が事実上壊滅状態なのはいかがなものか。
その一方で,何もないからこそ発揮されるメリットもある。その最たるものが陸軍ドクトリンである。なにしろ何一つ研究されていないので,互いに排他性を持つドクトリン・ルートのどれを使うか,自分でフルに選択できるのである。悲しいくらい後ろ向きだが,実に素晴らしいと,日記には書いておこう。
さて,こうなれば方針も定まってくる。せっかくドイツの支援で戦うのだから,アルゼンチン大戦車軍団を作って電撃戦である! 電撃戦の主要な要素の一つである空軍支援は,予算の都合上絶望的だが,戦車と歩兵で“電撃戦のようなもの”くらいは,させてもらえるのではなかろうか。
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スタッフはかなり有能なのだが,技術開発状況は劣悪。産業関係の研究が一つしか完了してないって,どういうこと? |
それはともかく,シナリオ開始時点ですでにブラジルとは戦争状態にあるので,急いで国境線に軍隊を動かす。戦線の補強がすぐに必要になるだろうから,民兵の生産も怠らない。……のっけから電撃戦とずいぶん遠いところで話が始まっているが,なあに本家ドイツだって1944年頃になれば,世界最高の戦車で戦線を突破した後ろに学徒兵が続いたのだ。アルゼンチンは時代を先取りしただけのことである。
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ドイツからの定期支援。ドイツ降伏イベントが起きてもなぜか持続する。「すごい!」というコメントがむしろすごい |
南アメリカで米独の代理戦争。Uボート3隻はなかなか便利だが,この比ではない海軍がブラジルには到着していたりする |
ドイツから歩兵2個師団が到着。同じ頃,ブラジルにも歩兵2個師団がアメリカから到着していたりする
そうこうしていると,ドイツからドイツ兵が増援として送られてきた! こんなことなら民兵なんて作りませんでたよ,マイン・フューラー。たぶんブラジルにもアメリカからレンドリースがどんどん到着しているのだろうなあと思うと,暗たんたる気持ちになるが,とりあえずは順調に戦線を拡大し,大西洋岸を伝ってサンパウロも目前というところまで進出する。これぞ電撃戦である。
だが案の定というべきか,そのあたりで攻勢限界がやってきた。海岸沿いに軍を前進させるには,戦車(ドイツから賜った1個師団)が通過したあとのプロヴィンスを守り抜ける歩兵が必要だ。当然,そうした要所ではドイツ兵が守りにつくのだが,戦線が伸びるにつれ,ちらほらと民兵さん達が混じり始める。もう1プロヴィンス伸びればと思う半面,その一つを伸ばすと民兵さん達でブラジル軍(もといブラジルに派遣されたアメリカ軍)の攻撃を受け止めることになる。大変よろしくない。
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ボリビアの枢軸入り。ボリビアはなんだかんだでアルゼンチンの攻勢を支えてくれる |
ペルーが枢軸に。これによってエクアドルが連合に加盟する。が,あまりこれが全体に影響を与えることはない |
非常にミニマムな形で末期ドイツのジレンマと同種の問題を抱えていると,今度は国際情勢が急転する。ボリビアと同盟しませんかという打診にイエスと言ったら,チリが連合に加盟してアルゼンチンに攻撃を始めたのだ。
さて,ここで状況を確認してみる。北方にはブラジル軍という名のアメリカ軍,その数「たくさん」。ご丁寧にアマゾン川を使った防衛ラインまで張っている。
東方には山岳国家チリとチリ歩兵。チリ歩兵はさほど問題ではないが,アンデス山脈は議論の余地なく大問題である。
同盟国ボリビアは素晴らしい勢いでブラジルとチリのサンドイッチにされている最中。なにそのイタリアみたいな国。
で,ここで我が生産ラインを振り返ってみると,ブラジルを速度で圧倒するための戦車をほそぼそと量産中。当然だが,中戦車なんて立派なものは開発すら済んでおらず,数年前にフランスでドイツ軍にこてんぱんにされた類の軽戦車を作っている。
まぁ軽戦車とはいえ戦車は戦車,歩兵相手には十分戦える。一番の問題は撃たれ弱いことと,山岳地帯に連れて行った場合にまるで力を発揮できなくなることだけ。つまりこれからのアルゼンチンには,
- ブラジルに増え続けるアメリカ歩兵の波に耐えつつ
- 山岳歩兵を研究生産してチリを叩き,側面の憂いを取り除いたうえ
- 軽戦車と山岳歩兵を使って河川が縦横に走るアマゾンを突破
することが要求される。なんというか,挑戦しがい満点だ。
唯一の希望は,ドイツ式の陸軍ドクトリンを選んだことにある。ドイツ式陸軍ドクトリンには,早期に指揮統制値が高まるという特徴があるので,重砲を付けた歩兵で防御線を張っている限り,しばらくの間は戦線の大突破を許すことはない。軍のシステムも常備軍に寄せて指揮統制ボーナスを得ているので,時間はそれなりに稼げるだろう。
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攻撃の先鋒を担う戦車部隊。チリ国境を守っているのはほとんど全部民兵。実にあぶなっかしい防衛ラインである |
アルゼンチンの誇る軽戦車部隊がサンパウロを攻略。これが序盤に成功しているとブラジルは増援がほぼすべてアメリカ頼みに |
空挺師団か,歩兵師団か。空挺は降下させなくてもエリート歩兵として使えるので,ひどい損をしたりはしない
さて勝負事には,重要なファクターとして「一貫性」がある。質より量で押すと決めたのに,途中で質がうらやましくなって質を追求し,なんとも中途半端な質の軍隊が,大量というには足りない数揃って,結局勝てないということはよくある。
当然ながら,我がアルゼンチン軍はそのような愚挙を犯しはしない。アルゼンチン軍はあくまで質を追及する軍隊として構築されており,速度と打撃力をもって量を圧倒するのである。
とか思っていたので,ドイツからの提案として「空挺部隊1個か,歩兵2個か,どっちかあげるけど,どっちがいい?」と聞かれたときには,迷わず「空挺」と答えた。なにしろアルゼンチンには最初から輸送機が用意されている。これに空挺師団が揃えば,ジャングルだってなんのその,機甲の打撃力と組み合わされば華麗な包囲殲滅が狙えるではないか!
ということで,とりあえずは民兵を増員してチリ軍の攻撃を防ぎつつ,アルゼンチン−ブラジル国境で要害の地となったシウダードエステを空挺降下で奪取する計画を立てた。
シウダードエステの地獄。ここまで包囲攻撃すれば敵部隊は撃退できるが,進撃している間に攻撃部隊が指揮統制値を全損してしまう。川越えでジャングルに攻め込んでもダメという典型
シウダードエステをアルゼンチン側から見ると,全方向を河川でふさがれたジャングルという,攻め込んでなかなか勝てず,勝ってもすぐに追い返される天然の要塞である。そんなとこ無視すればいいじゃないか,というのは正論だが,アルゼンチン軍には要害の地を包囲して放置しておくだけの兵力はない。なにしろ量の軍隊じゃないので。チリ軍くらいは民兵で防げても,ブラジル軍を民兵で防ぎ続けるのは無理だ。
そこで空挺である。空挺なら渡河修正がなく,ジャングルによる移動ペナルティもなしにプロヴィンスを直撃できる。たった1個師団で何ができる,という気もするが,周囲から支援砲火を集めればブラジル軍の除去は可能だ。一度除去して,そのあと1週間持ちこたえれば,戦略再配置でシウダードエステに主力が配置可能になる。そして,ジャングルへの進軍には普通1週間以上かかる――要は最初の一手が成功するかどうかなのだ。
思い立ったらすぐ実行である。重砲を備えた歩兵は,すでにシウダードエステを包囲している。補助火力としての戦車も十分だ。工兵旅団を付けて渡河対策した歩兵も予備兵力として待機している。あとは空挺部隊を降下させるだけ,いくぞ,世界で5番目に出来た,栄誉ある空挺部隊よ!
ところが……え,えーと,まず空挺強襲するためには,空軍ドクトリンをある程度研究していなくてはなりませんでしたね。普通IC30くらいの国に空挺部隊はいないし(輸送機にIC20以上必要),逆に空挺を使える大国なら空軍ドクトリンは不足なく研究されている。が,今回は輸送機も空挺部隊も戴きもの,よく見れば空軍ドクトリンはまるで研究されていない。盲点というやつである。苦笑いしつつ空軍ドクトリンを研究する。1年くらいかかったが,どうにか空挺強襲が可能になる。
さて,これで今度こそ空挺降下による電撃的反攻作戦の開幕だ! ……えーと,輸送機のスペックが低すぎて,うちの空港からだと届きません。
まぁそんなこともある。しかし空港は確か1ICくらいで生産可能だから,生産して隣接するプロヴィンスに配置,そこから飛べばよいだけのことだ。
……あー,そういえば空港作る前提となる産業技術があったねえ。うん。当ったり前だけどそんなの研究してないよ。っていうか,普通はそんなの1942年には研究終わってるんだってば。
半泣きになりながら6か月くらいかけて研究し,3か月かけて空港を作って,隣接プロヴィンスに配置。空挺部隊と輸送機も配備し直して,これで完璧。
……あれれ,隣なのに航続距離が足りませんか……って,なんだそれ! これを解決する方法は二つ,別の隣接プロヴィンスなら届くかもしれないと期待するか,輸送機を研究して航続距離の長いものにアップグレードするか,である。
輸送機のアップグレードにどれくらい時間がかかるかなど,想像もつかない。ここは一か八か,空港を増やして届く場所探しをしてみよう。というわけで空港三つを並列生産して待つこと3か月,シウダードエステを包囲するように空港をみっしり並べる。……なんだか中世ヨーロッパの攻城包囲みたいになってきた。
ブラジル,歩兵63個師団。全軍合計したときの数の差は2倍以上。ここからアルゼンチンが巻き返せるのだから面白い
都合4か所の空港から試してみたところ,届くところが一つだけあった! 決意から苦節2年,ついに空挺作戦の実施である。2年前に比べると,ブラジル軍の数が60個師団ほど増えているような気がするが,きっと気のせいだ。その間アルゼンチン軍だって軽戦車と山岳歩兵の数を増やしてきている。なんだか歩兵の質でブラジルに負けているような気もするが,そこは気合いでカバーしよう。別の枢軸国の陸軍でも,そう言ってた気がするし。
だいぶ風向きが悪くなってきたが,空挺降下は見事に成功。やはり火力の瞬間最大風速でいうならば,アルゼンチン軍がブラジル軍を上回っているのだ。このチャンスを逃してはならないとばかりに,全機甲部隊を投入,ブラジルの防衛線を決壊させる。
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ブラジルの誇る天然の要塞を攻略した瞬間。1943年に空挺部隊を獲得してから,実に4年めの快挙。時間かかりすぎ |
シウダードエステが陥落してから1年で,ここまで均衡が崩れる。大西洋岸に強引な強襲上陸を行ってとどめを刺した |
チリを山岳歩兵で攻略中。ここまで押し込めば,もはや戦力外
ジャングルとアマゾン川に足を取られつつ,攻勢限界が見えてきたあたりで,最後のバクチ,強襲上陸。旧式戦車などなど不良在庫を詰め合わせた上陸部隊が,ブラジル軍最後の防衛拠点に波状攻撃を仕掛け,これを粉砕する。見たか,これが数の力だ! って,あれ?
最後まで実に首尾一貫しない戦争でブラジルを降伏させたあと,チリを山岳歩兵で一蹴したら,同盟軍が勝手に南米を統一していった。かなり遠回りしたような気もするが,電撃戦型アルゼンチンの勝利である。これはあれだ,うん,急がば回れってやつだ(編注:たぶん違うと思います)。
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こうなってしまえば,あとはただの惰性。タイムリミットまではかなり余裕もある |
機甲部隊の勝利。シャーマン戦車ができた頃には,戦争終わってましたけどね |