聞いてほしい。
これが掲載される頃には,連載の開始から一か月以上が経過しているはずだが,筆者が今この原稿を書いている時点では,1週間ちょっとしか経過していない。本連載の主役である筆者のカワイイスパイ ミッシェルは,これからどんどんリリカルマジカルな冒険を繰り返して,あるいは4Gamerのマスコットキャラクターとしてこのまま定着してしまうのではないか? と関係者に喜ばれるほどの人気を獲得していく予定となっている。
その片鱗はすでに見えているはずで,だいたい例の魔法がニガテなパラディンが連載枠から姿を消したのは,4Gamerにおける女性アイドルの世代交代が行われたからだと筆者は考えている。本当だ。厳しい世界なのである。そして狙うべき次の標的ももう決まっているのである。
そんな感じでミッシェルは絶好調だ。だがしかし。それにもかかわらず,4Gamer編集部の面々は,失礼を通り越して,もはや非道としか思えない発言を繰り返している。いわく,「え,本当にカワイイと思ってるの?」だとか,「星原さんのセンスやばいっすよ」だとか,「まぁ,ある意味面白いんだけどね。面白いんだけど……」だとか。
さらには,筆者が一所懸命書いた原稿の合間合間に,勝手に「編注:何度見てもカワイくない」などといった文章を混ぜ込んだり,ミッシェルの顔を使った一コマ漫画的なものを入れたりする。
挙げ句,「真面目な話,キャラクター作り直しません?」なんてことを平気で言う編集者まで出てくる始末である。
なんてこったい。すでに連載が始まっているというのに,キャラの作り直しを命じるとは。“キャラ作り直し”=“最初からプレイし直し”である。この地獄的に忙しい状況で,そんな無茶苦茶な!
担当編集のIwahama氏は,「いやぁ,こんな指示を出すのは,やっぱり抵抗あるものですね。えへへ」などと,なんとなく「自分の意見じゃないんですけどね」的なニュアンスを込めつつマイルドに話したつもりだろうが,そんなものにはダマされないぞ!!
しかし,である。内実ぶちまけついでに付け加えておくと,“横暴な4Gamer編集部に無茶な要望を入れられつつ,怒ったり怒られたりしながら話を進めていく”という方向性は,ぼろぞうきんのようにクタクタになったE3取材の帰り道,ロサンゼルス空港でとても中華料理だとは思えないアメリカーンな料理(オレンジチキンというらしい)を食べながら,編集部の面々と打ち合わせしたとおりだったりする(そう,タイトルの「なんですぐ怒るの?」というのは,編集部のことであり,筆者のことでもあるのだ)。
つまり,4Gamer編集部が無茶苦茶な要望を出してくることに関しては,承諾済み。正直,その打ち合わせ時は,冷静な判断を下せるような状況じゃなかった気もするが,ここで文句を言ったら,負けである。と思う。
よぉし,やってやろうじゃないか。そっちがそうくるのなら,こっちも受けて立つまでだ。ただ現実問題として,すでに連載第4回くらいまでの作業は済んでいるので,これをナシにすることは筆者のスケジュール的に不可能だ。なので牽制の意味を込めて,「常識的に考えれば,キャラクターの変更をするとすれば,それは連載第5回あたりになると思う」と,ちょっとスネた風な雰囲気をにじませたメールを投げてみた。正直,「それならいいです」的な返事も期待していたのだが,Iwahama氏からは「ふうん。いや,別に問題ないですけどね。ええ」といった,軽くキレ気味な承認メールが来た。まぁ,ともかく第5回までは延ばせたわけだ。ふう,このやりとりが戦いだぜ。
しかし,割とマジでミッシェルってそれなりに味があって,スパイだし,結構イケテルと思っている筆者としては,まずどこが編集部の面々のお気に召さなかったのかが分からない。だから聞いてみた。それに対する編集部側の返答はコレだ。
- 額が広い
- ちょいとほお骨が出ている
- 目と目,眉間が離れすぎている
クラスとかスキルとかではなく,単純に顔の問題らしい。「もっとカワイく」というのだが,それこそ好みの問題だと思うので,うーむ,どういう方向に持っていけばいいのだろう。それにそもそも,どこかにほころびがあるキャラクターだからこそプレイしていて,あるいは連載を読んでいて愛着がわくものではないのか? という気持ちもある。そういうこちらの長期的な目論見が分からないとは,愚かなり4Gamer編集部。
まあしょうがない。では一体どういう顔ならばいいのか? ともう一度聞いてみようと考えていたところに,Iwahama氏からメールが届いた。スネメールの効果が多少現れているのか,「確かに美人を作るのは難しいですね」と,気を遣ってくれている。少しはいいところもあるじゃないか。そして「参考までに作ったキャラクターの画像を送ります」となっており,メールには一枚の画像が添付されていた。
それがこれだ。
この画像は筆者を恐慌状態に陥れた。
え,なに,なんなんだ,ちょっと待ってくれ! これが参考??? もはや,何を目指して,あるいはどういうセンスを信じてキャラを作っていいのかが分からない。とりあえずカレー(連載第2回の著者紹介参照)を食べて一息つく。うーん,なんだか気分が悪いのは,カレーのせいかこの画像のせいか。
というわけで,「なんですかこの絵は!? ミッシェルのほうが256倍強カワイイです!」とぶちギレメールを出してみたら,今度は,ネット上にあるキャラクター画像をたくさん送りつけてきた。そしてそれらを見てみたのだが……,ああ愚かなり,またしても何も分かっていない。ネット上にアップロードされているキャラクター画像には,デフォルトではゲーム内に存在しない髪型や装備が映っている。そう,つまりMODが使われているのである。
Oblivionにデフォルトで用意されている髪型なんかは,筆者自身は結構好きなのだが,日本人一般のセンスで見ると,割とカッコよくないものが多いようなのだ。そこでスキルを持つファンが自分好みの3Dモデルを作って,MODとして公開しているのである。なんだいなんだい,MODを使っていいんだったら,忍耐力のない筆者だってあっという間にゆめりあ並に「萌えー」なのが作れるはずだ。
そしてMOD探しが始まった。
Oblivionには,世界中のファン達が作った膨大な数のMODが存在する。もっとも,本作はオフライン専用ゲームだし,基本的に一人称視点でプレイするので,主人公の外見に凝る必要はないはずだ。だがそれでもいろいろなMODがあって,オリジナルの髪型を追加するもの,瞳のバリエーションを増やすもの,新しい種族をまるごと追加するものなどがある。それらの中に一つ,「ああー,なるほどこれだな」と思わせる,ひときわ目立つMODがあった。種族と髪型を追加する「Ren's Beauty Pack」というMODだ。
●Ren's Beauty Packの紹介ページ(The Elder Scrolls Source)
このMODは,アッチ(欧米)系ではなく,コッチのセンスに近いのではないだろうか。実際作者は,アジア圏(韓国)に住んでいる人のようである。よし,それじゃあ早速筆者もこれを使って,ミスラだと思ってオフ会に行ったのにリアルの本人はトンベリに近かった(ファイナルファンタジーXI),なんていう悲劇を生みそうなキャラクターを作っちゃうぜ。
まず手始めにミッシェルをリネージュIIっぽい髪型にしてみよう。
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惜しい。実に惜しい。ベースがいいからなんとか見られるが,このMODはミッシェルのようなうりざね顔美人を想定していないようで,若干,違和感がある。そこで,このMODで追加されるミスティックエルフという種族を使ってみよう。
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うーむ,考え違いをしていたことを告白する。MODさえ入れれば,とても簡単に,それらしくカッコいいキャラクターが作れると考えていた私は間違っていました。
MODはあくまでサポート。どんなMODを入れたところで,最後には美的感覚と忍耐力がものを言うようです。
ていうか。
ああもう,俺は忙しいんだよおぉぉ! この時点でかなり疲れてきており,それにいろいろといじっているうちに,やっぱりこういうアジアで好まれるテイストよりも,自分は元のほうがいいっていうか,デフォルトミッシェルがやっぱカワイくね? なんかもうこっちばっかり無用な苦労を背負わされているような気すらしてきた! そんなに言うなら自分で作ってみろ!!
なんて話を電話でIwahama氏に伝えてみたところ,「あはは,“なんですぐ怒るの?”とでも反応すべきですかね。ていうか,この前送ったの,ジョークですよ,ジョーク。じゃあ,ちゃんと作ってみましょうか。ああ,面白いから,デザイナーとかほかの編集者にも作らせますかね」との返事。ハハ,ハハハハ! 面白い。なかなか言うじゃないか4Gamer。それじゃあ一つ見てやろうじゃないか。