連載 : キャラクターゲーム考現学


キャラクターゲーム考現学

第27回:涙と学園とギャル「true tears」

 

ブロッコリーがGameCRABおよびサーカスとタッグを組んだ「true tears」。「彼女の流す,ホントの涙」をテーマにした等身大の物語だ

 ブロッコリーといえば,ゲームグッズの販売などを手がける店舗「ゲーマーズ」の運営で知られている。そこで販売されるグッズは,キャラクターゲームのものが多いのであるが,ブロッコリー自身がゲームを仕立てるケースもしばしばあって,本連載の第1回で取り上げた「Galaxy Angel」シリーズ以降にも,PCゲームのラインナップが複数存在する。
 そのなかで今回は,ブロッコリーが,「トゥルーラブストーリー」(以下,TLS)シリーズで知られるGameCRABおよび,「水夏」「ダ・カーポ」などで有名なサーカスと組んで制作した「true tears」(トゥルーティアーズ)をピックアップしてみよう。

 

 

Character Side:突飛なところのない等身大のキャラクター達

 

先生(飛美さん)に頼まれ,プールまで荷物を運んだ主人公が,水泳部女子の水着姿を狙う不届者と間違われる。実にありがちな対面シーンである。っていうか,TLSでも似たような対面シーンがあったような気が

 主人公は高校3年生。卒業までの半年という,多くのキャラクターゲーム(と何かの歌詞)で見るとおりの時期設定で,お話が進む。そこで主人公はさまざまなキャラクター達と出逢うわけだが,交流していくなかで彼女らが心に秘めた,さまざまな悩みや苦しみを目のあたりにする。それらを時に共有し,時に克服の手助けをしていくといったストーリー展開が,本作の特徴となっているのだ。
 昨今のキャラクターゲームでは,キャラクターのインパクトを強めるために,突飛な設定や性格付けを行う作品が多い。しかし,このゲームでは,多少誇張のあるキャラクターは存在するものの,「どこにでもいそうな」性格付けが基本となっている。
 これは,開発を手がけたGameCRABの代表作ともいうべきTLSシリーズとも共通した特徴である。TLSシリーズで,青系統や緑系統といった,テレビアニメなどでしかあり得ない髪の色が意図的に排除されたのは有名な話だ。
 とはいうものの,「学園のアイドル」「控えめな主人公の幼馴染み」「完璧超人な優等生の生徒会長」「クラス内でも存在感の薄い文学少女」などという,おなじみの人物造形は利用されているわけで,そこは言ってみれば“分かりやすさ”重視である。それぞれのキャラクターが抱える悩みは,立場からおおよそ想像できたりもする。
 要は,意図的におとなしい設定になっているわけで,昨今流行のコミカルな人物描写と,どちらが思い入れを持ちやすいかということに尽きる。

 

登場するキャラクターは全員,何らかの悩みや迷いを抱えている。主人公と関わっていく中で,何かのきっかけで涙があふれてくることがある。これがテーマになっている「彼女の流す,ホントの涙」である。とはいえ,左端はどう考えてもそのような涙ではないのだが

 

学園祭にて。「来るな」と柚子に念を押されていた主人公だが,あえて行ってみたところ,出し物はなんと「メイド喫茶」。これも時代の流れなのであろうか 「鉄の女」といわれるかつらも,子供に対しては優しいところを見せる。意外な一面を見ると同時に,学校でのクールさはどこか作ったものではないかと思われるようになる 学食で依緒と相席になる主人公だが,依緒の食事量に圧倒されてしまう。声優は体力を使う職業なのでよく食べる人が多いという話を聞くが,それにしてもこれは……

 

仲根るい(なかね るい)
本作のメインヒロイン。主人公のクラスメイトで,昨年の学園祭ではミス瑞鳳学園(主人公達の通う学園名)に選ばれるなど,学園のアイドル的存在でさらに水泳部所属。メインヒロインに恥じないさまざまなアピールポイントを持っている。動物の世話が好きで,獣医になるのが夢なのだが……。(CV:伊月ゆい)

 

真田柚子(さなだ ゆずこ)
主人公の幼馴染みで,主人公からは「柚」と呼ばれている。料理が得意な家庭的な娘で,さらにおとなしくて引っ込み思案で泣き虫,周囲に物事を頼まれると「いや」と言えない性格など「幼馴染みキャラ」の必要条件の大半を備えている。ただ,残念ながらゲーム中の描写からすると,家は隣同士ではないようだ。将来の夢は保育士になることなのだが,そのためには……。ちなみに,CVの稲村優奈嬢は保育士と幼稚園教諭二種の免許を持っているという。(CV:稲村優奈)

 

上原穂香(うえはら ほのか)
主人公のクラスメイト。他人と話すことが苦手で体が弱く,クラスでも影が薄いという,文学少女タイプの典型キャラであるが,実はそれだけではなく,ちょっとした秘密(?)がある。確かに現在では,こういうキャラもアリかもしれないという説得力がある一方,ややパンチ力に欠けているかも。(CV:中山恵理奈)

 

桜川依緒(さくらがわ いお)
主人公の1学年下の2年生。体は小さいが,騒がしいくらいに元気で明るい少女で,放送部所属。実はアイドル声優として活躍しているのだが,主人公は出逢うまでそれを知らなかった。声優の仕事は好きなのだが,兄や両親などからは反対されている。ちょっと前ならこういう役回りのキャラクターの仕事は純粋な「アイドル」だったのだが,このあたりはキャラクターゲームらしい設定というべきか,「アイドル」の凋落ゆえと評すべきか。(CV:野川さくら)

 

雪代かつら(ゆきしろ かつら)
学園の元生徒会長(すでに10月のため)。成績は常に学年トップで冷静沈着な「鉄の女」というイメージが定着しているが,その心の内は……。優等生キャラによくあるパターンだが,さらに一ひねり加えられたところがポイントであろう。(CV:佐藤利奈)

 

小笠原光里(おがさわら ひかり)
噂話・恋愛話が大好きな,今時の女子高生。人懐っこい性格なので,誰とでも友達になる。主人公とよくバカ話をしたり,ほかのキャラクターとの会話に割り込んで来たりと,さまざまなところで登場する。しかし,その心の中では……。これもまたよくあるパターンだったりするのだが。(CV:小清水亜美)

 

百瀬真子(ももせ まこ)
お笑いが大好きで,底抜けに明るい少女。将来の夢は漫才師で,現在相方募集中なのだが,誰彼かまわず相方になってくれと頼む,困ったちゃんでもある。放送部に属しているので,依緒と絡んでくることが多い。(CV:渡辺明乃)

 

秋山飛美(あきやま あすみ)
主人公達の通う瑞鳳学園の保険教諭。実は主人公の従姉妹で,主人公とは同居している。主人公は自宅では「飛美さん」と呼ぶが,学校では「秋山先生」と呼ばせられている。学校ではしっかり者に見えるものの,自宅では気が緩むのか,天然ボケなところを見せることも。(CV:氷上恭子)

 

井上祇園(いのうえ ぎおん)
見かけは小学生のようだが,説教好きでオバサンのようなしゃべり方をする謎の少女。さらに,会話の端々に擬音が混じるので,何をしゃべっているのかよく分からないことも。彼女によると,メールを入力しているときの擬音は「めるめるめる」なのだそうだ。(CV:福井裕佳梨)

 

 

Game Side:TLSシリーズのシステムをベースに
イベントの連続でストーリーを組み立てる

 

曲がっているネクタイを柚子に直してもらう主人公。このあと,なぜネクタイを結べるのかを柚子に訊ね,お茶を濁される。うーむ,お約束だなあ

 ゲームのシステムは,単純なノベルタイプのアドベンチャーゲームではなく,独特のもの。プレイ期間である10月1日から卒業式までの24週間で,それぞれの週から3日ずつ行動する日を選ぶ。選べる日にはある程度制限があり,1週間の行動選択画面では,それぞれの日のところに,その日にイベントが発生するキャラクターが表示される。この,イベントの発生する日以外は選択できないのだ。その時点で登場していないキャラクターのイベントは,カレンダーに「?」で表示されるようになっている。
 また,発生するイベントの日付は一部の日付固定イベントを除くとある程度ランダムであり,誰か一人のキャラクターに集中してプレイしたとしても,1回のプレイで全部のイベントを見られるとは限らない。これは,TLS3のシステムに近いものといえる。

 各キャラクターには「ティアーポイント」が設定されており,イベント中に現れる選択肢によって増減することがある。これは各キャラクターの,主人公に対する好感度の目安と思えばよいだろう。低いほどキャラクタークリアに有利になる。また,ティアーポイントの値を条件として発生するイベントもある。
 ストーリーはイベントを発生させることで進むため,行動選択画面でお目当てのキャラクターのイベントを選んでいけば,ストーリーは自然と展開してゆく。ストーリー展開上のキーポイントとなる重要イベントに関しては,行動選択画面でそのキャラクターが困ったような顔をしており,すぐ分かるようになっている。
 重要イベントは選ばなくても強制的に発生するが,きちんと選ぶことなく強制発動されると,そのキャラクターのティアーポイントが+2されてしまうので,注意が必要だ。また,ティアーポイントが最大の8のときに,重要イベントを選び忘れて強制発動してしまうと,そのキャラクターは攻略不可能になってしまう。
 過去のプレイで発生させたイベントに関しては,イベント開始時にそのイベントの「あらすじ」を表示し,イベントそのものをスキップできるようにもなっている。このとき,選択肢があるイベントは「選択肢あり」と表示される。なお,選択肢によってティアーポイントが増減するイベントをスキップすると,ティアーポイントの増減は生じない。

 このように本作では,発生するイベントをつないでストーリーを展開するという,一般的なノベルゲームとは少々毛色の異なるシステムを採用している。
 複数キャラクターのイベント発生状況やティアーポイントを見て行動を選択していくなど,単純なノベルゲームとは異なるゲーム性を目指した点が新しい半面,イベントだけでキャラクターを描写しようとしていることで,キャラクターのインパクトが弱まっているなど,副作用も見えてしまうのが少々残念ではある。

 もう少し丁寧にシナリオを練り込んで,システムとのすり合わせやボリュームの調整などを行えば……と,惜しまれる点も多々あるのだが,ノベル作品,つまりゲームとは言い条「見るもの」「読むもの」でしかない作品が主流の現在において,システム面に注力した本作の意欲は大いに買いたい。2006年末には実写版DVDが発売され,去る8月7日には本作のプレイステーション2版が今冬発売予定である旨の発表があった。モチーフやキャラクターに興味をもった人は,すでに発売されているPC版から入るのも手かもしれない。

 

駅前のアニメショップでのイベント後に,依緒と公園で会話。「ファンになって応援するよ」と言うと,意味深な答えが 放課後の図書室で寝ている穂香を発見。ここはやはり,いたずらで眼鏡を取ってみるしかないだろう TLSシリーズではおなじみの(?)「神風イベント」も健在である。いや,「おっ(ハート)」とか言ってる場合じゃないよ

 

1週間の行動を選択する画面。ここでは,行動できる日の右側にイベントの登場キャラクターの顔が。困ったような顔が重要イベントである 重要イベント発生時に,そのイベントの日を選択しないと,強制発動になり,そのキャラクターのティアーポイントが+2されてしまうので注意 とはいっても,週のうち選択できるのは3日間のみ。このように4人同時に重要イベントが発生してしまうと,もうどうにもならないわけである

 

■■田村眞治(ライター)■■
長きにわたるキャラクターゲームプレイ歴を誇る,PCゲームライター。「メイド」といったら「喫茶」でなく「館」だろ? という感覚をも傍らに温存しつつ,現代的な作品に挑み続けている。キャラクターゲームにおける表現の標準水位を語るに当たっては,その後ろに折りたたまれたプレイ履歴が物を言うのである。
タイトル true tears
開発元 サーカス/GameCRAB 発売元 ラクリマ
発売日 2006/03/31 価格 9240円(税込)
 
動作環境 N/A

(C)La’cryma (C)BROCCOLI (C)CIRCUS

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http://www.4gamer.net/weekly/charagame/027/charagame_027.shtml