拡張パックのメインクエストは,狂気の王子に仕えて,言われたことを次々にこなして行く形で進んでいく。クエストの内容は,よくある「〜を取ってこい」「〜を倒してこい」というものももちろんあるが,ゲーム本編には見られなかったような凝った仕掛けを持つクエストなども用意されている。
メインクエスト序盤,妹が王子に行けと言われたダンジョンをズンズン突き進んでいくと,その先でちょっぴりキモワル系(?)の男性に出会った。ヤツの言うことには,この場所から見下ろせる部屋に今から愚かな冒険者達がやってくるから,狂気の王子の使いである妹にその運命を――すなわち殺すか,あるいは発狂させるか,決めてほしいとのこと。選択肢がその二つしかないところがクレイジーだ。
進んで見下ろすと確かに部屋があり,ちょうどそこに三人の冒険者達が入ってきて,何事かをしゃべり始めた。部屋の中央にはおとなしい植物型のモンスターが1体いるが,冒険者達はとくに気にかけてはいない。また,彼らはこちらの存在には気づいていないようだ。妹のそばの壁にはボタンが二つ付いている。ポチリと一つ押してみると……冒険者達の周りに突然大量のモンスターの群れが現れた! 冒険者達は必死に応戦するが,あわれにも一人殺されてしまった。残った二人は次の部屋に進んでいった。
試しにロードし直してもう一つのボタンを押してみたら,部屋の中央の植物型モンスターがどんどん巨大化して,冒険者達を追い回し始めた。冒険者達をひとしきり脅かすとモンスターは消えたが,冒険者の一人はこの体験がよほど怖かったようで,その場にしゃがみ込んでなにやらブツブツ言い出した。おかしくなってしまったらしい……。残った二人はやはり次の部屋へと向かっていった。
先の部屋にはまた別の仕掛けが用意されている。このようにして,冒険者達全員を死体,もしくは狂人にするというのがこのクエストの内容だ。
冒険者達の生殺与奪(せいさつよだつ)の権を自分が握るというのは,冷静に考えれば,決して気持ちいいものではない。しかしここは,狂気の島。悩んだところで殺すか狂わすしかないので,無理にでもサディスティックな気持ちにならないと楽しめない。開き直って「あはははは」って感じでやってみた。ていうかゲームだしね,コレ。
冒険者三人を亡き者(あるいは狂人)にしたらクエストはクリア。冒険者の一人であった戦士は妙に立派な剣を持っていたようで,これを報酬として受け取ることができた。
あとで気がついたのだが,この剣は“昼と夜で名前と能力が変化する”というとても変わった性質を持っている。昼はDawnfangという名前で敵に炎の追加ダメージを与える性質を持ち,夜はDuskfangという名前に変わり,炎ではなく氷の追加ダメージを与えるようになる。この拡張パックで追加されたユニークな外見を持つアイテムの一つだ。とても興味深く,これはぜひ使っていきたいと思ったのだが,前回書いたように妹はブラント(殴り系)の武器を得意とする戦士であり,こんな剣はうまく使えない。ダメじゃん,妹。
ガッデムな気分にクサクサしながらも言われるままにメインクエストを進めていたら,「城下町に,要人の暗殺をもくろんでいるヤツがいるから,そいつを見つけ出せ」という話になった。捜査にあたっては拷問官の手を借りていいという。拷問官? むむ,またまたマッドネスなにおいがしてきた。
教えられた拷問部屋に足を運ぶ。拷問部屋には痛そうな道具こそないものの,気味の悪い像と檻があって床には血糊がベタリとくっついている……。拷問官はその檻の前に立っていた。またしても体の一部がツルッとしたタイプだ。
事情を話すと結構乗り気に。この人,拷問の話をしてるのになんか笑ったりしてて怖いんですけど。
彼を連れて町に降りていく。そのあたりを歩いている人をつかまえて話しかけると,陰謀について訪ねる会話選択肢が増えている。それを選ぶともちろん全員が「陰謀なんて知らない」と答える。そのあとに出てくる「おまえはウソをついている! やっておしまい!」的な選択肢を選ぶと,拷問官はそいつに向かって雷の魔法をドドーンと放つ。もがき苦しむ(少なくとも見た目は)普通の人。「お願いだ。もうやめてくれ!」と言っている。そこで再度陰謀について聞くがまた知らないというのでもう一度……。何度かやってダメだったら,そいつはシロだと判断して,次の通行人を捕まえて……。
なんだかちょっぴり,クラクラしてきた。これ以外に犯人を見つける方法はないのかと,例のおっさんを召喚して,おっさん・アドバイスを聞いてみたが,どうやらこうやって当たりを引くまで人々に尋問し続けるしかないようだ。罪なき人々を捕まえて,片っ端から拷問していかなければ進まない。
つまりはプレイするほうも,気分を狂気の側へ近づけていかないといけないのだ。先のクエストもそうだったが,そういう疑似体験をゲームとして提供している,ということなのだろう。もしかしたらこれは,ゲーム版「ドグラ・マグラ」なのかもしれない。アダルトなゲームなのである。
メインクエストをもう少し進めたところで受けることになる大人数同士の戦闘のクエストも,凝った仕掛けを持っていた。
あるクエストでは,例の金の兵士と黒い兵士が集団戦を行うことになる。妹はどちらかに荷担して,その勢力を勝利へと導かなくてはならない。この島ではとくに金と黒が激しく対立しているというわけではないのだが,このときだけは戦う。このあたりの微妙に理不尽な感じもこの島の特徴だ。
どちらの側についても,今後の展開が大きく変わるようなことはないようである。妹としては「えー,どっちでもいー」という感じだったのだが,あえてどちらかにつけと言われれば,「金粉はちょっと」。なので黒いほうにつくことにした。
どうも,黒いほうは防衛サイドらしい。攻め込んでくる金粉達を迎え撃つのだ。NPC達はみな勝手に動いて戦うので,妹も一人の兵士としてそこに混じって戦えばいい。よしやってみよう。
……負けた。ロードしてもう一回やってみたが,やっぱりまた負ける。どうも先頭に立って戦おうとするのがマズイらしい。こちらはヘビーアーマーを着ているからと前に出るのだが,敵の一撃一撃が結構重くて,数人に囲まれると瀕死の状態になってしまう。なので,まずはNPC同士に戦わせておいて,こちらは横からこっそり攻撃する作戦でやってみたら……うん,今度は勝った。Oblivionは基本的には一人で戦うゲームなので,こういった乱戦は新鮮な気分で楽しめる。
またさらに先に進むと,数名の部下に指示を出して待機させ,やってくる敵を迎え撃つというクエストもあった。指示が出せる部下は4名程度で,指示には「後方から弓で攻撃」「その場をガード」「敵の背後に回り込んで攻撃」の三種類がある。妹自身も戦力の一部なので,自分がどう動くかも計算に入れつつ指示を出す。一人で戦ってきたこれまでとは少し違った思考/戦略が要求される局面だ。
そんなこんなで王子から渡されるクエストを次々にこなしてきた妹は,プレイ時間が20時間に達したあたりでレベルは16になっていた。メインクエストはまだ終わっておらず,おそらく折り返し地点を過ぎてやや進んだあたりではないかと思われる。メイン以外のサブクエストはほとんどやっていない。序盤でいきなりメインクエストに見切りをつけて,社会の裏街道をはいずり始めた姉と比べると,かなり真面目で堅実な性格だ。ああ,でも仕えている主が主なので,そうでもないか。
最初のほうで手に入れたカッコイイ剣が使えなくてツンツンしていた妹だが,その先の道中で,ゆえあって殺したオバサンからドロップした両手持ち巨大ハンマーがかなり良い感じで,いまは喜んでそれを使っている。これもまた拡張パックで追加されたユニークな外見を持つマジックアイテムだ。弓がメインだった姉と鈍器メインこの妹では基本的な戦い方からして違うので,かなりフレッシュな気分でプレイできている。新キャラで始めるという選択は,今回に関しては正解だったようである。
なんとなくメインクエストが話の核心に近づいてきたと感じるので,ここからは放置したままになっているサブクエストをやってみたり,あるいは島内のまだ歩いていないところを探索したりしようかしらん。そうやってのんびり自由に遊んでいられることは,Oblivionの魅力であって,拡張パック導入後も,それはもちろん変わらないのである。まだまだ,楽しめそうだ。うふふふふふフフフ……。