― 特集 ―

3Dゲーマーに贈るSound Blaster X-Fi集中講義

第2講 Sonund Blaster X-Fiの使い勝手と機能は向上したのか

 第1回では,Creative Technologyの最新サウンドカード「Sound Blaster X-Fi」について,同製品がサポートする「EAX ADVANCED HD 5.0」の正体と,同製品が3Dゲームのパフォーマンスに対してどう影響するのかを見てきた。続編となる今回は,大きく様変わりしたユーザーインタフェース(以下UI)と,注目の新機能について,細かくチェックしていきたいと思う。

 Sound Blasterシリーズには,いささか残念な“伝統”が存在する。その最たる例が,使い勝手の良くないUIだ。とくに,Sound Blaster Live!以降は,機能が拡張されるごとにウインドウが追加されるという,かなり賛同しがたいものになった。また,標準で「MS UIゴシック」というUI用のフォントが用意されたWindows XPの登場以降も,半角カナを使い続けており,UI中の日本語が読みにくいという問題もある。
 本誌読者の中には,Sound Blasterシリーズを使ったことがない人も多いと思うので,Sound Blaster AudigyシリーズのUIを下に並べてみた。
 UIは「EAXコンソール」「スピーカー設定」「THXセットアップコンソール」「SURROUND MIXER」「GRAPHIC EQUALIZER」の5種類。スピーカー設定が二つあり,それらがどういう意味なのかいっさい説明されていないほか,ウインドウごとにタブが用意されていてすべての項目を一覧できない,ウインドウを開くごとに数秒待たされるといった具合で,あまり褒められたものではない。

Sound Blaster Live!シリーズのユーザーにとって,移行自体は容易だったEAXコンソール。エフェクトなどについての設定をここで行うが,どれがゲーム用なのかなど,基本的な説明が不足している スピーカー設定。スピーカーが正しく設定されているかのテストと,低域強調(バスブースト)を行う。また,なぜかここにデジタル出力の設定がある
スピーカーの位置など,スピーカー設定よりも細かな設定を行えるTHXセットアップコンソール。右上で紹介したスピーカー設定よりも多機能だが,どちらの設定が優先されるかはよく分からない
SURROUND MIXER。意味の伝わりにくいアイコンと,無理矢理縦方向で表示している半角カナが見づらい ほかと比べると自然に見えるGRAPHIC EQUALIZERだが,前述したとおり,低域強調のチェックボックスはここにない

 Sound Blaster X-FiのUIは,そうしたあまり嬉しくない状況から,少なくとも外観が一新されている。UIはゲーム,マルチメディア鑑賞,音楽制作と,用途別に三つ用意され,それぞれに必要な設定項目のほとんどは一つのUIで完結するようになった。

ゲームモード(ゲーム用) エンタテインメントモード(マルチメディア観賞用)
オーディオ クリエイションモード(音楽制作用)

 選択するモードによって,設定できる機能に差があり,不必要と判断された項目が消えるため,見た目はずいぶんすっきりする。以下,本誌読者に最も関係の深いゲームモードで見ていくことにしよう。
 ゲームモードのコンソールに用意されているのは「CMSS-3D」「24-bit Crystalizer」「イコラザ」「ミキサー」「スピーカー」「バス」という6個のタブ。これをクリックするだけで設定を一覧/変更できるようになったのは,一歩前進である。

カラオケモードなど,ゲームに無関係の項目が省略され,すっきりしたCMSS-3D(これについては後述)関連項目。Audigyに比べて全体の設定をスッキリ見渡せるようになった イコライザは,31/62Hzと16kHzが追加され,低域と高域を細かく設定できるようになった
半角カナの縦方向表示に目をつぶれば,ミキサーもずいぶん見やすくなった

 その結果,問題といえるのは,主に以下の4点へ絞られた。

  • スピーカーの細かな設定だけは「スピーカー」タブの「THX」ボタンから以前と変わらぬTHXセットアップコンソールを開いて行わねばならない
  • 依然として半角カナのオンパレードである
  • 項目ごとの説明が不足しており,効果を理解しづらい
  • UIの読み出し時間が従来よりも長くなった

 どれも大きな問題と思うかもしれない。正直,筆者もそう思う。例えば,ヘッドフォンでゲームを楽しんだ直後に,映画のサウンドをデジタルでAVアンプに出力したいと思ったなら,まずあらかじめUI下部にある「設定」からデコーダ設定を「外部デコーダ」に変更しておく必要がある。さらに,Sound Blaster X-Fiにおいて,アナログとデジタルの両サウンド出力はリンクしていることを十分理解したうえで,DVD-Videoを再生するときには,Dolby Digital 5.1(など)の信号がアナログ出力され,ノイズとなってヘッドフォンから出力されてしまわないよう,ミキサーからアナログ出力をミュート(消音)しておかねばならない。
 ……だがこれを,すべてのユーザーがただちに理解できるわけがないだろう。

 だが,大きな問題が4点に絞られた結果,従来よりは相当まともな使い勝手になった。これは間違いないところで,評価してもいいと思う。
 オーディオ用語がどうしても多くなりがちで,同時に設定できる項目が多いだけに大変な作業だろう。だが,Creative Technologyには,これで安心せず,もっともっとユーザーの声に耳を傾けて,使い勝手をさらに向上させていってほしい。


 UIが半角カナだらけという問題には,解決策がある。それは,英語版ドライバのインストールだ。英語版ドライバをインストールすれば,(当然だが)すべての表記が半角英数字になるので,半角カナから解放される,というわけだ。
 Sound Blasterシリーズを使い慣れた人にとっては,比較的“常套手段”といえるレベルの知識だが,半角カナが見づらいと思ったら,いったんドライバをアンインストールして,再度インストーラを起動。「お使いになる言語を選択してください」と表示されたら,ここで「英語」を選択するといい。
 英語版ドライバをインストールすると,オンラインマニュアルも英語になってしまうが,日本語だから分かりやすいというわけでもない。もともと用語解説がほとんどないので,実のところ英語版であっても大差ないだろう。どうしてもゲームモードのヘルプを日本語化したい場合は,ドライバCD-ROM内の「\Audio\GameMode」にある「Jpn.cab」を開き,「\TargetDir\Help」の「GameMode.chm」を(標準インストールなら)「C:\Program Files\Creative\Sound Blaster X-Fi\Console Launcher\Game\Help」に上書きコピーすれば,日本語化できる。

 Sound Blaster X-Fiには,第1回で予告したように,「CMSS-3D」「24-bit Crystalizer」という機能がある。これらはいずれも,EAXやDirectSound 3Dから独立して,サウンドに対してリアルタイムに変化を加えるものだ。

 順に見ていこう。まずCMSS-3Dだが,このCMSSとは「Creative Multi Speaker Surround」の略。この名称はSound Blaster Live!時代から用いられているので,もはや略称のほうが有名だったりする。
 正式名称からすると,4ch以上のマルチチャネルスピーカーシステム専用のようにも受け取れるが,現在では,バーチャルサラウンドなども含めた,包括的なサラウンド機能になっている。とくに,Sound Blaster X-Fiでは,「CMSS-3DHeadphone」というバーチャルヘッドフォン機能が追加され,以下の3モード構成になった。

CMSS-3DHeadphone

 「待望の」といってもいいだろう,ヘッドフォンにフォーカスしたバーチャルサラウンドモードだ。スピーカー設定で「ヘッドフォン」を選択すると,CMSS-3Dの表示はCMSS-3DHeadphoneモードに切り替わる。ヘッドフォンの場合,前後や上下といった,左右以外の要素を体感することが難しかったが,CMSS-3DHeadphoneの登場によって,音を立体的に表現できるようになったというのが,Creative Technologyの主張だ。

CMSS-3DVirtual

 スピーカー設定で「2/2.1スピーカー」を選択すると,CMSS-3Dタブ内に表示されるのがCMSS-3DVirtualだ。Sound Blaster Audigyシリーズの「CMSS」に相当するモードで,2chあるいは2.1chスピーカーシステムで3Dサラウンドサウンドを表現しようとする。一般に「バーチャルサラウンド」と呼ばれているモードと思って差し支えない。

CMSS-3DSurround

 こちらは,スピーカー設定で4ch以上を選択すると表示されるモードで,ソースが2chステレオの場合,それをマルチチャネルスピーカーで立体的に表現しようとする。Sound Blaster Audigyシリーズにおける「CMSS2」に当たるモード,と説明するほうが分かりやすいだろうか。

 では,CMSS-3Dに,どれだけの意味があるだろうか? 新機能であるCMSS-3DHeadphoneを中心に,従来から名称を変えたCMSS-3DVirtual,CMSS-3DSurroundについても,実際のゲームにおける効果を確認してみることにしよう。

 テスト環境は第1回と基本的に同じ(表1)。CMSS-3Dの機能自体は,Sound Blaster X-Fiの4モデルで変わりないため,今回はSound Blaster X-Fi Digital Audio(以下X-Fi DA)を用いている。また,比較対象として,今回は第1回で採り上げたサウンドデバイスのうち,「Sound Blaster Audigy 2 ZS Digital Audio」(以下Audigy2ZS)「SE-150PCI」「CMI8738-6CHLPE」(以下CMI8738)と,A8N-SLI Deluxeのオンボードサウンドを,Realtek Semiconductor製ドライバで動作させたもの(以下AC’97)を用意した。ドライバのバージョンはそれぞれ,第1回と同じに揃えてある(表2)。

 

 

 

 テストに用いたのゲームアプリケーションは「バトルフィールド2」のデモ版(以下BF2)。テスト環境からリプレイデータのサウンドを出力して,録音側のPCに接続されたM-Audio製のIEEE 1394サウンドデバイス「FireWire 410」に入力。この状態で,シェアウェアの音楽編集ソフト「GoldWave Digital Audio Editor」からWaveファイルとして録音した。今回はこれを「Windows Media エンコーダ 9」から,「高品質オーディオ(VBR 90)」設定でエンコードし,ストリームファイルとしてサーバー上に置いてみた。以下,必要に応じて記事中にプレイヤーを埋め込んであるので,再生ボタンを押せば,実際の音をチェックできるはずだ。

 なお,同一カード上で機能の有効/無効を切り替えるテストにおいて,今回は意図的に光デジタルサウンド出力(サンプリングレートは48kHz固定)を用いている。
 ヘッドフォンやスピーカーにサウンドを出力する場合,通常はアナログケーブルをサウンドデバイスに直接接続する。しかし,今回は音質ではなく,サラウンド効果をチェックするため,サラウンド効果以外の影響をできる限り少なくしたというわけである。
 とはいえ,各社のサウンドデバイスを比較するときには,デジタル出力することによるシステムへの負荷を考慮する必要が出てきてしまい,この方法は得策でない。そこで,サウンドデバイスの横断的な比較においては,音質の劣化を覚悟して,ごく一般的なアナログケーブルを利用した。この点はあらかじめ了解しておいてほしい。

 さて,まずはCMSS-3DHeadphoneから。

 バトルフィールド2 DEMOのサウンド設定は「AUDIO RENDERER」設定を「Creative X-Fi」,「SOUND QUALITY」設定を「Ultra High」に指定した,つまりSound Blaster X-Fiに最適化した状態(以下X-Fiモード)と,AUDIO RENDERER設定を「Hardware」,SOUND QUALITY設定を「High」にした,いわばEAX ADVANCED HD 4.0で動作させた状態(以下EAXモード)の,二つを利用。EAX関連設定はすべて有効にした。
 ゲームモードのUIからは,24-bit Crystalizerを無効にし,スピーカー設定は当然「ヘッドフォン」。「マクロエフェクト」「エレベーションフィルタ」はいずれも「オート」だ。この状態から,「CMSS-3DHeadphone有効」のチェックボックスをオン/オフ切り替えてテストしている。X-Fi DAという同一サウンドカード上で,CMSS-3DHeadphoneの有効/無効が,どの程度の違いを生むか見てみましょう,というわけた。

 録音に使ったシーンは,カメラが戦闘ヘリの周りをやや離れて回っている状態だ。そのためテールローターの音が左右に移動している。ヘッドフォンを前提としたテストなので,ぜひヘッドフォンを利用して聴いてみてほしい。

CMSS-3DHeadphoneのサンプルサウンド

X-Fiモード&CMSS-3DHeadphone有効

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X-Fiモード&CMSS-3DHeadphone無効

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EAXモード&CMSS-3DHeadphone有効

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EAXモード&CMSS-3DHeadphone無効

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(参考)X-Fiモード&CMSS-3DHeadphone有効

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(参考)X-Fiモード&CMSS-3DHeadphone無効

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再生ボタンをクリックすると,その条件で録音した音声ファイルのストリーム再生が始まります。なお,参考までに,アナログで録音したデータも用意しておきましたので,アナログ/デジタルの音質の違いをチェックしたい人は試してみてください。

 CMSS-3DHeadphoneを有効にすると,メインローターの音が耳からやや離れて聞こえ,テールローターとの距離も適度に感じられることで,戦闘ヘリの大きさを実感できるようになる。ヘリは途中で前後にやや傾くのだが,ローターの音がそれに応じて微妙に変わるのも感じ取れるだろう。
 無効にすると,耳の真横でメインローターが回ってるように聞こえ,大きさが感じられなくなる。テールローターの位置もメインローターと近く,ヘリが小さく感じられてしまうほか,動きも大まかにしか分からない。

 では,ヘッドフォンでゲームをプレイする前提で,ほかのサウンドカードと比べるとどうだろうか。フィールドを駆ける兵士を中心としたサンプルで,他社製品と比較してみることにしよう。基本設定は前述のとおりで,X-Fi DAのX-Fiモード以外はEAXモードに指定している。もちろん,EAXモードでAUDIO RENDERERをHardwareにしていても,対応していないSE-150PCIやAC’97ではソフトウェア処理になるわけだが。
 また,ヘッドフォン専用設定のないサウンドデバイス――要するにX-Fi以外すべて――では,一般的な2chステレオで出力し,X-Fi DAにおける24-bit Crystalizerと同様,音質に影響を与える可能性のあるエフェクト類はすべて無効にしている。ただし「サウンドとオーディオデバイスのプロパティ」にある「音量」タブのスピーカー設定は,「ヘッドフォン」に指定した。

CMSS-3DHeadphoneと,ほかのサウンドカードとの比較

X-Fi DA,X-Fiモード&CMSS-3DHeadphone有効

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X-Fi DA,EAXモード&CMSS-3DHeadphone有効

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Audigy2ZS,CMSS無効

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SE-150PCI

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CMI8738

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AC’97

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再生ボタンをクリックすると,その条件で録音した音声ファイルのストリーム再生が始まります。CMI8738とAC’97で音が割れており,とくにCMI8738は顕著なのでご注意ください。

 ストリーム音声は,だいたい以下のような流れで音が切り替わる。

  1. (1)00〜10秒 兵士が砂利〜乾いた土の上を走っている
  2. (2)10〜30秒 ヘリ起動,被弾,爆発
  3. (3)30〜45秒 上空を戦闘機が通過,兵士は走っている
  4. (4)45〜60秒 バギーに乗り込み,警笛を鳴らす

 再生すればすぐに分かることだが,CMI8738とAC’97では,音が割れてしまっている。これは音が飽和したために起こる現象であり,BF2のように,複数の音が飛び交うゲームでは,選ぶサウンドデバイスによって,プレイに支障をきたす可能性があるといえるだろう。ちなみに,AUDIO RENDERER設定を「Software」にすると,CMI8738の音割れはかなり収まるが,この状態だと第1回で指摘したフレームレートに悪影響が出るのは言うまでもない。また,音割れうんぬんを別にしても,CMSS-3DHeadphoneとそれ以外で,音の広がりの違いは明らかである。

 さらに,同じCMSS-3DHeadphone有効時に,肝心のX-FiモードとEAXモードの違いをチェックしてみると,(2)の最後にある爆発音で,かなりの違いを体感できる。EAXモードでは爆発音と散らばる破片の音が同じ場所で表現されているのに対し,X-Fiモードになると,爆発音の右前方に破片が散らばる様子が聞き取れるのだ。これは要するに,EAX ADVANCED HD 5.0対応ゲームだと,音の表現がさらにリアルになることを示している。

 まとめよう。CMSS-3DHeadphoneは,有効にすると空間を広く感じられるほか,物体の大きさや物体との距離が目と耳で一致する。少なくともFPSにおいて,CMSS-3DHeadphoneはかなり有効だ。耳の真横,あるいは頭の中心で鳴っていた音が外に移動する様子は,感動モノですらある。

 続いて,ステレオスピーカーでの3Dサラウンドを実現するCMSS-3DVirtualのテストだ。同じシーンで,X-FiモードとEAXモードの両方で,それぞれCMSS-3DVirtualの有効/無効を切り替えた。また,前述のとおり,Audigy2ZSは「CMSS」という,CMSS-3DVirtual相当の機能を持っているため,こちらのサンプルも用意している。こちらは,2chステレオスピーカーを利用して聴いてみてほしい。ただし,PC購入時に付属していたような安価なスピーカーや,ノートPCのスピーカーなど,再生品質がきわめて低いスピーカーでは,おそらく違いが分からないと思われるので,この点はご注意を。

CMSS-3DVirtualのサンプルサウンド

X-Fiモード&CMSS-3DVirtual有効

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X-Fiモード&CMSS-3DVirtual無効

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EAXモード&CMSS-3DVirtual有効

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EAXモード&CMSS-3DVirtual無効

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EAXモード&CMSS有効(Audigy2ZS)

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EAXモード&CMSS無効(Audigy2ZS)

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再生ボタンをクリックすると,その条件で録音した音声ファイルのストリーム再生が始まります。

 聞いてもらえると分かるが,CMSS-3DVirtualを有効にすると,空間は多少広がる。ただ,広がり具合はシーンによってかなり左右されるため,一概に有効とは言い切れない。また,Audigy2ZSのCMSS-3DVirtual(CMSS)は,Sound Blaster X-Fiのそれと大差ないように感じた。この機能に関しては,従来とあまり変わっていないようだ。実際に有効にして試してみて,よいと感じたらそのまま有効にする,といったくらいだろうか。

 最後にCMSS-3DSurround。これはステレオ再生ではないため,試聴印象での評価となるが,FPSにおいてこの機能を有効にする必要は感じられなかった。確かに臨場感や立体感,物体との距離などに広がりや方向性を感じられる部分はあるが,一般的な15〜20インチ程度のディスプレイと比べると,音が広がりすぎてしまうようだ。広がりすぎて,逆に不自然な感じもする。
 もっとも,カーレースゲームで試してみたところ,ドライバーズビュー時に迫力が増した。ゲームタイトル次第ではアリかもしれない。

 ただ,全体的に音が大きく移動するのは確かで,左右ステレオ感がはっきりしない音になりがちだ。個人的には,無効のほうがいいと感じたことは付記しておきたい。

 24-bit Crystalizerは,Sound Blaster X-Fiで初めて搭載された機能だ。従来のSound Blasterシリーズには用意されていないため,気になっている人は多いと思う。

 ゲームモードだとタブから有効/無効を選択できる24-bit Crystalizerだが,視聴した印象で大ざっぱにまとめると,サウンドの低域と高域を強調する機能である。
 24-bit Crystalizerの仕組みに関しては,音質について検証する第3回で詳しく解説する予定だが,ざっと説明しておこう。
 イコライザを使うと,低域(低い音)や高域(高い音)などを強調できることは,経験的にご存じと思うが,24-bit Crystalizerは,単純にこういうことをしているわけではない。オリジナルのサウンドデータを24bit/96kHzにアップサンプリングし,このとき発生する“音の隙間”を補間することで,音の情報量をリアルタイムで増やしているのだ。
 ただ情報量を増やしただけで,なぜ低域と高域が強調されるのかだが,この理由は,実は簡単。Sound Blaster X-Fiのカタログにも書いてあるが,24-bit Crystalizerは,MP3(正確にはMPEG-1 Audio Layer 3)に代表される,いわゆる圧縮サウンドファイル用なのだ。

 人間の耳は,一定以下の低域,あるいは一定以上の高域の音が,聞こえづらくできている。そこで,MP3などの圧縮音声ファイルでは,(乱暴にいえば)こういった聞こえづらい音を「聞こえないんだから,なくてもいいよね」と,ばっさりカットすることで,ファイルサイズを小さくしているのである。はっきりとしたドキュメントが公開されていないので,100%の断言はできないが,24-bit Crystalizerは,この失われた低域や高域を,リアルタイムに補間する機能と考えてまず間違いない。だから,MP3などの圧縮サウンドファイルを,24-bit Crystalizerを有効にして圧縮音声ファイル,低域と高域が強調されたように感じる,というわけである。

実際には,音が重なる部分にも「聞こえづらい音」は存在し,音声圧縮エンジンはこういった音もうまくカットしている。本講は音声圧縮の解説ではないから,これ以上は説明しないが,興味のある人は調べてみるといい。

 理屈はいいとして,これがゲームと何の関係があるのだろうか?
 ゲームの効果音やBGMは,非常にまれな例外を除いて,ほぼすべて圧縮音声である。普段のゲームプレイでは感じていなくても,ゲームの開発者が意図した効果音が,CD-ROMやDVD-ROMに収める過程で圧縮されるときに,幾分か削られているかもしれない。もしそうだとすれば,24-bit Crystalizerを使うと,そんな失われた効果音が強調され,ゲームのサウンドデザイナーが意図したゲームサウンドを享受できる“かもしれない”のだ。

 24-bit Crystalizerはユーザーが効果のほどを0〜100%で任意に設定できるため,一概に「これがお勧め」とは言い切れない。そこで,サンプルファイルを用意してみたので,聞き比べてみてほしいと思う。テスト環境はCMSS-3Dのテスト時とまったく同じで,出力は光デジタル。24-bit Crystalizerを無効にした場合,有効時の標準設定である50%,そして100%の3パターンを用意した。今回はスピーカー設定を「2/2.1スピーカー」にし,CMSS-3DVirtualは無効にしている。BF2側はEAXモード設定だ。サウンド自体は,前出のサウンドカード比較に用いたのと同じものである。ここも,スピーカーで聴いてみてほしい。

24-bit Crystalizerの効果

24-bit Crystalizer有効,100%

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24-bit Crystalizer有効,50%

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24-bit Crystalizer無効

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クリックすると,その条件で録音した音声ファイルのストリーム再生が始まります。

 WMAエンコードをかけてしまっているため,どうしても24-bit Crystalizerの効果は弱まってしまうが,それでも50%の状態でチェックしてみると,砂利を踏んだ足音や爆発時の低域,警笛の音などが強調されるのを確認できるはずだ。
 100%に設定すると,上に挙げた部分が強調されすぎてしまい,違和感が先に立ってしまった。50%でもその傾向は若干あるが,足音がはっきりするので,これを歓迎する人はいるのではないか,といったところ。ここでは掲載していないが,X-Fiモードにしても試聴結果は同じだった。個人的には,有効にするにしても,30〜40%くらいが上限のように思う。
 ゲームによっても変わってくるだろうし,ユーザーのサウンド環境にも影響されるから,使いどころが難しい。これが正直なところである。

ハイエンド環境だと,新機能がフレームレートに与える影響はない

 最後に,CMSS-3Dや24-bit Crystalizerの有効化によって,フレームレートが変化するかをチェックしてみた。音全体に効果を与えているわけだから,少なくともそれなりの負荷はあるはずだ。

 そこで,第1回とまったく同じ手法で,BF2のフレームレートを計測することにした。テスト環境はもちろん前出の表1のとおりで,解像度は1024×768ドット。BF2のサウンド設定からAUDIO RENDERERを「Hardware」,SOUND QUALITYを「High」に指定し,EAXはオンだ。この状態で,X-Fi DAのスピーカー設定はヘッドフォンにして,CMSS-3DHeadphone,あるいは24-bit Crystalizerの有効無効を切り替えながら,「Fraps 2.60」でフレームレートをチェックしている。

 結果はグラフにまとめたとおりだ。さすがは高性能を謳うサウンドチップということか,CMSS-3DHeadphoneや24-bit Crystalyzerを有効にしても,フレームレートが目に見えて落ちることはなかった。
 もっとも,今回の環境は比較的ハイエンド寄りであるため,すべての環境で同じ状況になると,現時点では断言できない。これについては改めてテストしてみたいと思う。

改めてお勧めといえるX-Fi DA

 テストから明らかになったように,CMSS-3DHeadphoneモードは“一聴”の価値がある。深夜(でなくてもいいが)ヘッドフォンで3Dゲームをプレイするような人は,これだけを目当てに買っても損はしないはずだ。
 相変わらず使い勝手があまりよくないのは問題だが,それでも改善の跡は見える。第1回のテスト結果も踏まえると,ゲーマーにとって,2005年11月中旬における,X-Fi DAの1万6000円前後という実勢価格は,決して高くないと判断できよう。改めて,これからゲームを目的にサウンドカードを購入するのであれば,X-Fi DAがお勧めと述べ,第2講のまとめとしたい。(Jo_Kubota)

 

※2006年12月14日追記 音質を検証する第3回に向けて,特殊な機材の調達努力を続けてきましたが,力及ばず入手できませんでした。新製品のレビューを掲載したこのタイミングをもって,正式に,第3回の中止とさせていただきます。楽しみに待っていてくださった方には心よりお詫びいたします。現在,より現実的なテスト方法を検証中ですので,今後のレビュー記事にご期待ください。