Text by 山
「熱血江湖 Online」は,韓国で大ヒットとなったコミックス「熱血江湖」を原作とし,コミカルで可愛らしいキャラクターや,スピーディなアクション,そしてシンプルで分かりやすい操作性などの特徴を持つMMORPGだ。韓国や中国,台湾,そしてタイなどでサービス提供が行われており,2006年5月現在,ワールドワイドでの累計ID数は3500万に上る,ヒット作となっている。
日本国内では,エムゲームジャパンがサービスを提供することが決まっており,6月16日から19日までの間,クローズドβテストが行われる予定だ。
そして今回,韓国で本作のサービス提供を行っているゲームパブリッシャ mgameは,同社の開発スタジオであり,本作のデベロッパであるKRGのグループ会社として,2006年4月,KRGチャイナを中国・北京に設立した。
我々4Gamer取材班は中国へ飛び,設立式典へ出席するために集合した三社の関係者から,本作や中国オンラインゲーム業界の最新事情などについて,話を聞いてきた。
中国レポート第一弾として,本作を開発したKRGのスタッフに対するインタビューをお届けしよう。
インタビューに応じてくれたのは,同社でMarketing Div./Exective Directorを務めるノー チョル氏,グラフィックスマネージャを務めるキム チョンヒェン氏とパク ヒョンホ氏だ。
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(写真・左から)ノー チョル氏,キム チョンヒェン氏,パク ヒョンホ氏 |
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中国レポート第二弾として掲載している,17game.comに対するインタビューを通して分かったように,原作コミックスが500万部以上も売れている韓国とは異なり,中国では,そのコミックス自体知られていないという。その中国で,2500万に上る累計ID数を記録した本作の魅力とは何なのか,そのあたりを中心に話を聞いてみた。
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まず,KRGのスタッフ構成を教えてください。
ノー チョル氏:
韓国内にいる弊社スタッフは43人で,中国,タイ,台湾にスタッフがそれぞれ4人ずつ常駐しています。それ以外に13人がmgameから出向していますので,計68人です。
4Gamer:
ふむふむ。中国,タイ,台湾といえば,アジア圏で熱血江湖 Onlineのサービス提供を行っている国々ですね。
ノー チョル氏:
そのとおりです。サービス提供先の各国に,弊社からスタッフを派遣しています。
4Gamer:
なるほど。そのあたりも興味深いところですが,まずは,本作が中国でヒットした理由から聞かせてください。そもそも韓国では,コミックスが絶大な人気を誇っているとのことですから,本作がヒットすることも納得できます。ところが中国では,熱血江湖のコミックス自体が知られていないそうですね。
その中国で,これだけ多くのプレイヤーを獲得できたのはなぜでしょうか?
ノー チョル氏:
一つには,本作に登場するキャラクターの持つ,普遍的な可愛らしさが挙げられます。どの国の人にとっても,本作のキャラクターには親しみを感じてもらえるのではないでしょうか。
次に挙げられるのは,本作の世界観がしっかりと作り込まれており,広い層のプレイヤーに受け入れられたことです。やはり深みのある世界が構築されていなければ,これだけ多くのプレイヤーに継続して遊んでもらうことは難しいでしょう。
三つ目は,操作がとても容易で,MMORPGに馴染みのない初心者でも,気軽にプレイできるように設計されていることです。
4Gamer:
ハードルを低くして,プレイヤーがエントリーしやすいゲームに仕上げたことも,これほどまでのID数獲得につながっているのですね。
ノー チョル氏:
そう思います。しかし当然ながら,MMORPGとしての本質的な要素を軽視しているわけではありませんよ。
MMORPGとしては「ほかのプレイヤー達と共にプレイしている」という実感を得られることが,とても大切だと考えており,本作ではそのための機能に力を入れています。プレイヤー同士のコミュニケーションを重視している点も,本作の魅力です。
4Gamer:
その点について,もう少し具体的に教えてください。
ノー チョル氏:
プレイヤー同士がコミュニケーションをとるための要素として,チャットやメッセンジャー機能を備えています。
また,ギルドメンバー同士が情報交換を行える「ミニホームページ」サービスも提供しています。これは,プレイヤーが,本作公式サイト上にホームページを開設できるもので,プレイヤーが作成したホームページは,ゲーム内からも閲覧できるようになっています。
4Gamer:
「ゲーム内から閲覧」というと,ゲーム自体がWebページの表示機能を備えているということでしょうか。例えば,掲示板みたいなものをクリックすると,ミニホームページが表示されるとか?
ノー チョル氏:
ええ,そのようなイメージです。いろいろなコミュニケーション手段を用意していますので,戦闘や冒険だけでなく,ほかのプレイヤーとのつながりを感じてほしいと思います。
4Gamer:
なるほど。MMORPGに馴染みのないプレイヤーに配慮しつつ,コミュニケーションそのものを存分に楽しめる作りになっているというわけですね。
ノー チョル氏:
今言ったのはゲーム自体の魅力ですが,側面的な要因として,中国のプレイヤーのニーズに対し,迅速にそしてきめ細かく対応していることも大きいと思います。
先ほど質問された,スタッフ構成に関わる話になりますが,プレイヤーの要求に迅速に対応するには,現地に人を派遣して彼らの生の声を聞く必要があります。それができる点は,私たちの大きな強みだと考えています。
そして今回,KRGチャイナを設立したことにより,今まで以上に,中国のプレイヤーにマッチしたサービスを提供できるようになるでしょう。
4Gamer:
今教えてもらった理由は,確かにどれも大切なことだとは思いますが,今までのMMORPGと比較して,さほど“飛び抜けた”ものではない気がします。
中国で,これほどまでのID数を誇る本作ですから,ほかのMMORPGにはない,特別な“何か”があるのではないかと思うのですが……。
ノー チョル氏:
そうですね。人気の理由として挙げた,コミュニケーション性の重視に関わる要素が充実している点を,強調しておきたいです。例えば,カップルでプレイすると楽しめる仕組みなども,いずれ提供する予定です。
4Gamer:
ほう。それはどのような仕組みですか?
ノー チョル氏:
もちろん,必ずしもカップルでプレイする必要はありませんが,男女のキャラクター同士が,ゲーム内で結婚できるシステムです。結婚したキャラクターは,獲得経験値や獲得できるお金が増える「指輪アイテム」を獲得できますので,ぜひカップルで協力し合いながらプレイしてもらいたいですね。
また本作には,「医師」といって,ほかのプレイヤーのサポートを得意とするプレイヤークラスが存在します。これは,プレイヤー同士がコミュニケーションを図り,助け合いながらプレイするスタイルを想定し,用意したクラスです。
4Gamer:
確かにMMORPGの初心者としては,殺伐とした雰囲気に包まれたゲームよりも,“優しさ”を感じるゲームのほうが,リラックスして取り組めるのでしょうね。
ノー チョル氏:
ええ,そうですね。それと,ゲーム本編とは別に提供予定の「ミニゲーム」の存在も,本作の魅力の一つといえるでしょう。
4Gamer:
詳しく教えてください。ミニゲームとは,熱血江湖 Onlineのゲーム内でプレイできるゲームのことですか?
パク ヒョンホ氏:
いいえ。あくまでミニゲームは,本作のプログラムとは別個に提供されるものです。とはいえミニゲームはすべて,それ自体がオンラインゲームとして開発されています。
ユニークなのは,プレイヤーが育てているキャラクターを,ミニゲームのキャラクターとして使用できることです。例えば,戦いに飽きてしまったら,自分のキャラクターを使って,釣りやダンスなどのミニゲームを楽しめるわけです。今後は,ミニゲームの種類を増やしていく予定です。
4Gamer:
自分のキャラクターが登場するんですか。愛着があるだけに,普段とは異なる姿を見られるのは,楽しいかもしれませんね。
ミニゲームを行うことによってキャラクターが成長する仕組みなどはありますか?
パク ヒョンホ氏:
ゲームごとに異なります。レベルアップできるゲームもあれば,アイテムの収集に主眼を置いたゲームもあります。例えば,釣りゲームで獲得した魚は,(熱血江湖 Onlineの)ゲーム内アイテムとして使用できるんですよ。このように,単に熱血江湖モチーフのミニゲームが提供されるだけでなく,それらと本編との間で,キャラクターやアイテムのデータが連携されている点が大きな特徴です。
ちなみに,サッカーのワールドカップの開催に合わせて,それをテーマとするミニゲームも提供する予定です。詳細はまだ明かせませんが……。
4Gamer:
ゲーム本編とはまた違った展開が期待できそうです。中には,ミニゲームのほうにのめり込んでしまう人も出てくるかもしれませんね(笑)。
新しいミニゲームの追加予定に関する話題が出ましたので,熱血江湖 Onlineの今後のアップデートスケジュールついて聞かせてください。
キム チョンヒェン氏:
5月中に,ペットシステムとギルド成長システムを実装する予定になっています。
4Gamer:
ギルドが成長するというのはどういう意味でしょうか?
キム チョンヒェン氏:
ギルド専用クエストをクリアすることにより,ギルドメンバー数の上限を高められるので,より大規模なギルドを組織できるようになります。また,ギルド運営を円滑に行えるよう,“中間管理職”も新たに実装される予定です。
さらに将来的には,ギルドの集合体である「国家」同士による戦争システムも導入したいと思っています。
4Gamer:
ふむふむ。より規模の大きな戦いが展開される方向に進んでいくのですね。ところで本作は,アジアの各国でサービス提供が行われていますが,国によってサービス内容に違いはありますか?
キム チョンヒェン氏:
ええ。キャラクターが着用する衣類のアイテムなどが,韓国,中国,タイ,台湾で異なるデザインになっています。それぞれの文化的な違いを反映させて,個別にデザインを行っているのです。
4Gamer:
歴史や文化の異なる人々に広く受け入れてもらうには,やはりデザインを変更したり,システムを調整したりすることが重要なのかもしれませんね。
さて,そろそろ終了時間が迫ってきましたので,日本国内でのサービス展開に対する見通しを聞かせてください。中国での累計ID数が2500万を超える本作ですが,日本ではどの程度の数を見込んでいますか?
ノー チョル氏:
そうですね,数については分かりません。逆に,私達が教えてもらいたいくらいです(笑)。
4Gamer:
日本国内での健闘を期待しています。それでは最後に,日本のプレイヤーに向けて,メッセージをお願いします。
ノー チョル氏:
熱血江湖 Onlineはとても面白いゲームですので,より多くの人にプレイしてもらいたいと思います。また,ゲームのグラフィックス,キャラクター,操作性などを,親しみやすいものにすることを目指して開発しましたので,今までMMORPGをプレイしたことのない人にも,ぜひとも遊んでみてほしいですね。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
「韓国の人気コミックスをベースとする」「中国での累計ID数が2500万以上」といった,熱血江湖 Onlineを形容する言葉から,何かとんでもなく斬新なゲームを想像してしまうという人は,少なくないのではなかろうか。
しかし今回,開発元 KRGのスタッフから話を聞いた限り,今までのゲームにはないまったく新しい要素や,思い切り奇をてらった要素を備えているわけではなさそうだ。
むしろ,可愛らしいキャラクターやゲームとしての分かりやすさを強調しつつ,オンラインゲームならではの要素……コミュニケーション性を高め,より幅広い層のプレイヤーに遊んでもらうことを目指しているとのことだった。
日本では,韓国や中国とは異なるゲーム文化が育まれてきたわけだから,必ずしも本作がそれらの国々と同じように,国内のプレイヤーに受け止められるとは限らないだろう。
ともあれ,「現地プレイヤーのニーズにマッチしたゲームを提供したい」と強調する同社が,日本市場に向けてどのように“味付け”し,それがいかに評価されるのか,今後の動向に注目していきたい。
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