― 特集 ―
4Gamer取材スタッフそれぞれが見た,「E3 2006」

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Text by Kawamura

 開催前は「今年はシングル(もしくはMMO以外の)RPGの年になるのではないか」(Neverwinter Nights 2Titan QuestGothic 3The Witcher,もしかしたらDiablo IIIもあるかも……)と予想していた。しかし自分が担当したブースは,定番であるFPSとRTSの出展が多く,具体的にどのタイトルが印象深かったかは……ううむ。どちらのジャンルも長い年月をかけて洗練されすぎてしまい,どの作品も似通ってしまう傾向に陥っているのかもしれない。確かにどれもこれも,見ている瞬間はやたら面白そうなのだが,日本に帰ってくる頃には区別がつかなくなっており,大弱りである。

 このままではいかんと思い,記憶の糸をたぐってみると,出てくるのは,今年のロスは珍しく連日の曇天模様だったこと,「ここで車が故障したら身ぐるみ剥がれる」という危険な路地をタクシーで何度も往復するハメになったこと,マルカイマーケット(リトル東京のスーパーマーケット)に連日通ったこと,「安い,デカい,固い」で有名な老舗ステーキ店,Original Pantry CafeのTボーンステーキが結構おいしかったこと,帰りの機内で観た「ナイロビの蜂」がやたら面白かったこと,調子に乗って「プロデューサーズ」も観たら,うーんちょっと,ナニだったこと。ライターの星原氏が,Steamのことを「ストーム」といって譲らないこと,……などと書き連ねてみたら,TAITAIに「小学生の作文みたい」と言われた。小学生に失礼だなぁ。

 そんなこんなで,ここらで出展者の皆様に不満をぶつけてみよう。今年も数々の素晴らしい出来映えの極秘ムービーの数々を拝見する機会を用意していただいたが,あれほどゲームが面白そうに見えるムービーを,やれクローズドだの,人数限定だの,門外不出だの,今見たことはすべて忘れてくださいだのと,なぜ必死で隠したがるのだろうか。
 まさか我々メディアが,大迫力ムービーの内容と感動を,余すところなく文章で読者の皆様に伝えられるなどと,本気で期待しているのだろうか。こう言っては身も蓋もないが,我々を買いかぶってもらっちゃ困る。そんな,観ているだけで今すぐ遊びたくて仕方がなくなるようなムービーは,隠さずにどんどん一般公開するべきですよ!

 

Text by TAITAI

 今年のE3で印象に残ったタイトルは,個人的には「何もなかった」というのが本音。ただ,取材先の業界人との間で取り交わされる「今年は何か凄いのあった?」という挨拶に,多くの人間が「Spore!」と答えていたのが印象的であった。

 Sporeとは,ご存じウィル・ライト氏の新作PCゲーム。恒例となっているElectronic Artsのクローズドシアターで,その映像が公開されていた。数時間待ちという行列のため,筆者自身はE3期間中には見られなかったが,帰国後,4Gamerで掲載されているムービーを見てみると,なるほどこれは確かに面白そうである。
 いや「面白そう」というより,正直な感想は「これは一体なんだ?」というサプライズが入り交じった感触といったほうが正しいワケだが,思い起こせば,初めて「The Sims」のプレゼンテーションを見たときも,同様に「な,なんだコレ」と感じたような記憶がある。The Sims同様,Sporeがどういったゲームなのか,映像を見てもよく分からないところに逆に凄さを感じてしまうワケだが,ウィル・ライト氏は,奇想天外なアイデアを「しっかりとゲームにできる」希有な人物。Sporeの完成を楽しみにしたいところ。でも発売予定は「2007年内」。……これは,来年のE3でも見ることになりそうだ。

 もう一つ。個人的に今年のE3で目に付いたのは,高性能な物理演算が可能になる「PhysX」カード。別にE3で初お披露目というワケではないが,筆者にとって,実際にPhysXカードを使ったタイトルをプレイしたのは今回が初めて。物理演算は,数年前のゲームから徐々に実装されてきた技術ではあるが,「駆使する」とここまで印象が変わるものか,と正直驚いた。PhysXチップがまだまだ高価なこともあり,急速な普及は難しいだろうが,映像の綺麗さなどとは違う凄さ/進化を感じさせるPhysX。目新しい物好きの筆者としては,買ってみてもいいかな,と考えたり考えなかったり。ともあれ,今後の発展に期待したいところだ。

 

 

Text by 松本隆一

 ゲームの話はまあ,ほかの人にお任せするとして,今年の一番の収穫はやはり生ゲイツであろう。実を言うと,今を去ること20年近く前,私はMS-DOS(ってのがあったんですよ)関係のイベントで,ビル様に30センチぐらいの距離まで近づいた経験があるので,もう,ツーカーの関係といって過言でないのだが,そんな彼がMicrosoftのプレスカンファレンスにサプライズゲストとして登場し,新コンセプト,「Live Anywhere」をぶち上げたのである。
 Live〜の詳細は稿をゆずるとして,いやー,20年ぶりに見るゲイツ様はすっかりお年を召してらして,そういやチャイニーズ・シアターのスミっこに座る私もそれと同じくらい年をとっちゃったんだろうなあ,という感慨もあったりして。その間,ゲームは目もくらむような進歩を遂げ,目も綾なグラフィックスとサウンドと複雑なシステムと……。
 一体全体この進歩はどこまでいくのだろうか,というのがいつもE3で思うことだ。そりゃ,やがていつかは終わるときが来るのだろうけど,もしかしたらそれは私が生きている間のことではないかもしれない。もしかすると,来年,世界中の人に飽きられているかもしれない。そして,私はそれを見届けたくてここにいるのかもしれない。そうでもないか。

 

 

 年間,100本も200本も遊ぶわけではない。多くて10本,いや,5本もあれば「今年はいい年だった」の私であり,それはもうこのE3で見つけた(ここでは言えないが)。まだまだ前進は続いていくようである。さまざまな新作が生まれ,過去の作品が装いも新たに登場し,新しいコンセプトのタイトルが発表される。ああ,楽しい。
 そう,去年も書いたけど,仕事さえなければE3は最高に楽しいのだ,ちくしょうめ。

 

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