2000年12月,家庭用ゲーム機初のネットワークRPGとして,ドリームキャスト版「ファンタシースターオンライン」(以下,PSO)が登場して以来,さまざまなプラットフォームで展開され,数多くのファンを生み出してきたPSOシリーズ。その流れを汲むシリーズ最新作「ファンタシースターユニバース」が,本日8月31日,ついに発売された。
2004年のE3において制作発表されてから約2年,数度の発売延期を経て,ようやく発売日を迎えることとなった本作だが,なぜこれほど開発が長引いてしまったのか。また,マイルームやパートナーマシナリー,新種族や乗り物といった気になる新要素について,見吉隆夫プロデューサーと,酒井智史ディレクターにたっぷりと話を聞かせてもらってきた。PSOでの経験や反省を生かして制作が行われたという本作の見どころや楽しみ方を,こちらのインタビューでじっくりと確認してほしい。
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左:セガ第三GE研究開発部 見吉隆夫プロデューサー 右:セガ第三GE研究開発部 酒井智史ディレクター |
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4Gamer:
まずは発売日決定おめでとうございます。古くからのPSOファンにとってはすでにお馴染みかもしれませんが,4Gamer読者のためにまず,お二人がこれまで携わってきたタイトルについて教えてください。
見吉隆夫プロデューサー(以下,見吉氏):
ありがとうございます。私の場合,比較的最近のタイトルでいえば,PSOシリーズ,そして今回の「ファンタシースターユニバース」(以下PSU)ということになりますね。
酒井智史ディレクター(以下,酒井氏):
私は最初が「ワールドアドバンスド大戦略」で,その次が「AZEL」「ソニックアドベンチャー」でした。その後はずっとPSOシリーズを手がけています。
4Gamer:
お二人とも,PSOはドリームキャスト版の頃から携わってきたと。
見吉氏:
そうですね。僕が企画/原案ディレクターとしてやってきて,酒井がデザイン面を担当してきました。
4Gamer:
PSUは2004年のE3で発表されて以来,発売まで約2年ということになりますね。
見吉氏:
本当に長い間お待たせしました。(2004年の)E3に出展したのはイメージビデオだけだったので,その時点ではまだまだゲーム的な部分は固まっていませんでした。本来であれば,去年(2005年)の年末に出したいと考えていたのですが,それから考えると8か月も遅れてしまいました。
4Gamer:
一体どうして開発がこれほど長引いてしまったのでしょうか。
酒井氏:
やはり普通のRPGのイベントシーンなどのノウハウがあまりなくて,その構築や,ゲームを作るためのシステムの構築に結構時間がかかってしまいました。前作PSOはPSOとしてすでにあるのであって,今回はそれを超えていく必要がありました。結果として,土台から全てを新しく作り直したために,かなり時間がかかってしまいました。
4Gamer:
今回はネットワークプレイ時のパーティが,これまでの4人から6人に増えたので,そういったネットワーク周りの調整に手間取っていたのではないかと思ったのですが。
酒井氏:
いえ,今回はMMO的な部分を結構取り込んでいますので,単にパーティが6人になったということよりも,そちらの調整のほうに時間がかかっていますね。ただ比重としては,ストーリーモードのほうが苦労としては大きかったです。
4Gamer:
待ち続けていたファンはだいぶやきもきさせられたでしょうね。
酒井氏:
お待たせてしてしまって本当に申し訳ないと思っています。やっと皆さんにお届けできます。
見吉氏:
今回,新しいことをいろいろと取り入れたのですが,そのあたりを見積もりきれていなかったことは反省すべき点です。ただ,PSOはパッと遊んでパッと終われる,ライトな感じのゲームでしたが,時間をかけたぶん,今回はかなりボリュームのあるゲームになっていると思います。
4Gamer:
PSOは一プレイ当たりの時間が短くてテンポのいいゲームでしたよね。
見吉氏:
ええ,そのあたりのテンポの良さは変えずに,というのが大前提でした。PSOは1か月か2か月遊んだら,大抵の人が遊びつくしてしまうボリュームで,その先も作ってはいましたが,そこから先に行く人というのはかなりコアな人達だけだったと思います。PSOシリーズはこれまで5年間稼働してきましたが,これほど長く遊べるように設計されていなかったので,その辺にちょっと“ひずみ”があるのかなと感じますね。
PSUのゲーム設計に関しては,ゲームの手軽さは変えずに,長く遊ぶための工夫や,これまでPSOで培ってきたオンラインゲームとしての運営ノウハウが生かされています。
4Gamer:
いまのお話で“ひずみ”という言葉が出ましたが,それは具体的にどういったことを指しているのでしょうか。
見吉氏:
やはり,PSOはレアアイテムを探すゲームじゃないですか。もともとそういう設計思想なので,そこは間違ってはいないのですが,一番最初の設計では,例えば10万人の人が毎日遊んで,半年から一年間に1〜2個のレアアイテムが出る計算式だったんです。でも,アイテムはたぶんその計算式どおりにドロップしていないと思います。
結果として,多くのプレイヤーはずっと同じことを繰り返されていると思うんですよ。とくにアイテムを狙っている人というのは,一人で潜って繰り返しプレイをされている。ゲームプレイのどの部分に面白みを見つけるかは,いろいろな方向性があっていいと思うのですが,PSOの場合,一定のところまで来てしまうと,レアアイテムを発掘するしか遊び方がありません。
あとはたまにあるイベントや,コミュニケーションの部分ではチャットをしたりということもあるとは思いますけれど,そういうところでしか新しいものを見出せないのはつまらないんじゃないかと思うわけです。毎月新しい要素を入れるというのは不可能ですが,何か月かに一回は新鮮な遊びやイベントみたいなものがないと飽きてしまうので,今回のPSUには飽きさせない工夫を入れているつもりです。PSOでも,もっともっと入れ込みたかった部分でもあります。
4Gamer:
PSUのプレイ要素はレアアイテムのドロップだけではないというわけですね。
見吉氏:
そうです。
4Gamer:
なるほど。例えばこれまでももちろんストーリーはあったわけですが,割とさっぱりとしたものでしたよね。今回はストーリーモードにもかなり力が入っているなと感じます。PSUではオンラインとオフラインと,どちらがメインになっているんでしょう。
見吉氏:
どちらがメインというよりは,役割が違うと考えています。PSOでは,まずコンシューマにはなかったネットワークRPGを作って,その楽しさを広めようというところがスタート地点だったわけです。ご存じのように,韓国や中国,アメリカなどと比較した場合,日本のオンラインゲームのプレイヤー数はそれほど多くありません。
ネットワークモードがどんなものかもう分かっている既存のPSOのファンの方は,オンラインに何の問題もなくそのままスッと入っていけると思うんですよ。けれども,ネットワークゲームを遊んだことのない人にとっては,いきなり「ネットワークゲームだよ,はい遊びなさい」といって渡されてもハードルが高いと思います。そういった人達のためにレールを引いたのがストーリーモードといえます。まずストーリーモードを遊んでもらって,より楽しめるものを求めようとしたときにネットワークモードが存在しているわけです。そして,ネットワークモードに行けば,ネットワークゲームをこれまでプレイされたことのない皆さんが衝撃を受けるような面白さがあると思いますね。
4Gamer:
ストーリーモードはあくまで入り口としてあると。
見吉氏:
そうです。ストーリーモードを遊べば,ネットワークモードに行ったときに,違和感なくそのまま延長線上で遊べる作りにしています。言い方が悪いかも知れませんが,ストーリーモードはかなり壮大なチュートリアルだともいえます。もちろん,ゲームとしてはきっちり作りこんでいますし,ストーリーモードを遊んだ情報を持ってネットワークモードに行くと,さらに楽しめるはずです。