― 特集 ―
特別インタビュー:ガイアックスのゲームポータル「ムポー」で,新たなマーケットを生み出す

Text by TeT Photo by 新井邦彦 

ガイアックス,携帯ゲーム機に参入?

4Gamer:

 今回発表されたタイトルは,カジュアルゲームばかりですよね。おそらくムポーとしては,今後もさまざまなカジュアルゲームを投入することになるのではないかと見ているのですが,日本の市場にカジュアルゲームの文化というものは,根付くのでしょうか?

越知氏:

 ゲームの楽しみ方とか,プレイヤーっていうのが変わってきているとは思うんです。例えばコンシューマゲーム機市場では,現在はニンテンドーDSが一人勝ちですよね。やっぱり,ゲームに求められているものが変わってきているのかな,と。そこにカジュアルゲームって,もしかしたらうまくはまるんじゃないかとは思っています。

4Gamer:

 それは具体的に言うと……?

越知氏:

 リヴィール ラボラトリの田中さんが言うように,仕事や勉強の合間とか,昼休みちょろっと遊ぶような,そういう暇つぶし的な感じですね。

4Gamer:

 なるほど。例えば韓国でもカジュアルゲームって増えていますよね。そういう流れができてきているということなんでしょうか。

越知氏:

 例えば韓国なんかだと,「Crazy Racing: Kart Rider」とか「FREESTYLE」(邦題 クールにバスケFREESTYLE)とか,うまくいっているタイトルはありますよね。もちろん,うまくいかないのもあるわけで,当たりはずれは結構あると思うんですが,PC BANGでの稼働時間なんかは,2〜3年前からカジュアルゲームが上位を占めてます。日本の場合は,裾野が広がる形になると思うんですが,同じような流れになると思いますよ。

4Gamer:

 というのは,カジュアルゲームしかやらないという人が増えるようなイメージでしょうか。

越知氏:

 もちろん,MMORPGなんかをバリバリやっている人とのクロスオーバーはあると思います。ただ,ムポーとしてはそういう人達にも遊んでもらいたいですが,それ以上に,オンラインゲームをやってみたいという思いはあるけれど,まだやったことがないという人達にとって,取っつきやすいものにしていきたいですね。

4Gamer:

 そういう意味では,先ほどもちょっと出てきましたけど,ニンテンドーDSなんかが狙ってきて,実際に成果を上げているような層とかぶるような気もします。ニンテンドーDSは,意識していますか?

越知氏:

 めちゃめちゃしてますよ!
 やっぱり,新しいジャンルを作って,完璧に時代の流れに乗っているじゃないですか。

4Gamer:

 ゲームなんかやったことのないような,ある程度お年を召された方なんかもニンテンドーDS……というより,「脳を鍛える大人のDSトレーニング」を欲しがっているようですよね。

越知氏:

 ええ,任天堂は明確にそういう層を意識して,ソフトを作っているじゃないですか。そういう部分は,本当に尊敬しています。
 あと……そうですね,ニンテンドーDSってWi-Fiで対戦できるじゃないですか。だから近い将来は,それを含めて携帯ゲーム機にも取り組んでみたいとは思っていますよ。オンラインゲームの楽しみ方って,まだまだ提案できるものがあると考えているんで。

4Gamer:

 おお,楽しみにしてます(笑)。
 ニンテンドーDSの話ばかりになってしまいますが,「マリオカートDS」にしろ「おいでよ どうぶつの森」にしろ,言ってみれば“カジュアルゲーム”ですよね。今後,PC向けのカジュアルゲームの市場が広がっていくと,今度はこっちとのシェアの食い合いというのが生まれるのではないかとも思うのですが……。

越知氏:

 近い将来,それはあるかもしれませんね。うん……。そういうことは出てくるでしょうねぇ……。

供給過多な今だからこそ,新たなマーケットを

4Gamer:

 今のオンラインゲーム市場って,実際の規模のわりにリリースされるタイトルにしろ,それに付随する情報にしろ,ちょっと供給過多気味なんじゃないかと思うんですよ。

越知氏:

 そのとおりだと思いますね。

4Gamer:

 そういう現実を見据えたうえで,ムポーとしてはどんなプレイヤー層を獲得していきたいのでしょうか。

越知氏:

 もちろん,4Gamer.netを毎日チェックしているような方々も視野に入っていますよ。ぜひ遊んでいただきたい。とは言いつつ,やっぱり新しいマーケットを作りたいという思いはあります。そうしないと,この時代,生き残っていくのは難しいですから。

4Gamer:

 新しいマーケットというのは,どこに埋もれていると考えていますか?

越知氏:

 先ほども話したように,カジュアルゲームを仕事の合間などに遊んでほしいというのが一つ。そしてもう一つ,実はこっちの方が潜在的には大きいのではないかと思っているのは,若年層と若い女性です。

4Gamer:

 想定している若年層を,もう少し具体的に教えてください。

越知氏:

 小学校の高学年から,中学生,高校生ぐらいまででしょうか。ただ,そこでネックになってくるのは,“ゲーム脳”に代表されるような,ゲームに対して根強く存在するネガティブイメージだと思うんですよ。

4Gamer:

 正体がよく分からないものは,とりあえず何でも悪者にしとけ! って雰囲気はありますもんね。

越知氏:

 ええ,だからその辺をクリアするには,ゲームを通じた社会貢献みたいな感じでもないですけれど,あんまり“ゲームゲームした感じ”じゃないやり方を考えないといけないかなぁとは思ってます。具体的な部分はまだ,思いついていないんですが。
 そういうターゲットを相手にするとなると,ただビジネスをしようっていうだけじゃない,きっちりした理念がないとうまくいかないような気はしています。

4Gamer:

 では,ある程度ビジネスを度外視しながら,新たなマーケットを生み出すことに注力すると?

越知氏:

 限界はありますけどね。たとえ失敗しても,次につながるようにはしないといけないですし。
 そういう意味では,オンラインゲームのパブリッシャって,ここ数年で今までとは様相が変わるんじゃないかとも考えています。それに伴って開発する会社も増えると思うんで,そういうところとも何とかうまくやっていけたらな,と。

4Gamer:

 そのためには,まずムポーを頑張ると。

越知氏:

 もちろんです(笑)。

4Gamer:

 今回のタイトルは,ムポー独占供給であると先ほどうかがいましたが,今後予定されているタイトルもそうなりますか?

越知氏:

 基本的にはそうなりますね。

4Gamer:

 では,ほかのポータルにはないタイトルばかりがムポーに並ぶというわけですね。逆に開発元から,同じゲームをほかのポータルでもやりたいという話があった場合は,どうされるのでしょうか。

越知氏:

 それは……相談には乗ります。もちろん。

4Gamer:

 可能性としてゼロではない,と。

越知氏:

 やっぱりね,ムポーできっちり集客できて,収益が上がっていればそういうことにはならないとは思います。ただ逆に,ムポーの集客力に問題があって,せっかくいいゲームなのにうまくいかないというような場合は,状況次第でそういう選択肢が出てくるということはあるでしょうね。ただ,そうならないようにはしていきたいです。

4Gamer:

 それではまず,3月3日(金)の正式オープン以降に期待というところですね。

越知氏:

 まあ,まだタイトルは少ないですけど……。ゴールデンウィークぐらいまで見ててもらえれば(笑)。

4Gamer:

 気長に……っていうか,あっという間ですよね(笑)。

越知氏:

 あっという間だと思いますよー。期待していてください。

 まだプレオープンして日が浅いムポーは,さすがにまだまだ盛況とは言えない状況である。もちろん,遊べるタイトルがまだ少ない現状では,それも致し方ない。
 今後予定されているタイトルが投入されることで,これがどう変化していくのか,どう広がっていくのか,非常に興味深いところだ。今回のインタビューで明らかになった越知氏が目指すものや,実現しようとしていることは,いつ,そしてどこまで現実のものになるのか。注目していきたい。(2006年2月14日収録)
タイトル ムポー
開発元 N/A 発売元 UTDエンターテインメント
発売日 2006/03/03 価格 無料
 
動作環境 N/A

(C)2007 UTD Entertainment Co. Ltd. All Rights Reserved.

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http://www.4gamer.net/specials/060227_mupoh/060227_mupoh_002.shtml