タカラトミーが5月25日に発表した,ZOIDSファン向けのポータルサイト「ZOIDS UNIVERSE」(以下ZU)と,オンラインストラテジー「ZOIDS ONLINE WARS」(以下ZOW)。その第一次クローズドβテストは6月13日午後4時に終了し,現在,第二次クローズドβテスターを募集中だ(7月3日まで)。
今回は,ZOIDSをまったく知らない人へ向けて簡単な世界観と,第一次クローズドβテストをプレイした段階でのゲーム内容について紹介しよう。
ZOIDSとは何か? そして今回の世界設定は?
ZOIDSとは,タカラトミー(旧トミー)が発売している,恐竜や古代生物をモチーフにした人気アクショントイである。発売が中断された時期はあったものの,1982年から現在まで,さまざまな商品が発表されている。ZOIDSそのもののトイだけではなく,登場する美少女キャラ達のフィギュアや,アーケードゲーム,コンシューマ用ゲームソフト,コミック,そしてテレビアニメなど,幅広い商品展開が行われてきたのも特徴だ。今回のZU,そしてZOWは,そうした中での新展開である。
ZOWの世界観は,トイシリーズに設定されていた「ヘリック共和国」(以下,共和国)が「ガイロス帝国」(以下,帝国)と争いを繰り広げる「ゾイドバトルストーリー」と,これを受け継いだ最初のテレビアニメシリーズ「ゾイド -ZOIDS-」をベースにしたものとなっている。第一次クローズドβテストでは未実装だったが,今後「助っ人キャラクター」として使えるようになる予定の,テレビアニメ版のキャラ達も,ゾイド -ZOIDS-のものだ。
ゾイド -ZOIDS-は,戦乱の「惑星Zi」(ズィー)を舞台にバンとフィーネの冒険を描いた作品で,1999年4月から2000年12月まで,毎日放送・TBS系列で放映。登場するZOIDSの動きが,CGアニメで表現されていたことでも,旧来のZOIDSファンの話題を集めていた。
その物語は,辺境の村に住むバン少年が,古代遺跡で恐竜型の小型ZOIDSであるオーガノイド・ジーク(以下,ジーク)と出会うところから始まる。ジークの持つ不思議な力により,スクラップから復活したZOIDS,「シールドライガー」を手に入れたバンは,ジークとともに遺跡で眠っていた少女,フィーネと一緒に,彼女の失われた記憶を求めて旅に出る。2人は,賞金稼ぎのアーバイン,運び屋のムンベイといった仲間と出会いながら,共和国の首都にある国立考古学研究所へと向かうが,その途中で何度となく共和国軍や帝国軍の戦いに巻き込まれる。そんな戦いに登場する帝国軍のZOIDS乗り,レイブンは,バンのライバルとして何度となく登場。その都度,戦いを繰り広げることになる。
やがて戦争は,共和国首都での攻防戦,摂政プロイツェンによる帝国の御家騒動,レイブンが乗る伝説のZOIDS「デスザウラー」とバンの乗る「ブレードライガー」(レイブンに倒されたシールドライガーが進化した形態)の決戦を経て,休戦状態に。これ以降は共和国と帝国が手を組んで設立した,「ガーディアンフォース」編となる。
ガーディアンフォース編では,バン達の敵が古代ゾイド人のヒルツや,闇の支配者ダークカイザー(その正体はプロイツェン)らとなり,「デススティンガー」のような強力なZOIDSも数多く登場した。
ちなみに,これまでリリースされた情報から類推すると,ゲームに登場するバンやフィーネの姿形は,最初からガーディアンフォース編のものとなっているようだ。
まずはZOIDS UNIVERSEで兵力を準備する
ZUにはアバターを2人分登録できる。ただし,Ziポイントは共通なので使いすぎに注意 |
ZOWのプレイに必要なZOIDS本体は,WebブラウザでZUにログインし,「ショップ」から購入する必要がある。このとき消費するのが,ZU内通貨「Ziポイント」で,払える範囲内でなら最大99機まで購入可能だ。さらに,ZOIDSパーツを購入し,Myガレージで装備させることで,ZOIDS本体を強化することもできる。
ただし,パーツを装備できるのはMy ZOIDSに指定した機体のみ。購入した全ZOIDSをカスタマイズしたいときは,その都度My ZOIDSを指定する必要がある。主人公機とそれ以外の機体とで区別を付けたいのだろうが,ZOWのように複数のZOIDSを動かすゲームでは,この手間がやや面倒ではあった。なお,今回のテストで購入できたZOIDSは以下の通り。
●ヘリック共和国
- ゴドス
- カノントータス
- ダブルソーダ
- ガイサック
- バリゲーター
- ゴルドス
●ガイロス帝国
- モルガ
- イグアン
- シンカー
- ゲーター
- ヘルディガンナー
- ヘルキャット
帝国側でログインした画面。手持ちのZOIDSや助っ人キャラの数はアバターの下で確認できる | 第一次クローズドβテストで購入できたZOIDS。第二次クローズドβテスト以降,新しいZOIDSが加わることに期待 | ZOIDSによって,装備できるパーツの種類は異なる。戦いたいマップに合わせてカスタマイズを |
戦闘システムはオーソドックス
今回,ZOWで用意されたMISSIONは「イセリナ山」「ガリル遺跡」「クロノス砦」「レイクコロニー」の4種類。選んだMISSIONにはそれぞれ作戦目的と勝利条件,作戦期限,出撃可能なZOIDSの数が設定されており,さらにOPERATORからマップの特性などについての情報を得られる。
ZUのプレイガイドには,ZOIDSのサイズによって出撃可能な機体の数が変化すると書かれていたが,今回のテストで登場したZOIDSは全部最小のSサイズだったため,この制限に引っかかることはなかった。ちなみに,各ZOIDSにはレベルが設定されており,レベルが高くなるにつれてHP,EP,攻撃力や機動力が上昇するという設定も用意されている。
なお,マルチプレイでは約5分間のうちに敵側の参加者がルームに現れないと,強制的にMISSION選択まで戻されてしまう。待ちぼうけになるよりは別のMISSIONで相手を捜したほうがいいという配慮かもしれないが,テスター同士がすれ違う原因にもなってしまっていたようだ。ZUのサイト内には今後,チャットなどのコミニュケーション機能が実装されるらしいが,対戦相手の募集ができる掲示板の実装にも期待したいところである。
ルームで待ち合わせしている最中。画面のUnit nameはアバターとして登録したキャラの名前だ | 何機出撃させるか,対戦相手とチャットで相談すると戦力面でのトラブルは起きにくくなるだろう | ZOIDSの初期配置画面。制限時間内に配置しないと,不利な場所からスタートということもある |
武器の選択は,ボックス右のロールバーをクリックして選ぶ。すると,各武器の能力が表示される |
MISSIONは,味方側と敵側がフェイズごとに切り替わって移動,攻撃,そのほかの行動をするという,オーソドックスなターン制。戦闘マップは,一枚絵を六角形のヘックスによって区切ったもので,各ヘックスごとに地形効果が存在する。ただし,それぞれのZOIDSには兵科による特性,あるいはハンデといったものはなく,「大戦略」というよりは「スーパーロボット大戦」に近いシステムといえるだろう。
自分のフェイズ開始時には画面にタイマーが出現し,制限時間内に行動をし終えないと,自動的に敵のフェイズとなる。オンライン対戦型のゲームにおいて,珍しい機能ではないが,制限時間が設けられていることで,場面に応じて瞬時に対応を求められる戦術指揮官の緊張感を味わえるのは楽しいものだ。
ゲーム開始直後の敵側ZOIDSは,どれも共通のシルエットとなっているため,まずは索敵をしてどんなZOIDSがいるのかを把握する必要がある。これは,以前4Gamerに掲載したインタビューで,タカラトミーの小澤氏が語っていた「索敵能力」の要素を生かしたものと思われる。
索敵をゲーム内の要素に組み込むということでいえば,敵の位置が全く分からない状態からスタートし,索敵によって初めて敵の位置と種類が判明するというブラインドサーチシステムも考えられる。だが,そうしたシステムは,ストラテジーゲーム慣れていない人にとって若干,ハードルが高めだ。本作のメインターゲットが,オンラインゲーム初体験のZOIDSファンであるとのことなので,分かりやすさを重視した結果なのだろう。
続いて,戦闘システムにも目を向けておこう。攻撃の手順は,自軍のZOIDSごとに武器選択→攻撃範囲確認→敵選択→攻撃という,オーソドックスなものになっている。どの武器による攻撃も,EPを消費して発動する形だ。ただし本作では,カウンター攻撃などの反撃システムが用意されておらず,攻撃を受けた側は自ターンになるまで,何もできない。そのため,数的に劣勢の場合,一矢報いることなく全滅する危険性がある。
もっとも,自動的に反撃するシステムだと,今度は当たらない反撃を繰り返してしまい,EPを無駄に消費することにもなりかねない。せめて,反撃するかどうかをプレイヤーが任意で選択できるようになっていれば,ただ一方的に攻撃を受け続け,あっという間に敗戦……といった事態を避けられるのではないだろうか。
武器の命中率は,選択した武器の命中率と敵ZOIDSの「機動」の高さが関係しているようだ。つまり,ZOIDSがレベルアップして,機動力が高くなっていくと,相手の攻撃をほとんど受けないという怪物になってしまうこともありそうだ。ソロプレイ時にはそれも悪くはないだろうが,対人戦でこういったZOIDSが出てくると,プレイヤーごとのプレイ期間に起因する格差が,いつまでも縮まらなくなる可能性も考えられる。ZOIDSの「特技」に必ず攻撃が当たるタイプ,もしくは命中率が上昇するタイプのものを用意するなどして,このあたりの対策を講じてもらいたいところだ。
攻撃システムと命中率の次に,各ZOIDSの戦力バランスにも触れておこう。というのも,今回のテストでは,この点のバランスがあまりに不均衡であるように思えたからだ。
その原因は,なんといっても帝国軍の「モルガ」が装備している「AZ120mmグランドキャノン」である。この武器の消費EPは65で,モルガの最大EPは105であるため,EP回復の手段がない限り,一発撃ったらそれっきりではあるのだが,最大射程が4で攻撃力が428という,とてつもない破壊力を有している。反撃ができない現在のシステムでこのような飛び道具を出されると,相手方は叩かれっぱなしになってしまうため,かなりつらい。テスター達の間でも「現状,モルガが数多く押し寄せてきたら,共和国に勝ち目はない」という声が多く上がっていた。
もっとも,モルガの取り柄はこの「AZ120mmグランドキャノン」だけではある。だが,なんといっても「戦争は数」だ。第二次クローズドβテスト以降,テレビアニメの主役級でもある中型/大型ZOIDSが加わることにより,バランスが大きく変化するのだろうが,武器のレーティングが適切なものになることにも期待しておきたい。
画面下の影になっているZOIDSが未確認状態。ピンクのエリアはZOIDSの索敵範囲となっている | 画面にある,旗のあるZOIDSは参戦しているプレイヤーのアバターが乗っている隊長機だ |
攻撃範囲内に敵を捕らえている状態。「E」の付いているZOIDSはすでに行動済みのもの | 「イグアン」の攻撃シーン。戦闘アニメーションは,比較的シンプルなものとなっている |
ZOIDSファンの要望を受け止め,次でさらなる改良を!
ヘビーゲーマーではないZOIDSファンでも気軽に楽しめるゲームという視点と,ZOIDSが持つキャラクター性から見ると,ZOIDS1体で1ユニットという基本コンセプトそのものは決して間違ってはいない。ただし,コンセプトは正しくても,まだそれを消化しきれていないという印象だ。
当初のスケジュールより,クライアントの配布が遅れたこともあり,多少の見切り発車的な側面もあったのかもしれない。パブリッシャであるタカラトミーにとっても,開発元である翔泳社にとっても,オンラインゲーム開発/運営に関する経験がまだ浅いため,予測し得なかったトラブルも多々あったであろうことは推察できる。
だが,ゲームシステム以前の不具合が数多く見られたのは,やはり気になるところ。2行以上の文章がきちんと反映されないチャット,配置しても動けない場所があるマップ(「イセリナ山」北西の崖など)などは,クローズドとはいえ,テスト前に修正してほしかった。
7月上旬に予定されている第二次クローズドβテストから参加するテスターの中には,ゲームはもちろんのこと,ZOIDSというジャンルそのものを,こよなく愛している人も少なくないだろう。そうした人達のためにも,システムの練り込みと動作のさらなる改良を,切に望む次第である。
全ZOIDSが倒され,敗北した場面。敗北した側のZOIDSは,どれも赤く表示されている | こちらは勝利した場面。今回のテストではフリーズが多く,ここまで来るのにも苦労した | 戦闘に勝利すると経験値がもらえる。経験値が一定量たまると,アバターがレベルアップ |