― レビュー ―
熾烈な北アフリカ戦線を生き延びろ! コードネーム:パンツァーズの続編
コードネーム:パンツァーズ 〜フェーズ2〜
Text by 虎武須(Kobs)
2006年4月4日

※前作「コードネーム:パンツァーズ」のレビューは「こちら」

 

■戦車に思い入れのある人はオヤジ層に多い?

 

北アフリカ戦線は,ドイツのロンメル将軍が活躍したことで有名だが,本作の枢軸軍キャンペーンはイタリア軍の士官が主人公となっている

 多くの4Gamer読者にとってはタミヤといえばミニ四駆かもしれないが,オヤジ世代にとってはミリタリーミニチュアだ。かくいう筆者も小学校高学年のころには,小遣いやお年玉のすべてを注ぎ込んで,この精巧なプラモデルシリーズを必死で集めまくっていたものだ。戦車はもちろんのこと,砲台や歩兵,あるいはバリケードセットや土嚢セットといった小物類に至るまで買い漁り,ジオラマ作りに燃えたものである。
 今にして思えば一過性の熱病のようなものだったが,現在でも戦車には特別な思い入れがあるようだ。先ごろ日本語版が発売された「コードネーム:パンツァーズ 〜フェーズ2〜」(以下,フェーズ2)をプレイすると,やはり必要以上に燃えてしまうのである。前作をレビューした松本隆一氏に近いものがあるかもしれない(私はそこまで戦車マニアではないが)。

 実際のところ,本作のように3Dで緻密に描画される戦車がところ狭しとばかりに暴れる回る姿は,見ていて感動的ですらある。重厚なエンジン音,独特な「キュラキュラキュラ…」というキャタピラの音,さらには豪快な砲弾の発射音など,リアルな効果音が臨場感をさらに盛り上げるのだから,マニアでなくともたまらない高揚感を得られるというもの。個人的には,この作品はぜひスピーカーの音をちょっと大きめにして楽しんでほしい。

 

枢軸軍,連合軍ともに充実したキャンペーンが用意されている。パルチザンキャンペーンは,これらをクリアすることでプレイ可能 ミッションブリーフィングでは,作戦内容とともに主要目標,補助目標が提示される。クリアだけなら主要目標のみ達成すればいい フェーズ2からライトの点灯が可能になり,夜間の戦闘もかなり雰囲気が出ている。ライトを消すと視界が25%カットされる

 

第二次世界大戦で最強の戦車といわれた,キングタイガー。マルチプレイなどで戦争後期を選択すると使用可能となる 市街戦もある。建物のせいで見通しが利かず,建物に隠れたロケット砲兵などがいて非常に厄介だ。こちらも兵士を斥候に出そう 支援要請した爆撃機が目標地点に到着。戦車部隊が到着する前に,敵をある程度間引いてくれると非常に助かるのだが……

 

 

■名声ポイントを稼いで,より強力な戦車を揃えよう

 

空挺部隊の降下を要請した。味方の支援も,勝利をつかむための重要な要素となる。使いどころをよく考えよう

 本作は第二次世界大戦を扱った,フル3D描画のミリタリーRTSだ。タイトル名からも想像できるとおり戦車戦がメインであり,戦車がお好きな人にはたまらない作品なのである。前作はコーエーからの発売だったが,フェーズ2はミリタリーRTSのローカライズに命を懸けているズーからの発売となった。
 少々ややこしいのだが,フェーズ2は「コードネーム:パンツァーズ 2」ではない。フェーズ2は前作の追加パックといった感じのもので,夜間にライトの点灯が可能になったり,新しいゲームモードが追加されたりといった細かな変更点のほかは,ゲームシステム的にとくに大きな変更点はない。

 フェーズ2では,前作になかったゲームモードとして,「バトル対戦」なるものが追加された。これはシングルプレイ用の,言うなればスカーミッシュモードで,CPUを仲間や敵として対戦するもの。マルチプレイデビューを躊躇しているときや,適当な対戦相手が見つからないときでも,これさえあれば擬似マルチプレイが楽しめるというわけだ。もちろん通常のマルチプレイも健在で,最大8人での対戦や協力プレイが可能だ。

 画面は俯瞰視点が基本ではあるが,3D描画であるためグリグリと視点を移動させること,視点高度を上下させることも可能。精巧な動きを見せる戦車や,弾道計算に基づいた軌道を描く砲弾など,本作の兵器グラフィックスは“ユニット=駒”といった記号的な描かれ方ではない。まさに地形と一体化した自然な絵と挙動を見せ,進軍する姿は,さながら上空から撮影した実車ムービーのようだ。

 フェーズ2のキャンペーンは,イタリア軍を主とする「枢軸軍キャンペーン」と,イギリス軍を主とする「連合軍キャンペーン」が用意されている。さらに,どちらのキャンペーンもクリアすると「パルチザンキャンペーン」もプレイ可能になる。
 枢軸軍と連合軍はどちらからでも始められるのだが,ストーリー的なつながりがある関係から,ここは枢軸軍キャンペーンから始めるのがよさそうだ。三つのキャンペーンで全20ミッションが用意され,北アフリカ,シチリア,ユーゴスラビアなどを舞台に,第二次大戦RTSとしてはかなり中身の濃いストーリーが展開される。もちろん日本語版は随所に挿入されるムービーに日本語字幕がついているので,内容が分からないということはない。

 キャンペーンでは,ブリーフィングで提示された「主要目標」の達成を目指して戦うわけだが,さらに「補助目標」が与えられるので,なかなか息をつく暇がない。さらに各ミッションには「極秘目標」が設定されており,これは内容もヒントもまったくない。達成することで,初めて何が目標だったのか明らかになるのだ。
 補助目標や極秘目標は,ミッションクリアに必須なわけではないが,クリアしたときに得られる名声ポイントに大きく影響する。このため,とりあえずクリアした後も,完全クリアを目指して何度もプレイしてしまうことだろう。

 ミッションでの功績に応じて得た「名声ポイント」は,次のミッションで新たな兵器を購入するために必要になる。強力な兵器ほど多くの名声ポイントを消費するが,ユニットは買った値段の半額で売却もできるので,足手まといなユニットを売却したり,より高性能な戦車に乗り換えるという選択肢も用意されている。もっとも,欲しい兵器を全部買えるほどのポイントは得られないので,強化は慎重に。

 また,各ユニットには「経験値」の概念があり,最高8レベルまで成長していく点も見逃せない。高レベルなユニットは,攻撃力が上がったり,可視範囲が広くなったりといったボーナスを得るので,個々のユニットにも親しみが湧くだろう。戦車や野砲などのユニットは(クルーが死なない限り),新たな兵器に乗り換えても経験値やレベルが持ち越されるのが嬉しい。

 もう一つ,キャンペーンでの英雄ユニットの存在も付け加えておこう。近年ヒーローユニットが登場するRTSは実に多いが,フェーズ2の英雄ユニットはストーリーに絡む主要人物で,ユニットとしては攻撃力と防御力に50%のボーナスを持っている。すべてのミッションで,英雄ユニットは生き延びなければならない。
 しかし,攻撃/防御に50%ボーナスという設定があるうえに,英雄ユニットもレベルアップしていくというシステムが,このシリーズのキャンペーンを初心者向けにしているといって過言ではない。あまりにも強力過ぎるのである。このため,英雄ユニットが登場しないマルチプレイなどの対戦をしてみると,難度の違いに愕然とすることだろう。せめて難度の設定に応じて英雄ユニットの強さも変えてほしかったし,英雄ユニットのレベルアップも必要ないのでは,というのが筆者の本音である。

 

すべての主要目標を達成すると,どれだけ目標を達成したかが表示され,その場で名声ポイントが与えられる ミッション開始前に,兵器の購入ができる。前のミッションでしっかり名声ポイントを稼がないとロクなものが買えない 戦車や装甲車両などを破壊すると,破片が周囲に飛散する。派手とまではいえないが,ちょっとした演出が見もの

 

チュートリアルもある。これは戦車に火炎放射をしているところ。一定の温度を超えると,クルーをあぶり出せる 怪しい場所には偵察機を飛ばし,砲撃要請すべし。だが,さほど命中率は良くないので,あくまで補助と考えるべきだ 枢軸軍の主人公,イタリア軍士官ダリオと,共に戦うドイツ軍士官ハンス。ともに英雄ユニットとして登場する

 

 

■お手軽でありながら,実は奥深い作品

 

当然のことながらヘッドライトは敵に見つかりやすい。逆にわざと点灯して,敵をおびき寄せるという手段もあるかも

 いくら戦車戦がメインの本作といっても,歩兵ユニットも同じくらい重要だ。狙撃兵や対戦車ライフル兵,ロケット砲兵など,歩兵ユニットも種類は豊富。さらに各歩兵ユニットには手榴弾や火炎瓶,あるいは双眼鏡などのオプション装備を二つまで携行させられる。安くて死にやすいユニットであるがゆえ,軽視されがちな歩兵。しかし視野の違い,戦車からの攻撃の当たりにくさ,手榴弾の有効性などを考えれば,歩兵も決して侮れない存在なのが分かる。

 ユニットの種類は確かに豊富で,とくに戦車の充実ぶりには目を見張るものがある。前作から戦車の種類は多かったのだが,フェーズ2でさらに追加されたので,その数は100種類近い。その兵器ユニットすべてに,前面,後方,側面それぞれの耐久度が設定されているなど,ミリタリーRTSの基本は押さえているといえる。
 その半面,戦車が木っ端微塵に吹っ飛んでもクルーが死ぬことがなかったり(破壊されると中からクルーが飛び出し,クルーが生き延びれば次のミッションでもレベルを維持できる),補修車両でガンガン修理しながら敵陣に突っ込めたり,砲の口径がそのまま与えるダメージ(例えば88mm砲なら,与える基本ダメージも88)だったりと,案外大雑把な印象を受けたりもする。ある程度リアリティを犠牲にする代わりに,ミリタリーRTSの初心者にも分かりやすく,取っ付きやすくした作品だ。

 かといって,“単なる初心者向けRTS”とバッサリ切り捨てられるゲームでもなく,やはりこのジャンル特有の索敵の難しさ,戦車と歩兵のバランス,地形や遮蔽物の有効利用,あるいは長い射程を持つ砲台の重要性など,やり込むほどに奥の深さが見えてくる。つまり取っ付きやすさと奥深さを併せ持つゲームといえるだろう。
 そもそもミリタリーRTSは,リアルさを追求するあまり,「難しい」というイメージが定着しているのか,ライトゲーマー層からは敬遠されがちである。しかしこの作品に限っては,ミリタリーRTSはもちろん,通常のRTSの初心者でも楽しめることだろう。とかくリアリティを追求しがちなミリタリーRTSだが,このジャンルに少しでも興味がある層を狙って間口を広げるというアプローチは,素直に歓迎したいところだ。
 第二次大戦RTSに興味はあるんだけど,難しそうだしな……と二の足を踏んでいた人は,ほかのどんな作品よりも,本作からプレイしてみることをお勧めする。途中で投げ出す心配なく,勇壮かつ重厚な雰囲気を手軽に味わえることだろう。

 

高射砲を多数配置した谷に,おびき寄せられたイギリス軍の戦車。3Dなので,視点をユニットにぐっと近づけられる 「バトル対戦」が追加されたことで,疑似的なマルチプレイも可能になった。これで練習してマルチプレイデビューか? 3D描画ということで,細かな描画設定ができる。割と重めなゲームなので,スペック次第であれこれ調整してみよう

 

砂煙を上げて北アフリカの砂漠を進軍する戦車部隊。キャタピラなどの効果音が抜群に良く,臨場感を盛り上げる いくら英雄ユニットが強いといっても,闇雲に進軍させれば,この通り集中砲火を浴び,お陀仏となってしまう バトル対戦の設定画面。年代によって使用する兵器が異なる。軍の編集では設定された名声分の兵器を購入できる

 

タイトル コードネーム:パンツァーズ 〜フェーズ2〜
開発元 Stormregion 発売元 ズー
発売日 2006/03/24 価格 8190円
 
動作環境 Windows 2000/XP(+DirectX 9.0c以上),Pentium III/1GHz以上[Pentium 4/1.80GHz以上推奨],メモリ 256MB以上[512MB以上推奨],HDD空き容量 3.5GB以上,グラフィックスメモリ:64MB以上[128MB以上推奨]

(C) 2005 CDV Software Entertainment AG. All rights reserved. CDV,the CDV logo and Codename: PANZERS - Phase Two are either registered trademarks or trademarks of CDV Software Entertainment AG or Stormregion in the US and/or UK and/or other countries.

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http://www.4gamer.net/review/panzers_ph2/panzers_ph2.shtml