■激しい戦車戦が今,画面上に! 戦車主体のRTS
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| 第一次世界大戦に初登場し,第二次世界大戦で爆発的な進歩を遂げた兵器,戦車。そんな戦車を主役としたRTSがこの「コードネーム:パンツァーズ」だ。戦車部隊の指揮官となって,激しい地上戦を生き抜くのだ |
本作は第二次世界大戦を背景に,プレイヤーはドイツ軍,ソ連軍,連合軍いずれかの指揮官となり,小/中隊規模の部隊を率いて戦うという戦術級RTSだ。
キャンペーンでは,それぞれ10本ほどのミッションが用意され,順に勝ち抜いていく。それ以外にも,単発シナリオや好きな設定で戦うモードなどもあり,ゲームボリュームは十分,戦場不足に陥ることはまずない。各ミッションはおおむね史実に基づいているが,中には架空のものや戦車が全然出てこないミッションもあり,意外にバラエティに富んでいる。
RTSというと,「あっちの鉱山が敵に襲撃されているので撃退しつつ投資して生産力を上げつつ騎馬隊を整備しつつ山の向こうに偵察を出しつつ農民に城を建てさせる。キー!」という大変慌ただしいイメージがあるが,この「コードネーム:パンツァーズ」では生産の概念をばっさりオミットし,プレイヤーは手持ちの部隊だけで戦う。
確かに,お金を貯めて戦車工場などを建て,そこからタイガー戦車がバンバン出てきたら変だと思うが(ソ連軍の場合はそれに近い雰囲気があるけど),そんなわけで,趣向としては一世を風靡した"サドンストライク シリーズ"に似ているだろう。余計なことを気にせず戦闘に集中できるので,一度に三つ以上のことを考えられない私にはピッタリなのである。
システムをざっくり説明すると,まずミッションで勝利を収め,その勝ち方によって「名声ポイント」が与えられ,そのポイントを使って新しい戦車,兵士,大砲などを購入し,次のミッションに臨む。手持ちの兵器の売却も可能であり,ミッションが進むにつれて,どんどん自分好みの部隊を編成できるところが何より燃える。
私は,イスラエル陸軍の「オールタンク・ドクトリン」の熱烈な信奉者なので,歩兵も牽引式野砲も片っ端から売っぱらい,しまいにゃ完全戦車編成の部隊を作ってしまったが,いうまでもなく大変使いづらい。とくに市街戦中心のミッションが悲劇で,ごちゃごちゃした市内を通行するうち,狭い道路でお互いにはぐれ,どこからともなく飛んでくる砲弾を受けて各個撃破の憂き目を見るのだ。うわ,敵はどこさ?
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| 会話は英語だが,字幕が表示される。文書類はこのようにちゃんと日本語になっているので非常に分かりやすい | ドイツ軍の主人公,ハンス・フォン・グレーベル。ポーランド電撃戦からスターリングラードまでを戦い続ける | ソ連の主人公,アレクサンダー・ウラジミロフ。個人的にはソ連軍パートが好ましい。ともかく突撃! ウラー! |
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| 勝利を収めるごとに,名声ポイントが得られる。極秘目標を達成していれば,評価はさらに高かったのに。残念 | ミッション前にはカットシーンが登場して雰囲気を盛り上げる。これはおなじみ連合軍ノルマンディー上陸シーン | 戦闘開始だ。とはいえ,対ポーランド戦はいたって地味。敵も地味だし味方も地味。のどかな感じさえ漂うようだ |
■なかなかのAI,マニアックな兵器類,そして美しい描画
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| 爆破,砲撃などのエフェクトはかなりの迫力。完全3Dなので,建物の背後に隠れた敵もぐるっと回して的確にクリックできる。さらに木立や塀,街灯などもバタバタ倒せるうえ,かなり多くの建物が破壊可能だ |
しかも,各ユニットには経験値が設定されているので,古参兵をないがしろにする私のような作戦はとても不利なのである。ええ,分かっちゃいるんですけどね。ちなみに関係ないけど,「名声ポイント」って訳語が,いかにもコーエーっぽくっていいですね。
なお,本作ご自慢のAIは,実際は「まあそれなりかな」という感じ。移動時すぐに団子状態になったり,攻撃されているのに動かなかったりという,やや困ったところがあるが,こまめに指示を出さない私が悪いのかも知れない。
ところで,「マニアをも唸らせる」という武器,兵器類だが,これに関しては,マニアを自認する私としては「ぜひ唸りたい」とゲームに臨んだのであるが,あんまり唸らなかったような気もする。印象に残ったのはせいぜい対ポーランド戦に登場するフランス製75mm野砲とTKS豆戦車,そしてソ連キャンペーンに出てくるハンガリー国産,ズリーニィ突撃榴弾砲あたりであろうか。さらにそうした超マイナーユニットは敵として登場するだけであり,自分で使えるのはT-34やIV号戦車といった,ごくオーソドックスなチョイスだ。
ついでながら,ドイツ軍キャンペーンは1939年の対ポーランド戦から始まり,1942年のスターリングラード戦で終ってしまうので,「いずれはキングタイガー(ヘンシェル砲塔)一個大隊で連合軍を蹂躙」と勝手に思いこんでいた私はちょっと拍子抜けである。まあマニアの言うことだから,あんまり真に受けないほうがいいとは思いますけどね。
しかし率直にいって,広い戦場を土煙を立てて走る戦車は実に魅力的だ。「生きてて良かった」とさえ思う。ゲーム中の視点から見て,だいたい1/72スケールの模型といった雰囲気だが,細部が作り込まれているうえ,ウェザリングなどもちゃんと施されていて,一部で大人気だった食玩「ワールド・タンク・ミュージアム」をいい歳こいてたくさん集めた私としては,つい1台欲しくなる。しかも,あちらは机に並べておく以外にないのに,こちらは大砲を撃ったり,木々をなぎ倒して進んでくれたりするからなおさらだ。
そんな感じで,さすがに最新のゲームらしく本作のグラフィックスはかなり優秀だ。3Dで細かく描かれた戦場では,最近流行の光と影の表現もなかなか。
スターリングラード,ベルリンなど,あちこちで炎を上げる廃墟の表現も秀逸だし,雪が舞ったり,激しい雨が降ったりと,変化があって美しい。爆発のエフェクトも大変派手でけっこう。よほど大量の部隊が一度に登場しない限り,ラグなどの不都合も見られなかった。
シングルプレイに関していえば,難度は低めだ。基本的に,部隊を前進させ,見つけた敵を問答無用で撃破し,目標地点をクリアすればよろしい。兵士をちょこまか走らせ,やられそうな戦車は後ろに下げ,修理車を移動させ,砲を展開する,といった具合で,やはりRTSらしく慌ただしい。意外な方向から突然現れる敵部隊もお約束。パンツァー,フォー(戦車前進)!
各ミッションには,ときどき「隠し補助目標」があり,それを達成するとさらに多くの名声ポイントが得られる。車両を温存するために,敵と遭遇するたびに修理,補給を繰り返しては,時間がかかり過ぎて名声ポイントが低くなってしまうので,ときには損害をかえりみずに突撃する必要もあるが,あんまり損害が出ると,またまた名声ポイントが低くなる。といった悩みどころはあるが,頭を抱えるほどではない。
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| 目標を一つクリアしても,次々に新しい命令が与えられることもある。補給車と修理車は必須アイテムだ | 狭い道に部隊を突入させ,超混雑状態。敵がそこまで来てるのに。それでも戦車一筋路線を堅持し続けるぞ | 何をおいてもクルスク大戦車戦。まずはタイムアタック。地雷原が出来上がるまでドイツ軍の攻撃を食い止めろ |
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| ソ連防衛線を薄紙のように破って接近するドイツ戦車隊。タイガー戦車の姿も。やつらを地雷原まで誘い込め | 地雷で身動きのとれなくなったタイガーを撃破。さらに戦闘爆撃機,重砲を投入してドイツ戦車隊を殲滅だ | 肉薄攻撃を仕掛ける敵歩兵は戦車の強敵。迫撃砲,パンツァーシュレックなどは強力で,やられると悔しい |
■意外なほどの高難度を誇るマルチプレイ!
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| 主人公3人は基本的に無関係だが,わずかに運命が交錯する場合もある。ところでこのゲーム,キャンペーンは比較的簡単だがマルチプレイはうって変わって非常に難しい。シングルで鍛えておくのが王道であろう |
シングルプレイのときのように,少ないダメージで敵を次々に撃破できるわけなく,例によって「やられ役の悲哀」をたっぷり味わうことになる。当然ながら,シングルのように「ポーズをかけてじっくり状況を考える」なんてこともできないので,うっかり突撃して敵の大軍に出会うと,アーもウーもなく全滅してしまうのだ。ぬぬぬ,これは大変。
こんなにやられるのは私に原因があるのだろうが,ちょっと心配だ。なんてね。
マルチプレイは最大8人のプレイヤーが参加でき,チーム同士が戦う「チームデスマッチ」,拠点を占領すると補給を得られる「制覇」,拠点を奪い合う「襲撃」,さらにほかのプレイヤーと協力してシングルプレイ用ミッションを戦う「協力プレイ」が用意されている。
ちなみに,私は発売日時の関係で日本語でのマルチプレイができなかったため,編集部のサジェスチョンを受けて英語版マルチプレイデモで遊んだ。しかし,チャットの内容がさっぱり分からない。そこで画面をよく見たら,英語でなくドイツ語。どうりでさっぱり何を言っているかわからないわけである。「ヤー」と「ビッテ」と「パンツァー,フォー!」しか知らないよ,オレ。そのせいか,「Player Oyazi」はかなりあっさり全滅し,多勢に無勢になってしまった仲間も負けたのである。気の毒だと思う。それにしても,私はドイツ人と共にドイツ軍として戦ったわけで,貴重な経験である。びっくりしたなあもう。
というわけで,戦車部隊を指揮して第二次世界大戦の英雄を追体験したいならシングルを,骨のあるRTSをプレイしたいならマルチを,どちらにもオススメできる1本である。私も中年戦車野郎の一人として,このまま終わらせるわけにはいかない(であろう)。
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| 橋の向こうにはたいがいの場合,敵が待ち受けているので,迷わず偵察機を飛ばすべきだ。ほらね,やっぱり | 歩兵のみで戦うミッションもあり,細かく指示を出さないとすぐ死ぬのでやっかいだ。戦車のありがたみが分かる | マニアも唸るマイナー兵器,これがハンガリー国産のズリーニィ突撃榴弾砲。ぜひ使わせていただきたいのだが |
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| 対CPUで恐縮だが,日本語版のマルチプレイ画面。やってみればわかるが,対CPUでもマルチプレイは大変だ | 雲霞のごとく押し寄せるソ連軍に孤軍奮闘する88mm砲部隊の図。この後どうなったか,とても言えない | 私がアレなのかも知れないが,どうもマルチでは勝てない。こんなの超簡単という人がいたら,ぜひご内密に |






















