レビュー : 女神転生IMAGINE

数々の困難を乗り越えて新生した,オンライン専用版“メガテン”の実力と可能性

女神転生IMAGINE

Text by 大路政志
2007年4月13日

 

»  シリーズ累計400万本以上の売り上げを誇る女神転生シリーズで,初のオンライン専用タイトルとして,RPGファンから大きな注目を集めている「女神転生IMAGINE」。同作はどれほど「メガテン」らしいのか。またMMORPGとしての完成度はどれほどのものなのか。女神転生IMAGINEを継続的にプレイしている,4Gamer編集部の大路政志がレビューする。

 

女神転生シリーズファン待望の「女神転生IMAGINE」が,ついに正式サービス開始。キャラクターデザインは,もちろん“電脳悪魔絵師”こと金子一馬氏によるものだ

 2007年4月4日,ケイブとアトラスが共同開発するMMORPG「女神転生IMAGINE」が,約5か月のテスト期間を経て,ついにサービスインを果たした。コンシューマ機でRPGを嗜む人なら誰もが知っているだろう女神転生シリーズの,待望のオンライン専用タイトルということで,各方面から多大な注目/期待を集めてきた同作。大型の国産MMORPGはまだまだ数が少ないこともあり,女神転生ファンだけでなく,多くのMMORPGファンにとっても,待望の作品と言えよう。
 かくいう筆者も,このような仕事で糊口を凌いでいるわけだから,MMORPGというジャンルに対してはそれなりの愛着を抱いているし,こと女神転生シリーズに関しては,日本テレネットから1987年にリリースされた,PC-8801「デジタル・デビル物語 女神転生」からのファンである。まぁそれは,現在“メガテンシリーズ”と言われている作品群には含むべきでないタイトルかもしれないし,どんなゲームかもよく憶えていないのだが(北欧神話のトリックスター ロキがボスとして登場する,見下ろし型のアクションゲームだったことは憶えている)。
 ともあれ,デベロッパの変更大幅な方向転換など,異例ともいえる紆余曲折を経て正式サービスを迎えた,女神転生IMAGINE。ビジネスモデルが基本プレイ料金無料のアイテム課金制に決定したこと,また正式サービスの開始に伴って,ゲームに一通りのコンテンツが実装されたことに鑑みて,このタイミングで同作のレビュー記事をお届けするとしよう。
 なお4Gamerではすでに,女神転生IMAGINEの「新作紹介」やプレイレポートも掲載している。同作の予備知識を得ておきたいという人は,そちらにも目を通しておくといいかもしれない。

 

「新作紹介」は「こちら」
リミテッドβテストプレイレポートは「こちら」
テストサーバープレイレポートは「こちら」
連載は「こちら」

 

 

まさに万魔殿。あのメガテンワールドが
ついに正式サービススタート

 

ゲームの舞台は“東京大破壊”後の東京。プレイヤーは,「真・女神転生I」と「真・女神転生II」の間にある“空白の時代”を,仲魔と共に駆け抜ける

 199X年,ある科学者が開発した空間転移装置の事故により,東京・吉祥寺に異世界の存在「悪魔」が出現した。それを機に,世界各地で核戦争が勃発し,日本では魔神トールがICBMを発射。日本の首都・東京も,灰燼に帰してしまった。
 その後の東京では,悪魔と,生き残った人類との小規模な争いが各地で続いていたが,200X年には,追い打ちをかけるように大洪水が発生してしまう。それら,ICBMの発射をトリガーとするカタストロフィ“東京大破壊”は,東京の人口を激減させたが,同時に悪魔の出現数も減少させた。
 そして203X年。わずかに生き残った人々は,東京各地に地下シェルターを造り,新宿に巨大な塔を建造。人々は東京の復興に期待した。しかし突然,塔の周囲に3本の謎の柱「オベリスク」が聳え立ち,それと時を同じくして悪魔達が活性化。人々は,混乱の原因と思われるその塔を,「新宿バベル」と呼ぶようになった。

 

 女神転生IMAGINEには,以上のようなバックストーリーが設定されている。女神転生ファンには説明するまでもないことかもしれないが,本作では,コンシューマ版「真・女神転生I」「真・女神転生II」の間にある,“空白の時代”が描かれているのだ。
 吉祥寺の少年(Iの主人公)達が世界を救った後から,メシア教徒の聖地「TOKYOミレニアム」が成立するまでの間,東京では一体なにが起きていたのか。それは,シリーズファンにとって大きな関心事といえるが,そんな空白の時代の謎を解き明かしていける(あるいは時代を作り上げていける)点が,シリーズファンにとってはたまらない魅力といえよう。

 

 一方,シリーズ作品に関する知識がないというMMORPGファンにとっても,女神転生IMAGINEの世界観は魅力的に映るかもしれない。近未来の舞台設定/道具立てが採用されたMMORPGはまだまだ少ないし,古今東西の神話/民間伝承から多種多様な悪魔(便宜上悪魔と呼ばれているだけで,天使や妖精,妖怪も含まれている)が登場する同作は,神話/民間伝承ファンに強くアピールするだろう。ファンタジー/SF/伝奇ジャンルが好きな人にとっては,どこかしらに魅力を感じる世界なのではないだろうか。純然たるファンタジー世界や,ガチガチのSF設定はちょっと苦手だというMMORPGファンなら,試しにぜひ一度プレイしてみてほしい。

 

核戦争の影響で廃墟と化した近未来の東京。古今東西の神話/民間伝承からよみがえった悪魔達。そして,超科学と魔術を駆使して悪魔を使役/討伐するデビルバスター達。ややクセのある世界観ではあるが,この雰囲気は,さまざまな層の興味を惹きそうだ

 

 

ソロとパーティでプレイフィールが大きく異なる
味わい深い戦闘システムに注目

 

同作の戦闘システムは,一般的なクリックタイプのMMORPGと比べると若干複雑だが,それだけに,プレイヤースキルが戦闘結果に大きく影響する。パーティプレイでの駆け引き/コンビネーションも,かなり楽しめる

 女神転生IMAGINEでのプレイヤーは,「悪魔召喚プログラム」のインストールされたコンピュータを通じて悪魔を使役する「デビルバスター」となり,人々の野望と神々の抗争が渦巻く東京を生きる。
 キャラクターメイキングは,アバター性に関わる設定/入力が主で,クラスの選択や能力値の割り振りなどの,基礎知識を要求される作業はほとんどない。キャラクターメイキングが完了すれば,デビルバスター管理機関の教官 スネークマンが,仮想空間「バーチャルトレーニング」にて,基本操作/基礎知識をみっちりと指導してくれる。
 βテスト期間中のバーチャルトレーニングでは,最低限の操作方法しか学べなかったが,現在ではチュートリアル機能が充実。スネークマン教官の指導をきちんと受ければ,ゲームに不慣れな人でもそれなりのデビルバスターになれるはずだ。同作の戦闘システムは,一般的なクリックタイプのMMORPGと比べてやや難しいので,初心者向けのチュートリアルが作り込まれた点は,素直に好感が持てる。

 

 ただし,戦闘システムそのものに関しては,かなり好みが分かれるかもしれない。
 女神転生IMAGINEの戦闘システムは,通常攻撃であるアタック,アタックをはじき返すガード,ガードを突き破るラッシュ,反撃技のカウンターなど,多種多様な物理スキルの組み合わせによって成立する。それに加え,ロングレンジからの攻撃となる銃撃/魔法や,仲魔(仲間にした悪魔)の各種攻撃手段,相手の防御属性と攻撃属性との相性などなど,さまざまな要素が複雑に絡み合っているのだ。ある程度MMORPGに明るい人には,「マビノギ」のそれに近いシステムだといえば,イメージしやすいだろうか。
 ちなみに,それらの操作に際しては,W/A/S/Dキーあるいはマウス,1〜^の数字キー列(プレイヤーキャラクターのスキル使用),F1〜F12のファンクションキー(仲魔への行動指示)などを用いる。

 

仲魔をいかにうまく操作できるかが,勝負の分かれ目となる。キャラクターの得意分野や仲魔の特性を考慮しつつ,スキのない連係攻撃を決めたいところ

 これは,臨機応変な状況判断や,的確な戦術の組み立てが要求される,奥深い戦闘システムといっていいだろう。いわゆるクリックタイプのMMORPGと比べて,戦闘結果にプレイヤースキルが反映されやすいシステムでもある。キャラクターと悪魔の間に大きな戦力差があれば,ラッシュ&アタックのごり押しで連戦することも可能だが,攻撃/防御属性との相性が存在するため,油断しているとすぐにやられてしまう。適度な緊張感とスリルを持続させる,秀逸な仕様だ。
 しかしMMORPGは,そのジャンルの性質上,短いスパンでの楽しさではなく,長いスパンでの楽しさが求められがちなゲーム。加えて,不特定多数のプレイヤーが同時にプレイを重ねていくジャンルである。そういった点を踏まえると,同作の手応えのある,操作の忙しい戦闘システムが,主にコンシューマ版のシリーズ作を遊んでいるプレイヤー層に受け入れられるだろうかと,やや心配になってしまう。慣れてしまえばチャットをしながらでも,電話をしながらでも,タバコを吸いながらでも戦闘が楽しめてしまう,クリックタイプのMMORPGと比べると,同作の操作系統/戦闘システムは,明らかに「重い」からだ。
 ともあれ,基本的にはコマンド選択式/ターン性である女神転生シリーズの戦闘システムを,ここまで積極的に深化させた開発陣のチャレンジには,素直に拍手を送りたいと筆者は考えている。シリーズ作としては新たな方向性を目指しつつも,わずかな判断ミスがキャラの死につながるシビアなバランスが再現されているあたり,メガテンファンとしては大満足,といったところである。

 

ソロプレイ(仲魔とのペア)では,緊張感溢れる駆け引きが楽しめるものの,複数の悪魔から同時に襲われると,ピンチに陥りやすい。一方パーティプレイでは,悪魔の反撃を許さぬ豪快なパワープレイが楽しめるだろう

 

 

確かな「成長」が感じられる育成要素は
今後のアップデート/情報公開に期待

 

女神転生IMAGINEのキャラクター育成システムは,レベル制/スキル制の混合型。能力値ポイントの割り振りや,各種エキスパートの伸ばし方そのものが,ゲーム性として成立している

 女神転生シリーズという大枠を考慮すると,キャラクター育成システムに関しても,新たな試みが盛り込まれている。
 女神転生IMAGINEのプレイヤーキャラクターは,基本的にはレベル制が採用されている。戦闘を通じて経験値を得,それが一定量まで蓄積されれば,キャラがレベルアップするのだ。そしてレベルが上がったタイミングで能力値ポイントが得られ,力/魔力/体力/知力/速さ/運という能力値に任意でポイントを割り振り,キャラクターを強化していく。
 さらにキャラクターには,テクニック(技能)とナレッジ(知識)に大別できる「エキスパート」という成長要素がある。テクニック/ナレッジは,それに対応した行動をとることでエキスパートポイントが上昇していき,ポイントが100%まで溜まればRankがアップ(Rankが一定値まで達すると,Classがアップ)する。そしてRankの数値に応じて,さまざまなスキルを習得できる。つまり女神転生IMAGINEには,熟練度に応じて行動の効果が高まり,行動そのもののバリエーションが増えていくという,スキル制も採用されているというわけだ。
 ただしエキスパートに関しては,ポイントの上限が1万ポイントに制限されているため,あらゆるジャンルに秀でたスーパーキャラクターの育成は不可能。また,同Rankで複数のスキルが選択できることがあるが,それらをすべて習得できない場合もある。そうした制限が,むしろ各プレイヤーキャラクターの個性を生み出すのだ。
 現状,すべてのテクニック/ナレッジが公開/実装されているわけではなく,各テクニック/ナレッジに対応したスキルの種類もさほど多くはない。そのため,現在の実装状況ではキャラクターの長期育成プランが立てにくいのが,難点といえば難点かもしれない。
 未だ未実装のテクニック/ナレッジが少なくないため,いずれ,エキスパートポイントの上限が引き上げられることが予想される(でないと,キャラの個性を出すためのエキスパートポイントが足りなくなる)が,できるだけ早い段階に,未実装分の効果や主要スキルの概要などを公開してもらえると,プレイヤーとしては嬉しい限りなのだが……。そのあたりについては,今後の情報公開およびアップデートに期待したいところだ。

 

現在実装されているエキスパート/スキルと,今後実装されるであろうそれを考慮すると,エキスパートポイントの上限が1万ポイントというのは,やや物足りないように思える。いずれ,上限の引き上げや各種バランス調整が行われるのかもしれない

 

 

アバター性の高さにはファンも大満足
仲魔の存在も,個性の演出に一役買っている

 

正式サービス開始の段階で,かなり豊富な課金アイテムが販売されている。女神転生シリーズにちなんだコスチュームなどは,ファンならぜひ購入したいところだろう

 女神転生IMAGINEでは,悪魔との戦闘を通じてキャラクターのレベル/エキスパートを高めつつ,悪魔との交渉,仲魔の育成/合体,エピソード/クエストの進行などを楽しんでいくのが,基本的なプレイスタイルとなる。

 

 キャラクターの育成に関しては,前述したレベル/エキスパートの成長だけでなく,装備を強化していくのも楽しい。実用性の高いものから,過去の女神転生シリーズにちなんだもの,お遊び要素の強いものまで,実に多くの装備品が用意されており,キャラクターのアバター性はかなり高いといえる。
 また一般的なMMORPGと比べ,装備品における価格差,スペック差が小さいので,キャラクターの強さが装備に依存する割合が,かなり低い。MMORPGでは,「キャラクターの強さは,レベルや装備でほぼ決まる」という考え方が根強いが,同作における装備品は,キャラクターを強化するための道具というよりも,キャラクターの個性を表現するためのアクセサリ,といった面が強いのだ。
 「ゲーム内通貨/リアルマネーがあれば強くなれる」という類のMMORPGに慣れている人にとっては,若干違和感のあるスペック設定かもしれないが,逆に,そういったゲーム性を苦手とする人には,嬉しい仕様といえるだろう。

 

思い思いのコスチューム/仲魔で個性を表現するプレイヤーキャラクター達。高い装備が絶対的に強い,というバランスではないので,選択の幅はかなり広い

 女神転生シリーズのキモともいえる,悪魔との交渉および仲魔の育成/合体については,オンラインゲーム版としての長所と短所が,それぞれ表れているように思える。
 悪魔との交渉は,交渉相手の性格に合わせて,「挨拶」「威圧」「挑発」といったスキルを使い分けていく仕様となっている。アタックなどの攻撃スキルの代わりに,交渉スキルを連続使用していく形だ。
 この交渉はリアルタイムで進行するため,使用する交渉スキルを間違えたり,運が悪かったりすると,ときには不意打ちを食らうこともある。その点はなかなかスリリングで面白いのだが,基本的には,悪魔に対応した交渉スキルを連発することになるため,従来作のように,悪魔との味わい深い会話を楽しむ雰囲気ではない。そこが若干残念だが,これはリアルタイムで進行するMMORPGの性質上,しかたのないことかもしれない。

 

 悪魔の育成/合体に関しては,長く遊ぶことが前提のMMORPGというジャンルの,いい面がアピールされる形になっている。プレイヤーキャラクターと同様,仲魔は戦闘経験を積むことでレベルアップしていき,レベルに応じてスキルを習得していく。低レベルの仲魔でも,根気よく育てていけば,高レベルの悪魔とも十分渡り合える頼もしい相棒として活躍してくれるのだ。

 

 正式サービスと同時に行われたアップデートで,同作に登場する悪魔は優に100種類を超えている。それに伴い,悪魔合体システムもかなり奥深いものになってきた。
 悪魔合体とは,邪教の館という施設で行う,仲魔の強化手段の一つ。2体の仲魔を合体させて,より強い仲魔を誕生させるシステムだ。悪魔合体の法則は単に複雑なだけでなく,スキルの遺伝や合体事故といった要素もあり,非常に研究のしがいがあるコンテンツに仕上がっている。今後のアップデートによって,登場悪魔はどんどん増えていくことになるが,いずれはコンシューマ版を超えるボリュームの悪魔合体が可能になるであろうから,シリーズファンにとっては継続的に注目していきたいところである。

 

上段:ゲームの性質上,悪魔との交渉はリアルタイムで行われる。交渉自体は,その悪魔に適した交渉スキルを連打する形で行われる
下段:同作最大の魅力の一つ,悪魔合体。現状,邪教の館を通じた2身合体しか実装されていないが,今後は3身合体や武器合体など,さまざまなバリエーションが実装されそうだ

 

 

MMORPGにも味わい深いストーリー性を!
独自の世界観がエピソードを盛り上げる

 

ゲーム内世界の各所に,意味ありげなNPCが配置されている。今後のエピソード/クエストに関わる人物なのだろうか?

 エピソード/クエストは,女神転生IMAGINEのストーリー性を司るコンテンツ。エピソードは,同作のメインストーリーにあたるもので,現時点では,第一章「DBライセンス編」の「Act.1 仲魔」「Act.2 予兆」「Act.3 襲撃」「Act.4 アズラ」というエピソードが実装されている。
 いわゆるネタバレを避けるため,ストーリー内容についての説明は割愛させてもらうが,いずれプレイヤーは,エピソードを通じて「空白の時代」の核心に近づき,その謎を解き明かすことになるだろう。安易な勧善懲悪に終わらない女神転生シリーズのストーリー性は,まず間違いなく同作にも継承されているはずなので,シリーズファンならばぜひとも進めておきたいところだ。もちろん,エピソードをクリアすれば,アイテムやマッカなどの報酬が得られるので,シリーズファンでなくとも楽しめるはずだ。
 なお,エピソードにおけるプレイヤーの選択/行動によって,キャラクターのLNC(LOW/NEUTRAL/CHAOS)ポイントが変動することがある。これはキャラクターの「生き様」を表す要素で,召喚できる仲魔やストーリー展開,街の人の反応など,さまざまな場面で影響を及ぼすようになる。もっとも,現状ではLNCポイントが変動する機会が少ないし,LNCポイントの状態によるゲーム展開の変化もあまり盛り込まれていない。
 一方クエストは,エピソードと比べてやや小規模で,メインストーリーとの関連性が薄いストーリー型コンテンツだ。現状では,「デビルバスター基本訓練1〜4」「守衛の想い」という,チュートリアル的な意味合いの強いクエストしか実装されていないが,エピソードの発生条件になっているものもあるので,一通りクリアしておいたほうがいいだろう。
 正式サービスが始まったばかりということもあり,エピソード/クエスト共にまだまだ数が揃っていないが,これらが増えてくると,ゲーム性にもさらなる深みが付与されるだろう。単なる勧善懲悪に終わらず,解決しても新たな謎が生まれるような女神転生シリーズのストーリー展開が同作に盛り込まれれば,コンシューマ版のファンだけでなく,MMORPGファンにとっても注目に値するタイトルになりそうだ。コンシューマ向けゲームでは世界に通用する日本の,実力の見せ所ともいえるだろう。

 

上段:エピソードの展開にも大きく関わっている,スネークマン。キャラクターが特定のレベルに達すると,プレゼントをくれることもあるので,たまに挨拶をしておこう
下段:「Act.3 襲撃」「Act.4 アズラ」の実装で,よりストーリー性が高くなったエピソード。コンシューマ版の従来作品に引けをとらない展開を期待したい

 

 

「メガテンらしさ」を着実に高めている秀作
MMORPGとしてのさらなる完成度向上も時間の問題だろう

 

ゲーム内には,開発チームの「やりたいこと」を象徴するような,意味ありげなオブジェクトがいくつも存在する。今後のアップデート内容が非常に楽しみだ

 女神転生シリーズのオンライン対応構想は,2002年12月に発売された,アトラスのXbox初参入作品「真・女神転生NINE」スタンドアローン版で産声を上げた(結局ネットワーク対応版は発売されなかった)。そこから4年以上もの月日を経て,ついに商品(サービス)として世に放たれたのが,ファン待望の女神転生IMAGINEである。
 待ちに待ったオンライン版メガテンということで,ケットシーやジャックフロストを連れて歩けるだけでも楽しい,軽子坂高校や七姉妹学園の制服を着られるだけでも満足だという熱心なファンも,少なくないだろう。若い頃は毎年のように,将門公の首塚へ初参りしたり,渋谷のハチ公像の周りをグルグル回ったこともある筆者にも,正味な話,ちょっとそういうところがある。

 

 だが,同作を一つのMMORPGとして客観視してみると,手放しでほめるわけにはいかないのも事実だ。現状,正式サービスを迎えたMMORPGとしては,若干ゲーム内コンテンツの質/量が物足りないし,エキスパート/スキル関連のバランシングも満足のいくものとはいえない。ゲーム性やバランシングに関わる課金アイテムの設定に,不満を抱いているプレイヤーもいるだろう。個人的には,悪魔との交渉を100%成功させる「ラブゲッチュー」や,エキスパートのRankを1下げられる「レテの水」の設定には,若干の疑問を抱いてしまう。現状,消費型の課金アイテムを使用しない限り,街から街への瞬間移動ができないという点にも,少なからぬプレイヤーがストレスを感じているはずだ。

 

 どれだけバランスを調整しても,どれだけコンテンツを拡充しても,「これが完成形です」と断言できないのが,MMORPGというジャンルの長所でもあり,短所でもある。消費ペースや嗜好の異なる不特定多数のプレイヤーが遊んでいるわけだから,どのタイミングで区切ってみても,公正な評価というものは下しにくいものだ。
 ただ,それでもやはり,さまざまなプラットフォームでシリーズ400万本以上もの売り上げを誇る「女神転生」というブランドには,極めて大きな可能性を感じる。先日の発表会で紹介したように,すでに同作のアップデート計画は,2007年12月分までみっちりと埋まっている。また「こちら」のインタビューを見てもらえばわかるように,プロデューサーの谷川ハジメ氏も,同作にかける強い情熱/イマジネーションを抱えているようだ。

 

 そういったさまざまな判断材料を踏まえたうえで,あえて現在の女神転生IMAGINEを評価するならば,(シリーズファンだということを一切抜きにしても)すでに合格点を獲得しているタイトルなのではないかと,筆者は考えている。とくに,エピソードを中心とする,MMORPGにはあまり向いていないとされる(あるいは,それを実現させているタイトルがあまりない),ストーリー性の強いゲーム内コンテンツに関しては,女神転生IMAGINEに最も大きな可能性を感じる。
 ただし,MMORPGとしてはやや煩雑な操作系統や,アトラスの電脳悪魔絵師 金子一馬氏デザインのグラフィックスをはじめ,かなり好みが分かれるタイトルであることは,間違いないだろう。
 同作が,シリーズファンだけでなく,それ以外の層をも魅了していくには,デベロッパ/パブリッシャとしてのさらなる努力が必要だろう。シリーズファンの期待に応えることは,谷川ハジメ氏を筆頭とするそうそうたる開発陣(女神転生シリーズに関わってきたメンバーが何人も参加している)ならば,それほど難しいことではないかもしれない。今後,比較的短いスパンで行われる予定の各種アップデートでは,シリーズファン以外の層にどれだけアピールできる内容が含まれているかを,引き続き見守っていきたいところだ。

 

 

■■大路政志(4Gamer編集部)■■
10年弱のフリーライター活動を経て,2005年に4Gamerスタッフの一員となる。得意とするジャンルはRPG/MMORPGだが,ライター時代はコンシューマ系の仕事もしていたため,守備範囲はPC/オンラインゲームに限らない。ゲームを一生懸命プレイしすぎて,原稿のアウトプットが遅れてしまいがちという,真面目なんだか不真面目なんだかよくわからない人物。少なくとも,遊ぶことにかけては大真面目なのだろう。
タイトル 女神転生IMAGINE
開発元 ケイブ(アトラスと共同開発) 発売元 ケイブ
発売日 2007/04/04 価格 N/A
 
動作環境 OS:Windows XP,CPU:Pentium 4/2.0GHz以上[3.0GHz以上推奨],メインメモリ:512MB以上[1GB以上推奨],グラフィックスチップ:GeForce FX 5800もしくはRadeon 9800以上[GeForce 7800もしくはRadeon X1800以上推奨],グラフィックスメモリ:128MB以上HDD空き容量:2GB以上,サウンドカード:DirectX 8.1互換の製品,通信環境:xDSL以上

(C)ATLUS
(C)CAVE

【この記事へのリンクはこちら】

http://www.4gamer.net/review/megatenonline/megatenonline.shtml