― レビュー ―
1枚でSLIが可能なデュアルGeForce 6600 GT搭載カードの価値を探る
WinFast Duo PX6600 GT TDH Extreme Version
Text by 石井英男
2005年9月2日

 

■初の単体発売となったデュアルGeForce 6600 GT搭載カード

 

WinFast Duo PX6600 GT TDH Extreme Version。2個のグラフィックスチップを1個の大きなファン付きチップクーラーで冷却する仕様だ
問い合わせ先:アスク(販売代理店)
TEL:03-5215-5650

 NVIDIAのGeForce 6600/6800シリーズ,7800シリーズでは,グラフィックスカードを2枚装着して並列動作を行わせることで,3D描画性能を向上させるNVIDIA SLI(以下SLI)という技術がサポートされている。しかし,グラフィックスカードを2枚装着すると,当然のことながらチップクーラーから発せられるファンの騒音は大きくなり,ケース内のエアフローも妨げられがち。そういった意味で,2個のGeForce 6600 GTチップを1枚のPCI Express x16カード上に搭載したLeadtek Researchの「WinFast Duo PX6600 GT TDH Extreme Version」(以下Duo PX6600GT)は貴重な存在といえるだろう。

 過去にも,GIGABYTE TECHNOLOGYからGeForce 6600 GTを2個搭載したグラフィックスカード「GV-3D1」やGeForce 6600を2個搭載した「GV-3D1-XL Limited Edtion」が流通したことはある。だが,両製品はグラフィックスカード単体ではなく,動作保証されているマザーボードとのセット販売が行われたのみ。対してDuo PX6600GTは,グラフィックスカード単体で購入できるのが強みだ。もっとも,すべてのマザーボードで動作するわけではなく,2005年9月時点では,以下に挙げる4製品のみが動作確認済みとされている。

 

  • ASUSTeK Computer「A8N-SLI Deluxe」
  • DFI「nF4 SLI-D」
  • Foxconn Electronics「nF4 SK8AA」
  • GIGABYTE TECHNOLOGY「K8NXP-SLI」

 

 しかも,これらだと動作“保証”がある,というわけでもないのだ。リストを見ると分かるように,基本的にnForce4 SLI搭載マザーボードでしかDuo PX6600GTは動作しないと考えるべきだろう。

 

チップクーラーを取り外したところ

 なお,Leadtek ResearchのWebサイトでは,Duo PX6600GTのクロックとして,コア550MHz,メモリ1.12GHz(560MHz DDR)と紹介されているが,今回試用した製品では,コア525MHz,メモリ1.12GHzとなっていた。Webサイトで公開されているスペックよりも若干低いわけだが,GeForce 6600 GTのリファレンスクロックはコア500MHz,メモリ1GHz(500MHz DDR)なので,いずれにせよオーバークロック仕様になっているのは変わらない。グラフィックスメモリはグラフィックスチップごとに128MB,合計256MB搭載されている。
 ちなみに先ほど紹介したGV-3D1の動作クロックはコア500MHz,メモリ1.12GHzなので,Duo PX6600GTのほうがスペックは高い。

 

搭載するグラフィックスメモリはSamsung Electronicsの1.6ns品だった

 

 

■付属ブラケットにより4画面出力も可能

 

 出力端子は,DVI-I×2とビデオ×1だが,D-Sub15ピンアナログRGB×2を装備したブラケットが付属しているため,最大4画面出力も可能だ(4画面出力時はSLI動作は無効となる)。ビデオ出力はコンポーネント/S/コンポジットに対応する。

 

Duo PX6600GTの外部インタフェース。SLI動作させなければ,最大4画面出力可能となる

 

 カード長は216mmで,一般的なGeForce 6600 GT搭載グラフィックスカードよりも40mm程度長い。カード上には,PCI Express用の6ピン電源コネクタも用意されており,外部からの電源供給が必須だ。付属のゲームタイトルは「Tom Clancy’s Splinter Cell:Chaos Theory」「Prince of Persia:Warrior Within」。2本だけで,いずれも英語版とはいえ,十分遊べるタイトルなのはうれしいところである。

 

PX6600GT(カード長174mm)との比較(左)と,PX6800GTとの比較(右)。PX6800GTのカード長は216mmなので,Duo PX6600GTのカードサイズはGeForce 6800 GT搭載製品と変わらないと考えておけばいいだろう

 

 

■GeForce 6600 GT×1に比べて最大8割以上のスコア向上

 

 それでは,実力を検証していこう。テスト環境はに示したとおりである。なお,今回テストに利用したA8N-SLI Deluxeでは,グラフィックスカードを2枚装着してSLI動作を行う場合,SLIセレクタカード「ASUS EZ Selector」を「Dual Video Cards」モードに設定する必要があるが,Duo PX6600GTを利用する場合は「Single Video Card」のままでいい。

 

 

 比較対照用としては,同じくLeadtek Research製のGeForce 6600 GT搭載製品「WinFast PX6600 GT TDH Extreme Edition」(以下PX6600GT)と,GeForce 6800 GT搭載製品「WinFast PX6800 GT TDH」(以下PX6800GT)をそれぞれ2枚ずつ用意。シングル動作時とSLI動作時でベンチマークテストを行った。
 PX6600GTのコアクロックは550MHz,メモリクロックは1.12GHz(560MHz DDR)であり,今回テストしたDuo PX6600GTに比べて,コアクロックが25MHz高くなっていることに注意したい。
 また,今回のテストにおいては,高解像度環境,あるいは8x AA&16x Anisotropic適用時にGeForce 6600 GT搭載製品が正しいスコアを得られないという問題があった。これは,今回テストに利用しているGeForce 6600 GT搭載製品のグラフィックスメモリ容量が128MBで,ハイレベルのエフェクトを処理するには容量が足りないのが原因であるようだ。今回は,標準設定と8x AA&16x Anisotropic適用時の両方で,1024×768/1280×1024/1600×1200ドットの3パターンずつテストしているが,スコアが正しく得られなかったものについては掲載していない。この点はあらかじめ了承いただきたいと思う。

 さて,まずは「3DMark05 Bulid1.2.0」(以下3DMark05)の総合スコア(グラフ1,2)から見てみよう。以後は垂直同期と解像度以外の設定を変更しない状態を「標準設定」,8倍(8x)のアンチエイリアシングと16倍(16x)の異方性フィルタリングを適用した状態を「8x AA&16x Anisotropic」と呼ぶことにして話を進める。
 Duo PX6600GTのスコアは,PX6600GTの1枚差し状態に比べて,標準設定で59〜68%,8x AA&16x Anisotropic有効時で42%高くなっている。また,上位のGPUを搭載するWinFast PX6800 GTと比べても,標準設定だとスコアは19〜35%程度高い。WinFast PX6600 GTを2枚装着してSLI動作をさせた場合に比べると多少スコアは低くなっているが,これはコアクロックが25MHz低いためだろう。一方,エフェクトを適用すると,SLI時のスコアがPX6800GTとDuo PX6600GTで大きく離れてしまうが,これは前述した容量の話とはあまり関係なく,むしろグラフィックスチップのメモリバスが256bit(GeForce 6800シリーズ)か128bit(GeForce 6600シリーズ)かという違いが生んでいると断じてしまっていいはずだ。

 


 

 次に「DOOM 3」のTimedemoを利用し,平均フレームレートを計測してみた(グラフ3,4)。標準設定で比較すると,解像度が高くなるにつれDuo PX6600GTとPX6600GT×1の差は大きくなり,1600×1200ドットでは61%の差が付いている。また,グラフィックスチップに対する負荷が高い8x AA&16x Anisotropic適用時は,解像度にかかわらず85〜86%ものフレームレート向上を確認できた。ただし,PX6800GTの1枚差しと比較すると,差は最大でも20%程度。1024×768ドットモードの標準設定では(ほぼ誤差ではあるが)WinFast PX6800 GTの1枚差しのほうが上回っている。

 


 

 続いて「TrackMania Sunrise」を実行し,53秒程度で1周する「Paradise Island」というマップのリプレイを3周繰り返した。そして,そのときの平均フレームレートを「Fraps 2.60」で計測し,グラフ5,6にまとめてみた。TrackMania Sunriseでは,PX6600GT×1と比べて,標準設定で33〜49%,8x AA&16x Anisotropic有効時は57〜58%ほど,Duo PX6600GTのフレームレートが向上しているのが分かる。PX6800GTとの比較でも,標準設定で20〜31%,8x AA&16x Anisotropic有効時で9〜22%と,比較的順当なスコアの向上が確認できている。
 さすがにPX6800GTのSLI動作時には及ばないが,1スロットのカードとしてはなかなか優秀な結果といえるだろう。

 


 

 

■グラフィックスチップの温度は低め,消費電力は少なくない

 

 Duo PX6600GTは,1枚のグラフィックスカードに2つのグラフィックスチップを搭載しているため,発熱が気になるところだ。そこで,ForceWareの温度モニター機能を利用して,温度変化をチェックしてみた。
 ここでは,PCを起動してから30分間放置した状態を「アイドル時」とし,3DMark05を30分間連続実行させた直後を「高負荷時」とした。計測時の室温は27℃で,テスト用システムはケースに入れず,バラックで計測している。

 結果は,グラフ7に示したとおりだ。アイドル時で比較すると,PX6600GT×1で50℃なのに対し,Duo PX6600 GTは一つめのチップが46℃,二つめは44℃で,4〜6℃低い。また,PX6800GTとの比較では11〜13℃も低くなっている。高負荷時で比較しても,PX6600GTが74℃まで上昇しているのに対し,Duo PX6600GTは68℃と59℃。PX6600GTのSLI動作時と比べてもこの傾向は変わらず,Duo PX6600GTが搭載するクーラーの冷却性能はかなり高いといっていいだろう。
 今回はケースに入れた状態での計測は行っていないが,ケースに入れた場合でも,エアフローを妨げにくく,熱がこもりにくい1枚差し,つまりDuo PX6600GTが有利なのは想像に難くない。

 

 

 最後に,システム全体の消費電力をワットチェッカーで計測した結果をまとめてみた。グラフ8で示しているのは,あくまでシステム全体の消費電力だが,グラフィックスカード以外のパーツ構成は同じなので,その差はグラフィックスカードの消費電力の差と等しくなる。
 PX6600GT×1と比べると,Duo PX6600GTの消費電力は高く,PX6600GT×2とほぼ同じというのは,まあ,予想どおりの結果だろう。PX6800GT×1と比べて,高負荷時の消費電力が24Wほど高いのは少々気になるところだ。

 

 

 なお,厳密な騒音測定は行っていないので参考程度になるが,実際に聞いた印象では,Duo PX6600GTのチップクーラーが搭載するファンの騒音レベルは,PX6600GTのそれよりもわずかに大きいように感じた。しかし,PX6600GTを2枚装着させてSLI動作させると,2個のファンから出る騒音が共鳴して生じるうなりが気になることがあるのに対し,ファンが1個しかないWinFast Duo PX6600 GTならこの問題は生じない。そもそも,特別にうるさいというレベルではなく,十分許容範囲だ。

 

 

■デュアルグラフィックチップ搭載ということに魅力を感じるPCマニア向けの製品

 

 以上の結果から,SLIコネクタを使わない1枚差しでも,通常のSLI動作とほぼ同等のパフォーマンスを実現していることが分かった。2005年9月現在の実勢価格は4万4000円前後で,一般的なGeForce 6600 GT搭載グラフィックスカードが(最近では特価販売が行われることもよくあるので,一概にはいえないけれども)2万円前後で販売されているのを考えれば,「1スロットでSLI代」が4000円として,まずまず納得できる範囲である。
 しかし,ブランドを問わなければ,ほぼ同じ金額でGeForce 7800 GT搭載グラフィックスカードを購入できる。GeForce 7800 GTのパフォーマンスについては「こちら」で紹介したとおりで,どう考えてもDuo PX6600GTよりは高速だ。そう考えると,ゲーマーにお勧めというよりは,「1枚のカードに2個のGeForce 6600 GTが載っている」という事実そのものに興味をかき立てられるPCマニア向けといえる。

 PCI Express x16スロットを1本しか持たないIntel 9xx Expressチップセットを搭載するマザーボードなどでの動作がLeadtek Researchからの公式情報として今後提供されるなら,ゲーマーにとっての魅力も増すだろう。(石井英男)

 

タイトル GeForce 6600
開発元 NVIDIA 発売元 NVIDIA
発売日 2004/08/12 価格 製品による
 
動作環境 N/A

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http://www.4gamer.net/review/leadtek_duo/leadtek_duo.shtml