ローエンドGPUのクロックアップ品に意味はあるのか |
GF 7300GT-Z/256D3/DVI/PCIE
GF 7300GT/128D3/DVI/PCIE |
Text by Jo_Kubota |
2006年6月21日 |
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GeForce 7300 GT。「G73-VZ-N-A2」とあり,A2リビジョンと見ていいだろう。ダイサイズは11mm平方だった |
クロックアップ版GeForce 7600 GSカードで注目を集めるGALAXY Technologyは,同じコンセプトでGeForce 7300 GT搭載グラフィックスカードも展開している。
販売されているのは,「GF 7300GT-Z/256D3/DVI/PCIE」(以下 GF 7300GT-Z)と「GF 7300GT/128D3/DVI/PCIE」(以下 GF 7300GT)の2モデル。いずれも,コアクロックはGeForce 7300 GTのリファレンスより150MHz高い500MHzに設定されているのが特徴だ。同じくメモリも,リファレンスでは最高1GHz相当(500MHz DDR)とされるなか,両製品は1.4GHz相当(700MHz DDR)を実現している。
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GF7300GT-Z/256D3/DVI/PCIE(左)
GF7300GT/128D3/DVI/PCIE(右)
メーカー:GALAXY Technology
問い合わせ先:MVK(販売代理店)
support@mvk-japan.com |
では,2製品の違いは何かというと,まず一目瞭然なのがチップクーラーである。GF 7300GTのそれは,ローエンドGPU(グラフィックスチップ)向けらしい,小型のものになっているのに対し,GF 7300GT-Zでは,冷却能力で評価の高いZalman Tech製品のカスタム品を搭載。断定まではできないが,フルアルミのフィンと,負荷に応じて回転数が変わる仕組みを見るにつけ,2006年6月16日のレビューで紹介した「GF 7600GS-Z/256D3/2DVI/PCIE」(以下GF 7600GS-Z)が搭載するのと同じものである可能性が高そうだ。
騒音レベルは測定していないが,いずれも静かな印象。とくにGF 7300GT-Zが搭載するZalman Tech製クーラーは,低負荷時にファン回転数が下がった場合の駆動音がGF 7300GTより静かに感じられた。
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(2006年6月16日の記事とあえて同じ角度で撮影した)GF 7300GT-Z。2スロットを占有する仕様であることや,カード裏面に目立った“出っ張り”がなく,「“出っ張り”が一部のマザーボードと物理的に干渉する」心配がないことも,同じGALAXY Technology製の上位モデルと同じだ |
また,冒頭で正式型番を見てピンと来た人もいるだろうが,グラフィックスメモリ容量にも,GF 7300GT-Zが256MB,GF 7300GTが128MBという違いがある。もっといえば,搭載するメモリチップでも差別化が行われており,GF 7300GT-Zでは1.2ns品の「K4J52324QC-BJ12」,GF 7300GTでは1.4ns品の「K4J55323QG-BC14」が採用されている。
サポートされる最高クロックは,前者が1.6GHz,後者が1.4GHz。つまり,GF 7300GT-Zには,約200MHz相当分のオーバークロックマージンが残されているわけである。
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GF 7300GT-Zが搭載するK4J52324QC-BJ12(左)と,GF 7300GTが搭載するK4J55323QG-BC14。いずれもSamsung Electronics製だ。細かいことを言えば,前者は512Mbit×4で容量256MBを実現しているのに対し,後者は256Mbit×4で128MBを実現しているという違いもある |
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付属のコンポーネント出力アダプタとSビデオ出力ケーブル |
外部インタフェースは2製品ともデジタル/アナログRGB(DVI-I)×1,アナログRGB(D-Sub)×1,高解像度テレビ対応の汎用出力×1。汎用出力端子は,付属のアダプタを利用すればコンポーネント,ケーブルを利用すればSビデオ出力が可能だ。
なお,無料のバンドルゲームタイトルは付属していない。このあたりはコストダウンに徹したといったところだろうか。
ローエンドのクロックアップ品を 新旧“中の下”と比較する
4Gamerでは以前,GeForce 7300 GSを「ゲーマーには不要」と評した。だがメーカーレベルでクロックアップが行われた結果として,GeForce 7600 GS並みの性能が実現されるのなら,負荷の高くない3Dゲームをそこそこの描画設定でプレイするにはアリかもしれない。
というわけで,今回はGeForce 7600 GSを中心に,“中の下”といえるレベルのグラフィックスカードを,新旧とり混ぜて比較対照用に用意してみた。具体的には,GeForce 7600 GS搭載カードはエルザジャパンの「ELSA GLADIAC 776 GS 256MB」(以下GLADIAC 776 GS),GeForce 6600はAlbatron Technologys製「PC6600」,GeForce 7300 GSはGIGABYTE TECHNOLOGY製「GV-NX73G128D」,そしてRadeon X1600 XTはXIAi製「XIAiX1600XT-DV256」(以下XIAiX1600XT)の4製品。スペックや実勢価格などは,表1のとおりだ。
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ELSA GLADIAC 776 GS 256MB
メーカー:エルザ ジャパン
問い合わせ先:エルザ ジャパン
TEL:03-5765-7391 |
XIAiX1600XT-DV256
メーカー:XIAi
問い合わせ先:お問い合わせ窓口
http://xiai.jp/contact/ |
テスト環境は表2にまとめた。今回は,GPUの位置づけからして,高レベルのエフェクトを適用してゲームをプレイする可能性があまり高くないこと,そして,ベンチマークテストを行っても低いレベルで揃ってしまう可能性が高いことを考慮。グラフィックスドライバ側の設定は,垂直同期のみ無効に変更した,通常のグラフィックスカードレビューでいうところの「標準設定」でのみテストを行っている。
なお,GeForce用のグラフィックスドライバは,テスト時の公式最新βとなる「ForceWare 91.28 BETA」を利用することにした。これは,2006年6月21日時点の公式最新ドライバである「ForceWare 84.21」がGeForce 7300 GTを認識しないためだ。
一方,Radeonでは,Catalyst Control Centerから異方性フィルタリングの無効化を行えないため,基本的にゲーム側から設定。ただし,「F.E.A.R.」と「TrackMania Nations ESWC」は,ゲーム側にも無効化設定がないため,ゲーム側から最小負荷となる「バイリニア」に設定している。
■スコアはおおむねGeForce 7600 GSを超える
では,さっそくベンチマークスコアをチェックしてみよう。
まずグラフ1は,「3DMark05 Build 1.2.0」(以下3DMark05)からだが,ここから確実に言えるのは,GF 7300GT-ZとGF 7300GTが,GeForce 7600 GS(=GLADIAC 776 GS)と互角以上のスコアを出していること。そして,GeForce 6600(=PC6600)やGeForce 7300 GS(=GV-NX73G128D)には大差を付けていることである。
GALAXY Technologyの2製品について一歩踏み込んでみると,両者の間には,グラフィックスメモリ容量に起因すると思われるスコアの差が確実に存在しているのが分かる。また,ディスプレイ解像度が高くなるに従って,ピクセルシェーダユニット数の違いからか,GeForce 7600 GSに対する優位性も失われていく。とくにGF 7300GTは,1024×768ドットで7%強ある“リード”が,1600×1200ドットでは約5%の“ビハインド”に転じており,その落ち込みは顕著といえる。
なお,この結果を踏まえて,GF 7300GT-ZとGF 7300GTのオーバークロックテストは行わないことにする。オーバークロックによってGeForce 7600 GT並みのパフォーマンスを得られる可能性がないためだ。
続いて,「3DMark06 Build 1.0.2」(以下3DMark06)のBasic Editionで計測できる設定である,1280×1024ドットのスコアをグラフ2に示した。
3DMark06では,3DMark05よりも描画負荷が全体的に高まっているが,それを裏付けるかのように,GF 7300GT-ZとGF 7300GTのGLADIAC 776 GSに対するリードはごくわずかである。
実際のゲームアプリケーションを用いたベンチマークテストに移ろう。
「Quake 4」では,マルチスレッドに最適化されたVersion 1.2パッチを適用。シングルプレイのストーリーモードで記録したリプレイデータを用いて,Timedemoから平均フレームレートを取得した。その結果をまとめたものがグラフ3だ。
ベンチマークスコアとしてはGeForce 7600 GSを上回るGF 7300GT-ZとGF 7300GTだが,フレームレートに注目すると,1024×768ドットで80fps弱。80fpsあれば問題ないといえるかもしれないが,全域で安定して平均60fpsを超えられるかどうかの一つの目安となる平均90fpsに達していない点は指摘しておくべきだろう。
F.E.A.R.では,テスト時の最新版となる1.04パッチを適用した状態で,トップメニューからベンチマークモードを選択して,平均フレームレートを計測した。その結果をまとめたものがグラフ4だ。
F.E.A.R.では,1人プレイを想定して,ソフトシャドウを有効にするなど,Quake 4よりも“重い”描画設定を行っているが,こうなると1024×768ドットでも34fps。GeForce 7600 GSと同じレベルと評価することはできるかもしれないが,かなりつらいスコアなのもまた事実だ。1280×960ドット以上では,ちょっとゲームにならない感じである。
より負荷の軽いタイトルとして,レースゲーム「TrackMania Nations ESWC」(以下TMN)のテストを行ってみる。
TMNでは,「I-1」のコースを5周する87秒のリプレイデータを用意し,「Fraps 2.60」で,平均フレームレートを計測した。TMNは,e-Sports用に用意されたタイトルということもあって,ゲーム側に描画設定を任せると,ミドルレンジ以下のグラフィックスカードを利用したときに,自動で描画負荷が軽くなるような設定が行われる。これはおそらく,操作に支障がなくなるような配慮と思われるが,これが有効だと正しくフレームレートを取得できない。そこで今回は,各種描画設定をすべて固定して計測を行った。
その結果をまとめたのが グラフ5だ。
ここではGF 7300GT-ZとGF 7300GTがいずれもGeForce 7600 GSに及ばないが,レースゲームを快適にプレイできる一つの指針である,平均60fpsを1024×768ドットでクリアした点は評価していいだろう。負荷の軽いゲームを,それほど高くない解像度と描画設定でプレイするなら,なんとかなるとはいえそうである。
最後に,MMORPG「Lineage II」のテスト結果を見てみよう。ここでは,2006年6月17日時点の最新パッチを適用した状態で,「7人のパーティが建物内でモンスターと戦う」リプレイデータを使って,Fraps 2.60から90秒間の平均フレームレートを計測している。
MMORPGにおいては,数fps程度の差がゲームの体感にそれほど大きな差を生まない一方,平均フレームレートが30fpsを割り込むようだと,ゲームプレイ時にかなりの割合でラグを感じることになる。その意味で グラフ6において,本誌読者の多くが利用しているであろう,17/19インチの液晶ディスプレイで標準的な解像度となる,1280×1024ドットのスコアには注目しておきたい。グラフィックスメモリパフォーマンスで優れるGF 7300GT-ZとGF 7300GTが(かろうじて,ではあるが)このラインをクリアしており,GeForce 7600 GSに対して差を見せつけている。
■消費電力はGeForce 7600 GSより高め
性能的には,得手不得手こそあれども,GeForce 7600 GS並みと言っていいGF 7300GT-ZとGF 7300GT。GeForce 7300 GTは,上の表1で示したように,シェーダユニット数などがGeForce 7600 GSから削減されているが,GF 7300GT-ZとGF 7300GTは,それを動作クロックで補っている格好だ。
では,消費電力はどうなっているだろうか? 今回は3DMark05を1回実行した直後から20分放置したときを「アイドル時」,3DMark05のFeature TestsからPixel Shaderテストを1600×1200ドットで10回連続実行して,最も消費電力の高かったときを「高負荷時」として,チェックしてみることにした。
結果は グラフ7にまとめたとおりだが,高負荷時には確実にGeForce 7600 GSを超える。もちろん,差はわずか9Wなので,目くじらを立てる必要はないかもしれないものの,あまり電源容量に余裕のない小型PCだと,この差が響いてくるかもしれない。
同時に,チップクーラーの違いがあるため,厳密な横並び比較にならないのは覚悟のうえで,GPUコア温度も調べてみることにした。いずれもグラフィックスドライバからチェックを試みているが,PC6600とXIAiX1600XTは温度情報が得られなかったため,スコアを「N/A」としている。
なお,評価用システムは標準的なミドルタワーケース(TQ-700MkII)に組み込んでいる。電源ユニットはEnermax Technology製「EG851AX-VH」で,ケースに対して水平方向に二つのファンがあるタイプ。ケースファンは80mm角,回転数2000rpmのものを排気のために取り付けている。側板は閉じた状態。室温は26℃だ。
グラフ8を見ると分かるが,やはりZalman Tech製チップクーラーを採用するGF 7300GT-Zは,GPUコアがよく冷却されている。性能面ではあまり変わらなかったGF 7300GT-ZとGF 7300GTだが,冷却能力という意味では,かなりの違いがあるといえよう。
コストパフォーマンス自体は悪くないが 積極的に選択するメリットはあまりない
GF 7300GT-ZとGF 7300GT評価できるポイントは,そのコストパフォーマンスということになる。とくにGF 7300GTは,1万円台後半から2万円程度で販売されているGeForce 7600 GSとほぼ互角の性能を,1万円台前半という実勢価格で実現している。この点は大いに評価していいと思う。
ただ,価格という相対的な要素とは別に,絶対的な性能にも目を向けておく必要がある。フレームレートの要求が厳しくないMMORPGなどならいいが,最新の3Dエンジンを利用するアクションゲームを前にすると,いくらクロックアップ版だとしても,GeForce 7300 GTではやはり力不足が目立つ。オーバークロックマージンのあるGF 7300GT-Zなら,今回のテスト結果にスコア面で上積みを期待できるのは確かとはいえ,それでも,メモリチップのスペックを見れば分かるように,GeForce 7600 GTに近いところまで持って行けるレベルでは到底ない。
ベンチマークスコアがほぼ同じレベルなのだから当たり前といえば当たり前だが,GF 7300GT-ZとGF 7300GTのパフォーマンスはGeForce 7600 GSと同等か,総じて少し上回る程度。4Gamerでは先に,GeForce 7600 GSについて「シングルカードの3Dパフォーマンスに多くを期待して,GeForce 7600 GSカードを購入するというのは,正しい選択とはいえない」と 指摘しているが,この指摘は,GF 7300GT-ZやGF 7300GTにもそのまま当てはまる。
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GF 7300GT-ZとGF 7300GTには,SLIブリッジを接続するためのコネクタが用意されている |
もちろん,GF 7300GT-ZとGF 7300GTの両製品とも,NVIDIA SLI(以下SLI)が可能なので,将来的に性能の向上を図ることはできる。今はMMORPG用に1枚購入しておいて,将来的にもう1枚追加して性能の向上を図るというやり方は,確かにアリだ。
ただ,それを考慮するには,あまりにも GF 7600GS-Zの存在が大きすぎると感じた。クロックアップ版という仕様に抵抗がないのであれば,GeForce 7600 GTに迫る性能を発揮する,同じGALAXY Technology製のクロックアップ版GeForce 7600 GSカードを2万円前後で購入できるのだ。
この状態で,GF 7300GT-ZとGF 7300GTを勧める積極的な理由は,残念ながら見当たらないというのが,正直なところである。
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