※画面写真はすべて開発中のものです |
「ダンジョンズ&ドラゴンズ・オンライン ストームリーチ」(原題 Dungeons & Dragons Online: Stormreach。以下,DDO)の日本語版クローズドβテストが,6月26日から開始された。6月19日開始という当初の予定からは1週間遅れたものの,現在は順調に進行中だ。
クローズドβは7月25日までの1か月間続けられる。その後,7月27日にオープンβへ移行し,8月10日から正式サービス開始というのが現段階でのスケジュールだ。なお,7月28日にパッケージ版が発売される予定である。
本作の内容については,現在海外で正式サービス中である英語版のプレビュー記事を読んでいただくとして,本記事では日本語版のローカライズに関するインプレッションをお届けしよう。
・英語版プレビュー記事 その1
・英語版プレビュー記事 その2
・週刊連載記事「ダンジョン道中しょんぼり記」
・さくらインターネットCEO 笹田亮氏インタビュー記事
■ローカライズの状況
現在,「Amethyst」という名前のサーバーが,日本語版クローズドβ用として稼働している。6月14日に海外で行われたアップデートは日本語版クローズドβにもすでに適用済みで,4月にリリースされた第1弾モジュール「Dragon's Vault」も,同様に適用されている。
日本語版の運営を行うさくらインターネットによると,日本語版では英語版と同様のコンテンツを提供していくとしており,今後英語版で追加コンテンツとしてリリースされるものは,日本語版でも随時提供される。
現時点では,海外の英語版追加コンテンツはすべて無料で,1〜2か月の間隔でコンスタントにリリースされる計画だ。さくらインターネットの社長によると「遅くとも1か月くらいで」英語版のアップデートに追いついていくそうなので,期待していいだろう。
日本語化の要領は,次のとおり。
・プレイヤー名
プレイヤーの名前については,英語版と同様のアルファベットのほかに,日本語版ではひらがなとカタカナの名前をつけられる。それ以外のプレイヤーが入力するフィールド(Bio(自伝)やチャットなど)は,漢字を含めた通常の日本語入力が可能だ。ただし,記号については正常に表示されないものがまだ多く残っている。
・固有名詞
クエスト名やNPC,アイテムなどの固有名詞に分類されるものは,英語名をそのままカタカナ表記した形で翻訳されている。これは,混乱を防ぐためには無難な選択肢かもしれないが,内容を理解するという意味では,ちょっと不十分な印象も受けた。例えば「ソウアー・レスキュー」を見て,ソウアーが「Sewer」=「下水道」だと,すぐに分かる人は少ないだろう。英語のままなら辞書を引くこともできるが,カタカナになっていると逆に調べづらくなってしまう。
「Making your presence known」を「メーキング・ユアー・プレゼンス・ノウン(挨拶回り)」というように,カタカナと意訳を併記してあるものは良いと思うが,こういった形になっているのはごく少数。原文の意味を損ねることのない範囲で,今一歩の工夫を望みたいところだ。
・音声
DM(ダンジョン・マスター)のセリフなど,音声の部分は英語のまま残されており,音声吹き替えについては今後の検討課題とされている。音声は雰囲気に与える影響が大きいので,筆者としては,よほど良い吹き替えでない限り英語のまま残しておいてほしいと思う。
固有名詞をカタカナに変える場合の表記不統一,変換ミスと思しきミスマッチな文章が散見されるが,全体としてはおおむね満足のいくレベル。ゲームのヘルプ画面からはフォーム形式でバグ情報を送信でき,クローズドβのプレイヤーが熱心に送信している。製品版までには,より完成度の高い形でプレイできることを期待したい。
■日本語版のコミュニティの支援を
日本語版は英語版と同一の仕様であることを目指しているため,日本語版クローズドβテストをプレイした印象は,当然ながら英語版のものとほぼ同一である。当然ではあるが,英語版の仕様に加えて日本語テキストを入力できる点が非常に便利に感じた。
また,筆者個人として最も新鮮に感じたのは,クローズドβ開始時の6月19日に,すべてのプレイヤーがゼロの状態からスタートしたということだ。英語版では正式サービス開始から4か月が経過しており,多くのプレイヤーがレベル10(現時点での最高レベル)キャラクターを持っていて,レアアイテムはすでにかなりの数が発掘されているため,アイテム価値がややインフレ気味な印象がある。
DDOには「Pawn Shop」というシステムがあり,プレイヤーがNPCに売却したレアアイテムは,一定期間を通じてPawn Shopという特定のNPC商人によって売りに出される。いわばサーバー内全体で一種の経済が形成されているのだが,これは便利な半面,「高レベルプレイヤーのお古を低レベルプレイヤーが買う」状況になってしまいがちなのも事実。
また,すでにハイレベルキャラクターを所持するプレイヤーは,自分の別のキャラクターに装備やアイテムを移動させることが簡単にできるため,キャラをいくつも持っているベテランのプレイヤーと,これから始めようというプレイヤーの,キャラクターの初期状態に大きな差が出てしまっている。
日本語版はこれから開始されるため,そういう状態にはなっておらず,平等な状態でキャラクター育成ができるのはとても良いと感じた。クローズドβのデータは一度削除されるため,オープンβ,あるいは正式サービスから新しく始める人にもよいだろう。
これは英語版でよく言われていることだが,DDOには2種類のプレイヤーがいるといわれている。一つは一般的なMMORPGのようにキャラクター育成やアイテム収集,戦闘などを中心に楽しんでいるプレイヤー層,そしてもう一つはテーブルトークRPGの流れで,シナリオや雰囲気を中心に楽しむプレイヤー層である。DDOはどちらの遊び方でも楽しめるように作られており,両者のプレイヤーが住み分けしやすいよう,グループメンバー募集のシステムなどが工夫されている。
同様の傾向は日本語版にも見られるので,今後うまくサーバー内のコミュニティが形成されていけば,さまざまなスタイルの人がDDOを楽しめる環境作りが進んでいくだろう。
英語版ではゲーム本体もさることながら,公式サイトのフォーラムが,プレイヤー間の情報交換やギルドメンバーの募集,アイテムトレードなどで非常に重要な役割を担っている。日本語版をこれから展開するにあたっても,同等のサービスが重要な鍵を握っているのではないかと思う。
さくらインターネットではDDOプレイヤーを対象にしたブログサービスや,ポータルサイトの設置を予定しているという。インフラ面でのサービスには不安はないので,ぜひそうした部分にも力を入れて,サービスを展開していってほしい。