レビュー : Athlon 64 X2 6000+/3.0GHz

動作クロック3GHzのAthlon 64 X2はCore 2の牙城を崩せるか

Athlon 64 X2 6000+/3.0GHz

Text by 宮崎真一
2007年2月20日

 

Athlon 64 X2 6000+
予想実売価格:5万9000円前後(2007年2月20日現在)

 AMDは,Athlon 64 X2シリーズの最上位モデルとなる「Athlon 64 X2 6000+/3.0GHz」を発表。同時に市場へ投入した。サーバーやワークステーション向けCPU「Opteron」や「Quad FX」プラットフォーム専用CPU「Athlon 64 FX-7x」シリーズを除く,純然たる一般PC向けのAMD製CPUとしては,初めて3GHzの大台を突破した製品だ。
 ゲームにおけるパフォーマンスは,2006年夏以降,Core 2ファミリーの後塵を拝し続けている感があるが,3GHz動作のAthlon 64 X2 6000+がそれを払拭できるほどのポテンシャルを持つかどうか。これが,新製品の焦点となりそうだ。

 

 

動作クロック以外の仕様は従来モデルとほぼ同じ
L2キャッシュ1MB×2,TDPは125W

 

「CPU-Z」(Version 1.39)から仕様を確認したところ

 これまでAthlon 64 X2の最上位モデルは「Athlon 64 X2 5600+/2.8GHz」だった。Athlon 64 X2 6000+は基本的に,このAthlon 64 X2 5600+から動作クロックが200MHz引き上げられたものと考えて問題ない。
 スペックの詳細は表1を参照してほしいが,L2キャッシュ容量は各コア1MBで同じ。ただし,90nm SOIプロセスを採用しているのも同じためか,消費電力の目安となるTDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)はAthlon 64 X2 5600+までの89Wから125Wとなってしまっている。

 

 

※価格は2007年2月20日時点のもの。Athlon 64 X2 6000+のみ予想実売価格,ほかは4Gamerが独自に調査した実勢価格となる

 

 今回は,そのAthlon 64 X2 6000+の比較対象として「Core 2 Duo E6700/2.66GHz」と,その下位モデルである「Core 2 Duo E6600/2.40GHz」を用意した。2月20日時点で,IntelはAthlon 64 X2 6000+の5万9000円前後という価格と完全に競合する価格帯の製品をラインナップしていないため,実勢価格6万7000円前後のCore 2 Duo E6700と,同4万2000円前後のCore 2 Duo E6600,両方と比較してみようというわけだ。  また,Athlon 64ファミリーの下位モデルとして,Athlon 64 FX-62/2.8GHzも比較対象に加えた。本来ならばAthlon 64 5600+を用意すべきだが,機材調達の都合ゆえなので,この点はご理解いただきたい。
 なお,上の表1からも分かるとおり,Athlon 64 X2 5600+とAthlon 64 FX-62は,TDP以外のスペックが同じなので,消費電力やCPUの温度以外は,Athlon 64 5600+=Athlon 64 FX-62と見て問題ないはずだ。本稿でも以下,TDP以外は同じものとして話を進めていく。

 

 そのほかテスト環境の詳細は表2のとおり,ベンチマークテスト方法は4Gamerのレギュレーション3.0に準じるが,今回はCPU性能がゲームに与える影響をチェックするため,グラフィックスカード性能への依存度が大きい「高負荷設定」は利用せず,「標準設定」のみで検証を行う。また,同じ理由で標準設定の1920×1200ドットでもテストは行わない。

 

 

 

動作クロック200MHz上昇の意味はあるが
いかんともし難い絶対的な能力差

 

 さて,まずはベンチマークアプリケーションから。グラフ1,2は「3Dmark06 Build 1.1.0」(以下3DMark06)の総合スコア(「Game Tests」)と,CPU Scoreをそれぞれまとめたものだ。200MHzの動作クロック分,Athlon 64 X2 6000+は,Athlon 64 FX-62と比べて順当にスコアを伸ばしている。Core 2 Duo E6600と同程度のスコアになっている点も注目すべきポイントである。

 

 

 

 次に「3DMark05 Build 1.3.0」(以下3DMark05,グラフ3)。傾向そのものは3DMark06と同様だが,Athlon 64 X2 6000+のスコアが,Core 2 Duo E6600から若干置いて行かれている。

 

 

 実際のゲームではどうか。FPSから見ていくと,「Quake 4」(Version 1.2)では,3DMark05の結果をさらに極端にしたような結果となった(グラフ4)。1024×768ドットでCore 2 Duo E6600に30fpsも差をつけられ,1600×1200ドットでも20fps弱。完敗だ。

 

 

 グラフ5に用意したFPS「F.E.A.R.」(Version 1.08)のスコアもQuake 4に近い結果だ。ここでも1024×768ドット設定時にAthlon 64 X2 6000+とCore 2 Duo E6600の間には30fpsもの差がついており,勝負になっていない印象である。
 しかし,解像度が上がって負荷が増すと,Quake 4とは異なり,スコアが拮抗し出す。1600×1200ドット設定時にはほぼ互角であり,高解像度におけるフレームレートの下がり幅はAthlon 64 X2 6000+のほうが小さいのが分かる。

 

 

 FPSの3タイトルめは「Half-Life 2:Episode One」だが,結果は興味深いものとなった(グラフ6)。1024×768ドット設定時にはCore 2 Duo E6600(や同E6700)から大きな差をつけられているAthlon 64 X2 6000+が,1280×1024ドット以上では逆転するのである。
 単に高解像度で値が揃っていくのであれば,グラフィックスカードのボトルネックを指摘できそうだが,ここではそうなっていない。メモリコントローラを内蔵するため,メモリレイテンシが低くなっているAthlon 64ファミリーのメリットが最大限に発揮されたと見るべきだろう。“Athlon 64 X2 6000+ならでは”の特徴というわけではないものの,憶えておいて損はないデータだ。

 

 

 続いてRTS「Company of Heroes」のテスト結果をグラフ7にまとめた。傾向はF.E.A.R.のそれに似た形だ。Company of Heroesはレギュレーション上,負荷の高いテストなので,ここはHalf-Life 2: Episode Oneとは異なり,純粋にグラフィックスカードのボトルネックが発生しているものと思われる。
 いずれにせよ,Athlon 64 X2 6000+のパフォーマンスは,1280×1024ドットまでの解像度でCompany of Heroesをプレイするに当たってとくに問題のないレベルといえる。

 

 

 グラフ8はレースシム「GTR 2 - FIA GT Racing Game」のテスト結果である。このグラフの形はQuad FX評価システム(≒Athlon 64 FX-74×2)のレビュー時とほぼ同じだが,負荷の低いゲームタイトルだと,地力の差が顕著に出てしまう。

 

 

 グラフ9はMMORPG「Linage II」のテスト結果をまとめたものである。Linage IIの場合,フレームレートが30fpsを超えていれば,CPUのパフォーマンスとしては合格。そのため,問題ないスコアといえばそれまでだが,Core 2 Duo E6600との間にかなりの差があるのも事実だ。

 

 

 

TDP 125Wのペナルティは小さくなく
高負荷時の消費電力はかなり気になる

 

Cool’n’Quietを有効にすると,Athlon 64 X2 6000+の動作クロックはアイドル時に1.0GHzまで低下する

 Athlon 64 X2 6000+のTDPは前述のとおり125W。IntelとAMDでTDPの算出方法が異なるので,同列に比較するのが難しいとはいえ,Core 2 Duoの65Wと比べるとかなり高い値のため,消費電力は気になるところだ。
 そこで,OS起動直後から30分放置した直後を「アイドル時」,できる限りCPUだけに30分間負荷をかけ続け,最も消費電力の高かった時点を「高負荷時」として,システム全体の消費電力をチェックすることにした。CPUに負荷をかけるに当たっては,MP3エンコードソフトをベースとしたマルチスレッド対応のCPUベンチマークソフト「午後べんち」を連続実行している。消費電力はワットチェッカーで計測し,その結果をスコアとしてグラフ10に示した。
 Athlon 64 X2では「Cool’n’Quiet」,Core 2 Duoでは「Enhanced Intel SpeedStep Technology」(EIST)という省電力機能を利用できるため,アイドル時にはその有効無効でそれぞれスコアを計測してある。

 

 というわけでグラフを見てみると,省電力機能有効時はCore 2 Duoと互角の消費電力となったAthlon 64 X2 6000+だが,無効化するとCore 2 Duo E6700よりも20W近く高くなってしまった。さらに,高負荷時は268Wで,Core 2 Duo E6700との差は100W以上だ。
 マザーボードが異なるため,100%厳密な比較ではないが,TDPが125Wになっていることのペナルティは確実に存在する。このことは憶えておきたい。

 

 

 また,CPUのデジタル温度センサーで計測される値を読み取るため,マザーボードに依存しない温度測定が可能な汎用のCPU温度測定用フリーソフトウェア,「CoreTemp」から,グラフ10の各時点におけるCPUの温度を計測し,コアごとのスコアをグラフ11にまとめた。
 Athlon 64環境とCore 2 Duo環境ではCPUクーラーが異なるため,両者の横並び比較は不可能だ。しかし,それぞれリファレンスクーラーを用いたテストにおいて,Athlon 64 X2 6000+の温度が(片方のコアだけとはいえ)83℃に達しており,TDPの高さに応じた数字になっているのを確認できたのは意味がある。

 

 

 

順当な性能向上を見せている点は評価できるが
コストパフォーマンスは決して高くない

 

 最後に,ゲーム以外の一般的なシステム性能をざっと見るため,「PCMark05 Build 1.2.0」を実行した。総合スコアはグラフ12に,CPUスコアの詳細は別途表3にそれぞれ示したので,興味のある人はチェックしてみてほしい。グラフの傾向はQuake 4とよく似ている。

 

 

 改めて確認すると,Athlon 64 X2 6000+の予想実売価格は5万9000円前後で,Core 2 Duo E6600の実勢価格は4万3000円前後。それでいて,特定の条件以外ではCore 2 Duo E6600のほうがゲームにおいて高い性能を発揮するとなると,ゲーム用途を考えて高性能なPCを手に入れたいと思ったとき,Athlon 64 X2 6000+を選ぶ理由は,絶対的な性能だけでなくコストパフォーマンスにおいても,残念ながらない。

 

 その意味で,Athlon 64 X2 6000+は,すでにSocket AM2ベースのPCを持っている人のためのアップグレードパスということになるだろう。Socket AM2環境最速のCPUであることに疑いの余地はないため,Socket AM2ベースのPCを極限まで高速化したいのなら,Athlon 64 X2 6000+には相応の価値がある。
 ただし,Athlon 64 FX-62と性能は同等のAthlon 64 X2 5600+が4万5000円程度で販売されており,しかもAthlon 64 X2 6000+とそれほど変わらないスコアを出していることは,記憶に留めておく必要があろう。さらに言うなら,Athlon 64 X2 5600+のTDPは89Wで,同125WのAthlon 64 X2 6000+よりも扱いやすい。

 

 AMDは,TDPの低下に向けての努力を続けていくという。“通常電圧版”となる89W版Athlon 64 X2 6000+の早期登場に期待したいところだ。

タイトル Athlon 64
開発元 AMD 発売元 日本AMD
発売日 2003/09/24 価格 モデルによる
 
動作環境 N/A

Copyright 2006 Advanced Micro Devices, Inc.

【この記事へのリンクはこちら】

http://www.4gamer.net/review/athlon_64_x2_6000/athlon_64_x2_6000.shtml