「A3インタビュー」

小島氏
■小島幸博(こじま ゆきひろ)氏プロフィール
A3のプロデューサー。ソフトハウス「アトラス」での勤務後,ゲーム雑誌やゲームサイトの編集長クラスを歴任,また最近ではゲームオンのMMORPG「ミュー」のプロデューサーも勤めた。「A3」では,宣伝プロデューサーとして活躍中。
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 "18歳以上&クレジットカードを持っている人のみ"というガチガチの制限のなか,第1次のリミテッドサービス(クローズドβテスト)に突入した,ガンホー・オンライン・エンターテイメントの韓国産MMORPG「A3」。本作が,実に挑戦的,そして業界から見たら少し冷や冷やモノの"仕掛け"でもってMMORPG業界に殴り込んできたのは,ちょうど半年ほど前に,当サイトの「こちら」で,プロデューサーインタビューと共にお伝えしたとおりだ。

 そんな「A3」も,2004年4月20日の第1次リミテッドサービス開始から4か月めを迎える。その間,第2次,第3次と募集を重ねる度に,徐々に"プレイヤー制限"は緩和。現在では,最終的な人数制限はあるものの,ガンホーIDさえもっていれば自由にダウンロードして限定サービスを楽しむことができる。
 もちろん,制限を緩和してプレイヤーの間口を広げることは,A3をプレイしたくてもできなかった人にすれば嬉しい誤算だ。本作をプレイしたい人の中には,18歳に達していなかった人は大勢いたことだろう。
 しかし,この段階的なサービス対象の拡張は,「A3」の基本コンセプトである「大人のための空間」作り,また「クレジットカード認証というハードルを乗り越える本気の人だけを集める」という,当初小島氏が語っていた内容に矛盾が生じてしまっている。事実上18歳未満プレイ禁止という厳密な年齢認証も行えないため(※1),18歳未満の人がテストに参加するか否かは,良心にゆだねられる形になった。
 多くの人が疑問をもったであろう,A3リミテッドサービスのサービス形態の変化。本来なら,6月18日の第3次限定ダウンロードサービスが開始された時点でお伝えするべきだったかもしれないが,ちょっぴり時間が経過した今回,やっとA3のプロデューサーである小島氏に話を聞くことができた。

 しかも,元々こちらから出向く予定だったものを,小島氏自ら編集部へ訪れてくれるという。氏も,やはり一連のサービス方法については自らゆっくり語りたい部分があったのだろう。これまでの経緯から現状,また将来の展望までを存分に語ってくれた。もちろん,ドサクサに紛れてA3のシステムに関する新情報も仕入れてきたので,ぜひじっくり読んでみてほしい。

※1……ガンホー・オンライン・エンターテイメントの会員IDであるガンホーIDの登録情報だけを見て認証するため。

いきなり核心に迫る。

4Gamer.net(以下,4G):
 お久しぶりです(筆者は第一回のインタビューからご無沙汰)。もうこちらの質問内容は想像がつくかと思いますので,早速,直球勝負でいきますね。
 これまで段階的にサービス方式が変わってきました,それはどのような理由からですか? 1次,2次,3次と,順を追って説明していただけると助かります。

小島氏:
 そうですね。では順番にいきましょうか。
 端的に言って,A3は最初に非常にストイックな道を選びました。R-18指定でしかもクレジットカードがないと遊べないように,プレイヤーに対して一種のハードルを用意したわけです。これは以前もお話したように,オープンβテストで雑多なプレイヤーを誘うような既存のMMORPGとの差別化を図るため,そしてプレイヤーの質をコントロールするためです。

4G:
 確かに,それが一つのウリになってましたよね。オープンβテストを広告手段として利用する習慣にアンチテーゼを唱えるようなものでしたし,逆にそういった制限が話題を呼んだ部分もあると思います。

小島氏:
 で,最初は,私共の狙いはバッチリはまったんですよ。厳密な数字は言えませんが,リミテッドサービスキット(※2)はだいぶはけましたし。当時の見込みの80%はいったかな? とにかくそれぐらいですかね。

4G:
 えっと,成功した"狙い"っていうのは数字だけですか?

小島氏:
 いえいえ,もちろんゲームの雰囲気に関してもです。こういうと語弊があるかもしれませんが,最初は"非常にいい"お客さんが来てくれたんですよ。"いい"というのは"大人な"と言い換えてもいいです。
 そんなプレイヤー達が作り上げたのは,弊社が運営中のMMORPG「ラグナロクオンライン」の対極に位置するような,非常に静かな空間でした。売り買いも"大人の社交界"っていう感じで割りとおとなしい。

4G:
 しかし,それがある意味"狙い"だったんじゃないんですか? "子供が走り回っている公園とかではない,大人の社交場を望む"と,以前おっしゃってましたよね。

小島氏:
 もちろんそうです。
 ただリミテッドサービスという限定された人数でスタートして,みんなのキャラクターが徐々にレベルアップしていったときに,フィールドが"新人がこないビニールハウス"みたいな感じになっちゃったんですよね。もちろん離れていく人もいました。
 さらに当然新しい人もまったく入ってこないわけで,経済も硬直していきました。ハイレベルプレイヤーが,いらなくなったアイテムを初心者に――,なんてことも徐々に少なくなりますからね。
 つまり,"狙いは当たったけど予想と少し違った"という感じでしょうか。

4G:
 なるほど,たしかにそうならざるを得ないでしょうね。で,人を増やそうと。

小島氏:
 ええ。とりあえずクレジットカードというハードルははずしたいと思いましたね。これが第2次リミテッドサービスへと移行した理由です。

※2……2004年4月20日から始まったA3のクローズドβテストに参加するための参加権,およびCD。さまざまな特典が同梱されたキットで,※7にあるワンダーフェスティバル2004[夏]で,倉庫で見つかった在庫分が無料配布される予定。


第2次〜第3次

小島氏:
 第2次リミテッドサービスは,ご存知の通り,ネットカフェで対面認証を行い,18歳以上であると確認した上でA3のトライアルチケットをお渡しするという方式を採りました。"A3がプレイできる!"っていう触れ込みもありますし,ネットカフェさんも協力的で,自らプロモーションを行ってくれる店舗もありましたね。最終的に800店舗強ぐらいに協力してもらいました。

4G:
 その時のプレイヤーの反応は?

小島氏:
 いやぁみんな右往左往してましたよ(笑)。ウチにもジャンジャン問い合わせがありましたし。この期間中,A3をプレイしたい人は「あっちのネットカフェでできるらしい」とか「ん? もう渋谷は全滅か!?」とか,あっちこっち探し周ってくれましたね。ウチとしても「申し訳ないですが,探してください」っていうのもありましたし。"演出"とまでは言いませんが,この方法でもやっぱりA3らしさは出てたかな? と思ってます。

4G:
 この時点でどれぐらいのユーザーがA3の世界に?

小島氏:
 やっぱり厳密な数字は言えないんですけど(※3),1.5から1.7倍ぐらい?(広報さんの目を見つつ)でしょうか。

4G:
 それで,1次テストの問題点は解消されましたか?

小島氏:
 もちろん人は増えたわけですし,ビニールハウスのような――なんて状態は脱したと思います。ただ,2点ほど新たな問題に直面したんです。
 一つは,――これはもうA3が"そもそも"抱えているクリティカルな問題なのであとで説明しましょうか。
 もう一つは,騎士団トーナメント(※4)を何度か繰り返すうちに,一定のプレイヤーには"立場"というものができ,プレイヤー間に"差"が出てきたということです。
 もちろん,トール(※5)やネトラン(※5),エルタキン(※5)といった,国家における騎士団のヒエラルキーというものは明確に存在しています。それはそれでいいんですが,プレイヤーの集団を"国家"として見た場合,末端を担う役割の"民衆"に当たる人がいなくなってしまうような状況になったんです。軍隊でいえば,"みんな将校"みたいな感じでしょうか。軍人が少ないなぁっていう。

4G:
 そうなると,必然的に上に立つものの価値,つまり称号を持つ騎士団の価値も下がっていっちゃう感じですね。プレイヤーのモチベーションと共に。

小島氏:
 そうなんです。しかも,1次サービスで入ったプレイヤー,いわゆる"1次組"の人は大変な苦労をしてレベルを上げ,またアイテムを集めて今のキャラクターを育たのに対して,"2次組み"の人はある程度ラクにキャラクターが成長させられる。あ,これは1次組の人が親切だってのもあるんですけどね(笑)。1/4ぐらいの労力で育てられるんじゃないかな。
 それで,みんなレベルが高くて上を目指す状態ができてしまったわけです。
 で,もう少し間口を広げて大衆化しなければ――という思考になったんです。

4G:
 それで"あの"第3次限定ダウンロードサービス"が始まったわけですか。

※3……厳しく情報規制をしているのもA3の一つのウリであった。以前のインタビューで,小島氏は「できるだけ数字は出さない」と語っている。

※4……プレイヤーキャラクターが最大13名で構成できるチーム,クランの名称。普通のMMORPGでいえばギルドみたいなものと考えるといい。

※5……騎士団の称号。内容は,それぞれ以下のとおり。
 ・エルタキン:トーナメントを勝ち抜いて商店の所有権をもっている騎士団
 ・ネトラン :エルタキンの上位に属し,国家の頂点に立つ騎士団
 ・トール  :ネトランの騎士団長。国家で最も高い位のプレイヤーキャラクター

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