― 連載 ―

あの素晴らしい(?)日々をもう一度

第4回 クラブ活動で見つけた絆

 “つながる友情,つなげる愛情,広がる学園生活(スクールライフ)”がキャッチフレーズの,MMO学園コミュニティゲーム「ときめきメモリアル ONLINE」(以下,TMO)。この連載では,TMOで体験できる学園生活と,現実世界での学園生活体験談を重ね合わせ,TMOが持つノスタルジックな魅力をあらわにすべく,3名の著者がリレー形式で綴ってまいります。今週は,喜屋武ちあきさんから「おめー友達いねえから一人で授業とかクラブ活動ばっかやってんだってな!」(意訳)と言われてしまった4Gamer編集部のTeTが担当です。今回のお題は,クラブ活動。

 

普段は内気だけど,水の中では人が変わるという設定の内海キャプテンと,彼女を取り囲む水泳部員達。無口でも人を集める魅力の持ち主というのも,世の中にはいるものだ

 夜の街に繰り出してオシャレなダンスミュージックに合わせて踊り狂い,そこで出会ったイカしたあの子と……とか,夜の店に繰り出してオシャレなトークをサカナに酒を飲み,そこで出会った職業婦人と……といった,チョイ不良(ワル)なお兄さんやお父さんが大好きなクラブ活動について語らせたら,4Gamer編集部で僕の右に出る者はいません。語るだけですが。
 それではなくて,今回ご紹介するのはもちろん,有り余る思春期特有の煩悩を,何か一つのことに打ち込むことで発散させようというシステムとして有名な,いわゆる“部活”です。

 

 TMOには現在,野球部,バレー部,陸上部,水泳部,文芸部,科学部,総合演劇部,家庭科部と,8種類のクラブ活動が用意されています。もちろん,どのクラブ活動にも参加せず,「オレ,勉強が大事だから」とか「クラスのみんなといつまでもおしゃべりしていたいから,クラブ活動はしないの」なんてスタンスもアリっちゃあアリですが,せっかくの学園生活。クラスでは出会えないような人と,クラブ活動を通じて出会ったり,仲良くなったりするチャンスを,あえて避ける手はないでしょう。

 

今回は見学らしいが,キャプテンたるもの,陰では相当な努力を積んでいるのだろう。個人的には,水着を脱いだ内海キャプテンの姿も見てみたい。って,そういう意味じゃなくて!

 今回,僕が入部したのは水泳部。虎の穴にいた頃,コールタールのプールで泳いだ経験のある僕としては,水泳部以外に考えられなかったのです。いえ,決してキャプテンの内海小鮎が持つ,必要以上に水の抵抗を受けてしまいそうなフォルムや,水をはじきそうな白い肌に惹かれたわけでは,断じてありません。いや,本当に。
 TMOでのクラブ活動は,これまでの記事でも何度か紹介してきたとおり,カードゲームのような対戦ゲーム。カードの代わりに使用するのは,ゲーム内で入手できる「キーワード」です。キーワードに設定されている,「能力属性」「場所属性」「攻撃力」「守備力」「守備特性」といったステータスを見つつ,「部活デッキ」(キーワードは8種類まで登録可能)を構築し,戦うことになるわけです。初期状態では6種類のキーワードを持っているので,まずはこれを全部デッキに組み込むのが,スタンダードなクラブ活動の始め方でしょう。

 

部活の前にはデッキ構築。キーワードごとの特性をよく理解したうえで,戦略と戦術を練らないことには,簡単に行き詰まってしまう。このあたり,シンプルにはいかない仕掛けになっている キーワードは,それぞれ固有のステータスを持つ。奥義合成に必要なアイテムの出現条件もキーワードごとに異なるため,同じキーワードを使い続けていると,手に入るアイテムが偏ってしまう

敗北を繰り返し勝利への道を見つけた……気がする

部員(NPC)との練習。一人倒すごとに,より強い部員が登場するようになる。いつの日か,内海キャプテンと練習できる日は来るのだろうか……

 プールサイドに咲く一輪の花こと内海キャプテンに話しかけ,一丁,内海キャプテンにお手合わせ願おうかな……と思いきや,「他の部員の方と練習していただけますか?」なんてつれない言葉。新入部員ですからね,まあ仕方ないでしょう。
 まず練習相手をしてくれたのは,「水泳 部員A」を名乗る女子。水着姿の女子と水着姿の僕が勝負するなんて,想像するだけでワクワク……していたんですがね。どういうわけだかあっという間に敗北。何度か戦いを繰り返すうち,たまに勝てることがあり,勝てたら次の相手に挑戦……と繰り返していたのですが,ある時点からまったく歯が立たなくなってしまいました。どうやら攻撃一辺倒では,どうにもならない様子です。

 

ジャージ姿だった練習相手も,奥義を発動するときは水着姿に。「彼女が水着に着替えたら」瞬殺されてしまいかねないのは笑えないが,最後にいいものを見せてもらったということで 複数のNPCを相手に,練習をしなければならないことも。それほど強くない相手でも,タッグで来られるとなかなか厄介。しかし男女のペアって羨ましいな……。いつの日か僕もきっと!

 

 ここでようやく,キーワードの守備特性項目の存在に気づきました。キーワードごとに,「奥義耐性」「反撃」「反射」「回避」あるいは「なし」という守備特性が設定されているのです。もしや? と思い,「反撃」の守備特性を持つキーワードで防御してみたところ……攻撃を受けた瞬間,相手に反撃! 防御状態でもあるため,こちらが受けたダメージはわずかなもの。矢吹 丈が得意とするノーガードからのクロスカウンターよりも,ローリスクハイリターンです。ちなみに反射は,ダメージを受けることなく鏡のように相手にダメージを与えられる防御。奥義耐性は,反撃や反射こそできないものの,相手が繰り出してきた「奥義」(通常攻撃よりも破壊力が高い必殺技)に対し,高い防御力を持っています。
 ただし,反撃や反射は必ず成功するとは限りません。もちろん,防御状態であるため,受けるダメージが少なくなるというメリットはありますが,ひたすら防御し続けているうちに規定の8ターンが終了し,判定負けになってしまうことも。そのため,どのタイミングで攻撃に出るかの見極めが肝心な模様。序盤は反射や反撃付きの防御をし,そろそろ相手が奥義を出してきそうな気配を感じたら,奥義耐性付きのキーワードで防御。反射や反撃で弱らせた相手には,攻撃力の高いキーワードで素直に攻撃……。と,戦法を確立させました。

 

防御特性「反射」が発動。複数人を相手にするときはとくに,防御特性を意識してデッキを構築したほうが良さそうだ。防御だけで練習が終わってしまうこともあるが…… 練習後に,アイテムやキーワードが手に入ることも。新たなキーワードを入手したらしたで,デッキの再構築に頭を悩ますことになるが,それもまた楽しい ときにはほかのプレイヤーの「自主トレ」に混ぜてもらうことも。自主トレは,参加者全員がプレイヤーキャラクターなので,チャットをしながらの対戦も可能だ

友達がいないので奥義を習得できない

クラブ活動をやりすぎて,キャラクターのストレス値が100になると怪我をしてしまう。こうなると練習に参加できなくなるので要注意。適度な休息も必要だ

 さて,ひたすら一人でNPCを相手にクラブ活動に打ち込んでいると,「奥義の書」なるアイテムが手に入ることがあります。奥義の書に書いてあるとおりのアイテムを集め,キャプテンのところで「部活奥義合成」をすると,奥義を習得できるという仕組み。
 ちなみに奥義合成に必要なアイテムは,使用したキーワードに応じてランダムで出現するため,同じキーワードばかり使っていると,必然的に同じアイテムしか入手できないという仕組みになっています。
 じゃあ,そろそろクラブ活動にも慣れてきたことだし,ここは奥義の一つでも習得して,内海キャプテンの目の前で披露し,「あら,ス・テ・キ」なんて言われてみよっかなぁ……と思いきや。アイテムが足りません。
 周囲を見るとこういうとき,ほかの人からアイテムを譲り受けたり,あるいは交換したりしている様子。が,喜屋武ちあきさんに言われたとおり,僕には友達と呼べる人がいません。顔見知りはいるんですが,時折挨拶を交わす程度。クラブ活動を通じて,クラスとは違う友達を作ろう! なんて思っていたというのに,NPCを相手にたんたんと練習し続けていたため,一向に友達ができません。ほぼ見ず知らずの人に対して,「アイテムくれよ」なんて図々しいことを,この僕が言えるわけもありません。そんなことをしてしまったら,新所沢のゲームセンターで遊んでいた当時小学生の僕と友達を突然取り囲み,ガムをくちゃくちゃ噛みながら「あのさー,金貸してくんね?」なんて言ってきたチョイ不良(ワル)な中学生集団と大差がないじゃないですか。そうでもないですか。そうですね。

 

怪我をしてしまい,練習に参加できなくなってしまったら,とりあえず学園敷地内をやさぐれ気分で歩き回ってみよう。間違いなく,どんなイベントも発生しない

 にしても,クラブ活動をしながら周囲に友達がいない状況というのは,なんだか寂しいものです。そういえば,いつだったか似たような経験をしたことがあるような……。
 そう,あれは大学の頃。中学,高校で吹奏楽部だった僕は,大学ではその延長で管弦楽部に入りました。系列校であったため,管弦楽部には吹奏楽部時代の先輩も何人かおり,入部早々居場所を見つけることに成功。が,これが大失敗でした。同じ時期に入学した同期生達からは,先輩だと思われてしまい,仲間に入れてもらえなかったのです。
 先輩達は先輩同士でつるむことも多く,そんなときに僕はただ一人,部室の隅で狸寝入りをするのみ。この状況が続けば続くほど,こちらとしてもかたくなになってしまい,同期と打ち解けるきっかけがあっても,そこから全力疾走で逃げ出すような始末。自主練習をするときは一人。サボるときも一人。同じ高校から進学した奴らが見事な大学デビューっぷりを発揮しているのを心の中では羨ましがりつつ,誰にも関心を持たない振りをして,脳内に自分王国を築き上げて籠城していたものです。あげく,それほど話したことがない女子から,下の名前で呼ばれた日には,「名前で呼ばれる筋合いはない」なんて言ってしまったり。本当は嬉しかったのに,素直になれなかったんですね。そりゃあ,友達なんてできるわけがありません。

何も起きないのは分かっていても,とりあえず自分を責め続ける。自分を責めても怪我はよくならない。だけど責めずにいられない。この葛藤こそが青春ってやつだ

 でも,仲良くしていた先輩達が卒業してしまうと,さすがにそうも言ってられません。自分から声をかけるのは苦手でも,せめて話しかけられたら普通に応じようと心がけ,練習後に食事に誘われたら素直に付いていくようにしました。まあ,「みんなでご飯食べに行こう」と言われて待っていたら,「帰ったかと思った」なんてことで置いて行かれたりもしましたが。同期の一人の誕生日を祝う飲み会の席で,「今度はTeTの誕生会やろうねー」と言われ,とても楽しみにしていたものの,いまだにそんな会は開かれていなかったりするわけですが(還暦ぐらいまでのお楽しみってことですかね?)。まあ,それもこれも今となっては笑い話……あれ? 目から体温より少し低い温度の液体が……。あれ? うまくやれてなかったのかな? なんだか自信がなくなってきましたが,話が進まないので,うまくやれていたことにしておきますね。
 そんな具合で次第になんとなく馴染むことができるようになったわけです。あくまでなんとなく。

 

ついに復調。これでまた,内海キャプテンの元で練習ができる。その喜びを誰かと分かち合いたくて,叫びながら走った。珍獣を見るかのような目で見られただけだった

 そんなことを思い出していて,一つの結論にたどり着きました。TMOでもやっぱり友達ができない僕ですが,みんなの話に合わせることはできるはず。話題の中心にはなれなくても,衛星のように一定の距離を保ち,周囲を回り続けることぐらいならできるはず。そう思い,プールサイドにたたずみます。ここでまた,NPC相手の練習に励んでしまっては,いつまで経っても水泳を愛する仲間達と打ち解けることはできません。あえて練習をせず,誰かがチャットを始めるのをじっと待ちます。
 すると,ちょくちょくプールサイドで見かける男子生徒が「奥義作りたいんだけど,誰か●●●ってアイテム持ってない?」と発言。ちょうどそれを持っていた僕は,「あ,持ってるよ! ところで僕は▲▲▲が欲しいんだけど,持ってないかな?」と返答。めでたくアイテムをトレードすることになりました。「ありがとう!」と言いながら,感情アイコンで笑顔を表示。友達ではないかもしれない。でも,顔見知りともちょっと違う。あえて言うなら,“同じ志を持つ者としての絆”が生まれたような気がしました。

 

怪我が治ったので,部活奥義の合成に挑戦! しかし,失敗。使用したアイテムはすべて消滅。挫折に次ぐ挫折。ここから這い上がってこそ,男だ

 そんなこんなで,どうにか奥義合成に必要なアイテムを揃えた僕。さあ,奥義を合成するぜ! と意気込んで,内海キャプテンに近づきます。「さあキャプテン,見ていてくれ!」熱く(といっても心の中)叫びながら,奥義合成に挑戦! 失敗!
 奥義の書も,合成用のアイテムも全部消えました。

 

 奥義合成は,必要なアイテムをキッチリ集めたからといって,必ず成功するというわけではありません。それまでにどんなに努力をしていたって,報われるとは限らないのです。だけど,アイテムを集める過程で行った練習,アイテムトレードを通じて生まれた絆は,無意味ではないはず。このあたり,実際の学生生活にもよく似ていると言えるのではないでしょうか。まあ,トレードをした彼とは,以来一度も遭遇していないのですが,気にしない方向で。

 さて来週は,先週と同じく喜屋武ちあきさんの登場です。TMOできちんと友達を作ってまったり楽しんでいる様子の喜屋武さんですが,ドラマイベントにもはまっているとか。喜屋武さんがもし,ドラマイベントを作るとしたら,果たしてどんなストーリーになるのか,非常に興味深いところです。

 

 

■■TeT(4Gamer編集部)■■
PSP版の「ときめきメモリアル〜forever with you〜」を購入したというTeT。ちゃんと遊んでいるのかと思いきや,途中で放り出してしまっているらしい。それはなぜかと尋ねたら,「ついつい本名でプレイ開始しちまったんですが,電車の中でやってると近くの人に覗かれるんですよ。見知らぬ人に本名がばれるのって,なんとなく恥ずかしいじゃないですか。液晶がクリアで視野角も広いってのが問題ですね」とのこと。どこに突っ込んでほしいんだろう……。
タイトル ときめきメモリアルONLINE
開発元 コナミデジタルエンタテインメント 発売元 コナミデジタルエンタテインメント
発売日 2006/03/23 価格 パッケージ版:1980円(税込)〜,プレイ料金:税込み1200円/30日〜
 
動作環境 OS:Windows 98SE/Me/2000/XP,CPU:Pentium III/650MHz以上,メインメモリ:256MB以上,グラフィックスメモリ32MB以上

(C)2005 Konami Digital Entertainment Co., Ltd.


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