― 連載 ―

あの素晴らしい(?)日々をもう一度

第1回 愛と勇気のツーショットチャット

とりあえずツーショットチャット,そうしたい旨を相手に伝えて申し込むのが礼儀です。ただ,これが結構勇気のいることなんですよねー……

 “つながる友情,つなげる愛情,広がる学園生活(スクールライフ)”がキャッチフレーズの,MMO学園コミュニティゲーム「ときめきメモリアルONLINE」(以下,TMO)。この連載では,midiほか2名が,TMOで用意されている代表的な要素(恋愛や授業など)と,それに関する現実世界での学生生活体験談をリンクさせて,リレー形式で綴ってまいります。
 時間が経つにつれ,思い出すことすら少なくなったあの日々,あのころの自分。TMOはもしかすると,それらを思い出させてくれる,ある種のタイムマシンなのかもしれません。……要するに,書くのもはばかられるような青臭くて恥ずかしい過去を,TMOと絡めて語ってみるのがこの連載。書き手にとっては羞恥プレイに近いような気もしますが,きっと読み手も恥ずかしい気分で一杯になるはず。
 ちなみに担当の編集者は「midiさんの母親に読まれたら,恥ずかしさのあまり家出しちゃうぐらいのを書いてくださいねー」なんて……。

 

 さて,記念すべき第1回のテーマは「ツーショットチャット」。実はこのテーマ,照れ屋の僕が,最も避けたいと願っていたものです。でも決して屈しません。編集部からの挑戦,受けて立ちましょう! ……半ばやけくそではありますが,そんな調子でなんとかかんとか原稿を書き進めてます。

 

今回のお題であるツーショットチャット。アイコンクリックやファンクションキーで表情を変化させられる,便利なチャットなのです。これを楽しむには,チャットしたい人を右クリックしてコマンドを選択すればOK

 さて,僕の心境うんぬんの話は置いといて,TMOにおけるツーショットチャットについて,知らない人のために説明しておきましょう。これは,教室や校庭,体育館などで行う多人数でのチャットとは違い,指定した(もしくは指定してきた)生徒(つまり,ほかのプレイヤー)と二人きりで,お互いのキャラクターの8頭身キャラの画像を見ながらチャットをするというシステム。見た目が,歴代のときめきメモリアルシリーズの会話シーンに似ているというのもウリの一つです。また,アイコン一つでキャラの表情を変化させられるため,通常のチャットよりも細かな感情表現ができるというのもポイントです。
 校内では,仲の良い知人/友人達や,カップルがよく利用しております。が! 実は僕,このツーショットチャットをあまり経験したことがありません。それはなぜかと言いますと,ツーショットチャットを楽しむにはあるものが必要だからです。それはズバリ,“勇気”。……今モニターの前で「うんうん」とうなずいたアナタ,僕と同類ですね。

 

 それではなぜ,勇気が必要なんでしょうか。当然ながら,相手をツーショットチャットに誘わなければならないからです。だいたい,ツーショットチャットをしているほかのクラスメイトを見てみると,その組み合わせのほとんどが男×女。つまり多くの人が,異性と二人きりで,ほかには聞こえない会話を楽しんでいるわけです。
 こんな具合に密閉性と秘匿性が高いチャットですから,僕のようなチキンハートの人間は,誘うときにドキドキしてしまうわけで。「もし下心があるって思われたらどうしよう?」「仲良くしていたつもりなのに,断られたらどんな顔をすればいいんだ?」なんて心配し始めると,なかなか誘えなくなってしまいます。その結果,ツーショットチャットはあまり経験せずに,これまでのβテストを終えてきました。勇気が足りないばっかりに……。

 

ツーショットチャットに誘うときの会話例の一つ。チビキャラではなく,8頭身サイズのバストアップキャラの顔を見てみたいということを相手に伝え,下心のなさをアピール ツーショットチャットに誘うときの会話例その2。直球勝負のパターンですね。ストレートな言い回しで勇気も結構いりますが,その分逆に,相手に余計な警戒心を与えずに済むかも?

ラブレターを渡すため勇気を絞り出した,高校生時代の僕

電車内にも学校と同じように下駄箱があったら,こっそりラブレターを入れることも可能だったかもしれませんが……。それはまぁ,無理な相談ってことで

 勇気……。言葉としては身近にあるけれども,実際に出すとなるとかなりの労力が必要なモノ。TMOでの学生生活から十数年前,まだ僕がリアル高校生だった頃。僕はその,勇気を最大限に出さなければならない場面に遭遇しました。
 それは,ある女の子を好きになったからです。いつもの時間,いつもと同じ通学電車。その電車に途中の駅から乗ってきて,いつも同じ場所,同じドアの近くに立ち,友達とのおしゃべりを,ほかの子よりも少し小さな,ガラスを指で弾いたときの衝撃音のような高く澄んだ声で楽しむ女の子。そんな彼女に恋をしたのです。

 なぜ,その子を好きになったのかは,よく分かりません。特別可愛いかったわけではないし,話の内容から感じ取れる性格がべらぼうに良かったわけでもない。ただ,その頃の僕は,ずっと付き合っていた別の女の子にフラれ,次の恋を探している真っ最中だったのです。そんなときに現れた,ちょっと好みのタイプの女の子。僕の中の何かが「彼女を好きになれ」との命令を下し,そして数日後,その何かが命ずるままに,僕はラブレターを書き綴りました。

失恋状態がしばらく続くと,このようなことも平気で言えるようになります。だけど,告白する勇気は絞り絞らなければならないのです。男ってバカです。ええ,バカですとも

 だけど,ここで問題が発生。どうやって渡すかまでは,考えていなかったのです。電車の中で渡すのはバツが悪いし,恥ずかしい。乗車中にさりげなく近づき,カバンの中にこっそりラブレターを入れる,なんてアイデアも浮かんだけれども,スリと勘違いされる可能性もあり。そんなことになったら,恋愛どころではなく「次に会うのは法廷よ!」と言われかねません。
 いろんな案が浮かんでは消えていきましたが,結果,「彼女が降りる駅で僕も降りて,声をかけて渡そう」という案に至りました。普段の僕は,彼女より手前の駅で下車するため,彼女がどこの駅で降りて,どこの学校へ行っているのかは知りません。そのため,下見なしの一発勝負です。かといって,ほかにいい案があるわけでもなく,はやる気持ちを抑えきれなかった僕は,ラブレターを書いた翌日,計画を実行しました。

 

自分はオクテのくせに,他人には恋愛のアドバイスをできちゃうんですよねー。っていうか,そんなことしてるヒマがあれば,恋するための作戦を練れって感じですね。てへ 告白する勇気はなかなか出せないけれども,恋はしたい。悶々とした気持ちを抱えたまま,保健室でセクシーパワーを振りまく保科先生に相談。だけど,答えは返ってこず……

 

NPCの天宮さんには,ハートマークだってガンガン出せるのに……。相手がプレイヤーだと,なかなかこうはいきません。ま,恋に落ちたときの練習ということで

 電車は,僕がいつも下車する駅を通過して,僕のドキドキする気持ちとポケットの中のラブレターを乗せ,恋の始発駅,あるいは終着駅のどちらかに向けて走り続けます。やがて,彼女とその友達が小さな駅で下車。それを見た僕も,追いかけるように同じドアからホームへと降り立ちます。駅を出たあとも,車中と変わらず,友達とおしゃべりをしながら歩き続ける彼女。その背中を,15mぐらい離れた場所から眺め,同じペースでついていく僕。彼女が学校へ着いてしまったらタイムオーバーだから,それまでに声をかけてラブレターを渡す……。ただそれだけのことなのに,それができませんでした。
 そう,勇気がなかったのです。勇気を出すという作業は,本当に困難で重労働。勇気というものは,心の蛇口を捻れば出てくるのではなく,カピカピに乾いたぞうきんをギュギュっと絞って,一滴の水を絞るようにして出さなければならないものなのかもしれません。タイムリミットが迫るなか,心のぞうきんをねじりにねじって,なけなしの勇気を絞り出す僕。そしてようやく「ポチャン」と勇気の雫が落ちる音が聞こえた次の瞬間,僕は何か大事なものに火が点いたかのように彼女を走って追いかけ,その背中に声をかけました。
「あのさ,ちょっといいかな……?」

 

気になる女の子がいたんだけれども,恥ずかしくて話しかけられず。そのままずーっと隣に立っていたら,女の子が汗のアイコンを出して立ち去りました。き,嫌われた…… ラブレター,アイテムとして実装されませんかねー。自由にコメントが書き込めるアイテムで,相手に気づかれず渡すことができるっていう機能付きで。どうですかね? NPCの恋愛候補生とのやりとりから,異性に声をかけるときのうまいやりかたを勉強中。むむぅ,やはり多少の強引さは必要なのか……。ためになります,春日さん!

そして時は経ち,勇気の神様が再び試練を

こ,このひと言を言うまでに,どれだけ心の葛藤があったことかッ! もうこうなったら,あとは野となれ山となれ。さてさて,彼女の反応はいかに……!?

 あれから何年か経った今でも,異性に声をかけるのは大の苦手。ああ,それなのにそれなのに。つい先日,恋愛系の勇気が必要なイベントのフラグが立ってしまったのです。それはTMOのβテストに参加し,クラスで雑談しているときのこと。
 話の流れで仲のいいクラスメイトに「●●くん(僕の男性キャラの名前),□□ちゃんとツーショットチャットしてくれば?」と言われてしまったのです。□□ちゃんというのは,僕がクラスの中でもとくに仲良くしていた女の子。僕にはそんなつもりはなかったので「恥ずかしくてできないよ〜」と軽いノリでかわそうとしたのですが,周囲の生徒達はそれを許すどころか,「ユー,ツーショットチャットしてそのままコクっちゃいなよ」的なビームをビンビンに出してきやがりました。

 困惑する僕に「彼女,次の授業までには帰ってくるって言ってたからさ,そのときに誘いなよ」とさらにドキドキを高めるようなアドバイスをくれるクラスメイト。もう僕の気持ちなんてそっちのけです。
 「ただいまー」……やがて,彼女が教室へと帰って来ました。クラスメイトは彼女に対する挨拶もそこそこに,その後沈黙。僕が彼女に誘いの言葉を投げかける瞬間を,今か今かと待っています。もうこうなったら,覚悟を決めるしかありません。
 心のぞうきんをねじって,なけなしの勇気を絞り出す僕。そしてようやく「ポチャン」と勇気の雫が落ちる音が聞こえた次の瞬間,僕は何か大事なものに火が点いたかのように彼女の隣まで走っていき,その横顔に声をかけました。
「あのさ,ちょっといいかな……?」
 かけた言葉は高校生のときと同じ。ただ一つ違ったのは,心のぞうきんが高校生のときに比べてさらにカピカピに乾き,勇気を絞り出すのに時間がかかったこと。
「女の子に声をかけるってのは,いくつになっても難しいもんだなぁ……」
 ゆっくりとフェードアウトし,その後ツーショットチャット画面へと移行していくモニターを見ながら,苦笑いする僕。今も昔も,リアルでもバーチャルでも,女の子に声をかけるのは苦手。だけど,そんな純な自分も,ちょっとだけ好きだったりするのです。
 え,告白はしたのかって? いやー,そこまではできませんでしたよ。ツーショットチャットに誘った時点で勇気の残量がスッカラカンになり,ファミコン版「キャプテン翼」でいうところの「くっ,ガッツが足りない!」って状態でしたから。ま,それはまた別のお話で。

 

オ,オッケーですか? ママ,マジで!? 「ツーショット」のコマンドを選択したいのですが,極度の興奮と緊張でマウスを握る手がプルプル震え,うまくいきませんです隊長ッ! ほほ笑む彼女の瞳に乾杯。ツーショットチャットは,大勢でのチャットとはまた違った楽しみがありますね。これは勇気を出す価値があるかも。みなさんもレッツチャレンジ!

 

 さて次回は,僕とは違ってTMOの学園内で異性のキャラとツーショットチャットをしまくっていると噂の,4Gamer編集部TeTさんが担当です。「ツーショット1000人斬り」という壮大な目標を掲げているそうですが,ホントですか? ぜひコラム内で解答願います。

 

■■midi(ライター)■■
この世の中に,ときめきメモリアルライター業界というものがあるとしたら,間違いなくそのトップランナーであるmidi氏。本文中で勇気がない,勇気がないと繰り返しているが,2度も結婚できたんだから,勇気の埋蔵量に関してはかなりのものがあるのではないかと思われる。高校時代に渡したラブレターの顛末を聞いてみたところ,こちらの期待に反して見事男女交際に持ち込むことに成功したんだとか。……ゲームでときめかなくたっていいじゃんね。
タイトル ときめきメモリアルONLINE
開発元 コナミデジタルエンタテインメント 発売元 コナミデジタルエンタテインメント
発売日 2006/03/23 価格 パッケージ版:1980円(税込)〜,プレイ料金:税込み1200円/30日〜
 
動作環境 OS:Windows 98SE/Me/2000/XP,CPU:Pentium III/650MHz以上,メインメモリ:256MB以上,グラフィックスメモリ32MB以上

(C)2005 Konami Digital Entertainment Co., Ltd.


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http://www.4gamer.net/weekly/tokimeki_ol/001/tokimeki_ol_001.shtml