― 連載 ―

剣と魔法の博物館 〜モンスター編〜
第10回:デュラハン(Dullahan)

 死を告げる者/死をもたらす者というと,鎌を持つ死神をイメージする人が多いと思うが,ほかにもそうした役割を担っているモンスターは多数存在する。その中でも比較的メジャーなのが,首なしの騎士として描かれるデュラハン(Dullahan)だろう。
 ゲームや小説などで描かれる一般的なデュラハンのイメージといえば,首のないコシュタ・バワー(Coiste Bodhar)と呼ばれる馬か,それに引かれた馬車や戦車にまたがる首のない騎士であることが多い。小脇に,自分の首を抱えていることもある。
 デュラハン最大の特徴は,「死を告げる」というもの。夜になるとどこからともなく現れて,死すべき運命の者のもとを訪れ,死の告知を行ったり,桶に満たした血を浴びせたりする。告知後,デュラハン自らが殺しにやってくるという逸話も多く,死神を彷彿とさせる存在といえる。
 ゲームなどでは高レベルなモンスターとして登場し,非常にタフな騎士として設定されていることが多い。圧倒的な剣技の前に苦戦することになるだろうが,魔法を使ってくるケースはあまりないようだ。これは後述するが,本来は精霊の一種であるにもかかわらず,ゲームではなぜか,アンデッドとして扱われることが多いのと関連性があるのかもしれない。首がないのに活動しており,さらに死の告知をするという特徴が,死の世界の住人としての印象を与え,アンデッドと解釈されてしまうのだろう。
 またTRPGのシナリオなどでは,「デュラハンの死の告知を回避すれば死の運命から逃れられる」ということで,デュラハンと人間の追いかけっこが演じられることもある。一見ユーモラスなシナリオだが,死の告知から逃れようと必死になっている人間に感情移入してみると,その恐ろしさが理解できるはずだ。

 

 デュラハンは,アイルランドなどの伝承に登場する精霊の一種。ルーツを特定するのは難しく,どうしてそういう姿になったのかは分かっていない。なおヨーロッパの伝承では,デュラハンは男性だけではなく女性の場合もある。よくよく考えてみれば,北欧神話のワルキューレは死者の魂を集める役目を担っているし,バンシーは死すべき運命の者が住む家の前で泣くというから,死にまつわる精霊には女性タイプのものが少なくないようだ。
 なおこれは余談だが,伝承を調べていたところ,デュラハンの駆るコシュタ・バワーは流れる川を渡れないため,デュラハンから逃げるときは川を利用すればいいそうである。このあたり,どこかしらヴァンパイアと似ていて興味深い。

 これをデュラハンと言っていいのかは分からないが,アメリカの都市伝説「スリーピーホロウの伝説」についても触れておこう。これは,開拓時代のニューヨーク州ウエストチェスター郡付近で広まった都市伝説だ。かつて敵の首を切り取っていた残忍な傭兵/騎士が,首をはねられ処刑された。するといつの頃からか,夜になると首のない騎士が現れては自分の首を探して人々の首を狩ったという。この伝説はハロウィンなどでよく語られるそうで,ワシントン・アーヴィングが小説化しているほか,1999年にはティム・バートンによって映画化されている(主演はジョニー・デップだ)。興味のある人はチェックしてみるといいだろう。
 首のない騎士というモチーフは,アーサー王伝説にも登場する。あるとき円卓の騎士達が集まる場所に一人の騎士が現れ,「自分は一撃を受けよう。だがその一撃に耐えた場合は,今度は相手に同じことをさせてもらう」と告げるというもの。結局,円卓の騎士からガウェインが名乗り出て一撃のもとに騎士の首をはねるが,騎士は起きあがって首を小脇に抱え,一年後に同じことをさせてもらうと言って立ち去るのだ。
 さらに,円卓の騎士カラドクにも似た話がある。ガウェインもカラドクも,1年後に騎士との約束を果たすために首なし騎士の居城へとおもむき,潔く首を差し出すと,騎士から許され,騎士は自分の秘密を話し始める。結果はともかく,スリーピーホロウにせよアーサー王伝説のものにせよ,首なし騎士と死の告知といった雰囲気を出しており,デュラハンを彷彿させるエピソードである。

 

次回予告:グレムリン

 

■■Murayama(ライター)■■
最近,メインPCのハードディスクの調子が悪いというMurayama。不安になり,ハードディスクのメンテナンスツールを導入したそうなのだが,そのツールには,「ハードディスクをそのまま使い続けた場合の寿命」を表示する機能がついていたとのこと。それによると,Murayamaのハードディスクは11月7日に壊れるそうだ。次回の連載原稿はなんとかなりそうで,安心しました。


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