― 連載 ―

剣と魔法の博物館 〜モンスター編〜
第8回:リザードマン(Lizardman)

 リザードマンは,湿地帯や洞窟などに生息する,亜人間の一種である。その名のとおり,見た目はまさに「トカゲ人間」。二本脚で直立歩行し,武器なども使いこなす。独自の文化を持ち,集落を作って生活していることが多く,場合によっては一族や軍隊をまとめる指導者がいることもある。また,しばしば傭兵として,戦争に参加することもあるようだ。
 リザードマンは,好戦的で荒々しい種族として描かれることが多いが,必ずしもそうではなく,「Dungeons & Dragons」(以下,D&D)をはじめとするテーブルトークRPG(以下,TRPG)などでは,人間に対して中立的な立場をとっていることもある。怒らせるようなマネさえしなければ,無益な戦闘を避けることも可能だろう。
 亜人間の中では強敵で,魔法を使うことは少ないが,戦士としての力は侮りがたい。彼らは冒険者達と同様に戦闘訓練を積んでいるため,武器や防具の扱いに熟知しているほか,戦闘時には尻尾による打撃なども活用する。油断してかかると,思わぬ方向から飛んでくる尻尾に,文字どおり足をすくわれることになるだろう。
 なお,リザードマンは水辺での戦いを得意とし,泳ぎも器用にこなす。湿地帯や水際の戦闘では,十分な注意が必要だろう。ほかにも,ゲームや小説によっては,戦闘中に脳内物質を過剰分泌させ,戦闘力を一時的に強化する種も存在する。人間とさほどサイズの変わらぬ亜人種としては,かなりの強敵といっていい。

 

 リザードマンは多くのゲームや小説に登場しているが,神話や民間伝承をチェックしてみても,「これだ」という原典は見つけにくい。半竜半人や蛇人間は多数存在しているが,それらは「トカゲ人間」であるリザードマンとは,少々違う。
 D&Dシリーズでは,リザードマンという種族がかなりしっかりと設定されているが,ほかの多くのTRPGにもリザードマンは登場しており,原典を追求するのは少々難しいようだ。
 とはいっても,リザードマンは単なるトカゲ+人ではなく,ユニークな特徴もあるので,ここではそうした点にスポットを当ててみよう。
 最近のゲームではあまり見ることがなくなったが,リザードマンは大抵,「左利き」であった。海外産のTRPGやイラストで描かれるリザードマンの多くは,左利きなのである。
 リザードマンが左利きである理由にはいくつかの説がある。一つは,リザードマンの心臓が右側にあるという説。右側に心臓があるのだから,それを守るために自然に右手に盾を,左手に武器を持つようになったというのだ。
 もう一つ有力なものとしては,本来リザードマンは右利きが多いが,戦闘を有利に進めるために,あえて左に武器を持つ訓練をしているという説が挙げられる。人間,エルフ,ドワーフといった種族は右利きが多く,心臓も左側にあるので,左手に盾,右手に武器を持って戦うのが一般的だ。これに対して左に武器,右に盾という持つスタイルで挑めば,対峙したときに武器と武器,盾と盾が向かい合う形となる。そうすれば,相手の盾を使いにくくさせるという効果があるし,勝負は剣と剣によって決まるといっていいだろう。剣技が互角であれば,尻尾や硬い鱗を持つリザードマンのほうが有利に戦えることは必然。実に彼らの利点を生かした戦闘スタイルなのである。前述した説のどちらが正しいか(もしくは両方正しくないのか),という論議はさておき。リザードマンはこと戦闘に関しては,優れた才能(知恵)を持っていることは,間違いなさそうだ。
 最後に余談となるが,パズル要素の強いアクションRPGの名作「ドルアーガの塔」や,ファンタジーテーマの格闘ゲーム「ソウルキャリバーIII」に登場するリザードマンは,左利きという設定になっている。“リザードマン左利き説”を知っていれば,そういったゲームも,より深く,楽しく遊べることだろう。プレイする機会があったら,ぜひ注目してほしい。

 

次回予告:スフィンクス

 

■■Murayama(ライター)■■
著者紹介用のネタを聞き出そうと連絡を取ってみたら,開口一番「明日から自分探しの旅に出ます」などと語りだしたMurayama。ここ数か月,公私にわたって厳しい状況が続いていたようなので,行ったきり帰ってこないのではないだろうかと,非常に心配だ。とりあえず,ふくやの明太子とにわか煎餅を忘れずに買ってきてください。


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