連載 : 奥谷海人のAccess Accepted

 

奥谷海人のAccess Accepted

2006年12月27日掲載

 「師走,12月といえば,Access Accepted大賞の季節だ」などと思っている人はほとんどいないないだろうが,今年で3回目となる恒例記事「AccessAccepted大賞」である。筆者(奥谷海人)のごく個人的な趣味と有無を言わせぬ一存で決定されるとはいえ,いまや日本でほぼ唯一のPCゲーム専用ゲーム大賞であるのは間違いない(と思う)。筆者の担当である欧米のゲームソフトしか考慮していないという難点もあるが,「ああ,そういえば今年,こんなゲームも発売されたなあ」くらいの気持ちで読んでいただけたら幸いである。

 

2006年Access Accepted大賞

 

開発元:Valve発売元:Electronic Arts

Half-Life 2: Episode One

 ここ数年華やかだったアクションゲームだが,発売が来年に延期されてしまった大作ソフトも多く,どうも今年は地味な印象を受ける。いくつか興味深い作品が登場してはいるが,今年は「Half-Life 2: Episode One」をBestシューティングに選んでおきたい。
 同じSourceエンジンを利用した「Dark Messiah of Might & Magic」が年末にリリースされたものの,表情のアニメーションや物理エンジンの効果的な使い方,そして巧みなレベル構成など,Half-Life 2: Episode Oneほど全般的なクオリティの高さを維持しているタイトルはほかにはなかった。早ければ5時間ほどで終わってしまうプレイ時間の短さや,全編の3分の1の物語に過ぎないという物足りなさはあるものの,しばらくはValveの天下が続きそうだ。

  • Battlefield 2142
  • Prey
  • Tom Clancy's Rainbow Six: Vegas

開発元:The Collective発売元:Atari

Marc Ecko's Getting Up:
Contents Under Pressure

 アメリカでさえ「何このゲーム?」と言われそうなほど知名度が低く,セールスもあまり芳しくなかった「Marc Ecko's Getting Up: Contents Under Pressure」を,このジャンルのベストに選びたい。AIやカメラワークなどに未熟な部分は見られるものの,それを差し引いても評価したいのが,“一つの作品”としてのまとまりである。
 表現の自由が抑圧された世界で,プレイヤーはアクションだけでなくグラフィックアートを駆使してストーリーを進めていくという個性的な設定。ムービーから音楽,色の使い方などに,若きファッションデザイナーらしいセンスの良さが光るばかりでなく,すべての要素に,実際のニューヨークのサブカルチャーの裏付けがある。ついでにグラフィティの意味や歴史などを学ぶこともでき,ゲームプレイ後,筆者は街角の落書きから目が離せなくなった(くれぐれも,グラフィティはゲームの中だけで)。

  • Dreamfall: The Longest Journey
  • Hitman: Blood Money
  • Lara Croft Tomb Raider: Legend

開発元:Relic Entertainment発売元:THQ

Company of Heroes

 ここ数年,ストラテジーゲームのレベルが非常に高くなってきたのを感じていた。その中でも「Company of Heroes」は,第二次世界大戦という難しいテーマを選びつつ,それをユニークなゲームシステムで見事に再現したゲームだった。開発元のRelic Entertainmentは,次点にノミネートさせている「Warhammer 40,000: Chaos of War」も今年前半にリリースしており,その手堅い技術力を感じさせてくれた。
 Company of Heroesの優秀さは,その美しいグラフィックスやユニットの使い勝手の良さばかりでなく,巧みな攻撃を仕掛けてくるAIやリアルなサウンドなど,それぞれの要素が実に細かく作り込まれていることからも感じられる。対戦用サーバーとして新設されたRelic Onlineも安定しており,サービス開始以来,悪評はほとんど聞こえてこない。

  • Medieval 2: Total War
  • Sid Meier's Railroads!
  • Warhammer 40,000: Chaos of War

開発元:Bethesda Softworks発売元:2K Games

The Elder Scrolls IV: Oblivion

 本来なら,PC専用ゲームである「Neverwinter Nights 2」か「Titan Quest」を選びたいと思った筆者だが,ここはやはり,「The Elder Scrolls IV: Oblivion」の面白さを素直に評価しておきたい。前作,「The Elder Scrolls III: Morrowind」以来,一人称視点のRPGとしてのスタンダードをキープし続ける本作は,コンシューマ機用も含めて非常に評価が高い。
 シリーズの特徴である,広大なゲーム世界で好きなことができる自由度の高さと,それを実現するアイテムやクエストの豊富さなどは折り紙付き。それに加え,移動に便利な馬の登場や,オブジェクティブを知らせるマーカーなど,前作と比べて良い意味で遊びやすくなった印象を受ける。

  • Marvel: Ultimate Alliance
  • Neverwinter Nights 2
  • Titan Quest

開発元:Simbin Development発売元:10Tacle Studios

GTR 2 - FIA GT Racing Game

 Simbin Developmentほど,ドライビング・シミュレーションをマニアックに追及する開発チームは今のところ存在しないと筆者は思う。操作性,挙動,スピード感,物理シミュレーション,グラフィックスなど,ヨーロッパで先行発売された「GTR 2 - FIA GT Racing Game」は,そのすべてで妥協がなく,さらにはフレームレート,ネットワークコードなどに大きな改善も見られる。
 0.1秒単位のレコード短縮を目指し,搭載燃料の量からブレーキ圧まで調節するほどハードコアなゲームであるのは前作「GTR‐Official FIA GT Racing Game」と変わらないが,「ドライビングスクール」などの新モードや,ゲームシステムの細かな改善で,レースの初期でリタイアしてしまうケースが少なくなったのに好感が持てる。「Microsoft Flight Simulator X」など,ほかのテーマのシミュレータと比較するのは基本的に難しいのだが,ここはやはりGTR2を選んでおこう。

  • FIFA 2007
  • GT Legends
  • Microsoft Flight Simulator X

開発元:Turbine Entertainment発売元:Atari

Dungeons & Dragons Online:
Stormreach

 MMOのファンにとって,2006年ほど欧米の新作ソフトに失望した年はないはず。正確に言うと,失望するほど作品が登場しなかったわけだが。
 確かに,「Guild Wars: Nightfall」や「EverQuest II: Echoes of Faydwer」といった拡張パックはリリースされたが,新作となると何もない。
 そんな中,3月にリリースされた「Dungeons & Dragons Online: Stormreach」が,唯一評価できる新作ソフトだろう。PvPやクラフティングの制限などでやや好みが分かれるものの,テーブルトークの面白さをPC上に再現させたゲームシステムや,百戦練磨のTurbineらしい世界観の表現,プレゼンテーションの巧みさなどが光ったタイトルだ。

  • 該当作品なし

 欧米のデベロッパでは,スピンアウトや引き抜きなどが頻繁に行われるため,何が“新人”なのかよく分からないと言えば分からないのだが,それはともかく,今年の新人賞は,「Titan Quest」という久々のDiablo風アクションRPGを世の中に送り出したIron Lore Entertainmentに差し上げたい。
 Iron Lore Entertainmentを率いるBrian Sullivan(ブライアン・サリバン)氏は,「Age of Empire」シリーズでおなじみのEnsemble Studios出身。オリジナル「Age of Empire」のデザインチームのコアメンバーだった人物だ。Titan Questは,アクション性豊富なRPGであり,ギリシャやアジアなどの神話をモチーフにした世界観もユニーク。物理エンジンの効果など,グラフィックス面でも見るべき点が多い秀作だ。拡張パック「Immortal Throne」も発売を控えている。

  • Petrogryph (Star Wars Empire at War)
  • Naked Sky Entertainment (RoboBlitz)
  • Outlight (The Ship)

開発元:The Collective発売元:2K Games

The Da Vinci Code

 今年の残念賞には,「Half-Life 2: Episode 2」や「Enemy Territory: Quake Wars」「World of Warcraft: Burning Crusade」など,期待されながらも発売が延期されたため,2006年度のラインナップを(個人的に)あまり面白くないものにしてしまった諸作品を選びたい……ところだが,発売もされていないのに選ぶわけにもいかない。
 というわけで選んだこの「The Da Vinci Code」も,小説や映画の人気に乗っかって慌てて出した,なかなかどうしようもないタイトルだった。
 開発したのはThe Collective。今年のBestアクション/アドベンチャー賞に選んだMarc Ecko's Getting Up: Contents Under Pressureの開発チームでもあるのだが,この差はいったいなんなのだろう。特殊すぎるコマンドや今一歩のアクションなど,ほとんどの面で再考が求められる。人気小説/映画だからといってゲームを作るような時代ではない,という意味も込めておきたい。

  • Bad Day L.A.
  • Gothic III
  • Resevoir Dogs

Company of Heroes

開発元:Relic Entertainment発売元:THQ

 というわけで,今年のAccess Acceptedベスト オブ ザ イヤー賞は,多くの人が予想していたとおり,「Company of Heroes」にお贈りしたい。一段高いところからの的確な状況判断が求められるRTSだが,ときにチマチマ操作する忙しさにイヤになってしまうことも。ところがこのCompany of Heroesは,まるでアクションゲームや映画のような臨場感を体験できるのだ。物資供給ラインの取り合いというゲームシステムも面白く,第二次世界大戦を扱ったRTSとして歴史に名を刻むタイトルであろう。

 さて,PCゲーマーの皆さんにとって,今年はどんな一年だっただろうか。“次世代ゲーム機戦争”など,ゲーム業界全体としてはホットな話題も多かったが,新作に関しては,期待していたほど“豊作”と呼べる年ではなかったというのが,多くのPCゲームファンの正直な意見だと思う。

 「Tom Clancy's Ghost Recon Advanced: Warfighter」「The Elder Scrolls IV: Oblivion」,そして「Need for Speed: Carbon」といった作品に代表されるように「コンソール機からPCへ」という移植の流れが,とくにアクションやRPGといったジャンルでさらに加速していくのは間違いない。また,欧米のMMORPG市場は相変わらず停滞ムードだが,しばらくは「World of Warcraft」の独占状態が続きそうだ。
 とはいえ,濫造期を過ぎ,洗練された作品が次々とリリースされるRTSなど,健闘している分野も少なくない。新作ソフトの数こそ少なかったものの,全体としてそれほど悲観する状況ではないだろう。

 拡張パックや無料マップのダウンロードなど,一本で長く遊べるのが最近のPCゲームの特徴。一人のPCゲーマーとして考えれば,何か一つでも気に入ったソフトにめぐり会えれば幸せな気分になれるのは間違いない。というわけで,時間のあるこの年末年始,今回ノミネートされた作品の中からぜひ何かを手に入れて,じっくり遊んでいただきたい。

 

 


次回のAccessAcceptedは,2007年1月10日から再開。お楽しみに。

■■奥谷海人(ライター)■■
本誌海外特派員。アメリカのクリスマスは家族サービスの日。今年も,自宅のあるサンフランシスコから義兄/姉のいるロサンゼルスまで往復1200kmもの小旅行に行ってきた奥谷氏。そんな彼が,いつも気になっているのが,サンフランシスコとロサンゼルスのほぼ中間にあるKettleman Cityという町。この季節,全米から何万頭もの牛が集められてセリにかけられることで有名な町らしい。奥谷氏は「人口がたったの1500人なのに,その数倍の牛が集まるのが面白い」と語っているが,そうですかねえ。ともあれメリークリスマス。


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