― 連載 ―

奥谷海人のAccess Accepted

4Gamer読者のほとんどは,Windows用ゲームソフトを楽しんでいることだろうが,Macintosh用ゲームだって,"PC"ゲームには違いない。両OSでルーツが共通のゲームは多いし,近年では「ヘイロー」で有名になったBungie Softwareという"架け橋"だって存在する。今回は,2005年1月10日からサンフランシスコで行われていたMacWorld 2005を見学して学んだ,最近のMacゲームの動向をお伝えする。



MacWorld 2005で「Battlefield 1942:Secret Weapons of WWII」のLAN対戦に熱狂する来場者達。この"ゲームアーケード"では,時間によって「Halo」や「Unreal Tournement 2004」も遊ばれていた
 2000年にBungie Studios社がMicrosoftの傘下になって以来,ゲーム用プラットフォームとしてのMacintosh(以下,Mac)は,長きに渡って魅力のないものになっていた。'70年代後半からApple IIがPC(ここでは文字通りPersonal Computerの意)のゲーム市場を開拓した業績を考えれば,「iPodやPixar映画の成功でウハウハのスティーブ・ジョブズ氏にも,もっとゲーム部門を強化してもらいたいものだ」と考えているMacユーザーもいるに違いない。
 筆者も,10年ほど前にはMacで映像編集のイロハを学んだり,Bungieの名作「Marathon」を遊んだりした経験を持っており,毎年1月上旬にサンフランシスコで行われるMacWorldで展示されるゲームの少なさは残念に思っている一人だ。

 今年(2005年)のMacWorldは,CESとの連携を図ってか,これまでよりも1週間遅い1月10日から14日までの5日間にわたって開催された。
 ゲーマー的な視点で見ると,発表されたiPod ShuffleやMac Miniよりも興味深かったのが,ATIテクノロジーズ社が「RADEON X800 XT」のMacエディションを公開していたことである。Mac用ではハイエンドのグラフィックスチップはATIの独り舞台といってよく,,またRADEONの存在がWindows用ソフトの移植に際して力強い裏方となっているのも事実。最近では移植のペースも速くなり,さまざまなWindows用ゲームがのちにMacでもリリースされている。
 Mac用のRADEON X800 XTは,1.6億トランジスタ,0.13μmプロセスのVPUや256ビット接続のDDR3メモリを擁し,Smartshader 3D,Smoothvision HD,Hyper Z HD機能など最新のフィーチャーをサポート,現時点(2005年1月)でWindows PC用しかない最新製品X850と,アーキテクチャ的には同世代だ。これまでのハイエンド機種だったRADEON 9800 PRO Mac Editionと比較すれば,実に150%程度のフィルレートの向上が見込めるという。OpenGLをサポートしているソフトなら,Macに移植しても十分に楽しめる性能だ。
 残念なのは,物理エンジンメーカーであるHavok社の「Game Dynamics SDK」が,Macには対応していないこと。そのため,この物理エンジンを利用している「Half-Life 2」を始め,「Thief:Deadly Shadows」「Medal of Honor:Pacific Assault」のようなソフトは,移植するのが技術的に難しいとされている。これまではMacにもリリースされてきた"Mystシリーズ"の「Uru:Age Beyond Myst」でも,2004年2月にはMac用の開発も発表されていたものの,同年11月になって物理エンジンの移植が困難だとしてキャンセルされている。

2005年夏にMacとWindows用にリリースされる「Stubbs the Zombie」。ゾンビになってしまった主人公の物語を,過激なアクションで綴る。E3での正式発表に期待したい
 現在,Windows用ゲームソフトを活発にMacに移植しているのが,テキサスをベースにするAspyr Media社である。最近のソフトだと,「Call of Duty:United Offensive」「Command & Conquer Generals:Zero Hour」「Star Wars:Knights of the Old Republic」「Tom Clancy's Splinter Cell」などの作品を提供し,大きな反響があるようだ。
 Aspyr Media社では,現在のところ「DOOM 3」「The Sims 2」などの目玉商品も移植中。どの作品も,Windows版の発売から半年以内でリリースに漕ぎ着けているらしく,独自開発したコンバージョンツールを使っているとはいえ,その作業スピードには驚かされる。
 さらに同社が,オリジナルタイトルの制作にも着手している点も注目したい。現在,2005年の夏に発売が予定されているのが,「Stubbs the Zombie」といういかにもカルトチックな作品である。1959年代のペンシルバニア州の片田舎を舞台にしていて,ストーリーはスタッブズという愛称を持つセールスマンがゾンビになってしまい,ゾンビと人間による戦争へと発展していくものである。
 このソフトを開発するWideload Games社の代表は,なんと元々Bungie Studios社の幹部だったアレクサンダー・セロピアン(Alexander Seropian)氏ということもあり,Macゲーマーからは相当な期待が寄せられている。ゲームエンジンは「Halo for PC」のものを利用し,しかもWindows版も同時リリースされるというから,今後も要注目な作品といえるだろう。

 話題に出たHaloも,2004年末に移植版がリリースされている。移植を手がけたのはMac市場では古参のMacSoft社で,同社は「Rise of Nations」「Age of Mythology」などMicrosoftのタイトルを中心に,Atari社の「Civilization 3」「Unreal Tournament 2004」なども手がけている。
 Unreal Tournament 2004は,対戦ゲームとしてもMacユーザーからそれなりの支持を得ており,MacWorld会場でも「ゲームアーケード」と呼ばれる一画でゲーム大会が行われていた。

 オンラインゲームといえば,「World of Warcraft」がWindows版と同時にリリースされたのが実に興味深い。どれだけのMacユーザーがWorld of Warcraftをプレイしているのかは公表されていないものの,会場でも同作品の展示ブースに相当な人だかりができていたのは事実。ゲーム内にはMacユーザー専用クランもいくつか出現しているほどだ。
 先述のAspyr Media社も,今さらながら「Ultime Online」の移植を検討していると同社のニュースレターに書いており,Macにも本格的なMMORPG時代が到来しそうな気配もある。

すでにリリースされてMacユーザーに好評を博している「Toy Sight」。Webカメラで自分自身をゲームに取り込んで遊ぶ,「EyeToy」系のライトゲームが楽しめる
 独立系ではFreeserve社が注目株だ。2004年のMacWorldでアップルデザイン賞を受賞した「Toy Sight」は,その名称からも分かるように,PlayStation 2用の「EyeToy」と基本的に同じ機能を搭載した製品だ。つまり,Mac用のWebカメラとしてお馴染みのiSightを使って,カメラに映るプレイヤーの動きをセンサーで感知し,ゲームに反映させるものである。
 いくつも用意されたミニゲームは,その多くがプレイヤーがカメラの前で両手を開き,その手でゲーム画面の左右にあるバーを調節しながらプレイを進めていくもので,EyeToyの二番煎じではあるものの,老若男女が楽しめる気軽なゲーム性が受けていた。

 今でこそMacはコンピュータの初心者やビジュアルアート系専用のプラットフォームと見られがちだが,専用ゲームやMMORPGの参入もあるなど,その動向はゲーマーにも無視できないものになりつつある。Bungie Studios社が「Marathon」をリリースして好評を得たように,やがてWindowsゲームやビデオゲーム市場にも影響を及ぼすソフトが誕生するかもしれない。

◆◆主なMac用ゲームの開発元◆◆
メーカー代表作
Ambrosia SoftwareApeiron X
Apsyr MediaDOOM 3,Stubbs the Zombie
Feral InteractiveXIII,Ford Racing 2,Rayman 3
FreeverseRobin Hood,Toy Sight
Graphsim EntertainmentX-Plane 8
MacPlayCall of Duty,World of Warcraft
MacSoftAge of Mythology,Halo,Rise of Nations
Pangea SoftwareNanosaur II Hatching


次回はいよいよ,「DOOM」のジョン・ロメロ氏をめぐる「あの時,"嵐の渦中"で起こっていたこと」の"その2"をお届けする。"その1"を未読の人は,先に「こちら」を読みつつお待ちあれ。


■■奥谷海人(ライター)■■
本誌特派員。MacWorldなどでサンフランシスコの中心部に出かけたとき,奥谷氏が必ず立ち寄るのが,とあるベトナム料理屋。ダウンタウンの危険な一画にあるが,それでも名物のカレーピラフを食べに来るビジネスマン達は多く,奥谷氏が連れていった友人達も,知らず知らずのうちに常連になっていたりするのだとか。今回の取材でも,奥谷氏が一人でカレーピラフを食べていたところ,なんと彼の奥さんが上司らと入ってきたという。なんとなく気まずい雰囲気になったらしい……。



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