この連載は,第二次世界大戦あるいはその後の歴史に関わった,いかなる国や民族,集団あるいは個人をおとしめる意図も持っていません。ときに過激な表現が出てくることもありますが,それはあくまでゲームの内容を明確に説明するためのものですので,あらかじめご了承ください。
中国での戦闘はもはや消化試合。新しい戦場を求めて旅立つことにする――が,ヨーロッパでも戦争は終わり気味
いささか強引に独立再軍備を遂げ,押っ取り刀で朝鮮戦争(ただしソ連が直接介入)に馳せ参じた日本。とはいえ,いまさら言うのもなんだが,朝鮮半島での戦争は日本にとって利の薄いアクションである。
主力はあくまでもアメリカ軍だし,日本軍より足が速いのだから仕方ない。とてつもなくうまい立ち回りを見せれば,中国東北部はもちろん華北を日本軍カラーに染め「直す」ことも可能だろうが,実のところこれをやってもあまりメリットはない。
そこまでやっても,戦前の日本と同じところに戻るだけであり,少なくともこのゲームで戦前日本と同じ国策を採ることは,まったく合理性を欠いている。希少資源および石油という日本のアキレス腱は健在すぎるくらいに健在で,しかも今度はオランダに喧嘩を売って南方進出という選択肢が存在しないのだ。
トルコ制圧を目指してハイファに全陸軍が集結。この程度の数でもなんとかなるものだ
と,そういう日本の国益はさておき,次に日本が連合軍を「援護」できる場所を探してみると……どうもトルコがよさげだ。
トルコは,このキャンペーンの隠されたキーポイントである。トルコの空港をどちらが使えるかによって,戦争全体の帰趨が大きく変わる。少なくとも共産圏にとってみると,トルコが連合国サイドにあるうちは,とてつもなく苦しい戦争を強いられる。トルコを赤化して,赤軍はようやくスタートラインに立てるのだと言ってもよいだろう。
AIもこの点に配慮しているのかいないのか,トルコは比較的早い時期に赤化される傾向にある。まあ東ヨーロッパ諸国およびソビエトから最も近い位置にある資本主義国なので,そういう目で見ても当然といえば当然だが。
ともあれ今回のプレイでもトルコは赤化&再独立していて,しかもトルコ内部には在来の軍隊しかいなかった。こんなおいしそう,もとい,主体的な作戦に適した戦域があるだろうか!
この段階で完成していた陸上兵力は,山岳歩兵3個師団に歩兵1個師団,空軍は戦術爆撃機が4ユニット。輸送船は4隻あるので,全軍を一度に輸送できる。また生産ラインには戦術爆撃機1ユニットと山岳歩兵2ユニットが乗っており,侵攻後にも順次援軍を投入できる見込みが立っている。
まずはガジアンステップを陥落させる。もう1個師団はイズミルに上陸して沿岸を突破中
まずは輸送船をセイロン島に基地移動,さらにハイファまで進む。そこからトルコ南部のVPプロヴィンス,ガジアンステップへと強襲上陸をかけよう。山岳地帯のため上陸作戦には若干の危険を伴うとはいえ,前もって空軍による阻止攻撃で敵の指揮統制値を下げ,そこを山岳歩兵で強襲した結果,あっさりと上陸に成功した。
当然のように周囲からトルコ軍が集まってくるが,こちらは山岳地帯にいる最新式の山岳歩兵,相手は旧式歩兵。ことごとく攻撃を退ける。攻撃に失敗して敗走していく敵部隊には,朝鮮半島でたっぷりと実戦経験を積んだ日の丸航空隊が追いうちをかけ,場合によってはそのまま壊滅させる。
ここから日本軍の快進撃……といきたいところだったが,お恥ずかしいことに輸送船の数が足りず,補給は滞りがちだ。そこで,慌てて輸送船の増産を開始する。補給が安定するまでは我慢の一手だが,必要水準に達すれば話は変わる。ちょうど山岳歩兵の増援も編成が終わったので,いよいよ戦線の拡大を開始しよう。
基本的な行動パターンは,空軍の阻止攻撃でダメージを与えて,陸軍でつつき,敗走させたところを空軍の地上攻撃でトドメ,の繰り返しである。日本やトルコのような規模の国家では,師団が全滅するとまず取り返しがつかないので,急がず慌てずトルコ軍の数を減らすことを優先する。
結果,なぜかギリシア付近に上陸してブルガリアとユーゴスラビアを併合したスペイン軍に,ボスポラス海峡の支配権を奪われたものの,それを除くトルコ全土の併合には成功した。旧トルコ領の空港には連合軍の空軍が集結,ソビエトの資源地帯を爆撃するために飛び立っていく。こうなってしまうと,共産圏が逆転できる可能性はないだろう。
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中立国のなかで最大規模のスペインは,この手の火事場泥棒が得意。だが今回は日本だって負けていない |
ソビエト軍にはすでに戦線と呼べるものが存在していない。もうこの時点で,戦争は終わっているわけなんですがね |
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ガジアンステップをベースキャンプとして,ゆっくりとトルコ内部を蚕食中。空軍支援あってこその快進撃である |
かくしてトルコを日本が併合。いかに親日派が多いとはいえ,まさか日本人に占領されるとは思わなかったことだろう |
トルコを出発点としたマラソン大会。満州からシベリアに拉致された邦人保護のためシベリア方面にもマラソン中。いやいや,資源目当ての侵略戦争じゃないですよ
間接的な支援の次は,もっと大胆に,直接的な攻勢に出ることにする。トルコが陥落すると,ソビエトはバクーという最も脆弱なわき腹を露呈することになる。アメリカの戦略爆撃機は,赤軍にとっていまいましいことにアンカラ発バクー往復便が可能である。
だがこの段階ですでにペルシアは赤化/再独立しており,アバダンの石油生産力は完全な状態にある。ペルシアからソビエトに輸送される石油をなんとかしなければ,バクーを押さえてもあまり大きな打撃にはならない。
となれば,トルコからバクー経由でペルシアを目指す侵攻ルートが考えられるわけだが,赤軍は中東方面に大量の軍隊を送り込んでおり,イギリス軍がやっとのところで戦線を膠着させているのが現状だ。たかだか数個師団が北から回り込んでも,あまり大きな効果は期待できない。
しかし。小規模な軍隊でもできることはあるのだ。まず主力となる山岳歩兵がバクーを目指す。バクー周辺は険阻な山岳地帯だが,山岳歩兵にとっては山がホームグラウンドだ。短期間でコーカサス山脈を横断し,バクーの占領に成功する。
この段階で,日本空軍(航空自衛隊?)は戦術爆撃機7ユニットを擁する,世界的に見ても大火力を持った空軍となっていた。なにしろアメリカでも戦術爆撃機は合計10ユニット,日本は7ユニットを集中運用しているので,1度に投入可能な爆撃火力は世界最大級だ。コーカサス攻略に呼応して北上してきた赤軍は,山岳/砂漠/丘陵に足をとられ,そこを爆撃機につかまるという展開にハマり始めた。ゆっくりとした消耗は,しかしやがて赤軍−英軍正面における決定的な戦力差となり,ついにはパレスチナ方面で英軍が突破に成功した。……まあ,インドのほうでは赤軍の突破を許しているようだが,見なかったことにしよう。そこまで支援できませんて。
アラビア半島に閉じ込められたソ連軍,ざっと40個師団程度。北部だけで30個はいる。まともに相手していたのでは,さすがに身がもたない
砲兵を連れた主力級の山岳歩兵はペルシア北部からイランにかけての地域を制圧,最先鋒はすでにバスラを越え,クウェートシティに達する。これによってアラビア半島にいた赤軍大部隊はすべて補給切れとなり,あとは無残な包囲戦が残るだけとなった。赤軍はしゃにむに防備の薄い日本の守備側面に突破を試みるが,防備が薄いのは地上だけであって,空は橘花部隊(ジェット戦術爆撃機)が見張っている。結局,機甲も含めて30個師団近くいた赤軍は,そのほとんどが防衛ラインに触れる前に空しく崩壊するか,包囲殲滅されていった。
一方,ペルシア北部の山岳地帯を進撃していた砲兵なしの山岳歩兵2個は,悪路に悩まされながらもアフガニスタン国境に到達。アフガニスタンは中立国のため,これによってインド方面に突破した赤軍も補給線を遮断される形となる。赤軍は執念でヒマラヤ方面への突破に成功したが,消耗しきって世界の屋根を降りたところを待ちうけていたのはRAF(英空軍)だった。合掌。
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ちょっとアメリカさん……そこ,ドイツ人たくさん住んでるんじゃ。敵であるロシア人相手なら落としていいってわけじゃないにしても |
それはそうとして,この期に及んでなおも微動だにしないアメリカンタワー。これが動いてれば戦争は半年以上早く終わるはずなのに |
大資源輸出国,日本。もはや戦後ではないどころか,戦前ですらあり得ない
さて,この段階で日本は現状の国難どころか,戦前の問題点をもほぼ克服してしまった。どういう風の吹き回しかバクーとアバダンを直轄することになった日本は,今やアメリカに次ぐ産油国である。貿易明細をよく見ると分かるように,アメリカに石油を輸出したりしている始末だ。希少資源についてはいまだ問題を抱えているが,石油との貿易で問題なく手に入るだろうし,バクーを占領した部隊の一部は中東に南下せず,そのままソビエト領内を北上している。希少資源の鉱脈が手に入るのも時間の問題といえよう。
そう,むしろ問題は時間なのだ。西ヨーロッパではフランス軍が赤軍の戦線を完全に突破,バルバロッサ初期のナチスドイツもかくやという速度で戦線を前進させている。このままではおいしいところ,もとい,自由主義陣営にとっての戦略的要地がフランスとアメリカ(朝鮮半島からシベリアを横断!)で二分されてしまう。
幸いにして(?),赤軍はフランス軍正面に集結して果敢な抵抗を試みている。そのためソビエト南部はほぼ兵力ゼロで,ウラル周辺の工業地帯もノーガードだ。ここを逃してはなるまいと,日本は全速力で陸上部隊を前進させる。
速度競争において最も重要なのは,部隊の純然たる移動速度ではなく,進路を妨害する敵部隊をどれくらい迅速に排除できるかである。また,たとえ大火力の部隊であっても,長距離の行軍をすれば指揮統制値は落ち,やがてどこかで足を止めざるを得ない。
その点,空軍は非常に優れている。指揮統制値0になってもひたすら走り続ける陸上部隊を,阻止しようと移動してくる敵部隊を探しては,その敵部隊が壊滅するまで爆撃を続けるのだ。ときどき削りきれずに地上部隊の足を止められることはあるが,地上戦主体の場合と異なり,基本的に敵部隊は消滅する(消滅するまでやる)ので,進軍の平均速度は格段に速い。
史上空前の私利私欲分割線が完成。これでヨーロッパ側から進撃する連合軍は日本領を増やしてくれる存在となる。ヒマラヤを越えてシベリア入りしようとする英軍に対しても同様な分割線を引こうとする日本軍に注目
陸上部隊は守備隊すらいないスターリングラードを占領,そのまま進路を北にとって,ついにはモスクワ郊外にまで到達した。さすがにモスクワ包囲はフランス軍が主体となったが,逆にこれ幸いと陸自はモスクワを東に迂回,日本占領地のベルトを作っていく。
さてこのゲームでは,あるプロヴィンスから陸上部隊が出発して,隣接するプロヴィンスに攻め込むと,占領したプロヴィンスの支配権は最初にその軍隊がいた国のものになる。したがって,ソビエトを縦断するように日本領のラインを引けば,そこを通過してシベリアに攻めていくフランス軍は,ひたすら日本領を増やしてくれることになる。
やがて,スペインとポルトガルによる教皇子午線(1493年)からこのかた,世界で最も私利私欲にまみれた黄色いラインがソビエトを縦に貫通し,シベリア疎開を果たした工業地帯が日本領に組み込まれることが確定した。
バクーから東に進んだ部隊はモンゴル国境付近にまで進出,近隣の希少資源産出エリアをがっちりと抱え込んだ。ソビエトのVPエリアは尽きつつあり,急がなくては他国にソビエトの残り領土を併合される危険がある。
途中でソビエトのロケット試験場を踏み潰したり原子炉を踏み潰したりしながら猛進した結果,最後はフランスがソビエトを併合。しかしこの段階で日本の基礎ICが80を超え,研究ラインは5ラインとなった。戦後(?)日本は,失ったものを取り返すことこそできなかったが,それ以上のものを手に入れたのだった。
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ソビエト降伏時の最終的な領土分割地図。日本の必死さがうかがえる地図ともいえよう |
この程度の陸軍で,広大な占領地を確保してしまった……。シベリア分割線恐るべし |
IC477の怪物アメリカ。こんなのには何をどうやっても太刀打ちできない
さて,周囲を見渡してみると中国共産党がまだがんばっていたが,日本がテキトーに爆撃して,アメリカ軍がテキトーに進撃したところで,地上最後の共産国家は消え去った。戦争終結である。
この戦争で,日本はなぜか世界有数の産油国となり,またエネルギー/鉄/希少資源についても輸出国となった。
その後,日本はさらなる技術革新に励み,とくに核エネルギーに関しては,世界で始めて「最も高度な平和利用」に成功している(水爆の完成は世界で最初)。
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国内産出資源に乏しい日本にとって,原子エネルギー開発は生命線なのです。石油はいつか地球から尽きるのです……うん,言い訳になってません |
1950年ごろからは,アメリカでカーチス・ライト社,日本では中島飛行機が中心となって宇宙開発競争が展開されたが,残念ながら2か月差でアメリカに先を越されることになった。だがアメリカ軍は軍事的敵対国が存在しない状態での宇宙開発に意義を感じなかったのか,ロケットは試作段階でストップ。世界最初の商用ロケットを完成させたのは日本が先だった。まあ,本作の用語でいうと,大陸間弾道ミサイルの,開発で2か月負けたものの,製造では日本が早かったということなのだが。
これ以外にも日本は,大型旅客機YS-11(現代型輸送機),超大型旅客機YS-12(大陸間戦略爆撃機)を製造,平和を謳歌していくことになる。
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ちょっと気まずいユニット名に手心を。軍事技術の開発ではありません。日本は技術の平和利用に邁進しています
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ひっそりとVPで世界第3位にのぼり詰めた日本。ゼロからの火事場泥棒で3位。真面目に戦争する(?)気が失せます
以上のようにDOOMSDAYキャンペーンでは,ある程度以上の規模を持つ中小国であれば,尻馬に乗った火事場泥棒で相当の成果を挙げられる。空軍は8〜12ユニット程度で十分以上の働きを見せるので,小規模だが頑健な陸軍(最悪民兵でも可)+精強な空軍という組み合わせで敵国の一番脆いところを突けば,面白いように敵戦線が崩壊していくこともある。今回でいえば中東での補給線遮断作戦が,典型的なパターンといえるだろう。
とはいえ,それはあくまでも勝っている戦争をより迅速に勝たせるだけであって,負け戦になったが最後,やはり運命をともにするほかないのだが。あくまでも支援と火事場泥棒が活躍の中心であって,中小国に大規模な攻勢を正面から受け止める力などないのだから当然だ。
その代わり,得意とする分野を突出させ,堅実な一撃を致命傷に変えられれば,見返りはどこまでも大きい。またDOOMSDAYキャンペーンでは不可能だが,通常のグランドキャンペーンでは「開戦以前であれば同盟相手を切り替えられる」(できない国もあるが)ことも,戦略として利用できる。
使えるものはすべて使い,ハイリスク・ハイリターンなばくちの,リスクだけをあたう限り低減させたうえで,乾坤一擲の勝負に出ることにより――その結果が成るにせよ成らぬにせよ――非常に楽しめるプレイになるのは間違いない。
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ウラルより西をすっかり制圧したフランス。VP的には世界第1位の大国で,ICでは第3位。押しも押されぬ超大国である |
世界に植民地を広げる大英帝国はICで世界第2位。英米にはこれが順当な成果だ。こんなの相手に戦争するのが間違い |
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戦後世界いろいろ。インドネシアとエジプトの独立。これ以外にも次々に独立国が出来ていく |
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中東戦争勃発! だが,シリアがイスラエル全土を制圧して終了 |