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The Art of Guild Wars
第6回:Guild Warsの本領たる対人戦の魅力:中編

勝敗に影響する多様なファクターが用意され,戦術の探求が楽しめる,オンラインRPG「Guild Wars」

 対人戦闘を到達点として周到に設計された,アクション性の高いオンラインRPG「Guild Wars」。昨日(2005年8月8日)アナウンスされたとおり,今年冬に予定されている日本語版のリリースによって,国内での盛り上がりも大いに期待できそうだ。  前回に引き続き,ゲームの要といえる対人戦闘についての記事をお届けする。対人戦について基本的な事柄を確認したい人は,「こちら」の「対人戦:前編」を見ていただくと分かりやすいだろう。


8人のチーム同士が頂点を目指して競う

 Guild Warsの対人戦システムは,参加者のプレイスタイルによって"Arena" "Tournament"そして"Guild Battle"の3種目から任意に選べるようになっている。前回連載分ではもっともハードルの低い"Arena"を例にとって,対人戦の大まかな雰囲気をお伝えした。今回はArena以外に用意されている2種目を中心にお届けしよう。


Arenaでの立ち回りがおおよそ理解できたら,Tournamentに挑戦してみよう。画面は,息の合った仲間とArenaで連勝中の様子だ

 "Tournament"とは,事前に編成した8人制のチームで戦い抜く対人戦モードである。戦場となるエリアは"Tomb of Primeval Kings"で,ここへキャラクターを連れていくことが必須の条件だ。
 このエリアは,RPGモードの18番目のミッションをクリアすると往来可能になる。ミッションの合計数は25本なので,ストーリーのクライマックスに差しかかる段階であり,レベルは上限の20で挑戦する人が大多数を占めている。  もっとも,PvPモード用のキャラクターを作成すれば,RPGモードのミッションを進めずとも,レベル20のキャラクターでTournamentへの参加が可能だ。

 8人のチームを編成したからといって,すぐにTournamentに参加できるというわけではない。Tournament本戦の前に,NPC編成によるチームを撃破せねばならないのだ。これがA.I.キャラといえどもなかなか手強く,仲間としっかり連携しないと勝利は難しい。見方を変えると,事前にこのような関門を設けることで,Tournament本戦となる対人戦闘は一定以上の"レベル"が保たれているわけだ。


Tournamentでは手軽に多人数戦闘を行えるため,現在最もプレイヤー人口が多い。チーム戦だが参加者募集も頻繁に行われている Tournamentの前哨戦は,Tombエリアにて行われる。偉大なる王の墓で,秘宝をめぐる戦いを繰り広げるというストーリー展開だ

 Tournamentにおける勝利条件は,後述する"Annihilation" "Capture the Relic" "King of the Hill"の3種類からランダムで選ばれ,また基本ルールはArenaと一部異なる。いずれの勝利条件の場合でも共通していえるのは,各チームに「Ghostly Hero」というNPCユニットが登場することだ。Ghostly Heroは総大将のような役割を担っており,どの勝利条件であっても大きな意味を持つ。いかにして敵対チームのGhostly Heroを倒すかが,Tournamentに共通した大きなポイントといえよう。

 味方全体の士気を高める"Morale Boost"も,戦局を左右する要素である。これは最大で10段階あり,具体的にはHealth/Energyの上限値に影響を及ぼす。獲得=勝利というわけではないものの,NPCを含めた陣営全員の能力が底上げされるため,戦闘を確実に有利にしてくれる。単刀直入に勝利条件を狙って突き進むか,またはMorale Boostを高めてじわりじわりと押していくかの駆け引きは,Arenaにはない醍醐味だ。


前哨戦の相手はチームを組んでおり,Professionに応じたスキルをきちんと使ってくる。A.I.とはいえ,なかなか手強い 前哨戦の段階で,本戦に向けた基本戦術面の確認を行っておきたい。ここで負けるようでは、Tournament優勝など夢のまた夢である この段階で得られるMorale Boostは本戦に引き継がれる。画面左上のアイコンがその値を示しており,今回はなかなかいい成績だ
ゲームルールによって攻略法が大きく異なるTournament

 さて,先述したNPC相手の前哨戦に勝利すると,すぐさまTournament本戦が始まる。ちなみに前哨戦で良好な成績を収めるとMorale Boostを獲得でき,しかもそれは本戦へと持ち越される。NPC相手だからといって気を抜かず,よい流れを作りたいところだ。

前哨戦に勝利すると,いよいよTournament本戦が開始される。8人集まる必要があるにもかかわらず,対戦相手を探すにはだいたい数十秒と非常に短い

 Tournamentの本戦はArenaと異なり,2〜6チームによる集団戦となる点に注意してほしい(合計チーム数はランダム)。2チームを超える場合はバトルロイヤル形式で,Arenaとは根本面から戦術が異なってくるのだ。
 例えばある敵チームと激闘を繰り広げている最中に,真後ろから別のチームから攻められるなどということは当たり前に起きる。またときには,ほかのチームが消耗しきってから参戦して漁夫の利を狙うチームもいる。いささか爽やかさに欠ける戦い方だが,勝つためのクレバーな方法には違いない。それらを踏まえつつ,Tournament本戦における各モード=勝利条件を紹介していこう。


Tournamentでは,3〜6チームによるバトルロイヤルも行われる。一つの敵対チームだけにこだわっていては勝ち抜けない Tournamentに参加する人数は,最低でもArenaの2倍である。これだけの人数が縦横無尽に駆けめぐって戦う迫力は尋常ではない 本戦開始直前のショートムービーで,初めて使用マップとゲームルールが明らかになる。何度プレイしてもこの瞬間はわくわくする

【Annihilation】

 すべての敵対チームを殲滅したチームが勝者となるゲームルール。各本拠地にはGhostly Heroとは別に,"Priest"というNPCが待機している。Priestは一定時間ごとに味方メンバーを蘇生する能力を持っているが,万が一倒されると敵対チームにMorale Boostを与えてしまう。また,マップ内に配置された建築物"Obelisk"は,自軍からFlag(旗)を持っていくことで防衛施設として利用できる。Obeliskは接近した敵対チームに強力な稲妻を発するため心強いが,逆に奪われてしまうと厄介な存在となる。
 PriestとObeliskという2要素に,どれだけの戦力を配分するかが本モードの最大のポイントだ。例えば正面から敵対チームとぶつかり合うのと同時に,別働隊を派遣してObeliskを獲得したり,Priestを暗殺したりといった戦術は効果的である。ただし全体としての戦力は限られているため,別働隊に力を割きすぎてしまうと,今度は本隊が押し切られてしまう。


【Capture the Relic】

 FPSにおける"Capture the Flag"に似たゲームルール。マップ内に置かれた"Relic"を拾い上げ,自陣へ持ち帰るとポイントが獲得され,10分という制限時間内により多くのポイントを獲得したチームが勝者となる。
 Relicを運んでいるキャラクターは非常に目立ち,敵から一目でそれと分かる。移動速度も減退するため,格好の標的となってしまうのだ。そのため周囲のサポートが必須であり,どのタイミングでRelicを持ち帰るかが勝敗の鍵を握っている。


【King of the Hill】

 "Dais"と呼ばれる地点の占拠を目的としたゲームルール。Daisを占拠しているチームは,2分ごとにMorale Boostを獲得する。ただし,占拠に当たってはGhostly Heroが特殊スキルを使用せねばならず,これの発動までに5秒程度の無防備な時間が生じてしまう。敵対チームからすれば,この瞬間こそGhostly Hero討伐の絶好のチャンスというわけだ。そのため味方陣営は,Daisを攻略するGhostly Heroを,全力をもって護衛しなければならない。
 この勝利条件は,ときにトリッキーに働く。どんなにMorale Boostを高めていても,制限時間が終了した瞬間にDaisを占拠していたチームが無条件に勝者となる。つまり最後で大逆転という展開が,常にあり得るのである。必然的に終盤におけるDais近辺では,全チームが入り乱れての凄まじい攻防が繰り広げられるのだ。


中央の光り輝く戦士がGhostly Hero。勝利条件によって役割は微妙に異なるものの,Morale Boostなどに多大な影響を及ぼす Obeliskに旗を立て,防御施設としての利用に成功。画面のレーダーでは東西方向に敵が見えるが,ここを拠点にすれば有利に戦える マップ中に登場する各種オブジェクトの利用法が鍵を握る。画面の"Ressurection Orb"は,地面に落とすと周囲の味方を蘇生できる
写真では少々見づらいが,水色のチームが黄色のチームを撃退したところ。ただし,多くの場合復活手段も用意されている Tournamentではゲームルールのみならず,用意されるマップも複数ある。入り組んだ地形では,侵攻ルートの把握に骨が折れる Professionやスキルの活用だけでなく,あらゆる条件を利用して勝利を目指すGuild WarsのTournamentは,とにかくアツい
そして最終目標は

一見通常の冒険エリアかと思いきや,実はGuild Hallである。Guild Battle時は,実際にここへ敵対チームが攻めてくるというストーリーだ

 Tournamentのコンセプトは,多数のチームが頂点を目指して競い合うことにある。では,Tournamentを制すると,いったい何が起こるのだろうか? 実は、Tournamentの連戦を勝ち抜いて優勝したチームは,副賞として"Sigil"という秘宝を手に入れる。そしてこのSigilを用いることで,「Guild Hall」を建設できるようになるのだ。Guild Hallはプライベートエリアとしてマップ中に登場し,Guildの参加メンバーであれば自由に往来が可能だ。しかも実際に歩き回ってみるとかなり広く,ちょっとした城付きの島といえる規模がある。
 Guild Hallがここまで豪華なのにはれっきとした理由がある。最後に紹介する対人戦システム"Guild Battle"は,このGuild Hallを舞台として繰り広げられるのだ。敵対Guildの本拠地へと直接乗り込み,NPCなどもひっくるめた大規模な攻城戦をイメージしてもらうと分かりやすい。つまりArenaやTournamentが極力あっさりした展開なのに対し,Guild Battleはバックグラウンドストーリーの段階からして大きく異なっている。


Guild Hallは実際にマップ中に現れるため,他エリアと同様ワンクリックで移動できる。Guild設立時は自分達の手でSigilを掴み取ることが最初の目標となる Guildの加入者にはエンブレム入りのマントが配給される。これはアカウント単位となっており,PvPキャラクタの作成時も直ちにGuild Battleに参加できる

 それではGuild Battleのゲームルールを整理してみよう。まず規模に関しては,各Guildが8名によるチームを編成したうえで,1チーム vs. 1チームで戦う。勝利条件は一種類のみで,敵対陣営の最深部で待ちかまえる「Guild Lord」(先述のGhostly Heroと似たような役回りのNPC)を倒した側が勝者となる。
 また,Guild Battleは攻城戦をコンセプトとしているため,マップ中には城門や投石機等といった施設も配置されており,これらの活用が鍵を握っている。中でも重要なのは,両陣営の中央に置かれた監視塔で,ここを確保すると一定時間ごとにMorale Boostを得られるのだ。城の防衛施設は強力なものの,中に閉じこもってばかりいては,Morale Boostを奪われて続けてしまうわけである。


Guild Battleの勝敗に応じて変動するレーティングは,参加者のモチベーションを大いに高めている。直接の戦闘以外の環境面も,すこぶる充実した印象だ Guild Battleは,本拠地に直接敵対チームが攻め込んでくるという内容。慣れ親しんだエリアで防戦を繰り広げられるため,すんなり感情移入できる 城門を閉めることで敵対チームの侵攻を一時的に防ぐことができる。しかしそれもしょせんは一時しのぎ。シーフのNPCによってこじ開けられてしまうのだ

単独行動をとって監視塔へ旗を届けている最中。画面右上のレーダーに注意しながら,スキルを駆使して迅速にかつ確実にMorale Boostを高めていく

 Guild Battleの勝敗結果に応じてレーティングが増減するランキング機能もゲーム内に用意されている。格上のGuild相手に勝利すればより多くのレーティングが上昇し,逆に格下に負けると一気に下がるため,どのような場合でも気は抜けない。このように,戦闘以外の環境面も含めてArenaやTournamentとはだいぶ異なることが分かるだろう。

 だが,Guild Battleがほかの対人戦モードと一番違うのは,同じGuildのメンバーとチームを組み続ける点にある。それによってTournamentなどの即席チームでは決して成し得ない,阿吽の呼吸とも言える絶妙のコンビネーションが培われるのだ。連載最終回となる次回は,このGuild Battleの醍醐味と,筆者から見たGuild Warsというタイトルの総合評価をお伝えしていこう。


Guild Battleにおける仲間との連携の比重はTournamentを大きく上回る。対人戦が好きな人にとって,これほどやりがいのある対人戦闘は少ないだろう 画面中央にいるのが総大将のGuild Lord。このユニットが倒されると負けとなってしまうため,味方プレイヤーは全力を尽くして護衛しなければならない 奮闘するも及ばず,Guild Lordが倒されて敗退してしまう……。しかし同じ仲間と一緒にプレイするため,この敗北も次の勝利への糧,戦訓となるのだ

■■川崎 政一郎(ライター)■■
主にRPGやRTS系の攻略記事を得意とする,フリーライター兼記者。今回の掲載用画像の加工で,かつてない量のモザイク処理を行ったという川崎氏。記事の性格上仕方ないとはいえ,あまりにもモザイク箇所が多いため,しまいには対人戦の臨場感が損なわれないか心配になったとのこと。「「目伏せ」は入れなくていいの?」と追い討ちをかけてみたところ「まあ,殺し殺されっすから」と,ふっきれたやさぐれ者の貫禄が。Guild Wars内で氏が何に開眼したのか,「唐獅子牡丹」でも聴きながら考えてみよう。
タイトル ギルド ウォーズ
開発元 ArenaNet 発売元 エヌ・シー・ジャパン
発売日 2006/01/27 価格 オープンプライス(パッケージ版) / 月額課金料金980円
 
動作環境 Windows 98/Me/2000/XP,PentiumIII/800MHz以上(PentiumIII/1.0GHz以上推奨),メモリ 256MB以上(512MB以上推奨),HDD空き容量 500MB以上,VRAM 32MB以上(64MB以上推奨)

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