― 連載 ―

The Elder Scrolls IV: Oblivion

連載第x回 サブタイトル

前回までのあらすじ

「The Elder Scrolls IV: Oblivion」というゲームのポテンシャルから考えるに,単に行き当たりばったりのプレイを続けて,それをそのまんま書くだけで,きっと面白いことになるんじゃないかと思って始めたのが,当連載だ。それが成功したかどうかの判断は読者のみなさんにお任せするとして,ともあれこれまで当連載の主人公ミッシェルは,獄中からの脱出(第1回),皇帝の死(第2回),異世界での死闘(第3回),最後の王子の発見(第4回),4Gamer編集部とのバトル(第5回),盗賊ギルドでの活躍(第6回,第7回),ダンジョン探索(第8回,第9回),暗殺者ギルドへの加入(第10回)を経て,前回(第11回)なんとバンパイアになってしまった。そして今回が最終回。吸血鬼ミッシェルは,どこへ行くのだろうか……。

正しいバンパイア症とのつきあい方

 ミッシェルはバンパイアになった。体の状態を確認してみると,確かに聞いていたとおり能力値が全体的にアップしており,さらに通常の武器への耐性などといったボーナスもついている。逆に炎のダメージには弱くなってしまっているようだが,これはうまく立ち回ればなんとかなるレベルだろう。
 バンパイア固有の能力らしき,低コストで唱えられる生命感知&暗視の魔法なんかも使えるようになっている。戦闘能力に関していえば,やはり普通の人間でいるよりも,バンパイアになってしまったほうがおトクみたいだ。

 

 それではバンパイアになった感触をいろいろと試してみようと,街を歩いたり,ダンジョンに行って戦ったりなど,しばらくさまざまな活動をしてみた。そうこうするうちに,バンパイアに関することがいろいろと分かってきた。Oblivionのバンパイア症は,なかなか面白い仕組みを持っているのである。
 まず,バンパイア症には四つの段階が存在する。バンパイアは数日経過するごとに,第二段階のバンパイア,第三段階のバンパイアという具合に身体が変化していく。段階が進むごとに身体能力は上昇し,スキルなどへのボーナスも増加していく。対象を魅了したり,自分の姿を消したりといった特殊能力も,段階が進むたびに増えていく。最終段階である第四段階バンパイアで,肉体的なパワーアップはピークに達する。

 

 しかし,バンパイア化が進行することにはデメリットもある。まず症状が進むたびに,炎に対する耐性は減少する。でもこれはあまり深刻ではない。無視して構わないレベルだ。
 次に,症状が第二段階に達したバンパイアは,太陽の光からダメージを受けるようになる(サンダメージ)。これも当然,段階が進むごとに受けるダメージ量が多くなっていく。これはかなり手痛いペナルティだ。なにせ,日中に外で突っ立っているだけで,死んでしまうのである。野外で夜から昼にかけてRest(時間を進める)すると,午前6時を少し過ぎたところでいきなり悲鳴が聞こえて,ロード画面から通常画面へと戻り,自分の死体が現れるといった具合だ。
 しかしFast Travel機能の使用については,トラベル開始時が夜間でさえあれば,どんなに遠い目的地にでも問題なく到着するようだった。ただ到着時が日中だった場合,すぐにどこか屋根のある場所に入らないと死んでしまうので,飛び先の選択には少し気をつける必要がある。

 

 もう一つ,バンパイア化の大きなデメリットがある。段階が進むとNPCがまともに会話をしてくれなくなる,というものだ。「近づかないでくれ!」など言われるだけで,相手にしてもらえないのである。
 実験してみたところ,第三段階までなら,だいたい会話に応じてくれるようなのだが,第四段階バンパイアになってしまうと,一般人とのコミュニケーションはほぼ不可能なようだった。ただし,ミッシェルの加入している暗殺者ギルドと盗賊ギルドの関係者は,こちらが第四段階のバンパイアであっても,問題なく会話してくれた。盗賊ギルドに紹介された盗品買い取り人はこちらを怖がって取り引きしてくれなかったが,暗殺者ギルドのアジトにいるベンダーは第四段階でも取り引きOKだ。

 

 さて,そしてバンパイアといえば,吸血だ。寝ている人間の血をこっそり吸えるわけだが,これを行うとその場でバンパイア症状が第一段階まで戻る。どの段階からでも一気に戻る。もちろん,能力値/スキルの補正や特殊能力も第一段階のものまで下がる。
 眠っている人間のところまで行くには,扉の鍵を破ったり家屋にスニークで忍び込んだりしなければならないわけだが,これはステルスタイプのキャラクターであるミッシェルにとっては造作もないことだ。

 

 冒険を続けるにあたって,戦力のことだけを考えた場合は,第四段階バンパイアのままでいたほうがよい。ただ,そのままでは買い物がなかなかできないのがつらい。矢とソウルジェム,鍵開け用のロックピックといった消耗品は,しばしば購入する必要があるのだ。それと武器防具の修理。通常の装備の修理はミッシェルにもできるが,マジックアイテムの修理は(修理スキルのレベルが低いので)専門店に頼る必要がある。また,現在の収入は,主に盗賊などから奪い取った装備を売却することで得ているので,できればこれらを手軽に売り飛ばせる環境を保っておきたい。
 そのためにもNPCとはコミュニケートできるべきであり,そうなるとずっと第四段階バンパイアでいるわけにはいかない。それに,そもそも大抵の店は昼間しかやってないのである。

 

 ここで「第四段階からそれ以前の段階まで戻るには,いろいろと手間がかかる」というような仕組みだった場合は,なるべく段階が進まないように吸血のスケジュールを工夫する必要があるだろう。しかし実際には,第四段階から第一段階まで症状を緩和するには,吸血一発だけでOKなようだ。そして第一段階であればバンパイアなのに日中も行動できるし,NPCとの取り引きもほぼ問題ない。
 ……うーむ。はっきり言って,バンパイア生活は想像していたよりもラクだ。もっとこう,越えてはならない一線を越えてしまった苦労があるものだとばかり思っていたが,チューっと血を吸えばもうほぼ普通の人。行動する時間に制約があるのも慣れてしまえばどうってことないし,夜を待ってレストする機会はかなり増えると思うが,そこはほら,こっちはバンパイアでもう永遠といえるほど長〜い寿命を持っているわけで,時間を半日無駄にするぐらいなんでもない。
 あとはそうだな,野外の探索はやりづらくなるだろうが,それもやはりできなくなるわけではない。

 

 いろいろとトホホなことが起こるのではないかという予想していたが,実際には,今のところ「バンパイアって,なかなか悪くないかも! (*^^*)v ブイッ」というのが正直な感想だ。唯一ひっかかるのは……外見の変化である。バンパイア症状が進行すると,病的にやせ細ってしまうのだ。
 メニュー画面を開くたびに,あの可憐だったミッシェルが骸骨のようになってしまっている姿を見なくてはならない。これに耐えていけるのか,どうなのか。もし耐えきれなかった場合は,バンパイア症を治療する方法を探す旅をすることなるのだろう。

幕間:星原氏の独白

 今回でこの連載は終了である。どのように終わらせるかについては大いに悩んだ。4Gamer編集部とも相談して,いくつかアイデアも出た。

  • 編集部からの無理な注文に筆者が“怒って”,「やめてやる!」
  • ミッシェルの暴走に編集部側がキレて「こんな連載打ち切りだ!」
  • バンパイアになって,”しょんぼり”……もとい,寂しく終わる
  • 最後の最後で捕まって,牢屋の中でまさに“もうおしまいだ”となる

 突然やめたり打ち切りだったりするのは,確かにこれまでの流れに合っている気もするし,やりやすそうでもある。「おれ達の戦いはこれからだ!」みたいなやつならば,お話に区切りがついていなくて許される,というか,むしろ区切りがついていない状態で終わったほうが“作法どおり”といえるかもしれない。
 ただ作法どおりであるだけに,「ああ,やっぱりね」という雰囲気にもきっとなるんだろう。それに先週うっかり「次週で終わりです」って書いちゃったので,唐突感も今となってはイマイチである。
 バンパイアは,やってみればそれほど寂しいものでもなかった。捕まったとしても,この世界の牢屋はペナルティさえ受ければ,割とすんなり出ることができる……。

 

 考慮の末,以下のようにすることに決めた。

ミッシェル・フォーエバー

 バンパイアパワーを自分でマネージメントするすべを学んだミッシェルは,力試しも兼ねて,ダンジョン攻略を再開した。
 戦っていて力が上がっていると最も実感できたのは,スニーク関連の能力である。もともと得意だったところにバンパイアのボーナスが加わって,さらに強力になった。これまでは一度か二度スニークショットを撃てば,確実に敵にこちらの場所がバレていたのだが,最近はキチンと暗がりに隠れていれば,三度四度と矢を撃ち込んでも気づかれなくなったのだ。
 気づかれていない状態が維持できていれば,スニークによるボーナスは何度でも適用されるので,遠距離から弓だけでミノタウロスを倒すようなことも可能になった。さらに驚いたことに,条件がうまく重なれば,背後から剣を使ったスニークアタックをしても,敵に気づかれないパターンも増えてきた。こっちのことが見えないらしい。6倍ダメージを連続で入れられれば,ほとんどの敵は倒れる。そしてこちらはダメージ0なのだから,これはちょっとスゴい。

 

 

 レベルが20を超えると,盗賊や追い剥ぎといった敵NPCの落とす防具も,高く売れるものになってきた。おかげで,たびたびそれらを売って稼いだ金が,ある程度まとまった額になっている。
 引退を間近に控えてバンパイアとなったミッシェルのシワの入った顔は,まるでおばあさんのようにも見える。そろそろ疲れたかと聞けば「あたしは疲れてなんかいないわ。それにあたしは超ギャルだわ」と答えが返ってくる気がするが,どうだろう,彼女にはいろいろと苦労させてきたはずだ。多少蓄えもあることだし,ここらで家を買ってあげても,罰は当たらないだろう。

 

 調べてみたところ,いまの手持ちでは,それほどよい家は買えないことが分かった。考えた末,レヤウィン(Leyawiin)の一軒家を購入することにした。あまり立派ではないが,世界を救うプロットをホッポリだして,物を盗んだり人を殺したりしてきた結果が,今はこのあたりだということなのだろう。
 それでも各種調度品を揃えていけば,それなりにはなりそうである。スパイでありレイダーでありアイドルですらあるミッシェルとしてはまだ暴れ足りないかもしれないが,ひと息つける場所を与えられて,まぁちょっとだけホッとしているように見えてきたり見えてこなかったり。

 

 

 そんなわけでミッシェルは今,暗殺者装束はひとまず脱いで,ゆったりしたローブなぞを着て,自宅で隠居状態にある。
 冒険を再開するかどうかは分からないが,今の彼女は寿命で死ぬということがない身体なのだから,あせって何かをする必要もなさそうだ。次にお呼びがかかるまで,ゆっくりと休んでいてほしい。前作「Morrowind」がそうだったように,拡張パックがリリースされるようなことだってあるかもしれないしね。

 

 

今週のお姿

最終的な肩書き一覧。最後に家を買うために,レヤウィンの伯爵の好感度を上げようと,もらったクエストを進めたら,街の騎士団のナイトの称号をうっかりもらってしまった。最後の最後で,またワルっぽさが減じてしまうことに。さらに敵からは,今までさんざん欲しがっていた高性能な剣が出た。もっと早く出てほしかった。なんでこうなんだ。

 

■■星原昭典/ライター■■
この著者紹介欄は廃止すべきだ派(?)の星原氏は,内輪ネタ的なことはあまり好きではないという。ましてや自分自身のことをネタにするのは本気で嫌いなんだとか。そのため,星原氏自身や4Gamer編集者までが登場するこの連載の流れにも,かなり苦労した模様。しかしこの流れは,星原氏が生み出したキャラクター“ミッシェル”とOblivionが化学反応を起こすことで,自然に生じたものである。その流れに逆らわず連載をやり遂げた星原氏に,ひとまずは拍手を送っておこう。編集部としては,星原氏がまたもや本気で逃げ出したくなるような企画をいろいろと考えているので,同氏のファンはお楽しみに。
タイトル The Elder Scrolls IV: Oblivion
開発元 Bethesda Softworks(ZeniMax Media) 発売元 2K Games(Take-Two Interactive Software)
発売日 2006/03/20 価格 49.99ドル
 
動作環境 OS:Windows XP(+DirectX 9.0c以上),CPU:Pentium 4/2GHz以上[Pentium 4/3GHz以上推奨],メインメモリ:512MB以上[1GB以上推奨],グラフィックスチップ:GeForce FXまたはRadeon 9000以上[GeForce 6800またはRadeon X800以上推奨],グラフィックスメモリ:128MB以上,HDD空き容量:4.6GB以上

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(C)2006 2K Games.


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http://www.4gamer.net/weekly/es4_oblivion/012/es4_oblivion_012.shtml