ミッシェルはバンパイアになった。体の状態を確認してみると,確かに聞いていたとおり能力値が全体的にアップしており,さらに通常の武器への耐性などといったボーナスもついている。逆に炎のダメージには弱くなってしまっているようだが,これはうまく立ち回ればなんとかなるレベルだろう。
バンパイア固有の能力らしき,低コストで唱えられる生命感知&暗視の魔法なんかも使えるようになっている。戦闘能力に関していえば,やはり普通の人間でいるよりも,バンパイアになってしまったほうがおトクみたいだ。
それではバンパイアになった感触をいろいろと試してみようと,街を歩いたり,ダンジョンに行って戦ったりなど,しばらくさまざまな活動をしてみた。そうこうするうちに,バンパイアに関することがいろいろと分かってきた。Oblivionのバンパイア症は,なかなか面白い仕組みを持っているのである。
まず,バンパイア症には四つの段階が存在する。バンパイアは数日経過するごとに,第二段階のバンパイア,第三段階のバンパイアという具合に身体が変化していく。段階が進むごとに身体能力は上昇し,スキルなどへのボーナスも増加していく。対象を魅了したり,自分の姿を消したりといった特殊能力も,段階が進むたびに増えていく。最終段階である第四段階バンパイアで,肉体的なパワーアップはピークに達する。
しかし,バンパイア化が進行することにはデメリットもある。まず症状が進むたびに,炎に対する耐性は減少する。でもこれはあまり深刻ではない。無視して構わないレベルだ。
次に,症状が第二段階に達したバンパイアは,太陽の光からダメージを受けるようになる(サンダメージ)。これも当然,段階が進むごとに受けるダメージ量が多くなっていく。これはかなり手痛いペナルティだ。なにせ,日中に外で突っ立っているだけで,死んでしまうのである。野外で夜から昼にかけてRest(時間を進める)すると,午前6時を少し過ぎたところでいきなり悲鳴が聞こえて,ロード画面から通常画面へと戻り,自分の死体が現れるといった具合だ。
しかしFast Travel機能の使用については,トラベル開始時が夜間でさえあれば,どんなに遠い目的地にでも問題なく到着するようだった。ただ到着時が日中だった場合,すぐにどこか屋根のある場所に入らないと死んでしまうので,飛び先の選択には少し気をつける必要がある。
もう一つ,バンパイア化の大きなデメリットがある。段階が進むとNPCがまともに会話をしてくれなくなる,というものだ。「近づかないでくれ!」など言われるだけで,相手にしてもらえないのである。
実験してみたところ,第三段階までなら,だいたい会話に応じてくれるようなのだが,第四段階バンパイアになってしまうと,一般人とのコミュニケーションはほぼ不可能なようだった。ただし,ミッシェルの加入している暗殺者ギルドと盗賊ギルドの関係者は,こちらが第四段階のバンパイアであっても,問題なく会話してくれた。盗賊ギルドに紹介された盗品買い取り人はこちらを怖がって取り引きしてくれなかったが,暗殺者ギルドのアジトにいるベンダーは第四段階でも取り引きOKだ。
さて,そしてバンパイアといえば,吸血だ。寝ている人間の血をこっそり吸えるわけだが,これを行うとその場でバンパイア症状が第一段階まで戻る。どの段階からでも一気に戻る。もちろん,能力値/スキルの補正や特殊能力も第一段階のものまで下がる。
眠っている人間のところまで行くには,扉の鍵を破ったり家屋にスニークで忍び込んだりしなければならないわけだが,これはステルスタイプのキャラクターであるミッシェルにとっては造作もないことだ。
冒険を続けるにあたって,戦力のことだけを考えた場合は,第四段階バンパイアのままでいたほうがよい。ただ,そのままでは買い物がなかなかできないのがつらい。矢とソウルジェム,鍵開け用のロックピックといった消耗品は,しばしば購入する必要があるのだ。それと武器防具の修理。通常の装備の修理はミッシェルにもできるが,マジックアイテムの修理は(修理スキルのレベルが低いので)専門店に頼る必要がある。また,現在の収入は,主に盗賊などから奪い取った装備を売却することで得ているので,できればこれらを手軽に売り飛ばせる環境を保っておきたい。
そのためにもNPCとはコミュニケートできるべきであり,そうなるとずっと第四段階バンパイアでいるわけにはいかない。それに,そもそも大抵の店は昼間しかやってないのである。
ここで「第四段階からそれ以前の段階まで戻るには,いろいろと手間がかかる」というような仕組みだった場合は,なるべく段階が進まないように吸血のスケジュールを工夫する必要があるだろう。しかし実際には,第四段階から第一段階まで症状を緩和するには,吸血一発だけでOKなようだ。そして第一段階であればバンパイアなのに日中も行動できるし,NPCとの取り引きもほぼ問題ない。
……うーむ。はっきり言って,バンパイア生活は想像していたよりもラクだ。もっとこう,越えてはならない一線を越えてしまった苦労があるものだとばかり思っていたが,チューっと血を吸えばもうほぼ普通の人。行動する時間に制約があるのも慣れてしまえばどうってことないし,夜を待ってレストする機会はかなり増えると思うが,そこはほら,こっちはバンパイアでもう永遠といえるほど長〜い寿命を持っているわけで,時間を半日無駄にするぐらいなんでもない。
あとはそうだな,野外の探索はやりづらくなるだろうが,それもやはりできなくなるわけではない。
いろいろとトホホなことが起こるのではないかという予想していたが,実際には,今のところ「バンパイアって,なかなか悪くないかも! (*^^*)v ブイッ」というのが正直な感想だ。唯一ひっかかるのは……外見の変化である。バンパイア症状が進行すると,病的にやせ細ってしまうのだ。
メニュー画面を開くたびに,あの可憐だったミッシェルが骸骨のようになってしまっている姿を見なくてはならない。これに耐えていけるのか,どうなのか。もし耐えきれなかった場合は,バンパイア症を治療する方法を探す旅をすることなるのだろう。