家出の2文字が頭をよぎったものの,お金も行き先もないEmmaは途方にくれていた。そろそろボーダーの町も日が暮れる
とはいえ,狭いボーダーの街中では行くアテもなく,思わず「ボールシップ」の駅まできて「このまま逃げてしまおうか,カルガレオンに」と考えたものの,切符は高くて買えないし,まだか弱い赤子を連れての長旅は禁物だ(いや,連れ出せないんだけど)。ぼんやりと駅前でたたずむEmmaの肩に,やがて温かい手がそっと置かれた。
「Emma,僕が間違っていたよ。母さんとは話をつけてきた」
「…S君!」
いつも義母の味方ばかりしてきたS君だが,今度ばかりは妻の側に立ってくれたらしい。
「子供がもう少し大きくなったら,家族4人だけで暮らせるように『アリアバート』へ引っ越そう。それまでもう少し,辛抱してくれないか?」
結婚以来,初めて男らしいところを見せてくれた夫に,またもや涙ぐむEmma。考えてみれば,ここのところやたらと泣いてばかりの暮らしだった。さらにニッコリと微笑みながらS君は話し続ける。
「僕達,結婚してからというもの,ボーダーから一歩も出てないだろう? それってゲームとして,どうかと思うんだ。そこで,子供達は1週間ほど母さんに預けて,二人でベルアイルの世界を旅行しよう」
そういえば「子作り」ばかり先走ってしまい,結婚式の後に普通は新婚旅行がくることを,完全に(筆者が)忘れていた。やっと娘にも人並みの新婚生活がやってきたようだ。EmmaとS君の幸せそうなハネムーン写真で,この連載を締めくくりたい。
双子がもう少し大きくなり,アリアバートでの新たな生活が始まるのは,まだ少し先。今しばらくはボーダーの街にいると思われるEmmaとS君夫妻を,もし見かけたときには,ぜひ励ましてあげてほしい(これまでも街中でのご声援,ありがとうございます)。ちなみに当初の計画である,乙女スキルパーフェクトは全然達成できなかったが,今やEmmaは立派な「ウォーリア」の肩書を手に入れ,「乙女」というよりは「たくましい母親」として成長したようだ。