― 連載 ―

ベルアイルな女たち

最終幕 ハネムーンなオンナ

“2枚めの妊婦服”兼“作業着”の「コモンシェフエプロン」。おしゃれとは程遠い実用服を身にまとっているのは,常に用事を言いつけてくる姑のせいだ

 メロドラマも真っ青の展開で,不幸のどん底に叩き落とされた先週のEmmaだが,もちろん今週も不幸は続いていた。あいも変わらず昼間は採掘作業に,ガーリック狩り,花の採集が終われば,今度は豚肉を集めて串焼きにしたり,丸焼きにしたり。姑から言いつけられる用事は,いつまでたっても終わりがみえない有様だ。
 おかげでEmmaは,もう出産を無事済ませたというのに,妊婦服から普段着に着替える余裕すら一向に与えられない。そんなある日の午後……。

 

「Emmaさん,ワタシ午後はちょっとお買い物に出かけるから,赤ちゃんのお世話よろしくね」

 

 出産から10日ぶりに,太陽が出ているうちに我が子を腕に抱けるチャンスがやってきて,大はしゃぎのEmma。ちょっと奮発して,離乳食のほかにケーキやサラダも買い込んじゃったりする姿は,いじらしくて泣けてくる。

 

子供に与える食事は「託児所」でしか購入不可能。たかがケーキで500Gとは,お高め。あまり教育費がかさむと,ベルアイルの世界にも少子化の波が押し寄せないか

育児について教えます

 今回はまず,「結婚はしたけど出産はまだなの」という新妻のために,ここで少し,育児の心構えというものを授けておこう。たかがゲーム内の育児と侮ってはいけない。ベルアイルの世界でも,赤子の世話は心身ともに疲れるものなのだ。

 

 基本的に,子供を連れ出せるのは街中だけ。街の外に出たりログアウトしたりすると,子供は自動的に病院内の「託児所」へ預けられてしまう。Ctrl+Lキーで子供の状態が表示されるのだが,性別や両親の名前と一緒に表示される「機嫌」メーターに,親達は振り回される羽目になるのだ。

 

 コマンド欄に並ぶ「たかい高い」「あやす」「なでる」「ご飯をあげる」のどれかを選ぶと,その結果が「履歴表示」に示される。機嫌が良くなれば「成功」または「大成功」となり,機嫌メーターはぐっと伸びるが,「失敗」「大失敗」なら下がってしまう。
 コマンドに正しい順番や上がりやすさなどはまったくなく,完全に運試し状態といえるのが,子育ての難しさ。成功すれば微笑んでくれる我が子も,ときには何をしても大失敗で泣き叫ばれ,本当にウンザリしてしまう……。

 

STEP1:受け取ったばかりの子供は,「機嫌」メーターがゼロで,泣きじゃくっている状態。ここからは親としての忍耐が問われる

STEP2:成功が続けば笑い声と共に,メーターが少しずつ伸びる。Emmaの娘は「たかい高い」がお気に入りで,他より反応が良かった

STEP3:ウィンドウに表示される赤ん坊の顔も,ようやく笑顔になってきた。しかし1度大失敗するとメーターはゼロになってしまう

STEP4:ゲージが満タンになった瞬間,我が子も最高の笑顔を見せてくれる(所要時間35分)。子供を産んで本当に良かった……

 

 ここまでして両親がご機嫌取りに必死になるのは,「獲得魂片」に理由があるのだ。機嫌メーターがMAXに到達すると,1個の魂片を獲得でき,これは騎乗モンスター,「ナグー」を捕獲するためのスキル習得に必要だったりする(7月18日時点)。なお,これはもらえる数に上限があり,1年で四つまで(乳児期の子供も含む)なのだ。

噂のエレガントウェアに号泣

 初めての育児に戸惑うEmma。泣かせてばかりで,ちっともご機嫌は良くならず,ボーダーの病院前で途方にくれていると……。

 

「あらあらあら,Emmaさんたら。育児に失敗するのは勝手ですが,うちの孫を巻き込まないでくださる? そろそろカルガレオンにお帰りになったらどうかしら」

 

 いつの間にか帰ってきた義母が,刃のような言葉を向ける。

 

「そうそう,いつまでも妊婦服じゃ,うちの体裁がよろしくないと思って,あなたのために新しい服を買ってきたのよ。きっと似合うと思うわ」
「まぁ……お義母さま。わたしウレシイ!」

 

バックパックごと渡された,新しい衣装一式がこちら。エレガントウェアの名前に,ちょっと乙女心を弾ませたのだが,見ての通りこれは“アレ”である

 人としての優しさも持ち合わせていたらしい義母は,自分の体裁を気にしてとはいえ,Emmaのために新しい洋服を揃えてくれたらしい。さっそくいそいそとバックパックから洋服を取り出し,着替えたEmmaは愕然とした。これって,「噂のエレガントウェア」とは名づけられているものの,つまり……メイド服?

 

「まー本当よく似合いますわね,そういう『作業着』が」

 

 義母のあまりの仕打ちに涙するEmma。思わずその手から我が子をもぎとると,後のことも考えずに走り去るのであった。

S君,あなたを選んでよかった

家出の2文字が頭をよぎったものの,お金も行き先もないEmmaは途方にくれていた。そろそろボーダーの町も日が暮れる

 とはいえ,狭いボーダーの街中では行くアテもなく,思わず「ボールシップ」の駅まできて「このまま逃げてしまおうか,カルガレオンに」と考えたものの,切符は高くて買えないし,まだか弱い赤子を連れての長旅は禁物だ(いや,連れ出せないんだけど)。ぼんやりと駅前でたたずむEmmaの肩に,やがて温かい手がそっと置かれた。

 

「Emma,僕が間違っていたよ。母さんとは話をつけてきた」
「…S君!」

 

 いつも義母の味方ばかりしてきたS君だが,今度ばかりは妻の側に立ってくれたらしい。

 

「子供がもう少し大きくなったら,家族4人だけで暮らせるように『アリアバート』へ引っ越そう。それまでもう少し,辛抱してくれないか?」

 

 結婚以来,初めて男らしいところを見せてくれた夫に,またもや涙ぐむEmma。考えてみれば,ここのところやたらと泣いてばかりの暮らしだった。さらにニッコリと微笑みながらS君は話し続ける。

 

「僕達,結婚してからというもの,ボーダーから一歩も出てないだろう? それってゲームとして,どうかと思うんだ。そこで,子供達は1週間ほど母さんに預けて,二人でベルアイルの世界を旅行しよう」

 

 そういえば「子作り」ばかり先走ってしまい,結婚式の後に普通は新婚旅行がくることを,完全に(筆者が)忘れていた。やっと娘にも人並みの新婚生活がやってきたようだ。EmmaとS君の幸せそうなハネムーン写真で,この連載を締めくくりたい。
 双子がもう少し大きくなり,アリアバートでの新たな生活が始まるのは,まだ少し先。今しばらくはボーダーの街にいると思われるEmmaとS君夫妻を,もし見かけたときには,ぜひ励ましてあげてほしい(これまでも街中でのご声援,ありがとうございます)。ちなみに当初の計画である,乙女スキルパーフェクトは全然達成できなかったが,今やEmmaは立派な「ウォーリア」の肩書を手に入れ,「乙女」というよりは「たくましい母親」として成長したようだ。

 

 

 

勝負服:噂のエレガントウェア,ロンググローブ(黒),ハイヒール(黒),教育メガネ

調理:70.2%
裁縫:65.9%
雑貨製作:50.2%

テーマ:エレガントなメイド服

 

 

 

■■麻生ちはや(ライター・独身)■■
「このまま子供達が大きくなって,世代交代できるようになるまで連載やりましょう」と提案したが,却下されてしまった。というわけで,この連載はこれにて終了。子供達の今後の成長記録は,いつか4Gamer上で「特別編」という形で掲載できるのか,みんなの胸の中でいつまでも続いていくのか分からないが,お楽しみに。
タイトル ベルアイル
開発元 ヘッドロック 発売元 VerX
発売日 2006/05/25 価格 基本プレイ無料
 
動作環境 OS:Windows 2000/XP(+DirectX 8.1以上),CPU:Pentium III/800MHz以上[Pentium 4以上推奨],メモリ:256MB以上[1GB以上推奨],グラフィックスチップ:GeForce 4 Ti以上[GeForce FX以上推奨],HDD空き容量:6GB以上

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