― 連載 ―

ベルアイルな女たち

第2幕 ストーカーなオンナ

 連載第1回から,まさかの大失恋という傷を負った娘Emma。今頃カルガレオンの広場で膝を抱えて泣いているのでは……という読者の期待を裏切り,しょっぱなからご覧のとおり,ラブラブモード全開。金色の髪が爽やかな青年と仲良く,ぶらぶらウィンドウショッピングなぞ楽しんでいるではないか。親(と読者)の目の届かないこの1週間に,一体何があったというのか。

 

この1週間で,新たな男子とラブラブ急接近なEmma。果たして,二人の間には何があったのでしょう?
働かざるものモテるべからず

 前回,ダサい衣装のせいで都会育ちの洗練されたコムスメに負けた教訓から,Emmaもようやく成功の鍵は「やはりモテ服にあり!」と学んだ様子。実は衣装うんぬんよりも,キャラメイキングで顔のチョイスを間違えた……と筆者が思っているのはさておき,先週からのEmmaのカルガレオン生活を,ちょっと振り返ってみよう。
 当初は,「フリーマーケットで他人が売っている洋服に頼るなぞ邪道極まりない,乙女スキルで作った洋服で彼の心を射止めてこそ真の愛」と思っていたのだが,やはり魅力的な衣装は難度が高く,裁縫スキル40前後では地味な色のスカートやベレー帽,あるいは無骨な戦闘向きの鎧が限界である。

 

 「このままじゃ,モテ服が完成する前に青年期から壮年期に入っちゃう……」

 

 壮年期になっても結婚は可能だが,やはりミニドレスが似合う年齢のうちに,嫁に行かせてやりたいのが親心。もう乙女のプライドとかいっている場合じゃないので,とりあえずおしゃれ装備を販売している露店を覗いてみた。

 

 

 素材を集める手間だのなんだのを考えれば,妥当な値段なのだろうが,今のEmmaには到底買えないものばかり。つまりモテたかったら,それ相応の自己投資をしてくださいという妙なリアリティ……。ゲームの世界ですらモテ/非モテに対しては,このシビアさ。ましてや現実世界で「おしゃれとかルックスとかじゃなく,ありのままの自分を受け入れてほしい」なんて言ってた日にゃ,モテなんてそれこそ……。あ,話がそれましたか。

 

 他国の状況は分からないが,カルガレオンで手っ取り早く現金収入を得たい場合にオススメなのが「採掘」スキルだ。プレイヤー間での買取価格がNPCよりはるかに高く,おまけに低スキル値で採掘できる「カッパー鉱石」や「みかげ石の原石」でも,常時買い手がいるのがいい。

 

華奢な娘にはキツイ肉体労働。しかしモテるためにはお金が必要というわけで,ガッツンガッツン掘らせます

鉱石や宝石の原石類は,スキル上げも狙って買い取ってくれる人が多いので,下手に加工しないほうが売れる

タッピーがつなぐ恋

 ツルハシを振るっては街に戻る毎日のEmmaが,ふと目に留めた街中のチャット看板。彼女の乙女レーダーが激しく反応したのは,一人の青年が発するメッセージであった。

 

「守りの誓い 生産募集 Wisか名刺ください」

 

 説明が必要ですね。まず「守りの誓い」とは,ステータス値が一定以上になると王宮から依頼がもらえるミッション群「エントランスミッション」の,二番めのミッション。報酬もまぁまぁおいしいのだが,そんなことはポイントではない。重要なのは,一連のミッションには生産系と戦闘系がパーティを組む必要のあるものが二つあり,「守りの誓い」はそのうちの一つ。
 つまり「生産募集」とは,彼は戦闘系で,生産系のパートナーを探しているということ。そして「Wisか名刺ください」は,特定の一人だけに聞こえる「ささやきチャット」(Whisperの略でWisというMMO用語)か,またはベルアイルの機能の一つ「名刺」(フレンド登録申請)を送ってくださいという意味である。

 

 「守りの誓い」は国家が違っても内容はほぼ一緒で,大人気のペット「タッピー」を守るべく,モンスターとの戦闘が待ち受けているミッション。タッピーを死なせると失敗なため(やり直しはきくが),二人の間には相当なドキドキ感が生じる。
 そう,このドキドキ感が,かの有名な心理実験「揺れるつり橋」(編注:男女が揺れるつり橋を一緒に渡ったときに,恐怖心からドキドキするのを,相手にドキドキしてると心理的に勘違いして,恋愛に発展しやすくなる……らしい)につながると筆者は言いたかったわけ。長々とどうでもいいことを説明している間に,精一杯のおしゃれ着に着替えたEmmaは,そっと青年K(仮名)にささやきを送ってみた。

 

 「生産キャラのEmmaです。守りの誓い,一緒にやりませんか?」

 

 前回より,格段におしゃれ度アップしたEmma。なんてったってスカートの下にはニーソックス! おまけに乙女度の高い,赤いフレームのメガネも今回から着用してみた。これでマニアな男子もイチコロ!(普通の男子は?)

 

 こうして青年Kとの冒険が始まった。二人並んで歩いた,カルガレオンと東キャンプへの道のり。お金がない彼のために,なけなしの裁縫スキルで縫ってあげた装備品の数々。タッピーを守るため,生産キャラなのにオークの懐に飛び込んだEmmaの勇気。まぁ全部,計算してやったんですけどね。

 

さすがにオークとの戦闘に備えて,おしゃれ着から本気モードの装備品にチェンジ。すべて自前で揃え,裁縫ができる女の子を彼にアピール

東キャンプのNPCにアイテムを渡すと,いきなり始まる「守りの誓い」ミッション。タッピーが襲われて慌てる二人。ドキドキ度は急上昇!

紙袋いっぱいの幸せをあなたに

 狙いは的中。裁縫スキルの高さ(低いけど)と赤いメガネによる女の子らしさで,K君をすっかりトリコにしたEmma。毎日,夜になるとカルガレオン広場に彼と待ち合わせて,カルガレオンでのデートを重ねる二人……そしていよいよ冒頭に戻ってきました。
 今宵こそ決めたる。そう決意したEmmaは,神殿にK君を呼び出した。この日のために貯金を使い果たして購入した,清楚な黒いワンピースと真っ白のロングブーツ姿を披露したEmmaが,神聖なこの場所で,ついにもじもじと彼に告白を試みかけた,その時。

 

「……」

 

 えっ? 何この紙袋。そういえばK君との冒険の間中,ずっと視界の端にチラチラと映っていたような……。

 

 

 この女,EmmaとK君がミッションのためのパーティを組んだその日から,常に二人の周囲をうかがっていたらしい。ちょっと,なんなのよ! その紙袋脱いで,なんとか言いなさいよ!

 

「……」

 

 うわ,きもっ。こちとら,今まさにK君とリーチ寸前なんだから,ちょっと勘弁してよね。K君もなんとか言ってやって!

 

「ごめん,俺が間違ってた」

 

 ……は?

 

「おまえをもう一度振り向かせたくて,こんなバカなことしてたんだ。もう二度と,おまえのそばから離れないよ」

 

 うっそ〜ん。「バカなこと」って,もしかして私と過ごした,この1週間のことですか? お二人は以前,付き合ってらしたんですか。へぇ,そうなんだ〜。

 

 

 こうして,もとの鞘に収まった二人。一方,この幸せな1週間がどうしても忘れられないEmmaは,その場に落ちていた紙袋をかぶり,ラブラブな二人を温かく見守るのであった……。

 

立ち去る二人の後ろ姿を見送り,立ち尽くすしかないEmma……って,前にも似た光景を目にしたような

わぁ,二人とも幸せそう。この連載いつまで続くのかなあと考えてみたら,なぜか紙袋が涙で濡れてきましたよ?

 

スキル
調理:40%
裁縫:45%
雑貨作成:38%
勝負服:エレガントウェア(黒),メガネ(赤),ロンググローブ(黒),雲のタイブーツ
テーマ:セレブなメガネ娘

 

 

 

■■麻生ちはや(ライター・独身)■■
娘のEmmaについて何か語ってくださいとお願いしてみたところ,「親より先に嫁に行くかと思うと憎いです……」とのこと。さらに「今年は自分の周囲で4人も再婚する」「彼女らの再婚よりは私の初婚のほうが先だと思っていたのに」と,聞いてもいない自分の話をし出す始末。「私が嫁に行けるようなプロフィールを書いてほしい」とのことだが,公私混同は困りますな。
タイトル ベルアイル
開発元 ヘッドロック 発売元 VerX
発売日 2006/05/25 価格 基本プレイ無料
 
動作環境 OS:Windows 2000/XP(+DirectX 8.1以上),CPU:Pentium III/800MHz以上[Pentium 4以上推奨],メモリ:256MB以上[1GB以上推奨],グラフィックスチップ:GeForce 4 Ti以上[GeForce FX以上推奨],HDD空き容量:6GB以上

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http://www.4gamer.net/weekly/belleisle/002/belleisle_002.shtml