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ガイアックス&デジパークインタビュー MMORPG「ストーンエイジ2」は,ただの続編ではない完全新作

Text by TeT Photo by 新井邦彦 

 ガイアックスが2月14日に行った,新オンラインゲームポータルサイト「ムポー」の発表会で,ラインアップの一つとして挙げられていたのが,MMORPG「ストーンエイジ2」(以下,SA2)。
 現在同社が運営中の「ストーンエイジ」(以下,SA)は,1999年にサービスを開始。途中,不幸な中断もあったが,国産のMMORPGとしてはかなり長い歴史を誇るタイトルだ。
 そして今回,その続編にあたるストーンエイジ2が発表されたということになる。本作の開発元は,現在前作のラインセンスを保有するデジパークが担当。今回は,ガイアックスの遊佐氏,デジパークの長田代表取締役,石川氏に,ストーンエイジ2がどのようなゲームになるのかを聞いてみた。

 

「ストーンエイジ2」は完全新作〜ペットの機能を大幅強化〜

4Gamer:

 先ほど発表されたSA2ですが,これはSAに大幅なアップデートを施したものなんでしょうか?

ガイアックス ゲーム事業部 プロデューサー
遊佐孝之氏(以下,遊佐氏):

 いいえ,違います。よくある“バージョン1.5=約2”ではなく,完全な新作として開発を進めています。ゲームシステム,マップ,キャラクター,そしてスキルにいたるまで,あらゆる要素が新しくなっています。

4Gamer:

 ということは,SAとSA2は,別々のゲームとして,並行して運営されるということになるんですか?

遊佐氏:

 これは,デジパークさんからSA2のお話をいただいたときから出ている問題なんです。社内ではSA2のクローズドβテストやオープンβテストの様子を見て判断,というつもりでいます。両タイトルを並行して運営していく形が望ましいと思ってはいます。

4Gamer:

 でもきっと,SAのプレイヤーには,2に移行してほしいところですよね。では,SAのプレイヤーに対して,2の魅力はどんなところになるんでしょうか。

遊佐氏:

 そうですね,それはすごく重要です。ただ,もうとにかく別物のゲームになっているんですよ,2は。そしてとても出来がいいんです。比べてみてくださいって言うのもおかしいぐらい,違うゲームになっています。もちろん,石器時代をモチーフにしている点や,グラフィックスが2Dである点,それから,ゲーム全体に漂うまったりとした雰囲気などは似ていますよ。

デジパーク On Line Biz.Team / Team Manager
石川彰弘氏(以下,石川氏):

 操作性や基本的なインタフェース,コマンドなどは踏襲しています。ですから,1のプレイヤーさんが2を始めた直後にとまどうようなことはないと思うんです。が,すぐに「あれ?」と思うはずです。

4Gamer:

 それは,一体どんなところでですか?

石川氏:

 端的に言ってしまうと,「ペット」ですね。前作では,基本的にプレイヤーキャラクターがいて,そのオプションとしてペットがいるという感じでした。盾であり,ちょっとしたドーピング剤というような。

4Gamer:

 本作のペットは,具体的にどのようなものになっているのでしょうか。

石川氏:

 まず,ペットにはAIが搭載されています。ペットを育成できるのが本作のポイントなのですが,育て方でペットの性格や隠しパラメータがどんどん変化していくんです。だからAIがどういう方向に成長していくかというのも,楽しんでいただけるポイントになっているかと思います。

遊佐氏:

 ペットシステムを採用したゲームは,前作をはじめいくつもありますが,本作ではペットとプレイヤーキャラクターの関係が逆転していると言ってもいいかもしれません。だからきっと,前作を遊んだことのある人は,本作に触れてびっくりすると思うんですよ。その驚きも,我々としては狙っています。

石川氏:

 実際,ゲーム内の世界もペットを中心に動くような形になっています。

4Gamer:

 今回の発表会でも「DENシステム」(一種のハウジングシステム)というものが紹介されていましたが,これもやはりペットのためのものだったりするんでしょうか?

デジパーク 代表取締役
長田妙子氏(長田氏):

 ええ,実は……。簡単に言ってしまうと,ペットを育てる場所ですね。お部屋を大きくしていくと,飼えるペットも増えていくんです。

石川氏:

 多くのMMORPGと同じように,家の中を飾ったり,プレイヤー同士のコミュニケーションの仲立ちをするといったこともできるんです。でも,基本的にはペットを飼う場所,ペットにくつろいでもらう場所ですね。

4Gamer:

 本当にペットが中心になっているんですね。

石川氏:

 そうなんです。すべてにおいて,ペットありきなんですよ。今回は,ペット同士を交配させて,新しいペットを産ませることもできます。例えば,自分のペットをほかの人に貸したり,逆に借りてきたりします。そして二匹のペットを仲良くさせていくと,新しい卵が産まれるんです。その卵からは,両親の資質を受け継いだ,新しいペットが誕生します。

4Gamer:

 なんだかそうなると,プレイヤーキャラクターがいらないんじゃないかなんて思ってしまうんですが。

遊佐氏:

 ゲームシステムは基本的にレベル制ですが,スキルを覚えるのはペットですし……。プレイヤーキャラクターは,ペットを動かすためのツールみたいな感じかもしれませんね(笑)

4Gamer:

 そんなペットですが,何匹ぐらい同時に飼えるのでしょうか。

石川氏:

 連れて歩けるのは5匹までです。これに加えて,DENの大きさにもよるのですが,そこで10〜15種類のペットを同時に飼うことができます。つまり最多で20匹程度ということになりますね。

4Gamer:

 では,全体で何種類ぐらいのペットが用意されているのですか?

石川氏:

 具体的な数はまだ言えませんが,かなり多いですよ。

4Gamer:

 かなり,ということは同時に飼える数を超えますよね。となると,一度に全種類をコンプリートするということはできないんですね。

石川氏:

 そうなりますね。それと,ペットって一度捕まえたものがずっといてくれるというわけではないんです。寿命という要素を持っているので,時期が来れば天寿を全うすることになりますし。その場合は,「転生」という形でお気に入りのペットを復活させることもできるんですけどね。ああ,あと扱い方が悪いと,すねて家出してしまうようなこともあります。

4Gamer:

 なんだか「たまごっち」のような感じですね。そういえば,ペットからメールが届いたりするんですよね。

石川氏:

 ええ,プレイヤーがしばらくゲームにログインしていないと,ペットからプレイヤーのところに「最近来てくれないから寂しい」なんてメールが届くんですよ。通常のEメールで。これは,ゲームをしていない間も,ゲームの世界とつながってもらおうという仕掛けの一つです。

4Gamer:

 そういう仕掛けも,やっぱり“ペットありき”なんですね。

MMORPGというジャンルの中での独自性に,ぜひ触れてほしい

4Gamer:

 SA2は完全な新作になるわけですよね。それならば,例えば雰囲気は残しつつ,MMORPG以外のジャンルにしてみようというような話はなかったのでしょうか。

長田氏:

 SA2を開発するのは,SAがいろいろな方に可愛がっていただけたからなんです。SA自体,開発開始から数えて8年目になりますので,この歴史というものを大切にしたかった。そして,システム側の問題でプレイヤーからの要望に応えられなくなってきたことに対し,何とかしたかった。これが,SA2を開発する動機だったんです。

4Gamer:

 応えられなくなっている要望とは,どのようなものなのでしょう。

長田氏:

 例えばSAは,ゲームマスターとプレイヤーが,ある意味で,一緒にソフトウェアを作っているような形だと思います。でも,それでは満足できない方もいるわけで,SA2ではもっと自由度の高いシステムを用意して,プレイヤーに楽しんでもらえる“施設”のようなものにしていきたいと考えています。それを実現する方法を考えてきた結果,SA2もMMORPGになったと言えるかもしれません。

4Gamer:

 とはいえ,MMORPGというジャンル自体,現在はかなりの数のタイトルがありますよね。そこにまた,あえて打って出るという形になるかと思うのですが,その中でSA2の売りというのはどこにあるのでしょうか。

石川氏:

 やはり,作品全体の雰囲気といったところでしょうか。MMORPGの主流は,バトルがメインになった,ともすれば殺伐としたものだと思うんですよね。もちろん,その楽しみというのは確かにあって,だからこそ多くの人に支持されています。でも,もっとまったりと,ほのぼのと楽しめる作品があまりないな,と。これはSAから一貫して,狙ってきた部分です。

4Gamer:

 つまり,MMORPGというジャンルの中で,SAが持つ独自性を打ち出していくということですよね。

遊佐氏:

 私自身の話をしてしまうと「Diablo」が好きなんですよ。だから思うんですが,Diabloっていうのは,RPGのジャンルの中で一つの代名詞にもなっていますよね。

長田氏:

 SAも,そういうジャンルというか,代名詞の一つになっていけばいいな,と思っています。

4Gamer:

 先ほどからおっしゃっているように,SAは長い歴史を持っていますよね。その間,インフラやマーケットが劇的に変化してきていると思うのですが,ゲームの作り手として,ここは譲れないというポイントはありますか?

長田氏:

 元々ハードウェア的なものも含めたハードルを,できるだけ低く設定しているのがSAです。軽く,ストレスなく,誰にでも簡単な操作で遊んでもらえるようなものとして,やってきました。弊社としては,高いハードウェアスペックを要求するようなものを作るつもりはなく,できるだけ裾野を広く,女性や子供にも安心して遊んでもらえるコンテンツを提供していくという姿勢は一貫しています。もちろん,SA2もその流れです。

4Gamer:

 SAのサービス開始当初と比べて,現在は女性や子供がオンラインゲームに触れるケースも増えていると思います。そのあたりで,プレイヤーの傾向に変化はありますか?

長田氏:

 そうですね,以前はカップルで一緒にゲームを始めて,結局は彼女のほうが一生懸命になっちゃったみたいなことが多かったようです。でも最近では,SAのキャラクターや世界観に興味を持って,自主的に遊んでいるという女性も増えてきたようです。

4Gamer:

 基本プレイが無料のアイテム課金制を採用していることも,女性や子供にとっての遊びやすさにつながっているんでしょうか。カジュアル寄りのゲームで,こういった課金を行っているタイトルも多いですが,無料の部分しか遊ばないという人も多いかと思うのですが。

遊佐氏:

 ええ,実際,SAには子供のプレイヤーがたくさんいます。若年層のプレイヤーが,必ずしも売り上げと直結するか,というとそうではありません。この辺はお分かりいただけるかと。でも彼らは彼らで,ゲームをにぎやかにするという役割を持った,ありがたい存在なんです。だから,アイテムを購入してくれる人だけが,プレイヤーというわけではありません。遊んでくれる人はみんな大歓迎なんです。もちろんSA2も同じスタンスです。

4Gamer:

 じゃあもう,とりあえず無料だからみんなやってみて! 面白かったら続けて! って感じでしょうか。

遊佐氏:

 そうですね,きっと気に入ってもらえるんじゃないかと思います。

“普通じゃない”クローズドβテストを検討中

4Gamer:

 先ほどの発表会で,SA2の開発状況は70%程度とおっしゃっていましたが,初夏に予定されているクローズドβテストの段階では,これは何%ぐらいに引き上げられる予定でしょうか。

長田氏:

 今は目に見えない部分のパラメータ調整や,ペットの表現といったところに取りかかっています。なので,開発状況を数値化するとしたら,なかなか上がりにくいかなと思います。最終的にはガイアックスさんと相談しながら,クローズドβテストの開始時期を決めますので,その段階が85%なのか90%なのか,まあそんな感じですね。

遊佐氏:

 いくつのアップデートを前提とするかで,開発状況のパーセンテージは相当変わってくるんですよね。例えば,ギルドシステムには複数のシステムがさらにぶら下がる形なのですが,それをどの時期でどこまで実装していくかという,細かいことも出てきますからね……。

石川氏:


 SA2のギルドシステムは,ゲームを始めてすぐに組めるものではないんです。ある程度キャラクターなりがレベルアップしてから,楽しめるものです。つまり,ある程度の期間が必要になるわけです。それを最初から実装しても,あまり意味はないのでは? という話もあります。例えば,レベル30の人が増えたら,レベル30で初めて機能する要素を追加するとか,そういうアップデートを考えているんです。

4Gamer:

 確かにオンラインゲームは,パッケージゲームと違って,100%な状態というのはあり得ないですしね。

遊佐氏:

 そうなんですよね。結局,マップはできているけれど,モンスターのデータはどうしよう? 配置はどうしよう? とか,プレイヤーに気に入ってもらえなかった部分を改善しなくちゃ! とか,運営しながらも変わってくると思うんです。

4Gamer:

 では,クローズドβテストの規模はどれぐらいのものを想定しているのでしょうか。

遊佐氏:

 いま,普通じゃないことをいろいろと考えています。ある程度固まったら,あらためて発表させてください。

4Gamer:

 普通じゃない,というと……?

遊佐氏:

 別に今までのオンラインゲームのやり方だけじゃないと思っているんですよ。例えば私は,元々アーケードゲームの出身なので,アーケードのやり方を参考にしたりとかですね。あるいは,ゲームとは異なる市場のやり方を参考にすることもありますしね。

4Gamer:

 それでは最後に,SA2を楽しみにしている人達へのメッセージをお願いします。

石川氏:

 SA2では,SAよりはるかに広大なマップを用意しています。また,シナリオやイベントをGMだけがいじれるのではなく,プレイヤーが触れることで新しいシナリオになっていくような要素も組み込んでいます。極端な話,誰も管理をしていなくても,マップから何からどんどん変わっていくぐらいの仕掛けを用意していますので,同じ場所が次に来たときには違う風景になっていることもあります。
 天気などもイベントとリンクしていたり,天気が変わるトリガーを引くと,特別なイベントが始まったりと,そういうものを世界中に埋め込んでいます。
 プレイヤーがどんどん参加することで,ゲームの世界が変わっていきます。開発側としても,どう変わっていくかを楽しみにしていますので,のんびりと,げらげら笑いながら,ぜひ遊んでください。

長田氏:

 開発/運営側が何かをしようとしたら,パラメータを調整するなどの手段があります。でも,こちら側が何もせずプレイヤーに楽しんでいただくためには,ゲーム内の雰囲気や,ほかのプレイヤーの存在が不可欠です。そのあたりの仕掛けに関しては,これからガイアックスさんにお手伝いいただきながら,作っていきます。やっぱり,プレイヤーあってこそのゲームだと思いますので。

4Gamer:

 ありがとうございました。

 女性や子供といった層をメインターゲットにしているSA2は,ムポーにとって,初の新作MMORPGとなる。裏を返せば,ムポーがどれだけ女性や子供を取り込めるかという点で,このタイトルにかかる期待は大きいだろう。ゲームの詳細については,まだ不明な点も多いが,今後の動きに注目していきたい。

タイトル ストーンエイジ2〜パルコレクション〜
開発元 デジパーク 発売元 ガイアックス
発売日 2006/07/25 価格 基本プレイ料金無料(アイテム課金制)
 
動作環境 対応OS:Windows 2000/XP,Pentium III 500MHz[Pentium 4 1.4GHz以上推奨](+DirectX 9.0c以降),メモリ 256MB「512MB以上推奨],グラフィックスメモリ64MB以上のグラフィックス環境,ISDN 64Kbps以上の回線でインターネットへの接続が可能な環境[ADSL 1.5Mbps以上の回線でインターネットへの接続が可能な環境推奨],HDD空き容量:2GB

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