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「ホムンクルス」はやはりプログラマブルだった! 「ラグナロクオンライン」リヒタルゼンアップデート体験レポート

Text by 麻生ちはや 

 2月21日に発表された,MMORPG「ラグナロクオンライン」の大規模アップデート,「Episode5.0 The Republic of Schwarzwald 〜シュバルツバルド共和国〜」第2弾の実装も,いよいよ目前に迫ってきた。韓国のテストサーバー「サクライ」に登場して以来,多くのプレイヤーが心待ちにしていたであろうアルケミストの新要素「ホムンクルス」が,ようやく実装されるとあって,今回のアップデート内容の注目度はかなり高い。
 そこで今回,3月14日の実装に向けて最終確認中という多忙な時期ながら,ガンホー・オンライン・エンターテイメント社内で,アップデート内容を実際にプレイさせてもらった。もちろん,先述のホムンクルスについてだけではなく,高レベルキャラクター限定のダンジョン「レゲンシュルム研究所」(生体工学研究所)や,シュバルツバルド共和国四つめの都市「リヒタルゼン」についても,歩いてみた実感を交えてお伝えする。

 

実は戦う癒し系ペットだったホムンクルス

リザレクションホムンクルスは,プリーストの「リザレクション」と異なり,詠唱時間の長短は関係ない。消費SPを気にしないのであれば,Lv1で止めてしまってもよいようだ

 まずは,なんといっても最大の注目要素,ホムンクルスの話題からいこう。ホムンクルスの実装に当たって,アルケミストにはいくつかの新スキルが追加されている。ホムンクルスを召喚するためには,前提スキル「生命倫理」と「安息」を覚えなければならない。このうち生命倫理は,クエストを遂行してNPCからもらう習得スキルなので,スキルポイントを消費しない。
 この二つを習得して,ようやくホムンクルスを作り出す「コールホムンクルス」が覚えられるという寸法だ。また,戦闘不能に陥ったホムンクルスを蘇生する「リザレクションホムンクルス」は,ホムンクルス関連スキルの中で唯一スキルレベルが5まで設定されており,レベルを上げるほどに消費SPが少なくなる。
 また,コールホムンクルス使用時に消費する触媒「エンブリオ」の作成も,新しくスキル「ファーマシー」のリストの中に加わっている。作成に必要なのは,

 

  • イグドラシルの露×1
  • 生命の種子×1
  • 飼育ポット×1

 

という,3種類のアイテムだ。

 既報のとおり,ホムンクルスには「リーフ」「フィーリル」「アミストル」「バニルミルト」の4種類がいるが,少々意外なことにコールホムンクルススキル使用時には,この4種類の中から1種類がランダムに召喚される。自分が望んだ種類が出てくるとは限らないのだ。
 ホムンクルスを右クリックして開く「ホムンクルス情報」ウィンドウからは,召喚したホムンクルスを消すこともできるので,好みの種類が出るまで何度も試すことは可能だが,そのたびにエンブリオを消費することになる。なおエンブリオの材料は,錬金術師ギルドで購入できる。

 

エンブリオ生成の成功率は,そのほかのポーション類の作成時と同じで,DEX値とLUK値が低いと失敗が増える 今回最初に召喚できたのは,羊に似ていてほんわかした顔立ちの「アミストル」。Lv1で最大HPが320というのは,ホムンクルスの中では比較的高いほうだ 2度目の挑戦で召喚したのは,回復支援が得意な「リーフ」。餌を与えると座り込んでモグモグと食べるなど,とても愛らしい仕草を見せてくれる

 

 

プレイヤーと一緒に成長するシステム

好戦的(?)な性格のバニルミルト。フィールドにモンスターを見つけると,勝手に攻撃を,しかける強気な子(?)だ

 ホムンクルスはプレイヤーの後をついて歩くだけではなく,共に戦闘に参加してくれる心強い味方だ。種類によって性質が違い,「バニルミルト」と「フィーリル」はいわばアクティブタイプで,敵を見つけると自ら攻撃を,しかけていく。対して「リーフ」と「アミストル」は穏やかな性格なのか,ユーザーが敵を右クリックでターゲットし,指示を与えないと攻撃しない。しかし,プレイヤーが攻撃された場合はホムンクルスも反撃してくれる。
 ただし,ホムンクルスはプレイヤーに準じた扱いになるため,モンスターから先制攻撃を受けることもある。その場合は自動で反撃を開始し,逃げてはくれないため,か弱いリーフあたりでは目を離した隙に戦闘不能になっていたというシチュエーションもありそうだ。なおホムンクルスのHPが減ってしまった場合,アルケミストのスキル「ポーションピッチャー」で回復が可能である。
 ホムンクルスがモンスターを倒すと,経験値が入ってレベルアップしていき,Lv3からはスキルも使えるようになる。ちなみにホムンクルスが単独で敵を倒した場合,プレイヤーキャラクターに経験値は入らない。その意味ではあくまで“共闘”が重要であり,プレイヤーにとっては成長が楽しみな存在となるだろう。

 

アミストルが最初に覚えるスキルは,ホムンクルスと召喚者の位置を瞬時に入れ替える「キャッスリング」。チェスのルールが起源か

 ラグナロクオンラインには,すでに「ペットシステム」が存在するものの,これはプレイヤーキャラクターの後をついてくるだけで,いわば可愛らしいだけのアクセサリであった。それに対してホムンクルスは,アルケミストクラス限定のペットのようなものともいえるが,支援魔法をかけてくれる,経験値を得て成長するなど“戦友”のような存在となり得るのが大きな違いだ。
 今回の体験プレイでほんの10分ほど連れて歩いただけでも,モンスターと戦わせるたびに経験値をチェックして「おぉ,レベルが上がった」などと喜んでしまった。餌を与えれば可愛らしい仕草も見せてくれるなど,これはいわばプレイヤーを手伝いつつ,心を和ませてもくれる“戦う癒し系ペット”である。
 ちなみに,通常のペットとホムンクルスを同時に連れて歩けるか聞いてみたところ,可能とのことだった。そのシチュエーションを思い浮かべると実に楽しみではある。

 

 

ホムンクルスのAIはプログラマブル

 ホムンクルスは,LUAというスクリプト言語で制御されており,プログラムの書き換えはプレイヤー側で可能になっている。
 先述のとおりホムンクルスには,積極的に攻撃をしかけるタイプのものもおり,この場合アルケミストが連れ歩くだけで,他プレイヤーが攻撃中のモンスターに手を出してしまうことにもなる。
 一応「待機」モードが用意されており,これを使う限り勝手に襲いかかることはないのだが,一度別の命令を下したあとには解除されてしまうため,注意が必要だ。

 それゆえか,ホムンクルスの行動パターンをある程度プレイヤー側で設定できるように,スクリプトプログラムが書き換えられるようになっている。ただし書き換えには,スクリプト言語についてある程度の知識が必要なので,誰もが気軽に行えるわけではない。場合によってはホムンクルスが動作しなくなることもあるため,スクリプトの書き換えは,あくまでプレイヤーの自己責任による行為となる。
 まあ,今後おそらく,有志によるパターン別「ホムンクルス用プログラムサンプル」などが,ファンサイトなどで配布されるようになるのではないかと思うが。

 

 

企業都市「リヒタルゼン」を観光してみる

整然とした佇まいの西側地区。レッケンベルを案内してくれたのは,新頭装備「赤いボンネット」を身に着けたハイプリーストだ

 続いて,今回のアップデートにおけるもう一つの目玉要素,シュバルツバルド共和国最大の企業「レッケンベル」によって建設された街「リヒタルゼン」を見ていこう。
 シュバルツバルド共和国の玄関口ジュノーから,さらに国内線の飛空艇で入るこの都市,一定以上の財産と身分を持つ者が住む西側地区と,その資格審査に落ちた人が集まる東の貧民街に分かれているというのは,すでに発表されているとおりだ。
 光と影を持つ街ことリヒタルゼンの様子を,スクリーンショットと共にお届けしよう。

 まずはアップタウンである西側地区。綺麗に舗装された西側地区の中央には,この地区を開発した企業レッケンベルの建物が存在する。建物の内部にはシャンデリアが飾られ,赤いじゅうたんが敷き詰められた階段,石張りの美しい広間など,共和国最大の企業にふさわしい豪華な造りだ。ただし,今回はあくまでテスト環境だったため,残念ながらNPCの姿は一人も見られなかった。

 

首都プロンテラの王宮よりも豪華な造りかもしれない,レッケンベルの建物内部。後述する貧民街との差は明らかだ
リヒタルゼン仕様のカプラさんが2名。ガーターベルトに眼鏡にメイド風衣装というのは,いったい何を狙ったビジュアルなのか こちらは飛行艇の発着場。このあたりはアインブロック比べてもと,さほど外見は変わらない

 

 続いて東側の貧民街を訪れてみる。ここは本来,クエストをこなさなければ入れないエリアだ。それゆえにリヒタルゼンの街中では,テレポートや「ハエの羽」が使用不可となっている。二つのエリアの境界線には「アインブロック」から続く鉄道のレールが敷かれ,そのまま歩いて越えることはできない。
 東側エリアは舗装されておらず,むき出しのパイプがあったり,店先の幌にツギが当たっていたりする。西側とのあまりに大きな差異は,これまでのラグナロクオンラインには見られなかった要素だ。

 

街中でありながら,わざわざクエストを受けさせるには理由があるはず。リヒタルゼンのテーマである,国家と企業の陰謀を解く鍵が隠されているのだろうか?

 

 

新ダンジョンはどちらも高レベルキャラ向け

ジュノーマップから歩いて行ける,ジュピロスの入り口

 さて,今回のアップデートでジュノーに追加された,古代科学ダンジョン「ジュピロス」とリヒタルゼンの「レゲンシュルム研究所」は,どちらもかなりのハイレベルプレイヤーを対象とした新ダンジョンだ。  ジュピロスはかつて高度な文明を持っていながら,それゆえに破滅した古代都市。出現するモンスターは防御力の高いタイプが多く,ナイトやクルセイダー,ダメージディーラーとなれるウィザードなどには活躍の場となるが,ハンターなどにはやや不向きな狩り場かもしれない。モンスターのポップもなかなか激しいので,パーティで挑みたいところ。そしてその場合,どのクラスでも最低Lv80には達していたほうがよいようだ。

 

おもちゃのロボットのようなモンスター「ヴェナート」がダンジョン地下2層から出現する

 

 今回のアップデートで,プレイヤーが最も期待しているであろう新規マップは,おそらくレゲンシュルム研究所だ。モンスター1体あたりの経験値が,既存のどのフィールドよりも高く,Lv90台のキャラクターの育成には最適と思われる。まあそもそも,転生前ならばLv95以上,転生後のキャラクターではLv90以上のレベル制限が設けられている場所なので,当然といえば当然なのだが。

ハイド状態で最下層を見てみる。この上位2次職キャラクターの数を見てほしい。これがすべて敵なのである

 ただし,単に高レベルで高価な防具を身に着けていればおいしい狩り場になるような場所ではないのも,見逃せないポイントだ。レゲンシュルム研究所は,相当なプレイヤースキルを要求されるダンジョンなのである。
 ダンジョンの地下2階層めからは,1次職のプレイヤーキャラクターと同じ姿をしたモンスターが出現する。そして使ってくるスキルも「バッシュ」「メマーナイト」など,プレイヤーキャラクターとまったく同じものなのだ。攻撃要素のみならず,Helpエモーションまで使ってくるのはご愛嬌といったところか。最下層に至っては上位2次職の姿をした者がおり,これまた容赦ない攻撃を加えてくる。

 経験値稼ぎを目的にソロプレイで遊びに行くのはおそらく論外だ。日頃から互いのプレイスタイルを把握している仲間同士,少数精鋭で乗り込んで戦うことをオススメする。
 今回の体験プレイ用に借りたキャラクターは,VIT型かつ,全身に過剰精錬の装備品を身に着けた,いわゆる“硬い”Lv90のロードナイトであったにもかかわらず,最下層に入った瞬間,回復剤を使う間もなく5秒で戦闘不能になってしまった。

 

1階層めに出るモンスター「リムーバー」はさほどの強敵ではなく,Lv90台のキャラクターなら余裕で倒せる。お楽しみは地下2階層め以降ということだ 1次職でもあなどれない攻撃力。あどけない顔立ちのアコライトやマーチャントも襲ってくるので戦わねばならないが,こちらが悪いことをしているような気になる
通常モードで最下層に入った瞬間,この大歓迎っぷり。反撃や回復を考える暇すらなかった

 

 

衛星都市イズルードが交通の拠点に

アルベルタ,バイラン島行きの船があるだけだった静かなイズルードに,ジュノー行きの飛空艇ルートが開通した

 ミッドガルドの首都プロンテラからわずかに1マップ,歩いて行ける距離でありながら,どちらかといえば人が少なく静かな街イズルード。そのイズルードには飛空艇の発着場が追加され,衛星都市らしくなっていた。右上のミニマップを見てもらえば分かるが,街の出入り口付近に飛空艇の乗り場へつながる道が出来ている。飛空艇はジュノーへの直行便。これをきっかけに,イズルードの街に露店などが増えてにぎわうかもしれない。

 

 アルケミストを持つプレイヤーにとって待望のホムンクルス実装をはじめ,ただ高レベルなら何も考えずに攻略できてしまうわけではない新ダンジョン,バックストーリーが気になるリヒタルゼンなど,今回のアップデートは実に充実した内容となっている。
 実際,駆け足で各要素についてテストプレイさせてもらっただけでも,「こんなに可愛らしいならホムンクルスを育ててみたい」「もう一度レゲンシュルム研究所最下層に挑戦したい」などと思ってしまうほど,魅力あるものだ。
 全体として高レベルプレイヤーを対象としてはいるが,新マップ・新ダンジョンでのプレイを目指してキャラクターを育てるといった意味では,新たなプレイ目標にもなる要素が詰まった,今回のアップデート。3月14日の実装を,わくわくしながら待ちたい。

 

タイトル ラグナロクオンライン
開発元 Gravity 発売元 ガンホー・オンライン・エンターテイメント
発売日 2002/12/01 価格 プレイ料金:1500円/月(税込)
 
動作環境 PentiumIII 650MHz以上(PentiumIII 1GHz以上推奨),メモリ256MB(512MB以上推奨),HDD2GB以上,VRAM16MB以上(64MB以上推奨)

(C)2007 Gravity Corp. & Lee Myoungjin(studio DTDS). All Rights Reserved.
(C)2007 GungHo Online Entertainment, Inc. All Rights Reserved.

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http://www.4gamer.net/specials/ro_e5_2/ro_e5_2.shtml