最近「バトルフィールド2」(原題 Battlefield 2。以下,BF2)などのヒットにより,日本でもFPSプレイヤーが増えているそうで,喜ばしい限りだ。「Counter Strike」(以下,CS)がヒットしていないのは日本だけ,などという寂しい状況が,今後変わってくれることを期待している。
ところで,BF2など最近のタイトルからFPSの世界に足を踏み入れたゲーマーの中には,「Quake 4」の何がそんなに注目を集めているのか,また何で騒がれるのか,いまいち理解できないという人もいるに違いない。なぜQuake 4は特別扱いなのか? それはQuakeシリーズが遺した,偉大な歴史があるからなのだ。QuakeをプレイしていないゲーマーはFPSプレイヤーにはあらず……というのは言い過ぎかもしれないが,実はそれくらい凄いゲームなのである。
初代「Quake」がリリースされたのは1996年。Quakeに先立ち,id Softwareには「DOOM」という偉大なFPSのヒット作があり,DOOMより前には,事実上のFPSの元祖ともいえる「Wolfenstein」もリリースされている。したがって,QuakeがFPSの元祖というわけではないが,“現在のFPS”のすべての要素を作り出したのは初代Quakeであった,といっていいと思う。
Quake
当時のゲーマーにとって,Quakeがいかに画期的だったのか。挙げればキリがないが,まず,Quakeは敵キャラを含めた,すべてのオブジェクトに3Dが使用された初めてのゲームである。Quake以前のFPSでは,敵キャラは疑似3D……3D空間を動く2Dの板(今見るとかなり情けないキャラ)だったが,Quakeでは敵キャラまでもが本物の3Dであった。
また,本物の高低差のあるマップを使用したのも,実はQuakeが(おそらく)初めてだ。Quake以前の疑似3Dゲームは,見かけ上の高低差はあったものの,例えば敵が上方にいるように見えてもプレイヤーは上を狙う必要がなかった。というのも初期のマップは,プレイヤーには3Dのように見えるだけで,内部的には2Dとして処理されていたからだ。
DOOMのマップを俯瞰すると,道が3D的に交差している部分が1か所もない。これはマップが,システム内部では2Dとして処理されているためだ。Quakeになって初めて,本物の3Dマップ上で,マウスを使って上下左右の的を狙うという今のFPSのスタイルが完成したのである。
Quake
そして何より画期的だったのが,ネット対戦のサポートだ。Quakeはインターネット対戦をサポートした,初めてのゲームなのである。DOOMも「LAN対戦またはモデム接続の対戦」はサポートしていたが,インターネットを使用した対戦はDOOMではできなかった。ネット上で不特定多数のプレイヤーと戦う今のFPSスタイルを築いたのは,Quakeなのである。
またQuakeでは,多くのMODが開発されたが,その中で「Capture The Flag」(CTF)というMODが誕生した。要はチームに分かれてフラッグを取り合う「旗取り合戦」だが,これが「Return to Castle Wolfenstein: Enemy Territory」や「バトルフィールド」といった,現在のチーム系FPSの元祖である。
要するに初代Quakeは,「フル3D」「ネット対戦」「チーム対戦」という,現在のFPSの基本のすべてを作り出したわけだ。そんなQuakeを作ったジョン・カーマック,そしてゲームとしてのQuakeが「神」と崇められるのも,当然といっていいだろう。
Quake II
その後,「Quake II」(1997年),「Quake III Arena」(2000年)といった続編が誕生する。
Quake IIは当初,初代Quakeとストーリー面でつながりがないことから,一部Quakeファンには不評だったようだ。初代Quakeは海兵隊が悪霊と戦うという,ホラー性の強いストーリーだったが,Quake IIは地球外文明のサイボーグStroggと戦うという,一転してSF風ストーリーに変わった。そのため,「Quakeという名前を引き継いだだけの別のゲーム」と言われたりもしたのだが,個人的には割とQuake IIのシングルプレイが好きで,必死でプレイした記憶がある。すでにご存じの読者も多いと思うが,最新版Quake 4のシングルプレイのストーリーは,このQuake IIの続編という形を取っている。
Quake III Arena
Quake IIのマルチプレイモードは,Quakeに引き続きデスマッチ(DM)や,新たにCTFがサポートされ,またOpenGL完全対応となったことからグラフィックスカードの進化と普及を促進させたゲームとなった。
2000年のQuake III Arenaでは,さらに一転して「戦士達がアリーナで戦う」という,ストーリーはほぼ皆無(取って付けたようなストーリーはあったが)のネット対戦に特化したゲームに作り替えられた。Quake III Arenaは,当時としては美麗な3Dグラフィックと,スピード感溢れるネット対戦が特徴だ。Quake IIとプレイ感が異なるため,当初は酷評するQuakeプレイヤーもいたのだが,結果としてQuake III Arenaが長年にわたり時代を制することになる。とにかくネット対戦ゲームとして,完成度の高さが際立ったゲームといっていい。