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「ギルド ウォーズ Campaign2 戦乱の章」先行体験イベントレポート

Text by 川崎政一郎 

 3月24日から27日までの3日間,「ギルド ウォーズ Campaign2 戦乱の章」(英題 Guild Wars Factions。以下,Campaign2)の先行体験イベントが開催された。これは4月28日のリリースに先駆けてプレイヤーにお披露目すると共に,ゲームバランスをさらに煮詰めるという目的があったようだ。
 このような発売前イベントは,開発元であるArena.netの恒例となっており,実際かなりの盛り上がりを見せているのだ。(前回イベントの記事はこちら

 

 前回の体験イベントでは,Campaign2で新たに導入されるジョブの「アサシン」と「リチュアリスト」が公開されたが,今回ではいよいよメインの舞台となる,「キャンサ大陸」に足を踏み入れることができた。本稿ではキャンサ大陸における,各要素の模様をお伝えしていこう。
 なお今回は急な作業となったため,本稿の執筆作業は筆者が慣れている英語版(Guild Wars Factions)を用いてのレポートとさせてもらった。ただしゲーム内の各種用語については,日本語版「ギルド ウォーズ」のプレイヤーも多数いることから,可能な限り日本語表記に準じた。

「ラクソン」と「カーツ」の2勢力が激しく対立するキャンサ大陸

Campaign2は「Guild Wars」初となる拡張パック。今回のイベントは,全世界が注目する中,発売の1か月も前に無料開放という大盤振る舞いの内容である

 Campaign2の舞台となる「キャンサ」は,Campaign1のティリアよりはるか南に位置する大陸である。ティリア最大の都市“ライオンアーチ”から,船舶でキャンサへと移動できる仕組みだ。実はティリアとキャンサ間の交易は,つい最近まで行われていなかったのだが,これには込み入った事情がある。

 

 というのも,キャンサでは「ラクソン」と「カーツ」という2勢力が,激しく対立しているのだ。この対立は,200年前のキャンサ皇帝の暗殺事件を発端として,現在まで延々と続いている。しかも皇帝暗殺の余波で,キャンサ大陸の気候風土までもが大きく変えられている。両勢力の紛争はもはや完全に修復不可能な段階まで来ており,これがCampaign2のメインテーマの一つになっているのだ。

 

 今回のイベントにおけるRPGモードは,キャンサ大陸北部の都市からスタートとなった。この都市は,ラクソンとカーツを束ねる「キャンサ帝国」の支配下にあるが,何やら外敵が迫りつつあるらしい。そこでプレイヤーはキャンサ帝国の大使となって,ラクソンとカーツの主要人物に会いに行き,両者の協力を仰ぐことが当面の目的となる。

 

 実際にキャンサ帝国の都市に降り立って,まず驚いたのは,その景観であった。見上げるばかりの巨大な東洋風の建築物が,ひしめくように建ち並ぶ様は,まさに圧巻である。そのほか,NPCの衣装なども含めた全体的な印象としては,異世界の新鮮さを感じさせながらも,それでいてギルドウォーズらしいと思えた。オリエンタル要素の導入はCampaign2のポイントの一つだが,これは思いのほかうまくいっている印象だ。

 

 今回は期間限定イベントということもあり,RPGモードのキャラクターは最初からレベルが20で,必要な装備品やスキルなども一通り揃っている状態で用意されていた。それではということで,早速冒険エリアへと出向いてみたが,やはり難度も相応に高い。出現するモンスターのレベルは20〜25が中心で,8人編成のグループでようやく切り抜けられるくらいの難度である。ちなみに今回のイベントで訪れたエリアは,どこもこんな調子で,全体的にRPGモードは上級者向けといえる内容であった。

 

キャンサ大陸の俯瞰図。中央を斜めに横切るように市街地が並んでいるが,これがキャンサ帝国だと思われる。そしてその東にあるのがラクソンとカーツだ キャンサ帝国は見てのとおり,オリエンタル要素がたっぷりの景観。先日Campaign1に登場した勢力“ザイシン”との関わりも気になるところだ 今回のRPGモードでは,冒険時に必要な条件をすべて満たした状態のキャラクターが与えられた。しかもサブジョブの変更まで行えるのだ

 

拠点エリアを出発した途端に,レベル20を超えるような強敵が群れをなして襲いかかってきた。Campaign1のRPGモード終盤程度の難度である

 キャンサ帝国の拠点から東へ進むと,ラクソンの勢力範囲,南はカーツという地理構成となっている。とりあえずラクソンの首都へ進路を取ってみたが,歩いていくにつれ地形が少しずつ変わっていった。そして,なんと海が完全に硬化しており,その上でラクソンの人々が生活を営んでいるではないか。NPC達に話を聞いてみると,ラクソンはかつて海洋民族だったものの,先述した皇帝暗殺時に発生した「ジェイドの大風」によって大陸の地形が変わり,生活の変化を余儀なくされたらしい。

 

 そしてもう一方のカーツはというと,かつては森の民だったものの,同じくジェイドの大風によって街は軒並み石化してしまっている。ラクソンとカーツの景観については,写真をじっくりと見てもらいたい。何ともいえない幻想的な雰囲気に満ちあふれており,その異様な光景には思わずぞくりとしてしまうだろう。

 

一見海のように思えるが,その上を普通に走っているのに注目。場所によっては,まさに津波が押し寄せるという瞬間に硬化してしまっている ラクソンは船で海原を旅することはできなくなったが,硬化したヒスイを掘り出し一大産業に発展させた。それにしても不思議な光景である 海にちなんだ要素が多いのも,ラクソンの特徴。写真の巨大亀は生きており,甲羅の上には住居や,場合によってはバズーカ砲(!)なども

 

カーツ側の区域は,かつては美しい森林だったものの,石となってしまっている。ラクソンの海と同様,これも「ジェイドの大風」による影響だ カーツは神々の予兆や宣教師など,神秘的な要素を重んじる勢力。ラクソンとカーツはあらゆる面において対照的な印象 日中も光がほとんど差し込まず,全体的にどんよりとしている。NPCの応対も,ラクソンが全体的に快活なのに比べ,カーツはどことなく暗い

 

 どちらかの拠点エリアへ辿り着くと,そこからクエストやミッションが多数発生する。これらを通じて,各勢力の中枢へと迫っていくのだが,これがゲームシステム面に取り入れられている点に注目してほしい。両勢力への貢献度が,キャラクターのパラメータとして追加されているのだ。例えばラクソン発のクエストを行うと,「ラクソンの報酬」が増え,これはさまざまな用途に役立つ。

 

 報酬用のパラメータは,キャラクターではなくアカウント単位で共通となっている。そしてユニークなのは,どちらかの勢力に深く関わっているプレイヤーは,その一員とみなされ,さまざまな恩恵を受けられるものの,敵対勢力からは拒絶されてしまうこと。今回のイベントで筆者はラクソンと深く関わってみたが,この状態でカーツの勢力下へ行っても,例えばNPCの商人がアイテムを売ってくれないのだ。これは喩えるならば,「EverQuest II」におけるケイノス,フリーポートの間柄に比較的近い。

 

 どちらの勢力に肩入れするかによって,Campaign2のプレイスタイルはがらりと変わっていくはず。その対立構造がはっきりと具現化されているのが,次に説明する「同盟バトル」である。

 

今回のイベント範囲だけでも,かなりの量のクエストが実装されていた。両勢力の報酬を増やす過程で,次第にキャンサ大陸の謎へと迫っていく キャラクターウィンドウの中に,ラクソンとカーツの報酬用の項目が追加されている。アカウント間で共通なので,どちらの勢力に味方するかが悩ましい 拒絶されたNPCに対しては,勢力システムの理念に則り,殺してしまうことも可能。写真は賄賂で一時的に懐柔し,補助魔法を掛けてもらったところ
12対12による新たなPvPモード「同盟バトル」が登場!

エリア名の最後に支配勢力の名前が書いてある点に注目。同盟バトルは単純なPvPではなく,ラクソンとカーツの生き残りを懸けた戦争である

 Campaign2では,プレイヤーが実際にラクソンまたはカーツの一員となって,敵対勢力と戦いを繰り広げることになる。それが,Campaign2におけるメインコンテンツ「同盟バトル」だ。

 

 本作の対人戦には,これまで「アリーナ」「トーナメント」「ギルドバトル」の3種類あったが,同盟バトルはいずれとも大きく違っている。まず,ほかのモードと決定的に違うのが,同盟バトルの勝敗に応じて,キャンサ大陸における2勢力の領土が刻々と変わっていくこと。広域マップ画面には戦線が直接描かれ,同盟バトルを制した側が,ぐいぐいと押し込んでいくというわけだ。

 

 キャンサ大陸には多数の拠点エリアがあり,その支配権は,戦線の移動によってラクソンとカーツの間を揺れ動くことになる。そして支配側の勢力に属しているプレイヤーは,各エリアのさまざまな要素を利用できるようになるのだ。例えば高性能な武具を販売するNPCショップ,クエストやミッション,さらにはレアアイテムを得られる特別エリアなどがある。

 

 同盟バトルに参加したくなったら,ラクソンまたはカーツの首都エリアにいるNPCに,戦場用マップへ転送してもらう。試合人数は12名同士と,かつてない大規模戦である。とはいえグループの編成は思いのほか手軽で,最初に必要なプレイヤーは最少で1名,最大でも4名だけで構わない。すなわち,複数の4名グループが試合開始時にランダムで組み合わされ,合計12名のチームが出来上がるという寸法だ。

 

 同盟バトルの試合ルールだが,わかりやすくいうと陣取り合戦である。マップ中には7か所の戦略拠点があって,この上にキャラクターが乗るとゲージが溜まり,満タンになった時点で制圧となる(5〜10秒前後を要する)。そして現在制圧している戦略拠点の数に応じて,一定時間ごとにポイントが加算され,これが先に500ポイントに達した側が勝利となる。また戦略地点の制圧以外に,敵対プレイヤーを直接倒すことでもポイントは加算される。

 

 戦略拠点を支配することで,戦闘中いろいろな恩恵を得られる。例えばNPCキャラクターが助太刀してくれたり,復活用のオーブや被ダメージを一定量吸収してくれる防御壁があったり,さらには強力なドラゴンを召喚できるタイプの拠点もある。いかにこれらのメリットを活用し,敵に戦略拠点を奪われないようにするかが,同盟バトルの大きなポイントだ。

 

同盟バトルを開始する直前の場面だが,メンバーの数を見てほしい。12名vs.12名という,かつてない大規模戦が繰り広げられる 円形の戦略拠点の上に乗ると,左上のゲージが溜まっていく。乗るメンバーの数が多いほど,ゲージの進みは速い 同盟バトルでは,戦場を大局的な視点で見ることが何よりも重要。Uキーのマップとレーダーの併用は基本テクニックだ

 

戦略拠点の数が多いことから,分隊の重要性が増している。場合によっては,たった1〜2名でもゲリラ戦術でチームに大きく貢献できるのが面白い

 何はともあれ,実際に何度か同盟バトルに挑戦してみた。最初こそ12名というかつてない規模に戸惑ったが,マップ全体の戦局を意識するようになると,みるみるうちに面白くなってきた。例えばUキーを押して見られるマップには,七つの戦略拠点が,現在どちら側に制圧されているかが記されている。それとミニレーダーに表示される敵兵力を見比べながら,攻め落とせる戦略地点を見極めていくのだ。

 

 戦場となるマップは,ギルドバトル用とほぼ同等の大きさである。その中に七つもの戦略地点が点在しているので,1か所に戦力を集中させていると,残り6か所をすべて奪われかねない。よって12名のチームをある程度の単位で区切り,別々に行動させる必要がある。これはギルドバトルの経験者であれば,現在ポピュラーな戦術である「分隊」をイメージしてもらうと分かりやすい。

 

 あれこれと試してみて,とくにうまくいったのは,最初に編成する4人でジョブ構成を煮詰め,この単位で行動するという戦術。そして手薄な戦略拠点を狙い,大規模な敵を避けるようにゲリラ戦を繰り返すと,面白いようにポイントが増えていく。12人もの味方が混在する同盟バトルでは,テキストチャットよりボイスチャットのほうが意思疎通を図りやすいことも,覚えておいて損はないだろう。

 

さまざまなタイプの戦略拠点があるので,存分に活用しよう。例えば写真の味方NPCは,話しかけたキャラクターに同行してくれる 戦略拠点の恩恵の中で最も派手なのが,このドラゴン。空中から吐き出されるブレスはかなりの威力があり,この場所は最重要ポイントとなる この持ち歩いているアイテムを落とすと,その周囲にいる味方を蘇生できる。たとえモンクがいなくても,戦術によっては互角に渡り合えるだろう

 

 同盟バトルでは参加人数が多いことから,ほかのモードにはないノウハウも求められる。この追求も醍醐味の一つ。例えば戦略地点に固まっている敵に対しては,エレメンタリストの範囲魔法が大いに活躍する。大量の死体が打ち棄てられる性質のため,ネクロマンサーは思う存分にゾンビペットを生み出せる。とはいえ,これらのゾンビ達も,サイクロンアックスといった範囲攻撃には一撃で粉砕されてしまう,というわけだ。3日間のイベント中だけでも,今までの対人戦では想像もつかなかった戦術をいくつも目の当たりにし,プレイ中は驚きと興奮の連続であった。

 

 そのほかの重要点としては,仮に死亡しても短時間で蘇り,デスペナルティもないことが挙げられる。よって蘇生や回復系のスキル,すなわちモンクの比重がやや落ちている。従来の対人戦ではモンクは必須といえる存在だったものの,同盟バトルでは極端な話,アサシンが4名という構成でも分隊活躍を行える。ジョブ構成をある程度自由に行えるのは嬉しいところだ。

 

今回のイベント中でプレイヤー間の人気が高かったのが,延々とゾンビペットを生み出す戦術。対処法を誤ると手が着けられなくなる 両陣営の最深部では,超強力なNPCが復活地点を守っている。このNPCを倒すのは事実上不可能なので,大きな得点差がついてもなかなか終了しなかった どちらかが500ポイントを獲得した時点で試合終了となる。一度の同盟バトルに要する時間は,ギルドバトルとほぼ同じくらいだ
発売まで1か月を切り,Campaign2の全貌が次第に露わになってきた

カーツまたはラクソンに報酬を捧げることで,自分のギルドが所属する「同盟」の貢献度を高められる。同盟のシステムも相当奥が深そう

 同盟バトルやクエストなどで獲得した報酬の用途は,大きく分けて二通りある。一つは,高級素材とトレードして武具を作るといった,いわば自分のキャラクターをパワーアップさせること。もう一つは,報酬を所属勢力に捧げることで,ギルドの貢献度を上げることだ。貢献度の高いギルドは,キャンサ大陸中の拠点エリアを直接支配できるのである。

 

 今回のイベントでは,エリア支配に関する具体的なシステムは確認できなかった。しかし,統治にはかなりの貢献度を必要とするので,それだけに絶対的な権力を得られるはず。しかもラクソン・カーツ間の抗争は全世界で共通となっているので,ほかのタイトルにはないダイナミックなコンテンツとして大いに期待できるだろう。

 

詳細画面を見ると,実在するギルドがこの拠点を統治しているのが分かる。統治しているギルドに,一体どのようなメリットがあるのかも気になる 同盟バトルを実際にプレイした人は,これがCampaign2のメインコンテンツだと確信しただろう。製品版の発売が待ち遠しい 戦線の移動によって同盟バトルの舞台も変わり,戦略拠点などの地形面が微妙に変わってくる。今回はラクソン側が押されていたようであった

 

 同盟バトルのほかにも,今回明らかになったCampaign2の要素がいくつかあるので,駆け足で紹介してこう。まず新ジョブのアサシンとリチュアリストのみならず,全ジョブに合計で数百といった膨大なスキルが導入された。さらにジョブ用のフェイスパターンや髪型,各種武具なども膨大な量が追加され,トータルで考えると,これまでの倍の規模となっている。中でもグラフィックスは素晴らしい出来映えで,賛否両論があった女性モンクなどの新デザインは,大いに歓迎されるだろう。これらの新グラフィックスについては,別記事でスクリーンショット集としてまとめておくので参考にしてほしい。

 

新しいグラフィックスパターンは,オリエンタルテイストがふんだんに盛り込まれている。写真は女性のモンクだが,髪型の種類に注目

 ラクソンとカーツに属したクエストやミッションの中では,まったく新たなタイプもいくつか確認できた。例えば,とある拠点に敵が波状攻撃を仕掛け,それを防衛するクエストや,8名のプレイヤー同士が協力するミッションなど。筆者は今回のイベントの期間中は,つきっきりでプレイしたものの,新要素のすべてを隅々まで体験しきれないほどのボリュームがある。

 

 しかし,今回のイベントでCampaign2の全貌が見えてきたのは,大いなる収穫であった。中でも嬉しかったのは,同盟バトルによって大規模PvPを導入しながらも,ライト層のプレイヤーでも気兼ねなく参加できるという点。参加時の条件はチームアリーナとほぼ同等なので,濃密なバトルを手軽に満喫できる,本作の基本コンセプトからはまったく外れていない。
 総合的な感想としては,今こうして原稿を書いている最中も,「早く製品版で思う存分にプレイしたい!」と,いてもたってもいられなくなるような充実した体験イベントであった。正式サービスは,4月28日に世界同時公開される。まだもう少し時間があるので,期待に胸を膨らませておこう。

 

写真の船は,硬化した海の上を滑るためにラクソンが造り出したものらしい。キャンサ大陸の世界観もかなり作り込まれている 終了直前での一幕。拠点エリアにドラゴンが飛来してくるというイベントだが,プレイヤーはスキルを使えないため,一方的に虐殺されていた 発売前にもかかわらず,ここまで気前の良いイベントを開催してくれるArenaNetに感謝。現在最もプレイヤーに支持されているメーカーの一つだろう

 

 

タイトル ギルド ウォーズ Campaign2 戦乱の章
開発元 ArenaNet 発売元 エヌ・シー・ジャパン
発売日 2006/04/28 価格 オープンプライス(パッケージ版)
 
動作環境 N/A

【この記事へのリンクはこちら】

http://www.4gamer.net/specials/guildwars_c2_02/guildwars_c2_02.shtml