特集 : Game Developers Conference 2007

Game Developers Conference 2007

 

 アメリカ時間の3月5日から9日まで5日間にわたり,ゲーム開発者達による世界最大の会合Game Developers Conference(以下,GDC)がカリフォルニア州サンフランシスコ市の中心部にあるコンベンション施設,モスコーニ・センター(Moscone Center)において開催されている。
 GDCは,「ゲーム開発者によるゲーム開発者のための会合」を謳うInternational Game Developers Association(以下,IGDA)が主催しており,IGDAのメンバーを中心に,1万2000人前後の参加が見込まれている。
 GDCは,ゲーム開発者達が,ゲームデザインやプログラミング,ビジュアルアートからビジネス面に至るまで,開発現場の現状や業界が考えるべき諸問題など,さまざまなテーマについて話し合う場所である。毎年その規模は拡大しており,2007年はレクチャーやパネルディスカッションだけでも400種類にも上るものが用意されている。またGDC 2007では,日本人開発者の存在感が大きくなってきた。任天堂の宮本茂氏の基調講演をはじめ,13公演が日本人開発者によるもので,その数は過去最大になっている。
 ちなみに,GDCがイベントとして肥大化した影響を受けて,運営権はイベントマネージメントでは定評のあるCMP Mediaに完全譲渡されている。さらに,2007年9月5日から7日にかけて,テキサス州オースティン市でAustin Game Developers Conference(AGDC)が開催され,以後GDCは年2回開催体制に移行することも決まっている。なおAGDCは,オンラインゲーム,ゲーム音響,ゲームシナリオに特化した会合となる予定だ。

 

 GDC 2007では,“次世代ゲーム機戦争”とも言われた2006年度の家庭用ゲーム機市場で,シェア争いに奮戦したハードメーカーやソフト開発者達の技術的な話題や体験談が多い。シリアスゲーム(遊ぶこと以外を主目的に制作されたゲーム)の台頭とともに,大学や研究機関からの参加も増えた。また,今年はモバイル市場やインディペンデント系のゲーム開発も大きく注目されているようだ。
 水曜日からオープンするエキスポフロアも2006年の約2倍の大きさとなった。これは,E3(Electronic Entertainment Expo)の規模縮小に伴って,E3 Media & Business SummitがESA(Entertainment Software Association)に参加する大企業のみに絞られたためだと見られている。つまり,E3 Media & Business Summitに参加できず,ゲームを発表する機会を失った中小企業が流れてきたというわけだ。GDC 2007では,そのようなメーカーの新作ソフトの展示などもある見込みだ。
 4Gamerでは,今週から来週にかけて,ゲームファンにとって興味深いレクチャーや業界の話題を随時お届けしていく。(ライター:奥谷海人)

 

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記事/ブースレポート

 「Unreal Engine 3.0」のEpic Gamesが,プレス関係者に対して特別セッションを行った。ゲームエンジンはすでに完成しているので大きなニュースはないのだが,PC用「Unreal Tournament 3」に,同作品のエディタ「UnrealEd」を無料添付すると表明。今後は,MODゲーマー層への人気拡大も図りたいという構えだ。また,会場ではついに一般初公開された,PS3用のα版デモも展示されていたので,早速プレイしてみた。

 

 「Unreal Engine 3.0」とAGEIA PhysXを用いたFPS「Warmonger - Operation: Downtown Destruction」ムービーをお届けする。講演中に行われたデモンストレーションを撮影したもので,グレネード弾の炸裂で金属製の手すりが歪む,ビルの外壁が剥がれて鉄骨が徐々に出てくるといった,ちょっと驚きの物理エンジン効果を確認できる。

 

 「DragonRealms」や「GemStone」といったテキストMUD時代からオンラインゲームを開発しているSimutronics。同社が開発したオンラインゲーム開発用のプラットフォーム「HeroEngine」の新たなライセンス先三つがGDCで発表された。その中には未発表のBioWare製MMO作品が含まれているというのも興味深い。

 

 MMORPG開発に順応する「Unreal Engine 3.0」や「CryENGINE 2.0」に加え,会場にも出展していたオーストラリアの「BigWorld Engine」など,とにかくゲームエンジンのライセンスビジネスが熱い。そんな渦中に身を投じたのが,テキストMUDゲームでは最古参のSimtronicsだ。そのブースでの様子と,新作の開発状況をレポートしよう。

 

 Blizzard Entertainmentで「World of Warcraft」を開発した中心メンバー達が設立した会社,Red 5 Studiosが,GDCのエキスポに出展していた。“出展”って,一体何を? と思った人もいるだろう。同社はまだゲームをリリースしたことがなく,開発中のゲームに関しても,タイトル名すら明らかになっていないからだ。あまり期待させてもなんなので,結論を書いておくと,とくに何も出品していなかった。ではそのブースで,何をしていたのだろうか?

 

 Techlandは,自社開発のChromeエンジンを用い,レースゲームからFPSまで作ってしまうというポーランドのデベロッパ。搭乗者もダメージを受けるラリーシミュレーション「Xpand Rally」や,二人の主人公が活躍する西部劇FPS「Call of Juarez」などで知られている。そんなTechlandのブースで,これまたChromeエンジンを使ったFPSの新作「WARHOUND」が出展されていた。

 

 現地時間の3月7日,GDCが行われているモスコーニ・センターのSouthホール,Esplanadeルームで,デベロッパーズチョイス・アワードが発表されたのは,すでにお伝えしたとおり。その速報記事では触れなかったが,このイベントに併せて,もう一つのゲームの祭典「Independent Game Festival」(IGF)が行われていた。こちらの記事では,そのIGF,つまりインディーズゲームの授賞式について紹介しよう。

 

 ここ数年,GDCで学生を後押しする傾向が目立っていたが,そんな中から有能な人材がゲーム業界の仲間入りを始めたようだ。キャリアも人望も予算もゼロ。それだけにまったく怖いものなしなのか,「俺達は新しいゲームを作ろう」という意欲がひしひしと感じられる若者の姿が,会場で目立つ。そんな光景からも,アメリカのゲーム業界の強さが感じられるのであった。

 

 GDC 2007のエキスポ会場にあるLogitechブースで,ゲーマー向けマウス「G5」のマイナーチェンジモデルを見つけた。製品名に変更もないため,ぱっと見たところでは表面の塗装が変わっただけかと思われたのだが,よく見ると,サイドボタンが2個に増えている! 地味な変更ではあるが,しかし,重要な変更だ。

 

 2007年春の時点で,物理エンジン市場を二分するといって差し支えない「Havok」「AGEIA PhysX」。それぞれについて,「実際のゲームでどのように使われるか」というセッションが行われたので,2セッションの内容をまとめて紹介してみたい。キーワードは「キャラクターアニメーション」と「破壊」だ。

 

 GDC 2007のエキスポ会場で公開されていた「Crysis」のデモ版の直撮りプレイムービーを4Gamerに掲載した。デモ版はWindows Vista上で動いており,したがって,本作初のDiecetX 10対応デモと言うことができる。見事なグラフィックスだけでなく,意外なほど爽快感の高い銃撃戦の様子などもぜひ確認してほしい。

 

 GDCでは恒例となる,デベロッパーズチョイス・アワードの結果をお伝えしよう。PCゲームは「The Elder Scrolls IV: Oblivion」,家庭用ゲーム機の日本勢はWiiの「Wii Sports」,PlayStation 2の「大神(OKAMI)」がそれぞれ4部門でノミネートしていたくらいだが,正直“大物”および“本命”不在の感は否めない。その状況の中,PCゲームおよび日本勢は,どれだけ健闘できたのだろうか?

 

 Electronic Artsからリリース予定のFPS「Crysis」を開発中のドイツのCryTekが,同タイトル用に開発した“CryENGINE 2.0”をライセンスビジネス化すると発表した。それに合わせて,ライセンスタイトル第1弾の発表も行われたが,そのタイトルには日本の著名業界人も関与している。

 

 Flagship Studiosが開発中のアクションRPG,「Hellgate: London」最新ムービーが,3月6日に行われたEAパートナーズのパーティで公開された。今回は,「Templar」という,ちょっとおいしそうな名前の職業を紹介したものとなっている。本作が着実に完成に近づいていることがよく分かるような一本だ。リリースを楽しみにしている人はぜひチェックしよう。

 

 Valveが開発中のアクションゲーム,「Portal」最新ムービーを4Gamerに掲載した。特殊な銃で「入り口」と「出口」を作り,それらを使ってピンチを脱したり,必要なアイテムを手に入れたりして戦うアクションゲーム……と言ったところで「?」と思う人も多いと思うが,百聞は一見にしかず。このムービーを見ればそんな疑問も一発氷解なのである。

 

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カンファレンス

 クライムアクション「The Godfather: The Game」(2006年)の開発裏話を紹介する講演が行われた。本作は,Electronic Arts初の「GTA」スタイルのゲームで,新エンジンが使用されており,マルチプラットフォームにも対応するという野心的な作品だ。大規模な開発チームを率いた3人のデザイナーが,多数のスライドを使って,その経過を詳細に教えてくれた。

 

 ソフトウェア開発で話題になることも多い,Agile型開発プロセス。High Moonでは,Agile開発手法Scrumを導入し,プログラマやアーティスト,ゲームデザイナなどの混成による小チームで開発を行っている。このセッションでは,Scrumでの開発とAgile型開発のメリットなどが紹介された。

 

 GDC最終日にやたらと過密に詰め込まれた感のあるスケジュールで,数多くのセッションが消化された。なんと,1時間に3本ずつというハイペースだ。小粒な講演であるものの,ユニークな題材も多く見受けられたので,ここでは20分枠のセッションを3本立てで紹介してみよう。

 

 2007年のGDCは,ここ数年の恒例となっていたウィル・ライト氏の講演が行われないという,残念なことになってしまった。とはいえ,ライト氏が現在開発中の「Spore」について,内蔵されるエディタをピックアップしたレクチャーが行われたので,もしかしたら最新情報が聞けるかもしれないと思いつつ出席したのである。その講演で語られた「魔法のクレヨン」とは,果たして何なのか?

 

 GDC恒例ともいえるRaph Koster(ラフ・コスター)氏の講演だが,今回はなかなか過激で,集まった開発者達を唸らせていた。ゲーム開発の肥大化が,ゲームがウェブカルチャーのように柔軟に進化することを妨げているという内容だ。ゲーム業界に身を置く立場にある人なら,ちょっとした拒絶反応を示してしまうかも。

 

 3月8日に行われたNVIDIAの講演では,GeForce 8シリーズ用に作成されたデモ「Cascaes」「Adrianne」などについての技術解説が行われた。最新GPU用に作成されたデモプログラムと,そこに使われたさまざまな技法が明らかにされている。

 

 ここ数年,GDCで学生を後押しする傾向が目立っていたが,そんな中から有能な人材がゲーム業界の仲間入りを始めたようだ。キャリアも人望も予算もゼロ。それだけにまったく怖いものなしなのか,「俺達は新しいゲームを作ろう」という意欲がひしひしと感じられる若者の姿が,会場で目立つ。そんな光景からも,アメリカのゲーム業界の強さが感じられるのであった。

 

 GDCでは,毎年多くの日本人が講演を行う。とくに2007年は,次世代家庭用ゲーム機が出揃った直後ということもあってか,日本人が参加する講演に人気が集中する傾向が見られた。ここでは,日本人による講演のうち,いくつか興味深かったものをまとめて紹介しよう。

 

 2007年5月でサービス開始4周年を迎えるSF MMORPG「EVE Online」は,準備段階を含めると,開発がスタートしてから10年以上の月日が経っている。そんなEVE Onlineの歴史が,本作の発売元/開発元であるCCP Games CEOのHilmar Petursson氏と,同社CTOのHalldor Fannar氏の講演で明らかにされた。加えて講演後には,同社CMOのMagnus Bergsson氏から本作の日本語版に関する話も聞けたので,合わせてお伝えしよう。

 

 Gas Powered GamesのCEOであるクリス・テイラー氏は,ゲーム業界歴19年のベテランクリエイターだ。日本でもファンの多い「Total Annihilation」「Dungeon Siege」といった作品を手がけてきた彼が,同社の最新作である「Supreme Commander」の,誕生にまつわるあれこれを語ってくれた。

 

 デベロッパーズチョイス・アワードの発表から一夜明けた3月8日(現地時間),同アワードで大賞を受賞した「Gears of War」のリードデザイナー,Cliff Bleszinski氏が,同作の開発過程を例に,ゲーム開発プロセスに関する講演を行った。2006年のベストゲームは,どのようにして生まれたのか? 若き才人が,その詳細を明らかにした。

 

 「Gears of War」「BioShock」といったヒット作/注目作にストーリーを提供しているSusan O'Connor氏がGDC 2007でレクチャーを行った。以前に比べ,その重要性がますます高まる「ゲームストーリー」だが,小説や映画とは,まったくといっていいほど異なる独自のライティング技術を求められる。これまで明かされることの(あまり)なかったゲームストーリー作りの秘訣が,業界の最前線で活躍するライターの手によって語られた。

 

 伝説的なゲームクリエイターPeter Molyneux氏が現在開発中の,RPG「Fable 2」に関する講演が,3月8日(現地時間)のGDCにて行われた。そこでMolyneux氏は,「愛」にスポットを当てた3要素を発表。本作を単なる続編で終わらせず,遊んだ人の心に残る作品にするめに実装が決定したという「愛」の要素。果たしてその全容とは?

 

 新作アクションゲーム「Alan Wake」を開発するRemedy Entertainmentとはどんな開発チームなのか? あまり知られていない会社の形態や社風を,プロジェクトリーダーのLasse Sappanen(ラッセ・サッパネン)氏が,GDCの講義で披露した。小さい企業ならではの小回りの良さや,開発チームのメンバーが互いに助け合うといった社風で,ゲーム開発に当たっているようだ。

 

 PCゲーム……とりわけMMORPGにおいては,その開発国を気にする人が多い。というのも,アメリカをはじめとする西洋産と,韓国をはじめとする東洋産のゲームでは,大幅に印象が違うことも多いからだ。実際,多くの西洋生まれのゲームはアジア諸国で受け入れらないし,その逆もまたしかりである。しかしそれは,具体的には,どのような違いによるものなのだろうか? ソウル中央大学教授 魏 晶玄(ウィ・ジョヒン)氏が,GDCで独自の分析を披露した。

 

 GDC 2007で,Ubisoft MontrealのゲームデザイナーであるAdam Thiery氏による「Interactive Cinematography」という講義が行われた。なんだか聞き慣れないその言葉は,ゲームにおける映像の見せ方に関するものだ。プレイヤーには直接関係ないといえば関係ない話なのだが,アメリカのゲームデザイナーがどんな“見せ方”を考えてゲームを開発しているのか,その一端に触れてみよう。

 

 刀剣などの武器や,魔法を使って戦う一人称視点のアクションゲーム「Dark Messiah of Might and Magic」。本作の開発元 Arkane Studiosのクリエイティブデザイナー,Raphael Colantonio氏の講演が行われた。企画を売り込むところから,製品発売までの苦労話を聞けたので,お伝えしよう。

 

 設立時にゲーム界よりもむしろビジネス界で話題を集めたTrion World Network社が,その設立動機についての説明をGDCにて行った。「オンラインゲームは,ビジネスとしてはまだ臨界点に達していない」とする彼らは,どんなサービスやコンテンツを押し出してくるつもりなのだろうか?

 

 プロシージャルテクスチャや,オブジェクトを自動生成するミドルウェア「ProFX」の出力例などを紹介しよう。簡単な指定で,複雑な図形を作成できることが分かるだろう。また,自動生成によってどれくらい効率が上がるのかなども示されている。

 

 AMD(ATI)のセッションでは,お馴染みBattlefieldシリーズの新作で採用されている独自エンジン「Frostbite」に関する講演が行われた。さらにAMDが研究しているテクスチャの自動生成技術に関する講演も行われた。自動生成は,今後の3D技術で重要な位置を占めるものとなりそうだ。

 

 ウォーレン・スペクター氏といえば,「Deus Ex」「System Shock」「Thief」など,エポックメイキングになったタイトルを数多く開発してきたベテラン中のベテラン開発者。そんなスペクター氏が,2004年のGDC以来3年ぶりに“ゲームのストーリーについて”の講演を行った。この3年間のゲーム業界の変化は,彼の目にどう映っているのだろうか。

 

 世界最大手のパブリッシャであるElectronic Artsは,GDC 2007に合わせ,「EAパートナーズ」の新作に関するメディア向けのカンファレンス,およびパーティを,サンフランシスコのホテルで開催した。残念ながら,それぞれのタイトルに関する新たな情報こそ得られなかったが,最新スクリーンショットが公開されたので,こちらを紹介しよう。

 

 GDC2日めに実施された「Microsoft Game Developer Day」において,Windowsユーザーが対象のオンラインサービス「Games for Windows Live!」についての話題が上った。基本プレイ無料のサービスに慣れたPCゲーマーに,会員料を徴収することになるであろう“Live! Gold”は浸透するのだろうか?

 

 Electronic Artsの創設者であり,3DOの生みの親でもある,“ゲーム業界の暴れ馬”トリップ・ホーキンス氏が,GDC初日の基調講演で登壇し,久しぶりに公の場へ姿を見せた。同氏は現在,Digital Chocolateというモバイル系ソフトのメーカーを起業して奮闘中だが,それでも業界に対してはさまざまな思いがあるようだ。

 

 カジュアル系のオンラインゲームや,ゲームソフトのオンライン流通などが整備されるにつれ,既存のパッケージ販売網や広報戦略で力を維持する大企業に属さない,独立系の開発者が増えてきた。2007年から,正式なサミット(特殊分野の専用会合)として「Independent Game Summit」が加わったのも,そんな時流によるものだろう。その初日の様子をお届けしよう。

 

 「Half-Life 2: Episode Two」と「Team Fortress 2」に続く,Valve Corporationの“第3のプロジェクト”として知られる「Portal」について,プロジェクトリーダーのKim Swift(キム・スウィフト)氏によってわずかながら解説があった。講演自体は,元学生だった彼女がValveに雇用されるまでの経緯を簡単に追ったものであり,Valve作品のファンやゲーム業界入りを目指す人にとって興味深い内容だった。

 

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http://www.4gamer.net/specials/gdc07/gdc07.shtml