― 特集 ―
Game Developers Conference 2006

Text by 奥谷海人 

 アメリカ時間の3月20日から24日まで,全世界のゲーム開発者達が集う会合Game Developers Conference(以下,GDC)が開催中だ。場所は,いつもどおりカリフォルニア州サンノゼ市の中心部にあるSan Jose Convention Centerで,主催者のCMP Mediaは,昨年記録した1万2000人という参加者数を上回るものと予想している。
 GDCは,IGDA(International Game Developers Association)の会員を中心とした開発者や業界人達が参加するもので,今年で17回目になる。デザイナーやプログラマー,オーディオ/ビジュアル・アーティスト,さらには経営者,広報,大学や政府機関の研究者や学生といった幅広いジャンルの人々が集まり,ゲーム開発のノウハウや現場の事情について語り合うのである。

 GDCでは,約1時間のレクチャーやパネルディスカッションが複数,並行して常時行われている。これまでの,プログラミング,ゲームデザイン,プロダクション,経営&法律,オーディオ,ビジュアルアート,IGDA会合,そしてゲームの未来像やあり方についての講義をまとめた“ビジョン”という八つのトラックに加え,今年からは携帯デバイスのゲーム開発に関する“モバイル”というカテゴリが追加された。
 また,ゲームを生活や知識,医療などの向上に活用する「シリアスゲーム・サミット」が,さらに体系的に進められてるほか,今年は新たに「カジュアルゲーム・サミット」が新設されて注目を集めている。毎年恒例となっている「デベロッパーズ・チョイス・アワード」や「インディペンデント・ゲーム・フェスティバル」のような催しもあり,基調講演のスピーカーとして,昨年に引き続いて任天堂社長の岩田聡氏が登壇するのに加え,Sony Computer Entertainment of EuropeのPhil Harrison(フィル・ハリソン)氏,Electronic ArtsのWill Wright(ウィル・ライト)氏などの登場が予定されている。

 日本からの参加者も毎年増えており,今年のGDCでは,ヘッドフォンを利用した日本語同時通訳のサービスのあるセッションが充実しているのも特徴的だ。さらに,中国で設立されたばかりの上海IGDA,ならびに中国で最大の業界報道機関であるChina GC Networks (遊戯創造電網)から使節団が送られているなど,アジア市場との融和が加速している印象を受ける。
 それでは今週から来週にかけて,4Gamer独自の情報も含めて,GDC06で話題になったレクチャーやイベントの内容を随時お伝えしていこう。

 

 今年はMicrosoftの幹部による基調講演こそなかったものの,DirectX,Windows Vista,Xbox 360,XNAなど大小のチュートリアルセッションを開くなど,同社はGDCで各プラットフォームのサポート拡大に力を入れていた様子だ。さて,ゲーマーへのベネフィットはいかほどのものなのだろうか?

 GDC06に併設されていた出展スペース「GDC Expo」では,「ゲーム業界にどこまで受け入れられるか」を探るべく参加してくるハードウェアメーカーも多い。ここでは,妙に(?)エンジニア魂のこもったデバイスを3点紹介しよう。

 長い間ウィル・ライト氏が温めていたといわれる「Spore」も,そのスケールから実現は困難を極めた。ライト氏のプロジェクトとしても異例の発想であるためか,開発チーム全員に,どのようなゲームを作るのかを理解させるのは簡単ではなかったようだ。このプロジェクトの開発ディレクター,エリック・トッド氏が,さまざまなプロトタイプを通してゲームを進化させていった過程を公開した。

 GDC06では,多くの講演が行われている。このため,どうしても「それほど注目されていない」講演があるのだが,なかには参加してみたら面白かったりするものがあるから侮れない。今回は,途中からふらっと立ち寄ってみたら,(失礼ながら)予想以上に興味深かった「次世代キャラクターアニメーション」に関する講演内容を,番外編としてお伝えしよう。

 ゲームをプレイする側の人間にとっては,あまり聞き慣れないソフトだが,「Softimage」や「Maya」などのツールはゲーム開発とは切っても切れない縁がある。「Softimage|Face Robot」は,映画用CG開発の現場から流れてきたフェイシャルアニメーション専用ツールで,アニメータにとっては作業時間の短縮にもつながる本格的な製品だ。

 欧米では数週間後にリリースされる「Lara Croft Tomb Raider: Legend」が,一足早く完全プレイアブルな状態で展示されていた。'90年代後半に,イギリスをはじめ世界各国のゲーマーを熱狂させたヒロイン,ララ・クロフトが,これまでにないスムースな動きを見せる本作。人気キャラクターの復活なるか?

 Electronic Artsのニール・ヤング氏が,「フィーチャーIPの開発」というゲーム制作上の新たな基本方針を示すとともに,その実例として第二次世界大戦を舞台にした大人気FPSシリーズの新作「Medal of Honor: Airborne」を初めて公開した。この作品には,Ucapという新たなアニメーション技術が用いられており,戦場における臨場感の演出に期待できる。

 GDC06の会場にあるEpic Gamesのブースでは,「Unreal Engine 3」と,同エンジン採用ゲームタイトルのテクニカルデモが,プログラマーやアーティストに対して行われていた。また,日本進出についての気になる話も聞けたので,それらをまとめてお届けしたいと思う。

 会場に展示されていた新作の中に,Ritual EntertainmentのFPS「SiN Episodes: Emergence」を発見。テレビの連続ドラマのように,ストーリーを三つのエピソードに分割してオンライン配信される予定の作品で,そのシステムやディストリビューションモデルで,業界でも話題になっているシューティングゲームなのだ。

 ゲーム業界の大御所ウィル・ライト氏が,GDCにおいて基調講演を行った。テーマは当初の予定から変更され,「Spore」のコンセプト化とリサーチについての話題となった。彼の最新プロジェクトは,どのような行程で生み出されたのだろうか? そのユニークさがライト作品の味付けとなっているのは間違いなく,非常に興味深いレクチャーだった。

 デビュー作「Far Cry」でFPSメーカーとして台頭したCrytekが開発する,第2世代ゲームエンジン「CryENGINE 2.0」。同社はこのエンジンを利用した新作「Crysis」のデモを,GDC06で初公開した。ジャングルの“質感”が衝撃的なこの新作には,注目せざるを得ないはずだ。

 GDCでは珍しく,RPG界の巨匠リチャード・ギャリオット氏が新作「Tabula Rasa」についての講演を行った。A.I.A.SのInteractive Achievement賞,IGDAのLifetime Achievement賞と,立て続けにゲーム業界への功績が認められている“ロード・ブリティッシュ”だが,やはり目下のところは年内のリリースが期待されるTabula Rasaに,全力投球しているようだ。

 GDCの華でもある「デベロッパーズチョイス・アワード」も,今年で6回目。今回は,開発者の間で前評判の高かった「ワンダと巨像」と「ゴッド・オブ・ウォー」の2作品が激突した形で,ワンダと巨像が5部門賞を受賞する結果となった。

 2005年のGDCで発表されて以来,大きな注目を集めつつも,いっこうに具体的な話が出てこなかった物理演算チップ「PhysX PPU」が,ついに動き出した。2006年のGDCに合わせて,多くの対応ゲームが発表され,会場では実際にゲームにおけるデモも登場していたのだ。そんなPhysX PPUと,“仕掛け人”AGEIA Technologiesの今について,Upしたデモムービーともどもレポートしよう。

 Valveで「Half-Life 2」を制作した開発チームには,リードデザイナーもプロデューサーもいなかった。信じられないことだが,この世にも珍しい開発現場で,ゲーム史に残るであろうアクションゲームが制作されたのである。GDC06では,Valveの開発メンバー達が,同社独特の制作手法“cabalシステム”について説明を行った。

 年に一度,ゲーム業界のクリエイター達が集合する業界屈指のイベント,Game Developers Conference(以下,GDC)。そんなGDCで今,ちょっとした話題になっているのが“カジュアルゲーム”。これまでゲーム業界とはやや距離を置いた場所にいながらも,トランプやパズルのような遊びやすさで女性層を取り込み,急激にシェアを伸ばしている分野である。今年のGDCでは,このカジュアルゲームが大きく取り上げられ,ゲーム開発からマーケティングにいたるまで熱い議論が行われていた。

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http://www.4gamer.net/specials/gdc06/gdc06.shtml