― 特集 ―
「エバークエストII デザート オブ フレイム」体験レポート
Text by 星原昭典 

 スクウェア・エニックスが運営中のMMORPG「エバークエストII」(以下,EQ2)の拡張パック「デザート オブ フレイム」(以下,DoF)の発売日(12月15日)まであと1か月を切った。DoFでは,多くの冒険エリアが追加されるだけでなく,レベルキャップの上昇,PvP要素の追加など,さまざまな拡張が行われる。
 今回,リリースに先駆け,スクウェア・エニックスで日本語化の進んだDoFを体験する機会を得たので,その模様をお届けしよう。
 新要素についての詳細は,もう英語版が発売されていることもあり,すでにご存じのプレイヤーも少なくないだろう。4Gamer上でも,一通りの情報はすでに掲載済みだ。そこで,要素ごとの紹介ではなく,体験ツアーの流れに合わせたプレイレポートという形で,この拡張パックの見どころを紹介していく。
 ゾーンの様子やプレイ感覚など,スペックの紹介だけでは見えてこない“ゲームの雰囲気”がお伝えできれば幸いだ。

 

ケイノスの港からDoFゾーンへ!

 ゲームにログインすると,ツアー用のキャラクターはケイノスに立っていた。今回の取材のために用意されたキャラクターは,ハイエルフ・ガーディアン(これが筆者),ウッドエルフ・レンジャー,ラトンガ・ウィザードの3キャラクター。この3人に運営側操作のガイドキャラクター(エルダイト)が付き添うという形だ。3人のキャラクターレベルはすべて60。DoFからはキャラクターのレベルキャップが,これまでの50から60に上昇しているので,それを体験できるという趣向だ。

 

 最初の驚きは,この日本語版DoFで,すでに「アドオンモデル(SOGAモデル)」が使用可能になっていたこと。これは,日本以外のアジア地域(台湾,韓国など)でEQ2の運営を行うSOGA(Sony Online EntertainmentとGamania Digital Entertainmentが共同で設立した会社)が,アジア人の好みに合わせて作ったという独自のキャラクターモデルだ。ただし,画面に映っているハイエルフとウッドエルフはこのアドオンモデルだが,ラトンガにはアドオンモデルがない。また遠目には分かりにくいが,エルダイトもアドオンモデルとなっていた。アドオンモデルに関しては,本稿の最後でまとめて紹介する。

 DoFで追加される新エリアには,フリーポートからでもケイノスからでもすぐに“飛んで”いける。移動手段は魔法の絨毯だ。今回はケイノスの港からの出発なので,波止場に並んでいる絨毯をダブルクリックすることで「シンキング・サンド」というゾーンにジャンプした。

 

「マーのオアシス」でクライミング

 魔法の絨毯に乗ってたどり着いたのは,DoFのモチーフとなっているアラビアンナイト風の砂の世界。着陸地点付近のテントには,頭にターバンを巻いたNPC達がいる。このターバンの色やズボンの色などで,彼らの属するファクション(所属勢力)が分かるという。
 DoFでの冒険を通じて,多くのプレイヤー達は三つあるファクションのうち一つに属することができる(所属しないことも可能)。とくにDoFの中心的な町である「マージ・ダル」では,この三つのファクションが勢力争いを続けており,こちらのファクション状態によっては,敵対ファクションの町人(NPC)に襲われる可能性もあるという。
 このテントには,さまざまな勢力のNPCが並んでいた。この世界へ新たに訪れる冒険者の勧誘合戦はもう始まっている,といった風情だ。ガイドの先導で進んでいくと,画面上にいま入った地域名が表示される。「マーのオアシス」!  前作「エバークエスト」(以下,EQ1)の経験者であればアレやコレやいろんなものを思い出さずにはいられない地名だ。この古い友人に久しぶりに出会えたような感覚が嬉しい。

 

 少し進むと,壁にひっかき傷のような跡があるガケのふもとに到着した。ここはDoF導入で可能になる「クライミング」が可能な場所だ。クライミングは,このような特定の場所でしかできないが,種族やクラスに関係なく,すべてのキャラクターが行える。クライミング可能な壁には,周囲とは少し異なるテクスチャが張られている場合が多く,それほど苦労することなく判別できるはずだ。DoFゾーンには,このように登っていかないと進入できない場所や,取得できないクエストがあるという。

 

 壁に張り付いて登っていれば,飛び降りてみたくなるのが人情だ(?)。ガイドの制止を聞かずに,高所からぴょんと壁を離れて落下してみたら,当たり前だがダメージを受けた。ほかの二人も同じように飛び降りたが,高い「セーフフォール」のスキルを持つレンジャーはダメージをほとんど受けていないようだった。

 DoFでは,ときには登坂中に敵の攻撃を受け,落下してしまうこともあるという。あるいは,敗走中に崖下りを強いられるようなこともあるかもしれない。そんなとき,セーフフォールを持つクラスは,ダメージを受けずにすんだり,積極的に飛び降りることで素早く敵から離れられる。
 これまでは,セーフフォールのスキルがあることのアドバンテージがいま一つ感じられなかったが,クライミングの導入によって,その価値を実感できる機会が増えそうだ。ちなみに,崖のてっぺんから壁面にぶら下がりたい場合は,崖に向かって進むだけ。意図しない落下は防げそうである。

 

ロー砂漠の巨大グモ「Terrorantula」に遭遇

 崖を越えた向こうには,風紋の刻まれた砂漠が広がっていた。大型のクモやスカラベが歩き回っている。レベルレンジはだいたい45〜49あたりだ。DoFゾーンはレベル40以上のプレイヤーキャラクターを対象としているので,ただのローマーもこれまでの基準からいえばなかなか手強いのだ。
 しかし,レベル60キャラクターから見れば彼らもみなグレー。ちょっかいを出しながら砂漠をうろついていると,向こうからかなり大きい……というかむちゃくちゃ大きなクモが歩いてくる。名前を見ると,おお,あの「Terrorantula」である。EQ1のロー砂漠南部を歩いていたあの巨大グモは,500年後も生きていたようだ。強さはレベル64のエピック(×4)。
 本来ならレベル60のキャラクターといえど,たちまち襲いかかられる敵だが,このときはツアーをスムースにするために,どんなモンスターからも襲われない設定になっていた。試しに殴ってみたら一瞬で(こちらが)死んだ。どうも強力なAE攻撃のようで,周りのメンバーもトバッチリで即死……。

 もう少し散策すると,思ったとおりサンドジャイアントがのしのしと歩いている場所が。このモンスターにも,忘れられない思い出がある人は多いだろう。さらに丘の上に立っている塔に近づくと,その周りに大型のカマを持ったスペクター達が群れていた。これも500年前と同じである。

 

魔法の絨毯に乗ってマージ・ダルへ

 次はDoFの中心となる町「マージ・ダル」に移動することになった。ここでも移動には魔法の絨毯を使用(ちなみに魔法の絨毯に乗れるポイントは複数存在する)。ケイノスからここに来たときはローディングを挟んで一瞬で到着したが,DoFエリア内で絨毯を使うときはちゃんと空を飛ぶ。絨毯は,従来のエリアでいうところの「グリフォン」と同じ感覚で使用できるのだ。マージ・ダルはガケの上にある町で,これを使わないと進入できないとのことだった。飛行中には遠くの空にポッカリと浮かぶ浮島のようなものも目に入った。そこも冒険の舞台だという。

 

 マージ・ダルは,やはりアラビアンナイトの世界から着想を得てデザインされた町だ。門を抜けて町中に入ると,ターバン姿の商人やシミターを下げたガードのほか,象も歩いていた。この町は全体で一つのゾーンとなっており,フリーポートやケイノスのように街区をまたぐたびにローディングが始まるようなことはないそうだ(塔内への移動時などにはローディングがある)。わりと遠くにあるはずの,いくつもの塔も視界に入ってくる。町で勢力争いをしている各ファクションは,この塔の取り合いをしており,壁面には現在その塔を押さえている勢力の大きなバナーがかかっている。プレイヤーの活躍によって,町内の塔の支配状況が変われば,町の支配状況も変化するという仕組みだ。
 フリーポート/ケイノスと違い,町内のNPCはこちらから攻撃することも可能だ(前述のとおり,向こうから襲いかかってくることも)。町には,ファクション別に勢力が強い地区が設定されている。自分が味方をしているファクションの地区を歩くときは問題ないが,プレイを進めていくと,ほかの地区を歩くときに警戒が必要になる。このちょっとプリミティブな緊張感は面白そうだ。

 

アリーナ・チャンピオンに変身して対人戦

 続いて,プレイヤー同士のバトルゲームが楽しめる「アリーナ」に移動する。このPvPは,プレイヤーキャラクターが生身の状態,あるいは「アリーナ・チャンピオン」と呼ばれるモンスターに変身した状態で戦うというものだ。変身可能なアリーナ・チャンピオンには,ベンダーから購入できる基本的なもののほか,特定のクエストをクリアしたり,戦績を積み上げたりすることで入手できるものもあるらしい。
 なお各アリーナ・チャンピオンには,“足が速い”“力が強い”“魔法が得意”といった個性が設定されている。
 アリーナの扉をクリックすると,現在参加者を募集中のゲームがリストアップされる。一つ選んだのち,自分が使用するアリーナ・チャンピオンを指定すれば,ローディングが始まって試合会場に入る。
 このときのキャラクターは,すでに数体のアリーナ・チャンピオンを所有していたので,それらを利用した。ちなみにアリーナ・チャンピオンの変更は,ゲームに入ったあとでも可能だ。

 試合形式には「チームデスマッチ」「キャプチャー・ザ・フラッグ」「デストロイ・ジ・アイドル」の3種類がある。どのモードも個人戦ではなくチーム戦だ。プレイ感覚はどのモードにおいても,FPSのマルチプレイにとても近い。マップ上にはポーションが落ちており,それを拾えばヘルスやパワーはすぐに回復する。展開もかなりスピーディで,まるでアクションゲームをプレイしているようである。無論,アリーナで何度死亡したところでキャラクターには何のペナルティもない。通常の冒険とは,面白さの種類がかなり違うものなので,経験値キャンプにちょっと飽きたときや,バイタリティ(経験値ボーナス)が減ってきたときなどに,気分転換として楽しく遊ぶことができそうだ。

 

空に浮かぶ島で見た空中庭園

 次に訪れたのはダンジョンの一つ「生ける墓所」。地下にある大きな墓所のような場所だ。まず面白かったのが,入り口付近。かなり高いところから飛び降りなければ先に進めないのだが,もちろん普通に着地すれば大ダメージを受けてしまう。下をのぞき込むと大きな人工の池のようなものがあるので,そこにドボンと飛び込めばいいというわけだ。狙ったとおりの場所に落下できなかった者の末路は,語るに及ばないだろう。
 そこから先は,通路上の敵をうまく捌いたり,クライミングの仕掛けをうまく見つけたりしつつ,先に進むようになっていた。あまり込み合っていないときであれば,道を切り開きながら奥地を目指すという,いかにもダンジョン攻略らしい楽しみを味わえそうだ。

 

空に浮かぶ島で見た空中庭園

 その後に向かった場所は,先ほど絨毯で飛行しているときに見えた浮島の内部「揺光の城」だ。この浮島は何者かが作った“空に浮かぶ城”で,進入するにはどこかにある魔法のポータルのようなものを使う必要があるらしい。最下層とおぼしき洞窟を過ぎると,内部には綺麗なアラビア風のホールがいくつも並んでいる。各部屋は階層状に積み重なっており,通路ではなく魔法で動く円盤状のエレベーターによってつながっている。
 何層か上ると,外へ向かう通路のある部屋に着いた。表へ出てみると,そこは空中庭園。空に浮かぶ巨岩の上に庭があり,そこを動物が歩き回っているという風景は,とても幻想的だ。あたりには生きている像(近づくと首だけこちらを向く)や,さらに先に進むためのポータルなどがあった。仲の良い友人達と共に楽しみながら冒険する場所としては,絶好のロケーションといえるかもしれない。

 

旧友(?)「Lockjaw」は生きていた!

 ツアーも終盤にさしかかって,次に向かったのは昼なお暗い洞窟の中。足元には大小いくつかの池や水たまりがあり,空気はおそらくジメッっとしているはずだ。ここはDoFで用意されるハイエンド・コンテンツの一つ,レイド用のインスタンスであるという。プレイヤーがここを訪れるには,アクセスクエストのような数々の試練を乗り越える必要があるそうだ。
 ここで冒険者を待ちかまえているのは,凶暴なワニの群れである。そのほぼすべてがレベル60オーバーの強さで,ここがいかに危険な場所かが分かる。
 そしてこの洞窟の奥,ひときわ大きな池の中にその巨体を横たえているのは,あの「Lockjaw」だ。マーのオアシスにいた懐かしいクリーチャーたちと同じく,彼もまたこの500年を生き抜いてきたのであろう。当時も大きかった身体はさらにその数倍(数十倍かも)になり,名前は「Lockjaw the Ancient」となっていた。飲み込んだハーフリングの肉はやっぱりもう消化しきってしまっているのだろうか。強さが強さなだけに,すべてのプレイヤーがそれを確かめられるわけではなさそうである。

 

サンドジャイアント「Cazel」のスプーン

 今回最後に訪れた場所も,レイド用のインスタンスとのことだった。赤茶けた表面の岩と砂からなる峡谷で,何人ものジャイアント達と,それに合わせたように大きなサイズのヒョウがズラリと並んでいる。
 ライブサーバーでここを訪れる機会があれば,彼らを上手に1エンカウントずつ仕留めていく必要があるだろう。このインスタンスは,まず中央にいるボス格の巨人を倒し,ついでポップするさらに強い巨人を倒し……という展開になっている。
 最後に現れるのは「Cazel the Mad」。EQ1のロー砂漠の有名なレアポップ「Cazel」の今の姿だ。多くの巨人系レイドモンスター同様,長時間スタン付きの吹っ飛ばし攻撃を持つ強敵なので,レイド時にはヘイトの安定化にいつも以上に気を使う必要があるかもしれない。EQ1のCazelといえばエンチャンターのエピッククエストアイテム「a Spoon(スプーン)」を落とすことでも有名だった。EQ2ではどうなのか? ぜひ確かめたいとお願いし,ガイドのヘルプを受けてなんとか倒すと,大型のチェストが現れた。開けると中には……あった!
 「Cazel the Mad」もちゃんとa Spoonをドロップするようだ。こちらは両手用の打撃武器で全クラスが装備可能。レンジャーに装備させて記念写真を撮ったところで,ツアーは終了となった。

 

一度は試してみたいアドオンモデル

 では最後にアドオンモデルに関する情報をお伝えしよう。まず,英語版と同様に,EQ2日本語版でもアドオンモデルは使用可能になる。モデルの表示切り替えはオプションから行え,オリジナルモデル/アドオンモデルの切り替えは種族ごとに設定できる。また切り替えは,クライアントを再起動したりしなくても,インゲームで瞬時に設定可能だ。
 アドオンモデルは,主に人間に近い姿の種族に用意される。ヒューマン,エルフ系,バーバリアンのほか,ドワーフ,ノームのものもある。エルダイトは,近づいてよく見れば違いが分かる程度で,オリジナルモデルに近い印象だ。

 実は筆者は,以前公開されたスクリーンショットを見たときに,すいぶん顔の表面がノッペリしているような気がして,「ひょっとしたらアドオンモデルは表情があまり変化しないのではないか」などと思っていたのだが,それは誤りだったようだ。実際にはオリジナルモデルと同じく,エモートなどによっても動くし,戦闘に入れば歯を食いしばった表情になる。
 実際に動いているところを見てみたが,想像していた以上に周囲に溶け込んでいるように感じた。オリジナルモデルに強い愛着がある人でも,一度は試してみることをおすすめしたい。なお,アドオンモデルはDoFのコンテンツではなく,すべてのEQ2プレイヤーにパッチとして提供されるものである。

 

 

タイトル エバークエストII デザート オブ フレイム
開発元 Sony Online Entertainment 発売元 スクウェア・エニックス
発売日 2005/12/15 価格 オープンプライス
 
動作環境 N/A

EverQuest is a registered trademark of Sony Computer Entertainment America Inc. in the United States and/or other countries. (c)2005 Sony Computer Entertainment America Inc. Uses Granny Animation. (c)1999-2001 by RAD Game Tools, Inc. All Rights Reserved.

【この記事へのリンクはこちら】

http://www.4gamer.net/specials/eq2dof_report/eq2dof_report.shtml