ガマニアデジタルエンターテインメントが今年3月に行ったプレスカンファレンスで発表された新作タイトルのうち,最も早く日本に登場してくるのが「ホーリービースト」である。
簡単にゲームの概要を説明しておこう。
ホーリービーストは,台湾EASYFUN Entertainment開発のMMORPGだ。動物が変身して人間型(獣人)になることができ,人間型から動物型に戻ることもできるという特徴を持っている。全体に可愛らしいキャラクターがウリのゲームである。
ホーリービーストでは,プレイヤーは基本的に動物である。鳥,犬,虎,龍,猿,牛の6種族が争いを続けていた世界で,新たな脅威「蟲」が登場し,蟲に対抗すべく,6種族が協力して戦うという設定となっている。ゲームの舞台となるのは,蟲との全面戦争が一段落したところ,暗黒の時代を抜けて,まさに夜明けの時代を迎えたという状況である(台湾では「曙光online」というタイトルでサービスされている)。
このホーリービーストが2006年7月末から8月にかけて大きな動きを見せてきそうだ。しかも日本版展開に向けて,大幅なローカライズを行っているという。今回は,ホーリービーストのプロジェクトマネージャーの中島秀樹氏とディレクターの田中照彦氏に日本版の展開について話を聞いてみた。
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。日本版ではかなりの変更が加えられるそうですね。
中島氏:
ホーリービーストの日本版は,全体の5割以上を日本仕様に変更したものとなります。もし,これまで台湾版をしている人がいたら「全然違うじゃん」って思うかもしれません。
挙げられている変更点を見ると,
- メニューインタフェースの一新
- ゲームマップの大幅変更
- モンスターAIの強化
- 全クエストの見直し
- 動物型が進化する獣進化システム搭載
- 合成・露店など商業システムの強化
- 職業ごとの装備,スキル,パラメータ強化
- 日本向けアイテム大量追加
- 武器システムの改善
- コミュニティ機能の強化
- エフェクト,サウンドの改善
と,実に大幅な変更が予定されていることが分かる。
4Gamer:
かなり大幅な変更になるわけですが,台湾版とは別のものとなるのですか?
プロダクトマネージャー
中島秀樹氏
中島氏:
いえ,日本版と同じものが台湾ではホーリービースト 2.0という形で公開されることになります。
4Gamer:
日本用の拡張を加えて新バージョンを作るわけですね。一覧を見ると,まず,獣進化システムというのが目につきますね。
中島氏:
日本のプレイヤーは,ポケモンやデジモンなどでいろんなモンスターが進化するというのに慣れていますので,変化をつける意味で動物型態のときの形状が進化する要素を加えてみました。
4Gamer:
これは何段階に進化するものなのですか?
中島氏:
現在は3段階です。レベルが上がっていくと,それに応じて進化形態も増えていくことになるでしょう。
4Gamer:
キャラクターの動物(種族)が基本的に6種類というのは同じですか?
ディレクター
田中照彦氏
田中氏:
はい。これは五行+風の属性になっていまして,
- 龍 :水
- 虎 :金
- 鳥 :火
- 猿 :木
- 犬 :土
- 牛 :風
という6種類になっています。
ホーリービーストは,中国武侠などの世界観はまったく関連のない世界設定なのだが,台湾では五行というのが広く受け入れられているのであろう。
中島氏:
2.0でいちばん大きな変更は,この獣進化システムなのですが,それ以外にも,インタフェース周りを一新しました。マップも,スタート地点が2カ所に分かれていたのを1カ所にまとめ,全体のマップもストーリーの導線にあわせて再配置しました。モンスターのAIもちょっと弱かったので,日本向けに強化しましたよ。
元からクエストはかなりたくさんあったんですが,どこかに行ってなにかを持ってきてといった「お遣い」系が多かったので,少しストーリー的な肉付けを行いました。本筋のストーリー以外の,枝葉のクエストにもストーリー展開を強化した感じです。
4Gamer:
本筋のストーリーは別にあるわけですね?
田中氏:
6種族は,それぞれに背景と目的があります。最終的には,「蟲と対抗する」という背景に関わったメインストーリーに対して,枝葉のストーリーを追加していく感じで調整しています。
左が旧型,右が新しくなったユーザーインタフェース
中島氏:
あと「合成」関連は全面的に変更しました。これまで「採取」というものがあったのですが,これをバッサリやめます。合成という部分を強化しつつ,簡単にしてプレイヤーに分かりやすいものにしました。また,これまでは露店というのが弱かったのですが,日本版では場所として用意し,新たに商業的システムを追加していきます。
4Gamer:
露店自体は前からありましたよね?
中島氏:
台湾版のものは,頭の上に看板が出てるタイプのものなのですが,これがちゃんとした店構えになります。露店用のスペースもできて,そこに店を開く感じです。
4Gamer:
スペースが足りなくなったりしませんかね。
中島氏:
そうですね。逆に,露店スペース1個は無料で,2個以上に拡張するとお金がかかるといった感じにするかもしれません。
4Gamer:
合成についてですが,採取がなくなって,材料はどうやって調達するんでしょうか?
中島氏:
現状は,基本的にドロップという形を取ります。ホーリービースト 2.0は,秋くらいに正式サービスを目指し,それ以降は,採取については日本でプレイヤーの皆さんから支持をうけた追加要素を日本側でまとめて導入することになります。
4Gamer:
導入って,もしかして「向こうに導入」ですか?
中島氏:
はい。日本と台湾の両方です。将来的に,採取については,すべて日本で企画して台湾での2.0にも反映していくことになります。現状では,内容が煮詰まっていないこともあり台湾での導入は未定ですが。
田中氏:
現状の採取というのが,はっきりいってあまり面白くないんですよ。それをいったん止めて,もっと面白いものを作っていこうということですね。
4Gamer:
なるほど。現状のものはどんな感じなのですか?
中島氏:
飛天onlineと似た感じで,採取の場所に放置しておくだけですね。動物の種類によって,採取できるものが違います。
4Gamer:
まあ,放置では面白くはないでしょうね。
中島氏:
私は,これまで家庭用ゲーム機での開発を行ってきたので,種を蒔いて,水をあげて……といった感じで育てていくようなものがよいと思うのですが,社内のオンラインゲームプレイヤーからは,「それは面倒くさいよ」と反対されています。オンラインゲームって放置が多いじゃないですか。家庭用ゲームでは,放置っていうのは,まずありません。
4Gamer:
なるほど。何日くらいで収穫できるかによるかもしれませんが,育てていくのも面白そうですね。
中島氏:
ほかの新要素ですが,各職業の装備やスキルなども,これまでバラバラだったものをきちんとパッケージングしていきます。この部分もかなり変わっていく部分です。日本向けのアイテムについては,かなり大幅に追加していく予定です。武器の強化については,分かりやすいものにしていきます。コミュニティ機能については,メールシステムなどを組み入れ,これまでのゲームにあったようなものはすべて備えるようにするといった感じです。サウンドも大幅に変えていきます。
一覧に挙げておいたのはこれくらいですが,ほかにもゲーム内容の部分,例えば,戦闘にしても,これまでのはどこか「もっさり」した感じがあったので,これをもっとレスポンスよく軽快なものに変えていきます。
4Gamer:
モーションを変更するということですか?
中島氏:
そうですね。モーションの動きとスピードを,いま全面的に変更しているところです。これまでの台湾版を知っている人が見ると,全然違ったゲームに見えるかもしれません。
田中氏:
グラフィックも改善され,新しいモンスターなどはかなりイイ感じで仕上がってきていますよ。
中島氏:
画像のクオリティも上げており,テクスチャは1024ドットのものに張り直しているところです。
4Gamer:
話を聞いていると,ゲームの全面的な変更で,かなり手間がかかりそうに思えるのですが……。
中島氏:
海外製のタイトルだと,日本から注文を入れても,なかなか変更してもらえなかったりというのが多いのですが,今回は台湾ガマニアとつきあいのある会社ですので,日本側の意見も聞いてもらえて,ユーザーの意見もすぐに反映できるようになるのではないかと期待しています。
田中氏:
どちらかというと,開発のほうから積極的に「ユーザーの意見がほしいんです」と熱弁をふるってくれるようなところでして,非常に協力的な体制になっています。
中島氏:
これくらい対応が早いと,例えば,「4Gamer専用のマップを作って一緒にイベントしませんか?」といったようなこともできそうで,メディアを巻き込んだ展開も検討しています。いままでの開発とはちょっと違う感じですね。今回は開発が非常に柔軟に対応してくれています。
4Gamer:
開発速度もかなり速いようですね。
中島氏:
開発人員も動員してくれていますし,ただ,開発は速いのですが,日本語ローカライズが追いついていない状況です。最初のβ版では中国語が残ってしまうかもしれません。
4Gamer:
まあ飛天onlineでも残っていましたし。クエストとかもかなり変更するということなので,翻訳も大変ですよね。
中島氏:
そうですね。また,日本版ではサーバー構成も変えました。台湾版は,400〜500人が入るサーバーがたくさん並んでいたのですが,人数が少ないとどうしても過疎感が出てしまいますので,日本版では3000人程度の収容を予定しています。
4Gamer:
それって,もの凄い変更じゃないですか? ゲーム内容の変更だけでも膨大なのですが,サーバー構成も変えたり,収容人数が変わるとなると,調整が大変そうですね。
中島氏:
最初のβテストは,調整とデバッグに特化したものになりそうです。「3時から全キャラクターのレベルを40に上げるのでよろしく」とか「全モンスターを一通り出してみる」といった感じのテストも行う予定です。
4Gamer:
βテストって本来そういうものですけどね。
中島氏:
これまでのβテストのつもりでこられると,「せっかくプレイしてたのに」とか「サーバー落ちてるじゃないか」と怒られそうで,テスターを広く募集するかどうかはちょっと検討中です。