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「真・三國無双BB」のパブリッシャELEVEN-UPが目指す,日本発のオンラインゲームの一般化。代表取締役 片山 崇氏にインタビュー

Text by Guevarista,photo by kiki 

 オンラインアクションゲーム「真・三國無双BB」のパブリッシャとして,最近当サイトの記事にも名前が並んだ,ELEVEN-UP。2006年2月1日に設立され,MOVIDA GAMES(モビーダ・ゲームズ)が企画・開発・プロデュースする作品で,必要なケースに限ってパブリッシング業務=運営を展開するというこの会社,真・三國無双BBのサービスではどういった役回りを演ずるのだろうか?
 今回は,ELEVEN-UP 代表取締役 片山 崇氏に,真・三國無双BBのサービスを中心として,MOVIDA GAMESとの関係や,同じくパブリッシング業務を手掛けるMMORPG作品「ベルアイル」の話題も含め,話を聞いてみた。
 MOVIDA GAMESあるいはELEVEN-UPが目指すオンラインゲームビジネスの姿,そこに向けた自社のウリ,抱負についても語ってもらったので,興味のある向きはぜひご一読いただきたい。

国内発の作品で,オンラインゲームの一般化を目指すELEVEN-UP

4Gamer:

 本日はよろしくお願いします。まず,ELEVEN-UPという会社そのものについてお聞きしていきたいのですが。

片山氏:

 ELEVEN-UPは,オンラインゲームの運営と販売,マーケティングという,いわゆるパブリッシャの立ち位置から始めていこうとしている会社で,ゲームのサービス提供を行います。それに対してMOVIDA GAMESは,投資/資金調達を含めたプロデュースを担当する会社で,エンドユーザー向けのサービスはELEVEN-UPが担当します。
 国産の良いコンテンツを育てていくためには優れたプロデュースが必要ですが,ご承知のようにオンラインゲームは,開発して売って終了というビジネスではありません。そこで,サービスを担当するELEVEN-UPの登場となるわけです。

4Gamer:

 プロデュースと運営,それぞれが重要なのは,そのとおりだと思います。ですが,そこであえて別の会社になっているのはなぜなのでしょうか? 役割が異なるとはいえ,同じ作品に携わるなら同じ会社であってよい気もするのですが。

片山氏:

 それはそもそも,MOVIDA GAMES/ELEVEN-UPの目標が,パブリッシングの成功に限られているわけではないからです。日本におけるオンラインゲームシーンを興隆させ,よりメジャーにしていくのが目標であって,パブリッシャとしての立ち位置は,その手段の一つにすぎない,と考えています。

4Gamer:

 え,えーと,でもまずELEVEN-UPはパブリッシャなんですよね。

片山氏:

 ええ。ですがオンラインゲームの開発と運営の形態はさまざまですから,MOVIDA GAMESが手掛ける作品のパブリッシングを,必ずELEVEN-UPが担当すると決まっているわけではないのです。例えばデベロッパさんが運営も含んだプランを持っているのなら,そこでELEVEN-UPが参加する必要はないし,実際それでよいのです。

4Gamer:

 なるほど,ELEVEN-UPが関わらないケースもあり得るわけですか。同じくMOVIDA GAMESとの関係の話となりますが,MOVIDA GAMESとELEVEN-UPは垂直関係なのでしょうか,水平関係なのでしょうか?

片山氏:

 水平関係です。例えば「真・三國無双BB」でいうと,立ち上げ段階では旧ビー・ビー・サーブ時代も含めてチーム"#8"(ナンバー8)で進めてきましたが,これはMOVIDA GAMESに受け継がれています。そして,テクニカルテストを始める段階から,それはELEVEN-UPが担当していくことになります。

4Gamer:

 先ほど「国産の良いコンテンツ」というお話がありましたが,MOVIDA GAMESおよびELEVEN-UPの目標としては,海外製品の国内展開が主体でなく,国産タイトルの興隆を目指すということなのでしょうか? オンラインゲームに対するビジョンを,ぜひ教えてください。

片山氏:

 そうですね,僕としてはキーワードは“革命”という風に思っているんですけれども,オンラインゲームで,ゲーム業界に革命を起こしていきたい。それが会社としての目標です。
 一口に革命と言っても捉え方はさまざまだと思いますが,一番大事だと思っているのは,一般の人から見たオンラインゲームのイメージを,ゲームデザインや遊び方を含めて,気負いなく遊べるものにしていきたい。そのために会社をやっているということです。

4Gamer:

 思ったより広い部分での答えをいただいた感じなのですが,それを考えている人は,ほかにもたくさんいそうな気がします。その中で,MOVIDA GAMESおよびELEVEN-UPならではの考え方は,どういったあたりなのでしょうか?

片山氏:

 うーん,例えば真・三國無双BBでのアプローチが,その最たる例になるかと思いますので,まずはこの作品に対する取り組みから話したいと思います。
 この作品が広くプレイされるようになった段階では,おそらく実際にプレイしてくれた人を起点に,PCでゲームをすること,オンラインでゲームをすることのイメージが,大きく変わっていくのではないかと思っています。一言で表せば一般化といいましょうか。

4Gamer:

 なるほど,オンラインゲームの一般化,ですか。

片山氏:

 そうです。PCゲーム,オンラインゲームであることをむしろ意識しなくなるくらいの一般化です。ゲームをやるに当たって,PCやネットワークをプレイヤーが当たり前のものとして受け入れている状態を目指します。今後投入するコンテンツを,そうした立ち位置に持っていくことが,会社としての目標です。

4Gamer:

 例えば誰かがプレイステーション2やニンテンドーDSのゲームをプレイするとして,普通それを「プレイステーション2をやる」とは言わない。意識するのはタイトル名だけですよね。例えば真・三國無双BBをそのようにしたいということですね?

片山氏:

 ええ,そうした立ち位置を占めていくのが狙いです。PCおよびネットワーク環境に,もちろんこだわっていくのですが,それ以前に,ゲームがもっと身近な存在であるべきという考えがあります。そして,身近な,身近になりうる環境として,PCおよびネットワークがあるわけです。
 PCとインターネットについては,もはや多くの人が特段意識することなく利用しています。そこに楽しいサービスを提供するだけ,ということです。
企画段階から運営チームが参加する,独特のスタイル

4Gamer:

 PCオンラインゲームをプロデュースないしパブリッシングする会社は多くあり,最近では例えばゲームポータルサイトなどという特有のビジネスモデルも成長しています。そうした中で,MOVIDA GAMESおよびELEVEN-UPの卓越点は,どこにあると考えていますか?

片山氏:

 あまりライバル関係を意識して動くのではなく,お客さんにどう楽しんでもらうかを基に会社を動かすべきだと考えています。で,そう考えていったとき,MOVIDA GAMESおよびELEVEN-UPのアプローチでユニークなところは,運営に携わるチームが,ゲームの企画段階から加わっている点だと思います。
 運営プランを,ゲームの企画設計と同時進行で考えていく。それがほかの会社,とくに海外ゲームのライセンシングサービスを主体として,開発と運営が別であることを前提にサービスを行う会社との違いになります。これは,ELEVEN-UPがパブリッシャになる場合でも,そうでない場合でも,です。

4Gamer:

 つまり事業の核は,自前で企画し,あるいは企画に参画した作品であって,海外の作品をたくさん持ってきてサービスを提供していくといったものではないのですね。

片山氏:

 基本的にそうです。もちろん,MOVIDA GAMESが関わるファンドについては,また別の話になりますが。
 なぜ国産ゲームにこだわるかといえば,日本のクリエイターさんには,プレイしやすさとか細かい部分までこだわって作り込む人が,すごく多いからです。そしてそれが,今後のゲーム市場における大きなウリになると考えています。
 そして,スタンドアロンのゲームであれコンシューマタイトルであれ,お客さんのことを考えてこだわることの価値は変わらない。それをオンラインゲームに即して考えたとき,企画段階で運営チームが参加していないのは,本来あり得ないことではないかと思ったのです。

4Gamer:

 運営というのが,オンラインゲーム特有の要素だとしても,同じように考えるべきだと。

片山氏:

 運営を通して,さまざまなプレイヤーさんに楽しんでもらうためには,運営の要素が企画設計段階で入っていないとおかしい,というのが企業としてのコンセプトであり,開発のアプローチです。

4Gamer:

 運営とは,ある段階でホイッと渡されるものではないはずだ,ということですか。

片山氏:

 はい。近い将来,国産,海外モノを含めて,似たようなゲームジャンル,どこかで見たような作品がたくさん出てきて,差別化も何もなくなる時期が来る。というより,すでにそうなりつつあると思います。

4Gamer:

 確かに現在の市場にも,そうした側面はありますね。

片山氏:

 最後の最後で,プレイヤーさんに支持してもらえるポイントは,派手なゲームシステムなどといった大がかりなものではなく,かゆいところに手が届くというか,ちょっとした心配りがサービスの各所に反映されているか否かだと思っています。
 だからこそ,自分達が手掛けるサービスに関しては,その心配りを作る段階からやりましょうということです。
 ビッグコンテンツに頼ればよいわけではない。強いていうなら,それが競合関係の会社さんとの,勝負のポイントだと思います。
タイトル 真・三國無双BB
開発元 コーエー 発売元 ELEVEN-UP
発売日 2006/11/01 価格 従量課金制
 
動作環境 OS:Windows 2000/XP/Vista(+DirectX 9.0c以上),CPU:Pentium 4/1.80GHz以上,メインメモリ:512MB以上,グラフィックスチップ:プログラマブルシェーダ1.1対応以上,グラフィックスメモリ:64MB以上,HDD空き容量:9.5GB以上,ディスプレイ解像度:800×600ドット以上

(C)KOEI Co., Ltd. All rights reserved.
Presented by ELEVEN-UP Inc.

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http://www.4gamer.net/specials/060324_11up_int/060324_11up_int_01.shtml