― レビュー ―
「ザナドゥ」の名を冠するも新しく生まれ変わったアクションRPG
ザナドゥ・ネクスト
Text by Murayama
2005年11月4日

 

■20年ぶりにザナドゥが帰ってきた!

 

魔法/スキルを交えた戦闘は爽快。イースシリーズでも定評がある同社だけに,アクションRPGはお手のもの

 1985年にリリースされた「ザナドゥ」は,国産アクションRPGの金字塔といえるタイトルだ。体当たりで肉弾戦,スペースバーで魔法発射というシンプルで遊びやすい戦闘システムをベースに,個性豊かなボスキャラ,パズル的な要素のあるステージ,武器や魔法ごとに設定された熟練度システムなど,当時としてはとてもよく作り込まれた作品だった。

 これまで新作を求める声は多かったが,そんな声はどこ吹く風とばかりに日本ファルコムは動こうとはしなかった。イースシリーズは新作がリリースされ続けているのに,なぜザナドゥの続編は出ないのだろう? と筆者を含め,多くのプレイヤーが疑問に感じていたはずだ。
 しかし2005年10月27日,日本ファルコムはザナドゥ20周年を記念して「ザナドゥ・ネクスト」をリリースした。旧作のリバイバルやリメイクではなく,現代にマッチした完全新作としての登場だ。

 筆者の,旧作に対する溢れ出る想いを,いちいち本文に盛り込んでいくと大変なことになりそうなので,以後コラムとして挿入していく。興味のある人は併せてどうぞ。

 

 初代「ザナドゥ」は,国産PCゲームで最大のセールスを誇る作品である。全機種版合計で40万本という大ヒットを記録。以後,拡張パック「ザナドゥ シナリオ2」だけではなく,ファミコンでは「ファザナドゥ」,PCエンジンでは「風の伝説ザナドゥ」といった関連商品もリリースされた。その名は現在でもオールドゲーマーの心に深く刻まれており,しばしば伝説のアクションRPGとして語られるほどだ。そんな声を反映してか,復刻版などもこれまでにさまざまな形でリリースされている。

 

 「ザナドゥ・ネクスト」は,騎士戦争で騎士達が敗退し,すっかり騎士という存在が珍しくなった時代が舞台。一人の騎士と,アカデミー出身のシャルという女の子のコンビが,"聖剣ドラゴンスレイヤー"が眠るという"奇岩城"の伝説を聞きつけて,ハーレックの街に到着するところから物語が始まる(旧作は王の命令を受けた一人の戦士が,キングドラゴン"ガルシス"を倒す冒険に出るというシンプルなものだった)。

 本作は主人公がこのハーレックの街を拠点に,手がかりとなる情報を集めつつ,遺跡や迷宮などを探索していくというストーリー性のあるアクションRPGに仕上がっている。各エリアには敵モンスターが徘徊している以外にも,なかなか本格的なパズルなどが仕掛けられており,各エリアのラストには特殊な戦術を必要とするボスモンスター達との決戦も待っている。
 そうした冒険の中で,石像として封印されていた過去の勇者達が復活し,主人公と色々な形で関わりを持つ。果たして彼らは味方か? 敵か? ……といった,物語を盛り上げるミステリアスな要素も盛り込まれている。

 戦闘では,軽快なアクションが前面に押し出されている。マウスによるポイントクリックで移動,攻撃を行うオーソドックスなスタイルだが,敵の背後に回り込んで攻撃すると大ダメージを与えられるなどの凝った要素もあり,アクションゲームファンにとってはやりがいがあるだろう。

 細かな特徴はいろいろあるが,ゲームの大まかな展開自体は最近の"イース"シリーズなどを踏襲している……といった感じで,ファルコムファンなら旧「ザナドゥ」を知らなくても,迷うことなく遊べるだろう。

 

「突き」のスキルで敵を転ばせると,背後に回って大ダメージを与えやすくなる 視点変更は回転のみで8段階(できないシーンもある)。もう少し自由に視点変更したい オートマッピング機能も搭載。中にはワープトラップが多数仕掛けられたマップもある

 

最終目的となる奇岩城。ここが探索できるようになるのは,やはりゲーム終盤だ ただ敵と戦うだけではなくパズル要素のあるシーンも。箱を動かして道を作ろう 旧作と同様,四つの王冠を集めることがシナリオ上の大きな目標の一つとなる

 

 

■スキル,ガーディアンなど要注目のシステム

 

回数制限があるが,魔法攻撃は強力。敵が弱点とする系統の呪文をうまく使いたい

 本作には「スキル」(技)というシステムが導入されており,自分で戦闘を組み立てられるのが非常に面白い。
 スキルは,成長すると覚えたり,お店で買って適用したりするものではなく,"武器"に付加されている。例えば「ロングソード」を装備すると,これに付加されている「回転攻撃」というスキルがリストに表示される。武器を外すとスキルも消えてしまうわけだ。ただし同じ武器を使い続けて熟練度を100%まで上げると,そのスキルを習得したことになり,武器を外してもスキル一覧に残ったままとなる。というわけでスキル習得には,さまざまな武器の熟練度を100%以上にする必要がある(最大200%まで上がる)。

 

 旧作では武器,防具,魔法のすべてに熟練度が設定されていて,使い込むことで攻撃力や防御力を強化できた。当時は防具の熟練度を上げるために無駄に敵の攻撃を受ける必要があり,不毛だなと思っていたが,今回は防具の熟練度はなくなり武器だけになった。

 

 スキルには,任意に発動させることで効果を発揮するものと,スキルスロットに入れておくだけで常時発動するものがある。敵を転ばせる「突き」,周りの敵を攻撃する「なぎ払い」,武器に炎をまとわせる「火炎の剣」といった攻撃的なものもあれば,各種パラメータをUpさせるものや,敵のステータスを表示する「看破」,より多くのお金をドロップさせる「根こそぎ」といったユニークなものもある。
 ただしスキルスロットは四つしかなく,さらに魔法もスキルスロットに入れて使うため,どういった組み合わせにするかは,楽しく悩めるところだ。

 武器以外の特徴的な装備品としては,ヘルムが挙げられる。ヘルムには防御力以外に火や氷などのレジストが付加されていて,敵の特殊攻撃に対応したヘルムを装備していれば大幅にダメージを軽減できる。ゲーム中盤のイーグリッド山で実験したところ,フローズンサラマンダーのアイスブレスのダメージが90から45まで下がったので,効果は非常に大きいといえるだろう。ヘルムだけでレジストの調整を行うというのは,ほかのタイトルでは見られないし,少々違和感を覚えたが,これはこれで味ということにしておこう。

 ネクストの新要素として,ガーディアンの存在も面白い。冒険を進めると,ガーディアンが封じ込められたカードを発見することがある。これを聖堂に持っていけば,主人公の体にガーディアンを一つだけ宿すことが可能で,これによりHPを多くしたり,魔法攻撃力を上げられたり,獲得経験値を増幅できたり,ユニークなところでは商人との取引が有利になったりといった効果が得られる。
 また,ガーディアンを宿したまま敵と戦うとガーディアンもレベルアップして,より大きな効果が得られるようになる。ガーディアンのカードは12枚だ。

 またゲーム中に登場する石板や,ある人物によって書かれた手記などは,集めて読むことで世界をより深く知る手がかかりとなる。石板の中には,ガルシスによって世界が2回ほど危機に陥ったことが書かれているものもあるが,これは初代ザナドゥとシナリオ2のことであろう。思わずニヤリとしてしまった。

 

武器を使いこなして熟練度を100%以上にすれば,設定されたスキルを体得できる ヘルムだけは防御力よりも耐性重視で選びたい。複数持っておくことが攻略の秘訣 お店で武器を買うときに,スキル名だけで効果まで分からないのはちょっと残念

 

マウスをテンポよく押すことで連続技が発動。スキルと組み合わせて有効活用したい 魔法は店で購入する。店の武具/魔法は物語の進行に応じて品揃えが増えていく 集めた石板や手記は,宿屋の2階に待機しているシャルに渡すと解読してもらえる

 

一度に宿せるガーディアンは一つまで。付け替えは聖堂で行える。また宿したまま敵と戦えばレベルアップする

 

 

■そしてボスキャラとの白熱のバトル

 

アクションの腕が問われるボス戦。初めて戦うときは「看破」のスキルで弱点の確認を!

 序盤から中盤はハーレックの街を中心に周囲の「クロヴァーの遺跡」「千古の迷宮」「魔粧の森」「イーグリット山」をめぐって奇岩城への手がかりを探し,そして終盤戦は「ザナドゥ・ラビリンス」「時の狭間」「奇岩城」を探索することになる。そして各エリアのラストには,個性的なボスが待ち構えているのである。

 例えば「クローヴァーの遺跡」に登場する樹木をモチーフにしたベリルアードは,根っこ,触手といった特定の順で破壊する必要があり,「千古の迷宮」の蜘蛛型のボスのスコルチュラは,冷気のブレス攻撃や爆発する毒針攻撃に加えて突進が強力なので,プレイヤーの回避力が問われる。炎の魔神エビルブルムは誘導弾を発射するほか,地表を溶岩で覆ってプレイヤーの足場を狭めてしまうなど,かなりイヤらしい攻撃をしてくる。ほかにも巨大な目玉のアスコモイドなどは回転レーザーで攻撃してきたり,地面からトゲを突き出してくるうえに,特定の状態でしかダメージを与えられない。このようにさまざまなシチュエーションが用意されていて,日本ファルコムがイースや英雄伝説などで培ってきたノウハウを満載。緊張感ある戦いが楽しめる。

 

 「ザナドゥ」といえば,巨大なボスキャラとの戦闘が熱いことでも当時話題になった。本作のボス戦も実に楽しく戦わせてもらったが,旧作を知る者としては,ボス戦にこそザナドゥらしさを追求してほしかった。正直,旧作のビッグクラーケンやカーティケアなど印象的なボスは,今回も登場させてほしかったのだが,残念なことにそれらは登場しない。余談だが,ビッグクラーケンの真下に潜って倒すと,ビッグクラーケンの死体の重みで死んだりするのは懐かしい話。

 

最初に戦うボスキャラのベリルアード。先に根の部分を破壊してから本体を叩こう ボスによってはこんな戦いが強いられる。小さな足場を最大限に活用して戦おう 昆虫型のボスキャラ。突進攻撃と尻から発射されるミサイル攻撃は広範囲なうえ強力

 

巨大なボスキャラだけではなく,中ボスも随所に登場。しょせんザコだろうと思ってナメてかかると,痛い目を見ることになるだろう

 

ムービー

百聞は一見にしかず,実際のボス戦の様子をムービーで撮影してみたので,その戦闘の模様を自分の目で確認してほしい。ダウンロードは「こちら」(1分55秒・45.1MB・MPEG-1)からどうぞ。

 

 

■旧ザナドゥから継承された要素は少ないが……

 

ドラゴンスレイヤーを探し求める冒険は旧ザナドゥを思わせる。最後はやはりキングドラゴン,ガルシスと戦うことになるのだろうか?

 総括として,ザナドゥ・ネクストは「秀作」と呼べるアクションRPGだと思う。スキル/魔法を交えた戦闘も軽快で,かなり楽しめる。とくにザナドゥを知らなくても,アクションRPGが好きなら遊んで損はしない内容であり,旧作のファンならニヤリとさせられる箇所もある。ちなみに旧作を彷彿させるエッセンスをまとめると下記の通りになる。

 

  • 1.主人公がしゃべらない
  • 2.熟練度を採用(武器のみ)
  • 3.四つの王冠がゲームのカギ
  • 4.キングドラゴン"ガルシス"が登場する
  • 5.お店の表示画面がやや旧作を思わせる
  • 6.部屋(その付近)のモンスターを倒すと宝箱が出現
  • 7.ボスの直前にセーブポイント(旧作はボスと遭遇時にセーブ)
  • 8.最後のモンスターを魔法で倒すと(赤い)宝箱は出ない
  • 9.旧作と同名,似たような能力のアイテムが登場

 

 しかしボスキャラの章のコラムでも言及したが,個人的にはもっとザナドゥらしい何かを盛り込んでほしかったところだ。とはいえ,本作をプレイする人間で,初代ザナドゥを遊んでいた人がどれくらいいるのか? と問われると,旧作のエッセンスはこれくらいで十分かなとも思えるが。

 ずいぶんと新作までの時間がかかってしまったが,今後はイースシリーズと同様に,ザナドゥシリーズもコンスタントにリリースしてもらいたいものだ。ただし本作をゲームシステムだけで見る限りでは,これってイースシリーズ? といってもそれほど違和感がないため,今後シリーズ化していくのであれば,シナリオ以外の部分で,どうやってイースシリーズと棲み分けていくか? が大きな課題となりそうだ。そして続編にはぜひとも期待したいと思う。

 最後にこれは余談だが,エンディングの聖歌のようなBGM音楽は非常によかったので,ぜひとも大ボリュームで聞いてもらいたい。また今回エンディングを迎えた後にオマケがあるのかを確認してみたが,とくにタイトル画面に項目が追加されているようなことはなかった。とはいえ,エンディングではプレイヤーの評価が表示されていた。評価によってはなにかオマケなどがあるのだろうか? 気になるところである。

 

石板や手記を集めることで,より深く世界観を理解できる。二度の災厄とは20年前の旧作のことだろうか?

 

 

タイトル ザナドゥ・ネクスト(Vista対応版)
開発元 日本ファルコム 発売元 日本ファルコム
発売日 2007/03/29 価格 限定版:4800円(税込)
 
動作環境 CPU:Windows 98/Me/2000/XP,Pentium III/866MHz以上(Pentium III/1GHz以上推奨),メモリ:Windows 98/Me 192MB以上(256MB以上推奨) Windows2000/XP 256MB以上(384MB以上推奨),グラフィックスカード:グラフィックスメモリ32MB以上,DirectX 8.1以降対応のもの(AGP及びPCI-Express接続,またはチップセットIntel 845 G以降を推奨),DirectX 8.1以降

(c)2005 Nihon Falcom Corporation

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